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46 エピローグ


 夕刻になり、そろそろ晩餐会の時間が近づいてきた。


 空は茜色に染まり心地よい風が吹いている。


 ローズはしっかりと晩餐会の為のドレスに着替えると、窓から見える空を眺めている。

 ジュリアスとルイも着替えが終わり、今はローズの側でクロード達を待っていた。

 ちなみにジュリアスは執事らしい黒い燕尾服をきっちりと着こなしている。

 ルイも珍しく濃紺のスーツ姿でローズの後ろに控えている。

 (七五三みたいで格好いいぞ!!)


 ローズのドレスは真っ白いシルクの様な光沢のあるプリンセスラインのドレスにビジューの付いたブルーのリボンベルトをつけ、薄いブルーのチュールをスカート部分に一枚被せているバイカラータイプのドレスだ。

 シンプルだが、とても可愛らしいドレスになっていた。

 髪型は緩く巻いて青い薔薇の飾りが付いたビジュー付きカチューシャをつけている。


 ローズが城の窓からゆっくりと染まる茜色の空を眺めながらジュリアス達と他愛も無い話をしていると部屋の扉をノックする音が響いた。


「ローズ…準備出来たか!?」


 そう言いながら扉から顔を覗かせたのはクロードで、その後ろにアルベルト、エリオットの姿が見えた!!


「わぁ〜!!びっくりした!!!何故ここに居るんですか!?領地にいるはずじゃ……」


 ローズは突然、現れたアルベルトとエリオットに驚くも、二人の登場に喜んだ!!


「ローズちゃん!!!ローズちゃんに会いたくて来ちゃった!!私達も晩餐会へ一緒に行っていいかしら!?」


「はい!!喜んで!!」


 どこかの居酒屋のような返事を返したローズにエリオットは嬉しそうに微笑むと、ローズをギュッと抱きしめながら「はぁ…可愛い…」と、噛み締めるようにしみじみ呟いた。


 因みにエリオットは国王との晩餐会でもドレスを着用している。

 エリオットのドレスはAラインの赤いドレスで腰から裾に向かって円を描くように真っ赤な薔薇の飾りが付いているゴージャスなドレスだった!

(なんか…流石です……)


 ローズがエリオットと喜びを分かち合っていると、アルベルトもローズの側へ近寄り、ローズの頬を手の平で包むようにそっと撫でながら


「ローズ、王都や王城はどうだ!?何か楽しい事などあったか?」


 と、愛おしそうな瞳で見つめながら優しく問いかけた。


「はい!!ありました!!昼間、初めて町に行ったんです!!お土産を買ったり、屋台でお肉を食べたりして、とても楽しかったです!!!」


 ローズは昼間の町歩きを思い出し、少し興奮気味にアルベルトに説明しだす。

 その姿にとても楽しい時間を過ごせたのだろうと推測でき、アルベルト自身も嬉しくなってきてしまい笑みを漏らすと


「フッ!!そうか…俺も一緒に行きたかったな!!次回は、俺とも一緒に行って頂けますか??お姫様…!!」


 と片側だけ口角を上げるとローズを揶揄うように恭しく礼を執った。


「クスクス!!はい!!喜んで!!」


 ローズはそんなアルベルトに笑顔で抱きついて返事をし返した。


 皆がローズのその姿に癒されていると、クロードが頃合いを見計らい「よし!!じゃあ行くか!!」と晩餐会へと促すので、楽しい雰囲気の中皆で会場へ向かい出すのだった。





***



 晩餐会の会場はとても広く、天井から吊り下がっている大きなシャンデリアの下には年代物のテーブルが用意されていて、真っ白な壁には有名な画家が書いたであろう大きな絵も飾られている。

 高そうな骨董品なども飾られているので、恐ろしくて迂闊に近寄れない雰囲気を醸し出していた。

 テーブルの上には真っ白なクロス、その上に、庭師が丹精込めて育てた美しい薔薇の花が綺麗に飾られ華やかさを演出している。


 国王との晩餐会に相応しい、華やかな部屋になっていた。


 今回は、ローズ達が気を使わない様にと、晩餐会へ出席する人間はローズ達以外には王族の人間しかおらず、ごく内輪での晩餐会となっていた!

 ローズの席は、キャロラインたっての希望で、クロード達とは反対のキャロラインの隣に用意してあり、それを見たエリオットは不安そうに


「えっ!?何でローズちゃんがあちら側なの??ちょっと…大丈夫なの!?」


 と、キャロラインとの一連のやり取りを知らないエリオットとアルベルトは驚きが隠せなかった。

 普段から人に厳しい気の強いキャロラインが、クロードの事を好きな事は、皆が周知の事実なので、クロードがとても大切にしているローズに嫉妬して、キャロラインが嫌がらせ等しないかエリオット達は不安だったのだ。

 しかし、会場に足を踏み入れてみれば、ローズはキャロラインの横に案内され、楽しそうにちょこんと腰をかけている。

 エリオット達は、何故、隣の席に!?と、事態を飲み込めずにいた……

 

「心配いりませんよ!お母様!!昨日からキャロライン様には、とてもよくして頂いているんです!!」


「「はっ???」」


 昔からキャロラインの性格を知っているエリオット達は、親切にしてもらったと言うローズの言葉の意味が分からず、益々混乱し、口を開けたまま惚けた様に固まり言葉が出ない。


 そこへキャロラインの高い声が響いた。


「あはっ!!お母様ですって…!!エリオット……貴方……女好きで女装趣味の変態の癖に、そんな性癖まで持ち出すなんて……幼い子供に変な事させないでよ!!ローズは将来、私の娘になるんですからね!変な趣向の持ち主になったらどうするのよ!!」


 馬鹿にする様な視線をエリオットに向けながらキャロラインはとんでも無い事を口にする。


(ちょっと…キャロライン様……幼い子供が隣に居ますけど、その表現は如何なものですかね??幼女には分からないとでも思っていらっしゃるようですが、本当は、心はもう17歳なので完全に理解しておりますよ……気まず過ぎてエリオット様の方を向けませんけど……)


 ローズがキャロラインの突然の変態、性癖発言に気まずい思いをしていると、何て事無いような顔のエリオットがキャロラインに反撃し出した。


「フッ!!クロードに全く相手にもされないくせに何言っているのかしら??言っておくけど私はもう…この人達と家族ですからね!!キャロライン様とは立ってるステージが違うのよ!!クスクス……未だに他人の貴方にとやかく言われても……ねぇ……!?」


(怖っ!!そこまで言わなくても……これぞ女の戦い……んっ??女?男女??畜生……もう…よく分かんないぞ!!!)


 絶賛混乱中のローズの髪を撫でながら、エリオットの言葉が全く響いていないキャロラインが真剣な顔でローズを諭し出す…


「ローズ…変な事を教え込まれてはダメよ!!これからは私がしっかりと女性としての嗜みを教えて差し上げますからね!!」


「ローズちゃん…キャロライン様なんて見習ってはダメよ!!気が強くて乱暴な女性になってしまうわ!!」


 尚も続く二人の攻防にローズは板挟みになってしまい「……あははは……」と、から笑いを漏らすしか出来なかった…


 そんな中、二人の醜い争いにいい加減呆れをみせたクレイブ王が口を開き出した。


「2人ともそのくらいにしないか。せっかく皆が揃ったのだ!!ローズも困っておるだろう……どうだ…!?そこだと楽しめないだろう…私の隣に来るか!?」


「「「「「「ダメ(よ)(です)」」」」」」


(早っ!!!何で!?みんなしてそんなに……クレイブ国王様、いい人そうなのに……)


「チッ……またか……」


 クレイブ王も皆から拒否されて少し不貞腐れ気味だが、そんな事はお構い無しでキャロラインが諭し出した。


「当たり前じゃない!!懲りないわね!!ローズ…お父様だけには近寄ったらダメよ!!」


 クレイブ王の不満そうな顔には、皆が気にも留めずにいる事をローズは少し気の毒に思ったが、一見とても優しそうなクレイブ王に、皆が一丸となってそんなに警戒するなんてよっぽど変態なのかとローズは頭を捻る。

 別にまだ幼女のローズには、あまり関係無さそうなのにと、彼等の親バカぶりの方を気にしていたローズだが、後にクレイブ王の本来の変態ぶりを肌で感じる事となるがそれはまだ、先の話だった……


 こうして多少の小競り合いはありつつも賑やかな晩餐会が行われていたが、そろそろお開きかと言う頃に、クレイブ王が真剣な眼差しでローズに向けて話し出した。


「ローズ……其方は、様々な巡り合わせによって此度ファデイル、ファルスター両公爵家の養女になった……!!正式な魔力の鑑定も終わり、国への書類の提出も終わった。彼等の魔力を有する其方は正真正銘の両公爵の娘だ!!貴族の世界は心の優しい奴ばかりでは無く、色々難しい事もあるだろう……だが、ギルバートの魔力を受け継いでいると言う事は私達とも家族同然じゃ!!何かあれば遠慮なく言っておいで……私達は皆…其方の味方なのだから……」


「……ありがとう……ございます……」


 ローズはクレイブ王の言葉に瞳を潤ませた…

 全く知らない世界で気付いてから自分なりに必死で生きてきて、こんなに沢山の自分を家族と言ってくれる人達に出会えた事にとても感謝すると共に感動もしていた。

 未だに不安に怯える事もあるが、彼等が支えてくれるのだと言う安心感もあった。

 色々な感情が入り混じり涙を流してしまったローズの目元をキャロラインが優しくハンカチで押さえながら話し掛ける……


「ローズ……これから貴方は私の従兄弟でもあるのよ!!何があっても私達が守ってあげるわ!!だから何も心配要らないわよ!!そして、将来は私の娘ね!!」


 そう言いながら明るくウィンクしたキャロラインの優しい気持ちにローズの気持ちも明るくなっていき、笑みが溢れた。


「そうだよ!!皆がローズの味方で家族だ!!」


 クロードの力強い言葉にローズの心も強くなっていく気がして


「はい!!!皆様ありがとうございます!!私…皆様に出会えて幸せです!これから家族として宜しくお願いします!!」


 と、力強く皆に伝える。

 ローズはこんなにも自分を思っていてくれる人達がいる事にとても幸せを感じていた……


 彼等もローズと出会えた事に幸せを感じており、これから先、ローズと家族として過ごす日々を思うと胸が温かくなる様な気がしていた。


 こうして無事に国にも認められ、家族の一員になったローズは、公爵家の娘として、新たな人生を彼等と歩んで行く事になったのだった……





***




 あれから数年の月日が経った……



 クロード達との生活にも慣れたローズは12歳を迎えていた。

 あのまま美しく成長したローズは領地でも有名な美少女に成長していた。

 ピンクパールの髪は伸び、光の加減によってキラキラと輝いている。

 ブルーサファイアの瞳はより一層大きくなり輝きを放っていた。

 小さく通った鼻筋はそのままスッキリと高くなり、ピンク色の唇は常に艶々していて、まだ大人になりきれていない少女のあどけなさと、整った顔立ちが相まって何とも言えない美しさを醸し出していた。



………



「ローーーズ様!!!ローズ様!!!何処にいらっしゃいますか……!?あっ!!ルイ!!!ローズ様はどうした!?」


「申し訳ございません!!ちょっと目を離した隙に逃げられました!!」

 

 レッスンの時間が迫っているのにも拘らず、ローズの姿が見えずに焦るジュリアスに、17歳になり、身長も伸びて少年から青年に変わった綺麗な顔立ちのルイが申し訳無さそうに頭を下げる。


 お互いに一緒に成長してきたローズとルイもそろそろ大人に近づき、常に一緒に居る事も難しくなってきている様で最近、少し目を離した隙にちょくちょく逃げられるようになってきたのだ……


 毎回、ローズがいなくなる度にクロードとジュリアスからネチネチ怒られるルイは、ローズにほとほと困っていた。

 

「はぁ……まったく……何の為のローズ様付き従者なんだ!!……また…勝手に屋敷から抜け出していなければいいが……直ぐに見つけ出し、レッスンに間に合うよう連れ戻しなさい!!」


「畏まりました」


 このやり取りが日々の日課になりつつある公爵家だが、彼等を撒いて日々何処に行っているのかはローズだけの秘密であった……


これにて第一章完結になります。


何となく小説を書き始めて1ヶ月半が経ちましたが皆様に読んで頂けて、温かいコメントも貰い嬉しく感じています。


少しお休みして第二部を開始しますが11月中に何話か番外編を載せるつもりです。


第二部は11歳から15歳くらいの少女期の予定です。

新たな出会いや様々な事が起こりますので、少し成長したローズとクロード達のやり取りを楽しみにしていて下さい。


気に入って頂けた方は評価とブックマークも宜しくお願い致します。


ありがとうございました!!

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