24 竜とローズと人間と
いつものようにギユウを大切そうに抱き抱えたローズは、足取り軽くクレイブ達の待つ会場に向かっていた。
今日は天気が良かったので、季節の花々が綺麗に咲き誇る公爵家自慢の庭に、お茶会の準備がされており、既にクレイブ達は席に着いてローズとギユウを待っていた。
呼びに来たジュリアスにエスコートされながら、ルイを従えて会場に向かうローズの姿は、国王さながらの登場であり、他の貴族が見たら卒倒しそうな状況であった。
………
「クレイブ国王陛下。ローズ様をお連れ致しました。」
「お前は相変わらず堅いなぁ〜別に身内以外誰も居ないのだから気安くしてもいいのだぞ」
ローズを連れて現れたジュリアスは、クレイブの前でしっかりとした礼をとると物々しく挨拶し出した。
そんなジュリアスに呆れ気味に声を掛けるクレイブだが、ジュリアスが後ろに引き連れているローズが抱いている生き物が気になって仕方が無いようでチラチラと盗み見る様にしながらギユウの存在を確かめていた。
「そう言った訳には参りません。では、ローズ様。クレイブ国王陛下に胸に抱いている竜をお見せして下さい」
「はい。ジュリアス父様。クレイブ国王陛下、この子が公爵家で保護した竜のギユウです!!」
ジュリアスに促されたローズは、その場で手の中で大切そうに抱き締めていたギユウを、腕を突き出すようにしてクレイブに見せ始める。
「おぉー!!それが話に聞いていた竜なのか…
少し近くで見ても良いか!?」
「大丈夫ですよ!!ねぇ、ギユウ!!」
何故か感動している様なクレイブに嬉しそうな笑顔のローズはギユウを撫でながら元気よく返事をする。
「グッギュー!!」
《いいわけあるかぁー!!何が面白くてオヤジの側に近寄らなきゃなんないんだよ!!だったら、その隣の綺麗な女の方がいいだろ!!》
「ふふっ。今日も元気でいいお返事ね。流石ギユウ。お利口さんよ!!クレイブ国王陛下、大丈夫だそうですよ!!」
「…………」
(ローズ……気のせいで無ければ、今…そこの竜の声が聞こえた気がするのだが……私は、一体どちらの言葉を信じればよいのだ……)
クレイブが、多分竜の声であろう言葉とローズの言葉が噛み合っていない事に驚いて、目を見開いたままその場で固まってしまっている。
そんなクレイブに苦笑いを見せるギルバートはクレイブに顔を寄せそっと耳打ちをしだした。
離れているローズには聞こえないが、何やらクレイブとキャロライン、クロード達がコソコソと話し合いをした後、クレイブがゆっくり頷くとローズを側へと呼び寄せた。
「ローズ。立たせたままで申し訳なかったな。少し竜の存在に驚いてしまった故にな。では、こちらへ来て一緒にお茶でもしようではないか!?ギユウ様もそれで宜しいか?」
やっと自分を取り戻せたクレイブは、国王らしく威厳あるように取り繕うとローズとギユウを呼び寄せた。
「ありがとうございます。クレイブ国王陛下!ギユウもフルーツ沢山あるから大人しくしててね」
「ギュー!!ギュー!!」
《俺様とお茶したいなら、ローズとそこの綺麗な女で俺様を挟んで座るんだぞ!!》
「ギユウは本当にお利口ね。クレイブ国王陛下。ギユウは人の言葉が分かるようで私の言った事にちゃんと返事してくれるとても賢い竜なんですよ!!」
「ハハっ。ソウミタイダナ」
クレイブは遠くを見つめながら乾いた笑いを漏らすしか無かった。
人の言葉が分かる分からない以前に、竜の言葉を感じ取れないのは、此処にいる竜との繋がりにおいて一番大切な存在のローズだけなんだと、途方にくれるクレイブだった……
だが、この遣る瀬無いこの気持ちを持て余しているクレイブ達の中で、一人キャロラインの高笑いが響き出した。
「あははは。ローズ!!!貴方って本当に最高よ!!こんな面白い事ってある!!もう本当……ふふふっ」
ローズは、何故、キャロラインに突然笑われたのか理解出来ながったが、少し重くなりそうだったこの場の雰囲気が軽くなった事に安心したようにニッコリと微笑み返した。
結局、ローズとキャロラインがギユウの両隣に並ぶ事はなく、ローズの横にギユウその隣にアルベルト、ローズの横にエリオットが腰掛け向かいにクロード、キャロライン、クレイブ、ギルバートと並んで座る事になった。
ルイ、ノア、ジュリアスはそれぞれ主人の後ろで控えており、全員が着席したのを確認すると竜を交えての前代未聞のお茶会がスタートした。
………
「では、ローズ。竜についていくつか質問しても良いだろうか!?」
「私で答えられる範囲でなら大丈夫ですよ!!」
「では、ローズが竜を保護したので合っているかな?」
「そうですね。公爵家の庭を散歩していたら鳥の鳴き声の様な声が聞こえてきたので探していたらギユウが怪我して倒れていたんです」
「そうか…それで手当をしている内に懐かれたと言う事だな」
「う〜ん??と言うよりは見つけた時から、とてもいい子でしたよ!!」
ローズはギユウに微笑みながら優しく背中を撫でる。
それに気を良くしたギユウは気持ち良さそうに喉を鳴らして鳴くと
「グッ ギュー」
《ローズは、出会った時から人間 特有の嫌な魔力は感じないからな。側に居るだけでとても心地がいいのだ》
「一応、竜も魔獣扱いなのだが、ローズは、よく大丈夫だったな!!普通だったら攻撃されるか捕食されてもおかしくないのに、何か我々とは違うところでもあるのかのぅ!?」
「どうなんですかね!?以前にも、魔獣と会っても攻撃されなかった事が有りますが、自分ではよく分かりません。ギユウは何か分かってるのかなぁ?」
「ギュー!!ギュー!!」
《全然違うぞ!!お前達は血生臭い生々しい魔力で低脳な魔獣達に好まれそうだが、ローズの中にある魔力はローズ自身の物は極微量しか感じられないがとても澄んでいる魔力で森などの自然の物に近いからな!!だから一緒に居ると心地よいのだ》
「ふふ。ギユウも一生懸命答えてくれてるのね。ギユウの好きな魔力なら嬉しいな!!」
「ギュー!!ギュー!!グゥー!!」
《好きだ!!好きだ!!好きだ!!ローズ!!!大好きだ!!これからもずっと一緒だーーーー》
おいおいマジかよ…と、クロード達が絶望感に苛まれているのを他所にローズとギユウは2人でキャッキャして楽しそうに戯れ合っている。
「ヴッンン。あと…ギユウ様は、もう怪我が治っていそうだが仲間の元へ帰さなくても大丈夫なのか!?」
「そうなんですよね。傷も綺麗に治ったし、もう飛ぶのにも支障が無さそうなので森に何度か帰そうとしたんですけど、何故か戻ってきちゃうんですよね…」
「ギュー。ギュー」
《森に戻してどうする気だ!!ローズは我の番なんだ!!番の側に居るのは当たり前だろ!!》
「そんなものは認めーーーん!!!」
突然クロードの大声に、ローズは思わずビクついてしまうが、クロードが何を認めないと大声で叫んだのかローズにはさっぱり分からなかった……
ローズの頭にはハテナが浮かんでいるが、興奮気味に立ち上がっているクロードを見上げ、ローズは恐る恐る声を掛けた。
「ク…クロード父様!?どうなさいました?ギユウが戻って来てしまう事は、そんなにいけない事なのでしょうか!?」
「はっ……??えっ…いや!!ローズ。違うんだ!!ちょっと仕事の事を思い出して…」
やっと我に帰ったクロードは、完全に苦しい言い訳なのだが焦りながらもローズに弁解しだし、それを何食わぬ顔でギユウは眺めている。
心無しかニヤついている気がするのはクロードだけでは無いようだが……
《オイオイ…何をそんなに焦っているのだ!!お前等が認めようが認めまいが我には関係などない!!我がどう思っているか、それだけが重要なのだ!!お前等如き人間が我を止められると思うなよ!竜王に挑む争いで負けたとは言え、それまでは群れを率いていたのだ。お前等が昔倒した下等な竜などと一緒にするなよ!!この国などは一瞬で消し炭にしてくれる。》
『…………』
竜の言葉を聞いて完全に固まってしまったクロード達を他所に、話の内容を全く理解していないローズは場の流れを変えるように話し始めた。
「ギユウは、まだ幼いから一人になるのが心細いんだと思うんです。だからもう少し大きくなったら仲間の元へ戻ると思いますよ!!」
ローズ!!!それは子竜じゃなくて成竜だし、お前を嫁にするつもりで居座っているのだぞ!!と皆が力強く思っているが、ローズに伝わる事はなくローズは楽しそうに「ねっ。ギユウ!!」と言いながらギユウに果物を食べさせている。
とりあえずこのままでは埒があかないので、一旦お開きにしてローズと竜を下げると、大人達だけの緊急会議が行われる事となった。




