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45 王都 6


 昨日はあの後、キャロライン達とも楽しく過ごし、国王を含めたお茶会は無事に終了した。


 当初の予定通りクロード達と王城に泊まったのだが、ローズと一緒に眠ったのはジュリアスだった。

 クロードとギルバートはとても不満そうだったが、クレイブ王直々にお誘いがあった為、彼等は皆でお酒を嗜む事となったからだ。

 そうなると部屋へ戻ってくる時間が分からない為、ローズは初めての王城の慣れない部屋で一人にはさせられないと、ジュリアスが満面の笑みで話し、クロード達に有無を言わせなかった。

 ジュリアスとルイと一緒に眠ったおかげなのか、慣れない部屋で眠ったローズだが特に問題も無く、今朝も気持ちのいい朝を迎えられたようだ。

 朝食も終え本日の予定は夜に開かれる晩餐会だけなので、この後の予定は特になく、一緒に食後のお茶を楽しんでいるクロード達に向けてローズはこの後の予定を確認してみることにした。


「今日はこの後どうするんですか!?」


「そうだなぁ…………

 あぁ…そうだ!!ローズは昨日、馬車の中で町に行きたいと言っていたな!!私達と一緒に行ってみるか?」


「えっ!!!やったーーー!!!行きたいです!!」


 クロードの提案にローズは両手を上げて喜んだ!!

 公爵家から殆ど出る事が無く、王都ではあるが ずっと行ってみたかった町に連れて行って貰えると思って大喜びだ!!


「ふふっ……よし!!じゃあ準備して出かけるか!!ジュリアス!!あまり目立たない様な服に着替えさせて、ローズの準備が出来次第出発するぞ!!」



「畏まりました。ではローズ様、まず着替えましょうか!!ドレスだと目立ってしまうので、シンプルなワンピースに致しましょうね!!」


「はーい!!」


 その後、ジュリアスに連れられて自分の部屋に戻ったローズは、エリオットが用意してくれた大量の洋服の中から、町に出るのに良さそうな、全体的に水色で胸元にレースとリボンが付いて切り返しがしてあるハイウエストのシンプルなワンピースに着替えた!!

 髪の毛は綺麗に梳かしたあと片側の耳の側でワンピースと同色の水色の小さなリボンで留めている。

 いつもの貴族然としたドレス姿ではなく商人の子供のような年相応の可愛らしい格好になった!


「よし!!可愛いな!!そしたら出発するか」


 今回は、城下町に出るのであまり目立たないように馬車一台で移動する事になっている。

 同行するメンバーはクロード、ギルバート、ジュリアス、ルイの、今いるフルメンバーで移動する事になるので、いくら公爵家の広い馬車と言えどもギュウギュウになってしまう…

 その為、御者は使わず馬車の操縦はジュリアスに任せる事にして、その横にルイを座らせ、馬車の中にはクロードとギルバート、ローズが座る事になった。


 そうして、ローズの異世界での初の町歩きが行われる事となった。




***



「うわーーー凄い!!とても大きな町ですね!!」


 馬車から降りたローズは目をキラキラと輝かせて周りを見回している。


「クスクス!そうだな!!ローズはどんなものが見たい!?」


 町へ連れてきただけで瞳を輝かせて喜ぶ純粋なローズに、一層愛おしさが増したクロードは、宝物でも見つめるようにローズを見つめクスクス笑いながら尋ねた。


「ゔ〜〜〜ん……とにかく色んな物が見たいです!!」


「フフッ!!じゃあ…とりあえず適当に歩きながら気になった所があったら覗いてみようか?」


「はい!!」


 勢いよく手を挙げたローズをクロードは尚も楽しそうに笑いながら抱き上げる。


(あぁ…やっぱり抱っこになりますよね……)



……



 暫く皆で町の中を散策していると、ローズの目に一軒のガラス細工の店が目に止まった。

 店先のディスプレイに綺麗なガラス細工が並べられていたからである。


「うわー綺麗……」


 思わず漏らしたローズの呟きに気が付いたクロードは「中見るか?」とローズに優しく問いかけると


「良いんですか?見たいです!!」


 クロードを見つめながら嬉しそうに返事をしたローズは、クロード達に連れられて店の中に入った。

 店内はあまり広くはなかったが、壁に取り付けられた棚の上に様々な色や形のガラス細工が綺麗に飾られていてとても綺麗で見ているだけでも楽しかった。

 その中でも特にローズの目を引いたのが、真っ青な丸い小物入れの様な物で、蓋の部分が白い色で薔薇の形を模している。

 その見た目の華やかさと美しさに目を奪われたローズは「コレ…凄く…綺麗……です」とクロードに語りかけた。


「何だ!!ローズはコレが気に入ったのか?」


 隣に居たギルバートがローズに問いかけながら、そのガラス細工を手に取り上に掲げてが眺めている。


「はい!!どれもこれもみんな素敵ですけど、コレは凄く綺麗です!!」


 ローズは嬉しそうにギルバート答える。


「ローズはガラス細工が気に入ったんだな……そうだ!!そんなに気に入ったのなら工房ごと買い取って、これからはローズの為だけに色々作らせるか!?」


「へっ???いっ…いえ!!!大丈夫です。これだけが欲しいです!!工房までは要らないです!!!」


 クロードのとんでもない一言にローズは慌てて否定し出す。

 ちょっと可愛いと思っただけなのに公爵家ともなると物を買うレベルが普通と違い過ぎて頭を抱えたくなってしまうローズだった……


「何だ…工房の1つや2つくらい、いくらでも買ってやるのに!!じゃあとりあえずコレを買うか!!」


「………ありがとうございます………」


 買ってもらったガラス細工を大切そうに抱き締めると、次はギルバートに抱き上げられて移動する。


(別に一人で歩けますけど……また、キャロライン様に怒られますよ!!)


 暫く町をブラブラと歩いていたクロード達だが、ふと…何かを思ったのかギルバートがローズを抱えながら話し出した。


「そろそろ小腹が減ったな!!夜、晩餐会があるから沢山は食べれないが、休憩がてら何か食べないか!?」


 すると視線の先にあった広場に何軒か屋台があるのを見つけたローズはギルバートに「あれが食べたいです!!」と、指を差した。


「何だ!?屋台の物が食べたいのか?近くに予約が中々取れない人気の店もあるぞ!俺達なら予約無しに入れるけど…」


「そのお店より、あそこの屋台がいいです!!」


 ギルバートが公爵の権限を遺憾なく発揮しようとしていたがローズは絶対に譲れなかった!!

 せっかく町歩きをしているので、今は高級店でお茶をするよりは、日本にいた頃のように気軽な屋台の食べ物が食べたかったのだ!!


「ふふっ!!ローズ様は本当に可愛らしいですね!!貴族女性で屋台がいいなんて言う方いらっしゃいませよ!!」


( すみません!!中身は平凡な元庶民なので……お洒落カフェより屋台の肉が食べたいんです!!あの美味しそうな匂いにやられてるんです!!)


 ローズの心の叫びなど誰の耳にも届く事なく、庶民のような感覚も持ち合わせる心の優しい女の子だと勘違いされながら、皆から生暖かい視線を向けられローズは屋台に近づいた。

(なんか…すみません……)



「うわー色んな屋台がありますね!!」


 皆で数軒ある屋台の側まで近づいて行くと様々な物を売っていた。

 ローズが最初に気になったのは何かの肉をタレに漬けて焼いた串焼きや野菜焼きの屋台で、他にもフルーツを売っている屋台や、クレープみたいなものを売っている屋台もあった。

 ローズは様々な物に目移りしていまい何を買おうか完全に悩んでしまっていた。


「ふふっ!!ローズは何が食べたいんだ!?」


「沢山あって迷っちゃいます……色々美味しそうで……」


「じゃあ…色々買って、皆でシェアするか!?」


「あっ!!それ嬉しいです。やったー!!じゃあ、まずアレ食べたいです!」


 そう言ってローズはいい匂いのする串焼きを指差した!!


「よし!!行くぞ!」


 ギルバートに抱えられたまた串焼き屋の前まで行くと愛想のいいおじさんが顔を出した。


「ヘイらっしゃい!!どれがいいですか!?」


「じゃあコレとアレ!!が、食べたいです!!」


「おっ!!なんだ!!!可愛らしい女の子じゃないか!!よし!!じゃあコレもオマケだ!!」


 そう言って野菜とお肉が交互に付いている串焼きを袋に入れてくれたおじさんに、

「うわーーー良いんですか!?ありがとうございます!!」

 

 ローズは串焼きを一本サービスしてくれたおじさんに嬉しそうに微笑見ながらきちんとお礼を言ったのだった。


「なっ……これは驚いたな!!凄い礼儀正しい子じゃないか!!お兄さん達、この子から絶対目を離すんじゃないぞ!!こんな可愛くて愛想がいいと誰かに連れて行かれちまうぞ!!」


「ふふ…分かっておりますよ!天使の様に可愛らしい彼女から一瞬でも目を離すなんて事ある訳ないじゃないですか!!では、ありがとうございました!!」


「おっ……おう!!毎度あり……」


 ジュリアスが店のおじさんにお礼を言うと次の店へ移動する。


(ジュリアス止めてよ……お店の人引いてたじゃん!!恥ずかしい……)


 ジュリアスの親バカ発言にローズが羞恥に顔を赤らめている間に、次の店の前へと着いてしまう。

 次の店は色々な種類のパイが売っている屋台だ!!!


「うわーコレも美味しそうですね!!」


「ありゃ??なんだい!?可愛らしいお嬢さんじゃないか!!」


「クスクス!!ありがとうございます!!オススメは何ですか!?」


「そうだねぇ、この鶏肉を使ったパイとリンゴのパイは人気だよ!!それより、あんた…何かしっかりしてる女の子だねぇ〜!あんた達こんな可愛くて、しっかりしてる子を一人にしたら大変だからしっかり見張ってないとダメだよ!!」


(おぉう……ここでもか……何んなの!?この町、治安良さそうだけど…人攫いでもいるわけ!?

 全く……しっかり守れよ王都なんだから!!)


「ふふ…大丈夫ですよ!!彼女の事なら髪の毛一本たりとも見逃したりしませんので!!では、ありがとうございました」


「おっ……おう!!毎度あり……!!」


(ジュリアス…怖いよ……また、店のおじさんが引いてるじゃん!!止めてよ…!!本当…恥ずかしい……)


 ローズは更に赤くなりそうな頬をギルバートの肩でそっと隠した。

 その後も色々な店で少しづつ食べ物や飲み物を買ったクロード達は広場のベンチに腰掛けると買ってきた物を広げ出した。


「ローズ、どれから食べたい?」


 クロードの優しい問いかけにローズは初めに買った串焼きを指差しながら


「お肉の串焼きが食べたいです!!コレは何のお肉なんですかね??」


「コレは羊だと思われますよ!!こう言った屋台だよ割とメジャーな一品ですね!さぁローズ…様……口を開けて……!!」


「うっ………は…い………んっ………!!美味しい……」


(美味し〜い!!羊肉って臭みがあるから日本にいた時は苦手だったけど、この世界の羊肉はジューシーで、このちょっと甘辛なタレともよく合うし何本でも食べられそう…)


 ローズは異世界で食べた羊肉に大満足で口いっぱいに頬張っている。


「ふふ…良かったです!!」


「ングッ……」


 頬にくっついて串焼きと一緒に頬張りそうになっていたローズの髪の毛を、頬を撫でる様にそっと耳に掛けてあげるジュリアスの仕草に色気がダダ漏れており、微笑まれながらそんな事をされたローズは危うく食べ物を喉に詰まらせそうになるが、すかさず原因の張本人であるジュリアスによって飲み物を飲ませてもらう。


 (あっ…危…なかった…その内、ジュリアスの色気に殺されるんじゃないの…………)


 気を取り直したローズは癒しを求めてルイに話しかけた。


「ルイもコレ食べた!?美味しいよ!!」


「あぁ!?うん…??ありがとう!!……んっ………コレ美味いな!!」


 ローズに勧められた串焼きをルイも一口頬張ると軽く目を見開いて感激しているようだ!!


(うん!うん!分かる!!美味しいよね!!)

 

 ルイと二人で美味しそうに串焼きを頬張っていると、ギルバートが声を掛けてきた。


「ローズ、このパイも美味いぞ!!ほら!!」


「あーん!!んぐっ…もぐ……あっ……美味しい……」


「ローズは本当に可愛いな!!」


 ギルバートから、お肉を使ったパイも一口もらったローズは、噛んだ瞬間にサックっとしたパイ生地の食感とお肉の旨味が相まってとても美味しく、ただ食事をしているだけなのに、それだけでとても幸せな気分になった。


 初めての町歩きで気分が上がっている事に加えて、皆でお天気の中 外で食べる食事は、また格別に美味しく感じた。


 皆のお腹もある程度満たされて一息ついた頃、クロードが静かに立ち上がった。


「よし、そろそろ行くか!!」


 クロードのその言葉にギルバートも腰を上げるとローズの頭を撫でながら話しかける


「じゃあ最後に何処か一軒だけ見て帰ろうな!!」


 

「はーい!!」




………



 馬車に向かって皆で暫く歩いていると一軒の古びた店が目についた。


 店先に魔法陣の様なものが描かれた看板が下げてあり中は全く分からないが、何故か気になったのだ。


「ここは??」


「あぁ…ここは魔道具が置いてあるお店だよ!!」


「魔道具……!?見たーーーい!!!見て良いですか!?」


「クスクス!!いいよ!!」


 魔道具と聞いて瞳を輝かせたローズはワクワクが止まらなかった。

(魔道具……魔法の道具でしょ!!コレぞ異世界!!どんな物があるんだろう!?超ー楽しみなんだけど!!)


「うわーー!!色々置いてある!!凄い……!!コレは何ですか!?」


「あぁコレは、寒い日に身体を温める魔道具だよ!!」


「じゃあコレは!?」


「コレは逆に冷やす魔道具だな!!」


 ローズは興奮し過ぎて矢継ぎ早に質問すると、それに一つづつ丁寧に説明してくれるクロード達も心なしか楽しそうだった。

 魔道具には寒い日に身体を温めたりする一般的な物から髪の毛や瞳の色を変える物、一時的に成長した姿になれる薬など、なんだか少し怪し気な物なども置いてあったりした。

 中でも特にローズの目を引いたのは大人の手のひらサイズの大きさの木箱で表面には飾り掘りが色付きで施してある可愛らしい物だった。


「あれ!?コレだけなんか可愛らしいですね!!」


「あぁ…コレはこう言う風に自分の魔力を通すと……」


 そう言ってクロードが魔力を通すと、上の蓋がパカっと開きキレイな音楽と共に花火の様なものが小さく上がった。

 その花火の下に10㎝位の王子様とお姫様みたいな男女の人形が浮き出て来ると箱の上でクルクルと二人で踊り出す、日本で言うところのオルゴールの進化バージョンの様な物だった!!


「すごい……可愛い……」


「コレも欲しいのか!?コレは通す人の魔力の質によって火花だったり雪だったり花びらだったりと色々変わるんだよ!!」


「そうそう!貴族の女性なんかには人気で持ってる人も多いんじゃないかなぁ?」


 「へぇ…ルイも知ってた!?」


 クロードとギルバートが交互に説明してくれるとローズは、感心したように頷きながらルイにも問いかけた。


「いや……話には聞いた事があったけど見るのは初めてだ!!すごい……キレイだな!!」


 心なしかルイも興味津々のようで尻尾が揺れている!!


「ルイの魔力を通した何になるんだろうね!」


ローズはワクワクしながら問いかけると


「よし!!じゃあ買うか!!コレは俺が買うよ!!」


 それを聞いていたギルバートがローズにプレゼントすると言い出した。


「良いんですか!?」


「このくらいの物なら何百個と買っても問題ないよ!!買って帰ってルイと試せばいいさ!!」


 ギルバートは楽しそうにローズに話すと、その箱を持って店員の所まで移動し出した。


「クスクス……そんなには必要ありませんよ!!でも、ありがとうございます!!ルイ!!帰ったら試してみようね!!」


「あぁ…そうだな……」


 時間がある時にでも皆んなにも試して貰おうとローズは今からワクワクしていた。

 あとで試せるルイもなんだか嬉しそうだ!!


「よし!そろそろ時間だ!!ローズへのプレゼントも買ったし帰るか!!」



「はーい!!今日は凄く楽しかったです!!連れてきてくれてありがとうございます!!」


 ローズは元気よく手を上げて返事をすると、そのまま皆にお礼を言った。


「私も町に来た中で一番楽しい時間だったよ!」


 クロードが楽しそうに答えるとギルバートも「あぁ…そうだな!!」と嬉しそうに同意した。


「本当ですね!!こんなに楽しく町の中を歩いたのは私の人生で初めてではないでしょうか!!ローズ様……私の方こそありがとうございます!貴方様の存在に改めて感謝致します!!」


「………」

(ジュリアス…大袈裟だよ…なんか趣旨が変わってきてるよ……でも、私も楽しかった!!)

 

 なんとなく始まった町歩きだが一緒に散歩した皆が満足出来た日になった。

 皆が楽しそうに店を後にすると、クロードが

「よし!!帰るか!!」と帰りを促した。


 こうしてローズの初めての町歩きは終了していった。

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