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オルゴール



 王宮で行われた晩餐会も終わり自室に戻ったローズは、昼間、町へ行った時に魔道具店で買って貰ったオルゴールのようなものをソファに腰掛けながら大切そうに眺めていた。

 そこへルイがそっと近づくと、ローズの横に腰掛けた。


「ねぇ、ルイ……この魔道具って名前とかあるのかなぁ!?」


「あぁ…それは、魔道具カリヨンって言うんだ!!!女性達の間では凄く人気だけど獣人達には少し値段が高くて持ってるヤツなんて殆どいないんじゃないか!?獣人や平民の女性には憧れの魔道具だよ!!」


 平民や獣人達の憧れる様な高価な物を、可愛いの一言で買って貰ってしまったローズは、未だに貴族としての自覚が無く平民意識が強い為、ルイの言葉を聞いてとても焦ってしまい……


「えっ??そんなに高いの!?普通に買って貰っちゃったけど良かったのかなぁ??」


「ブッハッ!!お前……この国でトップの公爵家だぞ!!そんな魔道具1つや2つ買ったところで、なんて事ねぇよ!!」


 「………そう……でした………」


 ルイに思い切り笑われ馬鹿にされたローズは、国一番の公爵家の養女になった事を思い出し、忘れていた貧乏性な自分に少し肩を落とした……


 だが直ぐに気を取り直すと、


「ねぇ、ルイ!!カリヨンだっけ!?試してみようよ!!」


「ぁん?……別にいいけど……」


(ふふ……そんな素っ気ない態度とってますけど尻尾がソファの上でパタついていますよ!!楽しみだったクセに……可愛いヤツめ!!)


 ローズはニヤつきながらもルイの膝の上にカリヨンを置いた。

 ルイはそんなローズの顔を見ると「チッ…」と小さく舌打ちしたが、そのままそっとカリヨンに魔力を込め出すと、次の瞬間、カリヨンの蓋が開くと、そこから金や銀色に輝く光が星の様に浮かび出し彼方此方に流れ出した。


 その輝く流星の下で男女が可愛らしくダンスを踊っている……


「うわーーーキレイだね!!これ流星だよね!?」


 今の時間が夜だと言う事もあり、薄暗い室内でより輝いて見える流星にローズはとても喜び、その綺麗過ぎる光景に心を奪われ見入ってしまっていた……


「あぁ……キレイだな!!」

 

 ルイも珍しく感動しているようでカリヨンをじっと眺めている……


「ルイの魔力はこんな感じなんだね!!素敵な魔力だね!!」


「……つ……別に……」


 ポツリと呟くように話しかけたローズの言葉に、ルイは照れ臭そうに答えるが、そうのまま2人は曲が終わるまで楽しそうに踊る男女を眺めていた……



***



 ルイとカリヨンを試してから数日が経ち、クロード達と公爵家に戻ったローズは自室で読書をしていた。


 今日は生憎の雨模様なので外にも行けずに暇を持て余していたからだ……

 すると、部屋の扉が開きエリオットが顔を出した!!


「あれ??お母様!!今日は、お仕事の日じゃなかったんですか!?」


 ローズは急いで本を閉じると、嬉しそうにエリオットの側へ駆け寄る。

 エリオットも近づいて来たローズを嬉しそうに抱き上げ、ローズが本を読んでいたソファまで連れて行くと一緒に腰掛けた。


「商団相手と打ち合わせがあったんだけど、この雨のせいで先方が足止めされちゃってね。

 日にちが伸びちゃったのよ……!!だから、ローズちゃんに会いたくて帰ってきちゃった!!今は、本でも読んでたの!?」


「そうなんです!!この本を読みながら領地の事など少しずつ勉強しています!!」


 そう言ってエリオットに見せた本は、ファルスター領の歴史が書かれている6歳の少女が読むには少し難しそうな本だった……


 だが、この国の文字は日本語と中国語が混ざったようなものなので、元々ある程度は理解出来ていた。

 公爵家で保護されてから一年程経った今では基本的な読み書きは出来る様になっていたので、最近は絵本だけでは無く、この国や領地の勉強も兼ねて、国や領地の歴史関係の本を読む事も増えてきていた。

 何せローズは元高校生なので、ふらふらと子供の遊びをしているだけでは、いい加減暇になってきたからだ……

 なので雨の日などは勉強も兼ねて、前世は全く読まなかった本を読む事にしていた。


 暇とは恐ろしいものである……


 ただ、あと数日もすれば、キャロラインから数人の先生方が派遣されて来るようで、ローズが暇を持て余すのもあと数日の辛抱であった…


 「小さいのにえらいわねぇ〜」

 

 と、純粋に褒めてくれるエリオットには、究極の暇潰しで、一周回って勉強したくなったとは、口が裂けても言えないローズだった……



…………


 

「あっ!!そうだ!!お母様もコレやりましょう!!」


 突然何かを思い出した様にエリオットにそう言うとローズは机の上に置いてあったカリヨンをエリオットに差し出した。


「あら!?懐かしいわね!!いいわよ!!」


 そう言いながらエリオットは横に居たローズをひょいと膝の上に乗せるとカリヨンに魔力を込めだした。

 わざわざ膝抱っこにしなくてもいい様な気もするが、今はそんな事よりもどんな風にカリヨンが発動するのかがローズは気になり、とてもワクワクしていた。


 するとカリヨンの蓋が開き、真っ赤な薔薇の花びらが舞い出した。

 薔薇の花びらがヒラヒラと舞う中で、男女の人形が踊るのを「うわ〜」と声を漏らしながらうっとりと眺めている。


「お母様!!!凄くキレイでしたね!!お母様の魔力、お母様らしくてとても華やかでした!!凄いです!!」


 エリオットの華やかな魔力に胸がときめいて仕方ないローズは手を叩いて喜んだ!!


「クスクス……喜んでもらえたようで嬉しいわ!!ローズちゃんは、将来どんなふうにカリヨンが開くかしらね!!」


「そっか!!自分でも出来るようになるんだ!!凄く楽しみです!!」


 エリオットのその言葉に自分も将来カリヨンを発動させる事が出来るのだと思い出し、いつか自分が魔法を使う事を想像し胸がドキドキと高鳴った!!


 するとそこへギルバートが顔を出し


「あれ?エリオット帰ってきてたんだ!!2人して何してたんだ!?」


 と、楽しそうに問いかけながら部屋の中へと入って来た。


「今、お母様とカリヨンを試していたんです!!ギルバート様もしてくれますか!?」


「あぁ…この前買ったヤツだな!!!いいよ!!こっちへおいで!!」


 ローズは、エリオットの膝から降りてギルバートの側まで行くと、ギルバートもローズの事を抱き上げエリオットの向かいのソファに腰掛けるとローズを膝の上に乗せカリヨンに魔力を込め出した。


(やっぱりそうなりますよね……!!何!?カリヨンと膝抱っこはマストなわけ!!??カリヨンに集中したいのに…なんか恥ずかしいんですけど……)


 そんな羞恥と戦いながらカリヨンに注目していると、蓋が開きパラパラと小雨が降りだした。

降り出した雨は下まで落ちずにカリヨンの蓋の上で溜まり、小さな湖のような物が出来上がった。


 カリヨンの蓋の上に小さな湖が出来上がると小雨が降る中、男女が浮き出て来て踊り出す。

 キラキラと小雨が輝き、湖にもその輝きが反射する中で男女が踊る幻想的な光景だった。


「ギルバート様!!凄いです!!!とても幻想的ですね!!」


 ローズはまたも興奮して、両手で胸を押さえて昂ぶる気持ちを落ち着かせている。


「そうだね!!ローズが気に入ってくれて良かったよ!!」


 ローズの可愛らしい姿にギルバートも嬉しそうに微笑んだが、何かを思いついたように一度、パンと手を叩いた。


「そうだ!!ローズ!!あとは誰がコレを試していないんだ!?」


「あとはアルベルト様とジュリアスだけですね!!」


「じゃあ夕食後にでも皆で集まって、残りの2人にも試して貰おう!!」


「それ良いですね!!凄く楽しみです!!」


 ローズはギルバートの提案にとても喜び、夕食後が待ち遠しくてたまらなかった。




***

 


 アルベルトも仕事から帰って来た夕食後、皆は久しぶりに集まって談話室でお酒を飲みながらカリヨンを大切そうに持つローズの側に集まっていた。

 カリヨンを試すアルベルトとジュリアスが、ローズを間に座らせて大きめのソファに腰掛け、他のメンバーが向かいのソファに腰掛けたり、近くに立っていたりしている。


 ローズはワクワクしながら、早速アルベルトにカリヨンを手渡した。

 アルベルトはそのままローズを自分の膝の上に乗せると、カリヨンに魔力を込め出した……


(あっ……やっぱりそうなりますよね……!!)


 するとカリヨンの蓋が開き小雨が降り出した…

 ローズが(あっ……ギルバート様と同じなんだ……)と思っていると、小雨は溜まることなく蓋の辺りに落ちては消えを繰り返し、次の瞬間鮮やかな虹が掛かりだした。

 すると男女が浮き出て来て鮮やかな虹が掛かる下、小雨がキラキラと輝き、その中で踊り出す。


 「うわーキレイ!!アルベルト様の魔力もとっても素敵ですね!!!」


 振り返って興奮気味に話すローズを、アルベルトは愛おしそうに見つめると優しく頭を撫でた。


「ローズ気に入ったか!?」


「はい!!!とっても素敵です!!」


 そう言ってローズは曲が終わるまでカリヨンを眺め続けた…….


 すると横にいたジュリアスが「次は私の番ですね」と、すかさずローズを膝に乗せると、愛おしそうに見つめながらローズの頭を優しく梳きだした。


(えっ??カリヨンは!?私じゃなくてカリヨンを受け取って!!アルベルト様も心なしか困っていますよ!!)


 アルベルトとカリヨンの存在を無視して暫くローズを堪能したジュリアスは、アルベルトからやっとカリヨンを受け取ると、


「さぁ!!最後は私の番ですね!!ローズ様、私の魔力をたっぷりと感じて下さいね」


 一々、言い方に含みを感じさせるジュリアスは、そう言いながらローズを後ろから包み込むように抱きしめるとカリヨンに魔力を込め出した。


 すると、カリヨンの蓋が開きハラハラと雪が舞い出して来た……


ローズは「うわぁ……雪だ……」と嬉しそうに呟くと、後ろのジュリアスも心なしか喜んでいる気配を感じられた……

 だが……そのまま降り出した雪は勢いが増していき風も吹きはじめた……


 すると男女の人形が浮き出て2人で踊り出す……


( はっ??えっ…???はっ……???これ……吹雪いてんじゃん!!!めっちゃ寒そうだけど……心なしか踊ってる2人も震えてない???

 ジュリアス………マジか………もう、流石としか言えないよ……

 ジュリアス………お願い………もう……止めてあげてーーー!!!)

 

 満面の笑みで人形を眺めるジュリアスに底知れぬ恐怖を感じたローズは、彼だけは、絶対に怒らしてはいけないと、心に刻んだ夜だった……


番外編は来週も数話更新します。


第二章はもう暫くお待ち下さい。


宜しくお願い致します。

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