15 ローズの秘めごと 3
ここから第一章のエピローグの後半部分へと繋がります。
「ローーーズ様!!!ローズ様!!!何処にいらっしゃいますか……!?あっ!!ルイ!!!ローズ様は、どうした!?」
「申し訳ございません!!ちょっと目を離した隙に逃げられました!!」
レッスンの時間が迫っているのにも拘らず、ローズの姿が見えずに焦るジュリアスに、ルイが申し訳無さそうに頭を下げる。
お互いに一緒に成長してきたローズとルイもそろそろ大人に近づき、常に一緒に居る事も難しくなってきている様で、少し目を離した隙に最近ちょくちょく逃げられるようになってきたのだ……
毎回、ローズがいなくなる度に、クロードとジュリアスからネチネチ怒られるルイは、ローズにほとほと困っていた。
「はぁ……まったく……何の為のローズ様付き従者なんだ!!……また…勝手に屋敷から抜け出していなければいいが……直ぐに見つけ出し、レッスンに間に合うよう連れ戻しなさい!!」
「畏まりました」
***
「あれ??ジョイだ!!こんな所で何してるの!?」
ジュリアス達が必死に探しているとも知らないで、呑気なローズがギユウに会いに行った帰り道、公爵家の敷地内で ばったりとジョイと出会した…
「おい!!むしろ、お前が一人で何してるんだよ!!また、勝手な事して!!さっき、ジュリアス様達が探してたぞ!!」
「げっ。ヤバっ!!!だ…だけど、会って直ぐお説教する事ないじゃん!!しかもココは自分の家なんだから自由にしたっていいんだよ!!」
ローズの顔を見るなり顔を顰めて小言を言い出したジョイにローズも頬を膨らませて反論する。
「嘘つけ!!ぜってぇ皆んな心配してるぞ!!賭けたっていいぜ!!」
「ぐっ……」
(鋭い奴め!!しれっと人の質問は無視して、こちら側を窮地に追いやるとは…ジョイ…おぬし…中々やるな……)
何者目線なのかはよく分からないが、ローズがジト見でジョイを見上げていると、ふとある事を思い立った!!
「そうだ!!ジョイ!!ジョイを見込んで頼みがあるんだけどいい!?」
「あ??なんかスゲー嫌な予感がするんだけど……お前…危ねぇ事なら手を貸さないぞ!!」
「う〜ん…大丈夫だと思う……優しい子だから…」
ジョイは、ローズのお願い事と聞いて無意識のうちに軽く後ずさってしまっていた……
ローズは、危ないかどうかを考える素振りは一応 見せながら答えたものの、ローズの出した答えに、ジョイには全く理解出来なかった。
「はぁ……さっぱり意味が分かんねぇ……」
ジョイは、これ以上話してもきっと埒が開かないんだろうとローズと出会してしまった事を軽く後悔しながらガックリと肩を落としていたが、そんな事はお構い無しなローズは、自分の言いたい事だけをジョイに話し続ける。
「ジョイ!!明日のこのくらいの時間は暇!?公爵家の人達には秘密で確認してもらいたいモノがあるんだけど……」
「何だよそれ……なんかスゲー怖いんだけど…でも、まぁ……仕方ねぇな……!!断ってもなんか気になるし……」
更に嫌な予感が胸をよぎるジョイは、了承しても怖いし、今更 断ったところで逆に気になって、その後 何も手に付かなくなりそうな予感がするので、渋々だが了承する事に決めた。
「何それ!人聞き悪い……!!!まぁ、別にいいけど……そしたら明日のこの位の時間に、丁度この壁の向こう側で待ち合わせでも大丈夫!?」
「ぁあん???お前……また、勝手に外に出てるのか!?しかも一人で!!!」
少し落ち着きを取り戻していたジョイは、ローズの言葉を聞いた瞬間、落ち着いていた気持ちが吹き飛びローズの肩をがっしりと掴んで詰め寄った。
「ちっ……違うよ!!一人じゃないもん!!他にも居るから!!」
(ギユウだけど……)
「誰だよ!!あんまり気安く人と付き合うなよ!!危ないだろ!!変な奴だったらどうするんだよ!!」
ローズはジョイのあまりの剣幕に、自分の失言を察知し、フォローしようとするが これが全くフォローになっておらず更に火に油を注ぐ事になっていってしまう……
「大丈夫だよ!!凄くいい子だし!!危険かどうかはジョイが明日会って確かめて!!ねっ!!」
「おぉう…!!なんだよ……何か…本気で怖いんだけど……ルイにも秘密なのかよ!?」
ジョイは自身の身の危険を感じて、仲間欲しさに普段は仲が悪く、あまり目も合わさないはずのルイを欲するが
「うん……ルイだと、何か問答無用で攻撃しそうだし……ジョイもこれだけは約束して!!絶対に無闇に攻撃したりしないでね……」
と言う、ローズの恐怖の発言により却下される。
「何だよ……それ……どんな奴なんだよ……」
ローズの意味不明な恐怖の説明に、ジョイは更にガックリと肩を落としながら返って行き、次の日の事が不安過ぎて眠れない夜を過ごす事をローズは知らなかった……
………
ジョイと別れて屋敷に戻ったローズは、クロード達の執務室を訪れ、庭を散策中に偶然出会ったジョイと、明日 2人で遊ぶ約束をしたことを伝えると、当然のようにルイもついてくると主張してきた。
だがローズは、明日はどうしても2人だけで会いたいのだと頑として譲らず、ルイがついて来ることを拒むと、ルイはムッとした表情を浮かべながら黙り込み、クロードには微妙な顔をされるのだった……
ジュリアスは、人を殺しそうな程の殺気を放っていたが、そんなにジョイは頼りにならないのかと、ローズは見当違いな思いを巡らせ、危険は無いし大丈夫だろうとクロード達の思いなどは、まっると無視を決め込んだ。
そして次の日、何故かローズとの約束の時間よりも早く屋敷に呼び出されたジョイは、クロードとジュリアスが居る執務室に案内されると静かに中に通された。
何故か殺気を放ちまくっている彼等に、ジョイは意味が分からず視線を彷徨わせていると
クロードが目を通していた書類を机の上に置き、すっと立ち上がりジョイの目の前までゆっくりと歩いて来るとジョイの耳元に顔を寄せ
「今日、ローズと2人きりで会うらしいが、ローズに何かしようとしたら殺すからな」
と、普段より3倍は低い声で言われ、後ろから輝くような笑顔のジュリアスに肩を叩かれた。
ジョイは心の中で
(クソっ!!アイツ絶対余計な事を言いやがったよ!!だいたい皆んなには秘密って言ってなかったか!?)
聞いた話と全然違う事に、こめかみをピクつかせるが、クロード達の言い知れぬ圧に押され、何故だか分からないが早鐘を打ちまくりだした心臓を必死で抑えると、何食わぬ顔を装って
「勿論です!!ローズ様の嫌がる事は一切致しませんし、指一歩触れません。命に変えても必ずお守りします!!」
と恭しく頭を下げると逃げるように退出して行った。
そのまま怒りを足元に込めながら 普段よりも少し強めの足取りで、急ぎローズの部屋へと向かって歩いていると、同じく苛ついた雰囲気で殺気を放ちまくっているルイとすれ違った。
すれ違う瞬間、ルイの整った綺麗な顔で睨み付けられ舌打ちされてしまったジョイなのだが、さっきまでの不機嫌さが嘘の様に晴れ、軽く片側だけ口角を上げると、勝ち誇ったような顔をルイに向け そのまま先程とは違う軽い足取りでローズ部屋へと消えて行くのだった。
その場に一人残されたルイは、一層顔を顰めると強く拳を握り締め暫くの間その場から動けなかった……
***
「あれ??ジョイ!!??壁の向こうで待ち合わせしたのに迎えに来てくれたの!?」
「おい!!誰のせいだと思ってんだよ!!ったく……」
ジョイの心労など気付きもしない能天気なローズに呆れたジョイは、ブツブツと悪態を吐きながらローズのオデコにデコピンする。
その瞬間 ジョイは、あっヤベ!!触っちまった と、軽く焦り何故か周りを見回してしまうが、誰も見ていない事にホッと胸を撫で下ろしローズを連れて庭へと歩き出した。
***
「ごめん!!ジョイ!!大変だった!?」
「別に自転車があったからそうでも無かったけど、やっぱり森の中だと運転しづらいな!!でも、貸してくれてありがとな」
一緒に公爵家の外へは出られないローズは、ジョイに自転車を貸し、自転車で外へと出てもらい自分はこっそり穴から出る事にして塀の外で待ち合わせた。
「って言うか、俺一人で自転車に乗せてお前は一体、何処から来たんだよ!!」
何故か軽くキレ気味のジョイがローズにツッコむがローズはしれっと「あぁ…ココ!!」と自分の後ろの塀を指さした。
「あ??おっ!!こんな所に穴が空いてる!!
おぉい……公爵家……しっかり管理しろよ………!!
お転婆小鼠が出入りしてるぞ!!まぁ…穴が小さいから子供くらいしか通れなさそうだけど…」
ジョイは、ローズの指差した壁を目を細めて凝視すると壁の下の方に空いている穴を見つけた。
国で一番の公爵令嬢がこんな所を這いつくばって外へ出る為に通り抜けてるなんてと呆れを通り越して軽く尊敬でもしそうな自分の気持ちを持ち直しながら、ローズを大切に思う公爵家の人達に、コイツを監視したいならネズミ1匹通さない管理体制を引かないとダメだと、どこぞの監獄よりも厳しい監視を求めるジョイに、呑気なローズは可愛らしい笑顔を振り撒いた。
「ちょっと!!ジョイ!!酷いよ!!!ふふっ。でも…内緒だよ!!」
「はぁ……内緒だよ!!じゃねぇーよ!!まったく……このお嬢様には本当困っちまうよ……」
少し腰を曲げて人差し指を唇に当てる可愛らしいローズに、口では素っ気ない態度を取るがジョイの耳が見る見る内に真っ赤になっている。
「ふふっ…よく言われる……!!」
「言われてんじゃねぇよ!!で??何なんだよ!?」
まだ何も確認していないのに、既にどっと疲れているジョイは、もう、どうにでもなれと半ば諦めた様にローズに問いただす。
「あのね……今から会わせるけど何を見ても絶対に攻撃しないでね!!約束だよ……」
「あぁ…分かったけど……何なんだよ……本当 怖ぇよ……」
そう言いながらローズは、完全に怯えているジョイを連れてギユウの所まで歩いて行く。
道なき道を慣れたように進んでいくローズに無言でついて行ったジョイは、渋々歩いていると、目線の先に木の枝などで作られた小屋のような物を発見した。
「あれか??」
「そう!!あの小屋の中に居るんだけど、あの小屋も私が作ったんだよ!!」
「お前。本当…公爵令嬢なのに何やってんだよ!!」
そう呆れたように言いながら小屋の少し手前までたどり着いたジョイとローズは、その場でジョイを待たせると、ローズだけが先に小屋の前まで行きギユウに声をかけた。
「ギユウ来たよ!!今日は、私のお友達も連れてきたんだけど、仲良くしてくれる!?」
「グッギュー!!」
「なっ!!!」
元気よく鳴き声を上げながらローズに抱かれて出てきた生き物を見てジョイは驚愕に目を見開いた。
だがギユウに夢中で、そんな事には気が付かないローズは、尚も子供を諭す母親のようにギユウに話しかけている。
「そう良かった!!じゃあギユウも絶対、攻撃したらダメだよ!!分かった!?」
「キュウ!!」
そう言いながら楽しそうにローズが抱き抱えて近づいて来た生き物から視線は逸らせずにいるジョイは、どんどん自分に近づく生き物に、怯えた様に数歩 後退ると後ろにあった木の根に引っかかりそのまま尻餅を着いてしまう……
「おま……それ……」
尻餅をついてしまったにも拘らず、それでも視線を外せないジョイは、完全に同様を隠せない様でローズが抱いている生き物を指差し言葉にならない声を出している。
「やっぱり、魔獣なの……この子……凄く優しいんだよ。
ねぇ…屋敷に連れて行ったら怒られる??危険かなぁ!?」
その瞬間、ジョイは怒りなのか怯えなのか自分でもよく分からないが ワナワナと震え出すと……
「危険なんてもんじゃねぇーーーー!!!」
ジョイの絶叫が森の中に木霊した……




