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ローズの日課


 ローズの日課と言えば、天気の良い日は外でアスレチックや日向ぼっこなどをして過ごすのだが、最近はもう一つ増えていた。


 それはアルベルトに誕生日に貰った、動物達の世話である。

 基本的には、アルベルト達の馬を管理している調教師が常駐しており、動物好きな彼はローズの動物達が居る厩舎の管理も一緒にしてくれている。

 だが、ローズは自分にプレゼントされた生き物なので、厩舎へ偶に行って動物達とただ触れ合うだけではなく、自分で、きちんとお世話もしたいと言い出した。

 それから毎日、朝食後に厩舎を訪ねて小屋の掃除や餌やりなどを手伝い、それぞれに名前を付けて可愛がり、動物達と触れ合っていた。


 飼っている動物の種類は、まず真っ白い子馬のアレキサンダー、羊のメリーさん、薄い茶色のウサギのピーちゃん 鶏のコッコとクック、コッコは雌で卵を産むので、その卵を厨房に持って行くのもローズの仕事だった!!


 今朝も、朝食を終えたローズは急いで動き易い格好に着替えると、ルイを連れて獣舎に向かっていた……


「おはよう御座います!!モランさん!!」


「おはようローズちゃん!今日も元気だね!!」


 調教師のモランさんは少し年配の優しそうなオジ様でクロードの父親の代から馬の管理をしてくれているベテランさんである。


 そんな人に動物達のお世話を任せるのも忍び無いがモランさんも様々な動物と触れ合うのを結構楽しんでいるようで、世話をしながら笑顔で動物達に話しかけたりする心の優しいオジ様だった。


「はい!!今日も元気いっぱいです!!厩舎の皆んなは元気ですか!?」


 そう言いながら、厩舎の中へと入ったローズはいつもはいるはずの動物達が見当たらない事に首を傾げた。


「あれ???アレキサンダーとコッコちゃん以外居ないですけど……他の子達は何処にいったんですか!?」


「あぁ……今みんなは病気等しないで順調に育っているかの検査をしているところだよ!!アレキサンダー達は、また後でするから今はお留守番だ」


 モランはアレキサンダーをブラッシングしながら心配ないよとローズに説明する。


「そうなんですね!!」


 この世界にも獣医師みたいな人達がいるのかと、ローズが一人感心していると、アレキサンダーのブラッシングを終えたモランが


「それじゃあ厩舎の掃除が終わったらアレキサンダーに乗って乗馬の練習も兼ねて散歩でもしようか!?」


 そんな楽しい提案をして来た。


「わぁーーい!!よし!今日も頑張って掃除するぞー!!」


 ローズは張り切って床に散らばる飼い葉や排泄物を綺麗に片付けていく。


 モランは初めてローズが動物のお世話を手伝うと言い出した時、どうせ、貴族の人間がするお世話など動物達を撫でたりしてお終いだと思っていたが、公爵家の令嬢が本当に汚い厩舎のへ入り、汚れる事も厭わずに厩舎の中の掃除をやり出した時に、言葉通りきちんとお世話をしに来たのだと驚き、同時に後で知ったクロード達に怒られると必死に止めたのだが、ローズは自分の為に買って貰った生き物なんだから自分で世話するのが当然だと譲らず、嫌な顔一つせず楽しそうに動物達に話しかけながら厩舎を綺麗にしていった。


 その知らせを受けて急いで駆け付けたクロード達もその光景を驚愕して見ていたが、ローズの意見に感心し、それからは毎日ローズが世話をするのを黙って見守ってくれている。


 まぁ 普通、貴族女性は部屋の掃除は疎か自分の支度すらしないので驚くのは無理ないが……

 それどころか仕事でもなければ平民の男性でも嫌がりそうな事を、楽しそうにするローズの責任感の強さと、生き物に対する真摯な気持ちに皆が感服するばかりだった…


 自分の馬をとても大切にしているアルベルトとギルバートでさえ厩舎の掃除はした事が無かったので知らせを受けて駆けつけた当初はローズの生き物に対する姿勢に衝撃を受けて、自分達の浅はかさに軽く落ち込んでしまうほどだった……


 それからは彼等も時間がある時はローズと一緒に掃除をしたり自分達の馬にブラッシングをしたりする様になっていった。


 これにはモランも驚きが隠せずにいたが、アルベルト達の馬も嬉しそうだと、今ではとても喜んでいる。


 厩舎の片付けが終わり、アレキサンダーを撫でながら「綺麗になって嬉しい!?」と笑顔で語り掛けると、アレキサンダーもブッルルンと一度鼻を鳴らし答えるような素振りを見せる。

 ローズは、その姿をクスクス笑いながら「良かった!!」と言いアレキサンダーを愛おしそうに仰ぎ見た。


 そのままアレキサンダーを連れてパドックへ向かい、モランに手伝ってもらいながら跨るとアレキサンダーはモランに引かれながらゆっくりと歩き出す。


 その間、ルイはパドックの近くで朝の鍛錬を行なっている。


 アルベルトが居ればアルベルトに稽古をつけて貰ったり、たまにクロード達も稽古をつけてくれたりする。


 まぁルイの稽古と言うよりは、殆どローズを見守るための口実だったが……



「アレキサンダー!!楽しいね!!アレキサンダーも楽しい!?」


 ローズがアレキサンダーの首元を撫でながらそう問いかけると、アレキサンダーも心なしか楽しそうで、軽快に歩みを進める。


 ある程度 乗馬を楽しんだ後は、お昼の時間が近くなるので一度部屋に戻ってドレスに着替え直す。


 ローズは別に動物達をお世話する時の格好のままでもいいような気がするが、貴族女性はそれではダメらしい……


 ローズが部屋に戻り着替えて髪の毛をセットすると、お昼の時間になるので、その時に居るメンバーと昼食を取り、その後はいつものようにアスレチックをしたり、読書をしたりして過ごしていたのだが、養女になり、王城へ出向いてからはキャロラインから送り込まれた、先生達によるマナーのレッスンと勉強が組み込まれるようになっていった……


 だが、何せ前世で高校生をしていたローズは、この世界の歴史の勉強以外は何の問題もなく、教わる必要もなければ、逆に教えてあげられそうな事まであったほどだった!!

 なのでローズが行う勉強は全く分からない、領地や国、諸外国の情勢などに力を入れる事になっていった……

 これには先生方をはじめ、クロード達も驚いており、先生方は近年稀に見る天才が現れたと、興奮し、急ぎ国に報告してしまうなどの暴挙に出でしまい、先生から話を聞いたキャロラインは直ぐにローズに手紙を送り

[ 貴方はやっぱり私の認めた女性ね!!早くローズと家族になりたいわ ]

 などと言う内容の手紙を紙5枚を使う長文で送ってよこした……


 国王のクレイブは、今の教師ではなくて国一番の学者を付けると言い出し、さっさと話を纏めると、その次の月からは少し年配の頭の良さそうなおじ様が先生となる事になっていった……


 ローズは、本当は前世の知識がちょっとある中身平凡女子なのに、過度な期待は止めてくれと本気で困り、勉強の事を考えるだけで、本来とは違った意味で憂鬱になるのだった……

 

 そんな天才ローズもマナーだけには手こずっていて、所作の一つ一つをとっても とても難しく、思うようにいかない事が多々あるようだった。


 先生はとても厳しい先生だったが、ローズが一生懸命に取り組んでいる姿勢を見ているので、愛情を持って接してくれ、ローズが思うように出来なくても、根気よく真摯に付き合ってくれていた。


 そうこうしているうちに気が付くと、夕食に近い時間になっている事が多いので、またもや着替え、晩餐へと向かう忙しい日々を送っていた……


 毎日、庭で遊んでいた少し前の暇な日々が懐かしく思えるローズだった…




***




 今日の晩餐は珍しく皆が揃っていてジュリアスに抱えられてローズは席に着く。


 クロードの「では皆で頂こう」を合図に各々が食事を始めたところでアルベルトの声が響いた。


「どうだ、ローズ…美味しいか!?」


「はい!!おいしです!!」


 今日の晩餐のメニューは、季節の野菜を使ったサラダ、ウサギの肉を使ったトマト煮込みとレバーペースト、鶏肉と魚のソテー、焼き立ての自家製パンと季節のフルーツを使ったデザートだ。


 ローズはスープを口に運びながら美味しそうに答えるとアルベルトも満足そうに頷きながら


「良かった!!ピーちゃんとクックも喜んでるな!!」


 と爆弾を投下した……


( はっ???何でピーちゃんとクック……………………!?


   えっ………はっ………….…まさか………!!!)



 ローズは今日の夕食のメニューを思い返した……


(ぎゃーーーー!!!やめてよーーーー!!!

なに……!!!何なの!?まさか今……口にしたのって………嘘でしょ…………私……まさか……ピーちゃんを………………………やだ…………やだ……………

やだーーーー!!!どう言う事!!!自分で食べる為に大切に育てた訳じゃないのに!!!!検査ってこう言う事!?順調に育っているかって………食べる……為に…………あっ……ヤバい……涙が………)


「あら??ローズちゃん…どうしたの!?」


 ローズが掬い上げたスープを見つめながら瞳を潤ませているとエリオットが不思議そうに声を掛けてきた。


「泣くほど美味いんじゃないですか!?さっき腹減ったって言ってたから!!」


(ルイ……違ーーーう!!!デリカシー!!!お腹は減っている……減ってるけれども……何!?この人達……全く何とも思わないわけ??)


 ローズは異世界人との考え方のギャップに全くついていけなかった……


(いや…まぁ……日本でも家畜を育てて食べる事は知っている……知っているが……まさか自分の誕生日プレゼントに送られた、しかも名前を付けて可愛がっている動物達が、ある日突然…自分のお腹に収まるとは誰が想像できるだろうか……)


 ただ、ローズはこのまま食べずに廃棄されるのも嫌なので、結果として必死で食べ進め、いつもよりも多く食べる羽目になり、

 それを見てクロード達は、やはり自分で育てると食べる意欲も変わるのだと感心していたが、ローズは心の中で(意味が違ーーーーーう!!!!)と叫んでいた……


 次の日、ローズが厩舎へ行くと、既に新しいウサギと鶏がそこに居たがローズは彼等と少し心の距離をとる事となり、

 後日アルベルト達にローズの飼っている動物達は今後もう食べませんと力説するのであった……


 クロード達は自分で育てた方が残さず食べるようになるので、いい事なのにと渋っていたが、ローズは決して譲らなかった。


 前世によく言われていた出されたものは残さず食べる心理を身をもって体験したローズは、その後も出された食事は残さず食べるを徹底する事になった、異世界流の食育勉強法だった。

 


モラン  380歳  身長172㎝


白髪混じりの焦げ茶の髪に茶色瞳の優しいおじ様


クロードの父親の代から馬の世話をしているベテラン調教師。


ローズを孫のように可愛がっている。



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