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1 ローズの悩み



 ローズには、今…悩みがあった…


 公爵家の養女になって6年が経ち、12歳になったローズは、美しく成長し、ピンクパールの緩くウェーブががった波打つ髪は、腰の辺りまで伸びて綺麗に整えられている。

 顔立ちも少しスッキリと大人びてきていて、ブルーサファイアの大きな瞳が、より一層 際立っていた。


 だが、ローズが一番欲いと思っている胸の成長はまだ見られず、まさか……と、前世の残念な姿を思い出し、愕然とした日々を送っているのだが、今の悩みはそれでは無かった!!



 …………それは…………移動手段である!!!



 どこへ行くにも仰々しく馬車移動になるので物凄く動き辛いのだ!!


 だからと言って町へ行くにも徒歩だと遠いし、馬はまだ、一人で乗るには少し怖い……


 本来は、気にする必要などないが、御者の予定や準備の手間などを考えてしまうローズは、どうしても気軽に動くことができなかった……


「ゔ〜〜〜ん……!!何かいい方法は、ないかなぁ…!?」


 一人唸りながらブツブツと何かを呟いているローズに、17歳になったルイが背後から近づき


「どうした?ローズ…….突然、唸り出して……!!腹でも痛いのか!?また、その辺で変な物でも食ったんだろ!!」

 

 と、ローズの事を覗き込むように上から目線でデリカシーの無い事を言い放った!!


「ちょっと。ルイ!!!レディに向かってなんて事言うのよ!!お花を摘みなんて行きたくないし!お腹も減って無いよ!!大体……ちょっと前に庭の花の蜜を舐めただけなのにいつまも大袈裟に言って!!他の人が聞いたら誤解するでしょ!!」


 少し前に、動物達の世話をしながら庭に生えていた花の蜜を動物達と一緒に舐めているところをルイに見られて以来「お前は獣か!!」と馬鹿にされて続けているローズなのだが……

 ローズ的には、日々の厳しいマーナのレッスンの先生の教え通り「貴族の娘は軽々しく、トイレと言ってはいけません!!」と言うのを忠実に守りつつ、着実に貴族令嬢に近づいてきていると自信満々であるにも関わらず、ルイは完全に馬鹿にしたように鼻で笑うと

「フッ…ハッ!!何処にレディが居るんだよ!!居たら紹介してくれ!!」

 そんな事を言いながらローズのオデコをピンと突いた。

 ローズは突かれたオデコを慌てて押さえながら頬を膨らませると


「むっーーー!!居るじゃんここに!!どっからどう見ても立派なレディじゃん!!領地でもファディル・ファルスター公爵の娘はキレイだって有名なんだから!!」


 と、ルイをジト見で軽く睨むが、尚も勝ち誇った様なルイの手のひらで転がされているだけだった


「お転婆過ぎて目が離せないの間違いだろ!!お前が町に行くだけで、何しでかすか分からないから、皆んな仕事そっちのけでお前から目が離せないなくなってるじゃないか!!それは見惚れてるって言わないからな!!ただの営業妨害だ!!」


「ぐっ………!!」


(悔しいが言い返せない……町に行った時にちょっと噴水に落ちたりしただけなのに……この世界の人間は大袈裟なんだよ!!)


 何も言い返せなくなったローズを、ニヤつきながら上から見下ろしているルイは、体つきも逞しくしっかりしてきていて大人の男性に近づきつつあった。

 この世界では成人を迎えたルイは、少し成長したものの、未だにお転婆で目が離せないローズをいつも揶揄う。

 ルイは、日増しに美しく成長するローズの姿に戸惑いを隠せずに、そんな自分を誤魔化すように、いつも余計にローズを揶揄ってしまうのだった……


 そんなルイの思春期特有の微妙な男心など全く理解出来ないローズは、馬鹿にされている事も忘れ、一人呻き声をあげながら悩んでいると「あっ!!!」と、突然大声を出すのだった。


 ローズの突然の大声に思わずビクついてしまったルイは、慌ててローズを見返しすと


「そうだ!!いい事思い付いた!!!急いでお母様に伝えないと!!!」


 何かを思いついたローズは、一人嬉しそうに紅茶を飲み出しながらニヤついているので、何か良からぬ事を思い付いたんじゃないかと一抹の不安を覚えるルイだった……



***



「お母様!!お帰りなさい!!ライカーさん達をお借りしたいんですが、何時だったら都合がいいか確認とって貰えますか!?」


 エリオットが帰宅したとの知らせを受けて、エリオットの部屋へ突撃したローズは、部屋へ入るなりエリオットに抱き着いてそんな事を言い出した。

 ライカーとは以前エリオットから譲渡された商団の人間の一人で初めにローズに挨拶をしてくれたキツネ顔の男性の事だ。

 他にもジオとキースと言う、見た目が20代の男性が居てローズの商団のやり繰りをしてくれているが、それぞれの得意分野が違っていて

 キースがドレスや装飾品などを得意としており、ジオが魔道具や日用品に特化している。

 それを、全般的に何でも熟るライカーが取り纏めている。

 ライカーは元々商団内でもトップレベルでやり手だったようで基本1人でも事足りるが、エリオットの愛する娘のローズに不備があっては困るとライカーと元々親しいキースとジオを下に付けたらしい。


 ローズは自分の為だけに人員を割いて商団を作るなんて、申し訳ないと思っていたが、このままローズが成長すれば、いずれは商団ごとローズのものになるので、ライカーさんは将来自分が商団のトップに立てるのだと嬉しそうにローズに仕えてくれている。

 ローズが商団を必要としていない時は、勿論、エリオットの商団全体の仕事もしているので、ローズを一番に考えるがローズが必要としないからと言って暇を持て余している訳では無さそうだった。


 あまり自分の商団など使う必要はないと思っていたローズだが、季節ごとの洋服屋の買い替えやローズの身の回りの必要な物は殆ど彼等が用立ててくれている為、

 結局、2、3ヶ月に一度は会う必要があり、初めは緊張していたローズも今や彼等には慣れたものだった。


「あら!?ローズちゃんから呼び出すなんて珍しいわね!!彼等はローズちゃん専用なんだから、いつでも大丈夫よ!!明日にでもこっちに来させるわ!!!」


「ありがとうございます!!」


 そう言ってエリオットにお礼を言うと、もう用は済んだと言わんばかりに部屋から退出し、ルンルン気分で軽くスキップしながら部屋へ戻るのだった……


 その後ろを、ローズの行動の意味が全く理解できないルイは、ローズのご機嫌な様子に言い知れぬ不安を覚え……未だに冴えない表情で静かに着いていくのだった…



………



 ご機嫌で部屋に戻ったローズは、早速 机に向かうと、数枚の紙を取り出し、その紙を使って悩みながらも何かを必死に書き込んでいる。


 ルイは後ろからそっと覗き込んでみたものの、ローズが何を思い、考えながら、真剣に書き込んでいるのかが全く理解出来なかった…


 ルイの得体の知れない不安な思いが冷めないまま夜は静かに更けて行った……




***



「おはよう御座います!!ライカーさん!ジオさんにキースさんも!!今日は、お願いしたい事がありまして、わざわざ早くからありがとうございます!!」



「おはよう!!ローズ様!今日も元気いっぱいだね!!」


「はい!!!元気が漲っています!!」


 ローズ力瘤を作りながら発したその言葉に、ライカー達が笑い、和やかな雰囲気の中、皆で応接室のソファに腰掛けるが、ルイに入れてもらった紅茶を皆が一口飲んだところで、ローズが突然、突拍子もない事を言い出した。


「それで今日、お呼びしたのは馬車を作っている方を紹介して頂きたいからなんです!!」


「馬車!?……ローズ様……馬車が欲しいなら私共に言って頂ければローズ様専用の馬車を作らせますが……」


 公爵家の豪華な馬車が何台もあるのに、何故…12歳の少女が馬車を欲しがるのか全く理解出来ずに、困惑気味なライカーがローズに新しい馬車が欲しいなら自分達が手配しますと提案するが、ローズは真剣な顔で首を横に振りながら


「いえ!!馬車が欲しい訳ではなくて、馬車を作っている方に、他の物を作って頂きたいんです。それのお願いと、説明を自分で直接したいので!紹介して頂けますか!?」と力説しだした。


 それを聞いたライカー達はますます困惑し、馬車を作る人間に少女の欲しがる物など作れるのかと混乱するも、一応、ローズに提案してみる。


「は…い……分かりました……とりあえず、公爵家の馬車などを手掛けている車大工の方がいらっしゃいますので、その方に此方へ来るように伝えておきます!!その時はまた、私共も御一緒しますので宜しくお願い致します。

 ですが、車大工ですよ!洋服やアクセサリーとかは作れませんが大丈夫でしょうか!?」


「クスクス。。。大丈夫ですよ!!そんな事は望んでいません。

 車大工の方と会えるのを楽しみにしていますね!!」


 不安そうなライカーの言葉にローズは可笑しそうに笑い、手配してくれる事に喜んでパッと顔が華やいだが 依然、表情の冴えないライカーがローズに釘を刺す。


「ただ……車大工の方は職人気質で少し気難しいところがあるので、ローズ様がご気分を害される事もあるかと思うのですが大丈夫でしょうか!?

 やはり何かあるなら私共が伝えますが……」


 公爵家お抱えの車大工は自分の技術に誇りを持つ、昔気質の職人なので、言葉もきつめで自分の認めた人間で無ければ仕事はしないし、誰に対しても振る舞いも乱暴になりがちだった。


 そんな人間に公爵家の御令嬢を会わせて何か失礼があったら大変だし、ローズは本当に大丈夫なのかとライカー達は不安を覚えるが


「全然、大丈夫ですよ!!そう言うの気にしないので!!」


 全く気にした素振りもないローズは明るく返事をする。

 皆が一抹の不安を感じる中、一人、ご機嫌なローズは(いつ会えるなぁ……)と呑気な事を考えながら、嬉しそうに紅茶を飲んでいるのだった。


 仕方がないので、そのままライカー達は折角来たからと、新しいドレスを数点ローズに試着してもらいその日は終了していった……


 その日の夜、話を聞いたエリオットがローズに「何をするつもりなの!?」と楽しそうに聞き出すが、ローズは「出来上がってからのお楽しみです!!」と唇に人差し指を当てて内緒のポーズをしたので、可愛さのあまり、皆が倒れそうになったのは彼等だけの秘密であった……


 こうして3日後に車大工との顔合わせが行われる事となっていった……


ライカー  79歳   175㎝


 薄茶色の髪の毛 細い深緑の瞳で笑うと目が無くなる優しそうな細身の男性


 頭の回転が早く商団内で1.2を争うやり手


 魔力はオールマイティーで得意な物は限定せずに何でも使いこなす。


 イマイチ本心が読めない男性である。


 

ジオ  74歳   178㎝


 黒髪、黒目の少しポッチャリの大柄の男性だが争い事はあまり好まない。


 魔道具や家具、日用品などを得意としていて、商団に入る前からライカーとはよく一緒にいた腐れ縁。


 魔法は土と水を得意としていて、休みの日は植物を育てて癒されている。

 

キース  68歳  169㎝


 グレーの髪に青い瞳の小柄の大人しそうな男性だが

商団内では一番喧嘩っ早い。


 ドレスやスーツ装飾品を得意としている。

 

 魔法はオールマイティーで旅の途中で魔物などに出会すと真っ先に排除する見た目とギャップが激しい男性。

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