4 移動手段を考えよう 3
「ローズ様!!!試作品を作って来ました!!」
話し合いから1ヶ月程経ったある日、試作品の自転車を弟子のブラットに引かせながら嬉しそうにローズに手を振る ベェータとオットーが公爵家を訪れた。
今日は試しに試作品の自転車に乗ってみる為、公爵家の玄関から門までの広いスペースでベェータ達と待ち合わせ、そこで試乗する予定なのだ。
クロード達もローズが考えたと言う乗り物を一目見たいと、わざわざ玄関先にテーブルや椅子などを用意させ、優雅にお茶をしながら彼等を待っていた。
流石、貴族!!高みの見物である……
ベェータ達が持って来たのは、本当に日本のママチャリのような自転車でハンドルのグリップ部分にブレーキレバーまで、きちんと付いている本格的な物だった!!
「わぁーーーすごい!!!本当に自転車だ!!
これ…私の考えていた通りのものです!!!お二人とも凄いです!!」
ローズは興奮が抑えきれないようでブラットの持っている自転車を覗き込むようにして何度も何度も確認した後、ベェータとオットーの手を取り喜んだ!!
何故かその姿を横で見ているだけのブラットが顔を真っ赤にしているようだったが……
そんなブラットには全く気付かずに喜んでいるローズに相反して、近くでお茶を飲んでいるクロード達の視線を痛いほど感じたブラットは直ぐさま姿勢を正し真顔に戻る。
「……ありがとうございます………ただ……一応、出来上がったので、私共の方で一応乗ってみたのですが誰一人として上手く乗れませんでした……」
「ですが…一応持ってきて、乗って頂いてから何処がダメなのか一緒に考えようと思いまして…今日お伺いした次第です…」
少し申し訳なさそうに報告し項垂れるベェータの隣で、ブラットが引いてきた自転車をローズに差し出しながらオットーが改善点をローズに問いかけた。
「分かりました!!早速、乗ってみます!!!」
そう言ってベェータ達から自転車を受け取ると、ローズは自転車に跨ってみた。
思ったよりも少し高めなので少し自転車を横に倒して跨るとペダルに足をかけて、転生してから初……前世からも数年ぶりの自転車を漕いでみる。
『なっ!!!!』
その瞬間…その場に居た全員から、驚愕の声が上がった……
「わっ………動いた!!凄ーーーーい!!自転車だーー!!!完璧ですよーーー!!」
ローズが喜び!叫びながら!自転車のペダルを漕いでグングン進んで行くのを皆が呆然と眺めている。
そのまま玄関から門までを何周かしたローズは驚愕に固まる皆の前で軽快に自転車を停めると
「ベェータさん!!オットーさん!!完璧です!!凄く乗り易いし、想像以上です!!!」
瞳を輝かせて喜んだ!!
「はっ!!!???えっ!!??ちょ……ちょっと待ってくれ!!どうやって乗ったんだ!?俺らの時は全く乗れなかったぞ……」
何度やっても全く自転車に乗れなかったベェータ達は、このままでは埒があかないので、とりあえず一度、公爵家に持って行ってから改善点を考えようと話し合いローズの元に訪れた。
だが、ローズが乗り出した瞬間、想像以上の走りを見せた事に彼等は驚きを隠せなかった。
それは側で見ていたクロード達も同じで、縦に真っ直ぐ付いた車輪の上の椅子に跨って下に付いているペダルを足で回して走るローズを見つめながら、自分達は一体……今、何を見ているのだろうと理解が追いついていないようだった。
そんなものに乗れるローズもだが、そんな乗り物を考えついた事自体も理解出来ずに誰一人として言葉を発する事ができなかった。
そんな中……
「俺も乗ってみたい!!」
ローズが面白い物を作ろうとしてると言う噂を聞きつけたノアが、ギルバートにくっついてファルスター公爵家に来ており、周りの空気など完全に無視して意気揚々と手を上げだした。
「あっ!!いいですよ!!ノアなら直ぐに乗れるようになると思います!!そしたらアルベル父様、ノアがスピードに乗って安定するまで、この後のリアキャリアの部分を持って支えながら一緒に走れますか!?」
ローズはなんて事無いように軽く答えると、乗っていた自転車から降りノアに手渡した。
ノアが使うには少し小さめな自転車に見様見真似で跨ったノアに少し可笑しくなるが、アルベルトに補助をお願いする。
「んぁ!?……おっ……おう………いいぞ!!」
アルベルトはよく分かっていないようで戸惑いつつもノアが乗っている自転車のリアキャリアの部分を持ち支え出した。
「アルベルト様ーーー行きますよー!!!」
アルベルトの戸惑いなど全く気にしないノアは、軽快な掛け声と共に自転車を漕ぎ出した。
「おっ……わっ……おつ………おぉ〜〜〜!!」
アルベルトに支えらているにも拘らず上手く安定出来ずにふらふらと自転車が蛇行する。
「ノア!!下向かないで、真っ直ぐ遠くを見ながら漕いで!!」
ローズは自転車に乗る時の初歩的な教えをノアにすると、今までハンドルに気を取られて下を向きがちだったノアが顔を上げて前を見出した。
「了……解!!……あっ……行けるかも……」
その瞬間、今までふらついていたノアの運転が安定し出して真っ直ぐ進むようになってきた……
「……アルベルト様…行けそうです。手放して見て下さい!!」
スピードに乗って安定してきたノアを確認したアルベルトはローズと目配せすると、そっと手を離した。
「あぁーーーーほら!!乗れた!!ローズ様!!!見てーーー!!乗れた!!凄い!!楽しい!!!」
元々、運動神経がいいのか、ノアは直ぐに乗れるようになり、楽しそうに自転車を乗り回す。
それを見ていたクロード達も徐々に自転車と言う物に慣れてきたのか、自分達もと乗りたがり、数時間も経たないうちに自転車に乗れるようになった彼等は、自分で漕いで軽快に進む自転車を気に入りベェータ達に自分達の分の自転車の制作を頼むのだった……
ベェータ達は自分達が何度乗ろうとしても全く乗れなかったのは、自転車ではなく自分達に問題があったのだと分かり、自転車がきちんと動く事は嬉しいが、自分達だけ乗れない事になんとも言えない微妙な気持ちになるのだった……
こうして、ローズの欲しかった念願の自転車が手に入りローズはご機嫌で部屋に戻るのだった。
だが、ルイだけは自転車なんて物をローズに与えてしまった日には、好き勝手に行動し何処に行かれるか分かったもんじゃないとこっそり頭を抱えるのだった……
自分も楽しそうに乗ってたくせに……




