19 ローズの秘めごと 7
「えっ??ギユウとお父様達って、もう顔合わせたの!?」
「はい。昨晩、クロード様方にお伝えしたところ、直ぐにでも確認したいとおっしゃいまして」
「大丈夫だったの!?」
「一応…無事にお互い確認致しまして、後ほど皆様でローズ様に話を聞きたいそうです」
「…ねぇ……ルイ…さっきからなんか…怒ってる??」
「いえ…別に…いつも通りですが…」
朝、普段よりも早めに起こされたローズは、いつもより畏まったルイの態度に寝ぼけていた頭も一気に目覚めた。
普段なら少し不機嫌そうにしていても聞き分けの無い子供でもあやすようにローズを見つめて話すルイが、目線を合わせる事なく淡々と用件だけを伝えている事にルイを相当怒らせてしまったのだと理解する。
「嘘!!なんか喋り方も余所余所しいし、ごめんね!!もう勝手な事しないから!!」
ルイの冷たい態度に焦ったローズは、黙って勝手な事ばかりし過ぎたんだとやっと気づき慌てて謝り出した。
「嘘つけ!!!お前、そんな事言って毎回、毎回、毎回ーー!!!面倒ごとに巻き込まれやがって!!!マジで、いい加減、少しは女らしくしろよ!!」
毎回、ローズの行動に振り回されるルイは、このままローズの好きにやらせていると、いつか絶対に取り返しのつかないことになると危惧している事もあり、今回ばかりは、直ぐに許すつもりは無いとでも言うように朝っぱらから言葉強めに説教しだした。
そんなルイの切実な思いが込められているとは思いもしないローズは、日々ルイに小言を言われ続けているので、今日もまたその延長なのだと可愛らしくすっとぼけるのだった。
「えっ!?女らしく成長してるじゃん!?皆んなに綺麗になったって言われるよ!?」
「そう言う事言ってんじゃねぇーよ!!」
「テヘッ。。。」
ローズはルイの小言に可愛らしく首を傾げて舌を出した。
今日ばかりは簡単にローズの事を許さないで、きつくお説教をしようと心に決めていたルイだったが、ローズのその仕草を直視してしまった瞬間 しまったと思ったが時既に遅しで、一気に顔が赤くなってしまい堪らずローズから目を逸らしてしまう。
「クソっ!!!ホラ、あのクソ竜連れてクロード様達の所へ行くぞ」
「はーい!!」
ローズはそんなルイを見ながらしてやったりとニンマリと微笑むのだった。
***
「ギーユーウー!!おはよう。いい子にしてた!?」
「ぎゅーー!!!」
《ローーーズ!!今日も愛らしいなぁ!!早くこっちへ来て我を抱きしめろ!!》
「ふふっ。今日も元気いっぱいだね!!これから一緒に、お父様達の所へ ご挨拶に行くんだけど いい子にしてられる!?」
「グッギューギュッ!!」
《何故、我が行かねばならんのだ!!アイツ等が、挨拶に来るべきであろう!!》
「クスクス。お利口さんね!!さぁ一緒に行きましょうね!!ギユウ!!」
「ギュ…」
《くそぉ……でも、ローズの抱っこなら、まぁ…良いかのぅ……はぁ〜今日も、気持ちいいし良い匂いだのぅ……》
「…………」
魔力を介して竜の思いが伝わるようになったルイは、ローズと竜との噛み合ってない会話を聞かされるハメになり、何故 竜の気持ちなど分かる様にされてしまったのか、こんな会話を聞かされるくらいなら知らない方が良かったと、遠い目をしながら2人の後を着いて行くのだった……
………
「お父様方。おはようございます!!」
ギユウを抱きしめたまま執務室へとやってきたローズは、既に朝から仕事をしていたクロード達へと元気よく挨拶をした。
「ローズおはよう。朝食前に呼び出してすまないな。昨晩ルイ達からも聞いたんだが、これは重要な話でもあるからローズの口から早めに聞いておきたくてな」
「大丈夫です。むしろ お父様達に内緒で連れて帰ってきてしまって、すみませんでした」
「そうだな……次からは先に相談してくれると嬉しいな!!」
確信犯で連れ帰った癖に、口では反省した様に謝っているローズに、絶対に反省はしていないであろうと気付いているクロードはローズの可愛さから強く出る事が出来ずに苦笑い気味に答えるのだった。
「それで、その竜を拾った経緯なんだが……」
「はい。1ヶ月くらい前に一人で庭を散歩してた時に鳥の鳴き声のようなものが聞こえて来たので探したてみたら傷を負ったこの子を見つけたんです!!それで可哀想だから手当して食べ物とかあげているうちに愛着が湧いてきちゃいまして……」
ローズは鳴き声が聞こえてきたので公爵家の壁の穴からそっと抜け出して確認しに行った事は上手く誤魔化しながら今迄の経緯を簡単に説明した。
「そうか…それで、ローズは、それが竜とは知らなかったのか!?」
「はい…鳥にしては大きい気がしたんですけど…この世界の生き物にまだあまり詳しく無くて……」
最近、ローズも様々な勉強を始めてはいるが、魔獣など生き物の勉強は行なっていなかった。
外に出る事の多い男性達は、幼い頃から様々な生き物の勉強を必然とする必要があったが、常に男性達から守られる立場であるローズや他の女性達には、あまり魔獣など生き物の勉強をする必要性が無かった為、そこまでの知識がまだ無かったのである。
「いや…それはいいんだ……だが、そうか…ローズは、一応そう言った勉強も必要かもな……」
クロードは少し考えながらもそう提案し出した。
「女性で魔獣の勉強をするなどあまり聞いた事がありませんけどね……」
ジュリアスはローズのお転婆ぶりを思い出しながら世間一般的に言われている女性像とは完全に異なるローズに苦笑い気味に話し出すと
「まぁ、本来は男性の為の勉強だからな」
アルベルトも同様な思いを感じていたようで曖昧な笑みを漏らしながらクロード達に同意する。
(ちょっとお父様達…まるで私が男勝りのような言い方ですけど、ちょっと好奇心旺盛なだけで、こんなに可愛らしく成長してるのに……ふふっ。自分で言っちゃいますけどね!!!……あとは、欲を言えば胸が欲しい……片手では収まりきらない程の大きなお胸様が……)
ローズがそんなアホみたいな事を考えていると、クロードがローズに今日の本題を振る。
「それで…ローズは、その竜をどうするつもりなんだ!?」
「はい。もう傷の方も大分いいんですが、もう少ししっかりと傷が治って、飛ぶのに支障がなくなったら森に帰そうと思います!!」
ローズがギユウの背中を撫でから俯き気味に微笑んで、そう伝えると途端に腕の中のギユウが騒ぎ出した。
「ギャッ!!ギュー!!!」
《嫌だ!!絶対に帰らない!!!我は、ローズとずっと一緒に居るからな!!」
ローズの言葉を聞いたギユウが、嫌だとローズに必死に訴え騒ぎ立てているのだが肝心のローズには全く伝わらない為
「そうだね!!ギユウも早く傷を治して、元気に外を飛び回りたいよね!!」
などと頓珍漢な事を言い出している。
だが、自分の思いが伝わらない事に納得の出来ないギユウは、諦めきれずにローズに必死で訴えかける。
「ギュー!!グッ ギュー!!」
《ローズ!!!違う!!俺の番!!ずっとお前の側に居る!!好きだ!好きだ!好きだ!!》
「ふふっ。今日も元気いっぱいだね!そろそろお腹減ったのかな!?」
「ギュ……」
《お腹は減ってる……減ってるけれども……おい!!そこのお前等!!笑いを堪えてないで食事の準備でもさっさとしろ!!早くしないと殺すぞ!!》
ローズに自分の切なる思いが伝わらず、落ち込むギユウは、クロード達が明後日の方を向きながら肩を揺らし笑いを堪えているのに気が付いて八つ当たりし出す。
「はい……はい……!!それではローズ様、あとのお話は食事をしながらでも…そちらのギユウ様も一緒にどうぞ!!」
心なしか竜への態度がおざなりになったようなジュリアスが食堂へと促し出した。
「えっ!?一緒にいいんですか!?やったねギユウ!!一緒に食べられるんだって!!」
そう言ってローズはギユウをギュッと抱きしめた。
「ギュー!!」
《ローズ。可愛すぎる!寧ろ我はお前の事を食いたいぞ!!》
そう言いながらギユウも嬉しそうにローズの首に擦り寄っている
((((((やめろ!!エロ竜!!いつか絶対追い出してやるからな!!))))))
クロード達は変態エロ竜の毒牙から可愛いローズを守る為にも、これから死ぬ気で鍛錬する事を心に誓ったのである……