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22 国王襲来


 クロード達にギユウを紹介してから数週間が経ち、怪我もすっかり良くなったギユウは、何故か森には帰らずにローズの側に居座り続けていた。

 クロード達も初めの頃はどうにかしてギユウを森に帰そうと躍起になっていたのだが、何度試みても次の瞬間にはローズの隣にしれっと戻っているギユウに心が折れたのか、現在は諦めた様で特に何かをする事は無く死んだ魚の様な目で2人のやり取りを眺めるだけだった。

 屋敷の人間達も竜の存在に大分慣れてきて、あからさまな怯えを見せなくなって来た頃、国王陛下とキャロラインがファルスター公爵家を訪れるとの知らせが入った。


「あの〜まさか…ギユウの存在が不味いからお怒りとかでは無いですよね……」


 国王陛下がわざわざ公爵家に出向いて来ると聞いたローズは、国の保護生物にもなっている竜を勝手に連れ帰った事を咎めに来るのではないかと内心とても焦っていた。


「ふふ。怒ってはいないけど、報告を受けたクレイブ王が内密に竜の様子を見に来るのは確かだな!!」


 クロードは、イタズラがバレた時の子供のように怯えているローズを可愛らしく思い、楽しそうに微笑むとローズの頭をクシャっと撫でた。


「じゃあ、私もクロード父様達も怒られる事は無いですよね。良かった〜」


 クロードの言葉にいくらか安心したのかローズは嬉しそうに顔を綻ばせると両手で胸を押さえ、ホッと息を吐きながら少し俯き気味に呟いた。


 ローズの可愛らしい仕草と普段はあまり見せない子供らしい発言にジュリアスも微笑ましく思ったようで慈しむような笑みを浮かべローズに問いかけた。


「ふふっ。大丈夫ですよ。でも、しょっ中 ルイに怒られているローズ様も やはり国王から怒られるのは怖いんですか!?」


「う〜ん…私がって言うよりは、私の勝手な行動で父様達が怒られるのは嫌だなと思って!!」


 ローズは、自分が勝手に起こした行動のせいで普段から真面目に生活しているクロード達が国王から咎められるかもしれないと心配していたのだ。

 だが、クロード達の言葉で杞憂だったと分かるとほっと胸を撫で下ろしていた。

 そんな風にローズが自分達の事を思い遣ってくれていたのだと分かったクロードとジュリアスは狂喜乱舞しながら完全に取乱し


「……ローズ!!ローズは何て心の優しい女の子なんだ!!オイ!!ジュリアス!!!ローズはこんなに優しくて大丈夫なのか!?」


「それは、私も常々心配しているんです!!!ローズ様は本当に優しすぎます!!」


 そんな事を言い合いながら忙しなく部屋の中を彷徨いだすのだった。


「…あはははっ……」

(クロード父様達も相変わらず親バカですね……)


 軽く頬を染めて満更でもなさそうなローズなのだが、そんな事を思っているローズの後ろで ルイは、表情筋を殺し 能面の様な表情を浮かべながら (そんな訳あるかーー!従者を撒いて勝手に自転車で飛び出すし、内緒で竜を持ち帰る女が、優しすぎるなんて事ある訳ねぇだろ!!お転婆なんて言葉じゃ収まりきらないんだよ!!)

 と内心では悪態を吐きまくっていた。


 ローズは、そのままクロード達と別れて自室へ戻るとクレイブ王達を出迎える為の準備を始める。


 最近はある程度の事は自分で出来る様になってきたローズだが、ドレスなどを着用する時はやはり他の人の協力が必要なので手伝って貰う事になってしまう。


 今日はクレイブ王が来ると言う事で久しぶりにエリオットが張り切ってローズの着替えを手伝っていた。


「ねぇ、お母様。このドレスとかもっと簡単に着られるようになりませんかね!?男性の服は一人で着脱出来るのに、一々 誰かに手伝って貰うのって面倒くさくて……」


 ローズがふとそんな気持ちをエリオットに漏らすと


「クスクス。そんな事言うのローズちゃんくらいよ!!女性は蝶よ花よと大切に育てられて、大概の事は男性達にして貰うのが当たり前になっているのに……

 でも、ローズちゃんもその辺の女性達よりは、よっぽど大切にしてきたつもりなのに可笑しいわね!!ふふっ」


 何でも自分でやりたがる好奇心旺盛なローズを可愛いくも可笑しくも思い、楽しそうに笑いながらエリオットがローズを揶揄いだした。


「もう〜お母様ってば、そんな事言って、私もちゃんとお淑やかにだって出来るんですからね!!」


 最近、益々女性らしくなってきたローズの成長を眩しく感じつつも、エリオットに揶揄われて頬を膨らませて怒る可愛らしいローズの頬を指の背で優しく撫でると


「はいはい。分かってるわよ!!私の愛しいお姫様!!」


 そう言いながらエリオットはローズに向かって妖艶に微笑んだ。

 わざとローズを誘惑するかの様に微笑むエリオットは、その視線を受けて恥ずかしそうに頬を染めてオロオロと挙動不審に視線を彷徨わせるローズを眺めるのが堪らなく好きなのだ。

 変態エリオットの色気のある瞳で見つめられたローズは、エリオットの思惑通りにたちまち顔が赤くなりそのまま無言で俯いてしまうのだった……



…………




「それはそうと、ローズちゃん胸が少し膨らんで来たんじゃない!?」


「えっ!!!本当ですか!?」


(まさかの胸!!!最近少し痛いと思ってだけど…念願の豊満な胸が手に入るかもしれないなんて……頑張れ!!私のお胸様!!!)


 今の今までエリオットにときめいて、恥ずかしそうに俯いていたのだが、エリオットの言葉を聞いた瞬間、ローズは思い切り頭を上げるとエリオットに食い付く勢いで問いかけた。


「ふふ。このドレスの胸周りが少しキツくなってきたみたいだわ!!仕立て直すのに一度ライカー達を呼ばないとダメね」


 そんな事を言い合いながらエリオットはローズをテキパキと着替えさせていく。


 今日のローズのドレスは全体的にクリーム色で長袖のシースルータイプになっており、向日葵のような花のジャガードのチュールドレスを着用していた。


 髪の毛も後から横にかけて花と一緒に太めに編み込んでいて少し大人になりつつある少女らしく可愛らしい仕上がりになっていた。


 ローズの準備も大体終わった頃、そう言えばと、ふとした疑問をエリオットに尋ねてみた。


「そう言えば、今まで気付かなかったんですけど、お母様ってどうやって着替えてるんですか!?誰か使用人の方に手伝って貰っているんですか!?」


 そんなローズの素朴な疑問をエリオットは満面の笑みで微笑むと、屈みながら顔を近づけ、そっとローズの耳元に唇を寄せながら


「子供にはひ・み・つ・よ」


 と言いながら耳に息を吹きかけるのだった…


「……っ………」

(ぎゃーーお母様ヤバすぎる!!!なんか聞いたら不味い話しだったわけ!?躱し方がセクシーすぎて、ヤバい……足がガクガクする……)


 エリオットの色気に腰を抜かしそうになったローズは、妖艶に微笑むエリオットに腰を抱かれ支えられるようにしてルイの待つ早くへと戻るのだった。


 エリオットに腰を支えられるようにして戻ったローズを、ルイは訝しげな顔で見ているが、そんな事に構っている場合ではないローズは困惑しながらもルイの淹れてくれたミルクティーをゆっくりと飲みながら自分の昂ぶる気持ちを必死に落ち着かせる……


 そんなローズを楽しそうに眺めていたエリオットは、ローズが落ち着くのを確認すると優しく頭を撫でてから自分も用意するために部屋へと戻っていくのだった…….

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