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42 王都 3


 神殿を抜け、結構な距離を進んだ先の幾何学式園庭に、色とりどりの薔薇が咲き誇る一角がある。

 その一角に真っ白な長方形のテーブルが置かれ、数脚の椅子が用意されている。

 テーブルの上には芸術品のようなケーキやゼリー、マカロンなどがケーキスタンドの上に綺麗に並べられていて、その横にはサンドウィッチなどの軽食も数多く用意されていた。

 いくら国一番の公爵家と言えども、王城でのお茶会となれば規模の大きさが全く違っていた。

 そこへ案内役の使用人を複数人従えた国王を先頭にギルバート、クロードと続き、その後ろにジュリアスがローズを抱き抱えながら歩き、ルイとノアがローズを守る様にジュリアスの後ろに着いていた。


 国王がお茶会に姿を見せた瞬間、先に来ていた他の貴族達が立ち上がり国王達を出迎える。

 男性7名、女性5名の結構な人数の貴族であろう方々がローズ達を出迎え、後ろで抱えられていたローズはこんな大人数聞いてないよ……と、心の中で驚いていた……


 「皆、忙しい中ご苦労であった。今日は、そこにおる少女が公爵家に入った故の顔見せも兼ねておる!短い時間だが楽しんでくれ!!」


 そう言い放った国王は目線でジュリアスに合図をした。

 するとジュリアスはクロードの横に座っているローズの耳もとで「皆様にご挨拶を…」と促すので、ローズは、ルイに椅子を引いてもらいエスコートされながら小さい体で椅子から降りると、そのままだとテーブルに隠れて顔が見えないので、皆が見えるように後ろに下がり


「只今、ご紹介頂きました ローゼマリー・ファディル・ファルスターです。皆様、宜しくお願い致します」


 と言いながら可愛らしくカテーシーをして見せた。


 ローズの名前を聞いた数名から息を呑む様な声が聞こえてきたが、ローズはそのままルイにエスコートされ席に戻ると横に座っている誇らしそうに笑みを漏らすクロードに優しく頭を撫でられた。


 クロードもやはり公衆の面前では、あからさま態度は控えるらしく、ローズは、TPOとかちゃんと分かってるんだ!!と、少し安心したようにホッと胸を撫で下ろしていた。


 すると上座に着席していた国王がローズに向かって話しかけてきた。


 「ローズ……ギルバートの娘になったのなら私にとっても、お前は姪にあたる!ローズは叔父さんの名前を知っているかなぁ??」


 片側だけ口角を上げた国王はニヤリと意地の悪い顔をする


(ヤッバーーーい!!!全然知らない…!!聞くのすっかり忘れてたーー!!!ファステリア帝国だからナントカ・ファステリアだよね!?)


 ローズが1人パニックになっていると横からギルバートが口を出してきた。


「クレイブ王!!お戯れはおやめ下さい。幼い子供を揶揄って楽しいですか!?」

 

「チッ…!!なんだ……面白くないな…!!すまなかった!!ローズ!!ちょっと揶揄っただけなんだ!!」


「……あはは……」

(そんな テヘ!! みたいな顔されても全然可愛くないですからね!!ギル兄様の兄って事は、完全なお爺ちゃん王なんですから、爺さんに茶目っ気出されても困るだけですから)


 ローズの鑑定時から何やらフランクそうな雰囲気を醸し出しているクレイブ王に、から笑いで誤魔化したローズは、クロード達以外の貴族達が楽しそうに談笑している姿が目に留まり、少しの間じっと観察してしまっていた……

 すると、彼等のその目が全く笑っていない事に気が付いたローズは…なに!?怖っ……と、1人恐怖を感じていると、1人の女性と目があった瞬間…思い切り睨みつけられるのだった!!


 えっ!?と、思ったその時……クレイブ王の明るい声が響いた。


「そうだローズ!!私の子供達を紹介せねばな!!おい!!こちらへ来て、お前達も挨拶しろ!!」


 すると貴族達と談笑していた男女の中から少し若そうな1人の男性と先程ローズの事を睨みつけた女性がスッと立ち上がりクレイブ王の腰掛けている椅子の横に並び立った。


「はじめましてローズ嬢!!私はこの国の王子!リアム・ファステリアだ!!宜しくな!!」


 クレイブ王の若い頃が想像できそうな程そっくりな彼はキレイな金髪にグレーの瞳の端正な顔立ちの、見た目10代な男性でローズに向けてしっかりと挨拶してきた。

 

「王女のキャロライン・ファステリアよ」

 

 長い金髪をカールさせている金色の瞳の少しきつそうな美女がローズを軽く睨みつけながら挨拶してきたが……

 そこへクレイブ王の少し呆れたような声が聞こえてきた。


「フッ…まぁ…そんな睨むでないキャロライン!!すまんなローズ!!キャロラインはクロード達とは、然程歳が離れて居なかった故、そのうちクロードと婚約させる予定だったのだよ!なのに養女を迎えてしまったから婚約出来ずに不貞腐れているだけなんだ!」


 キャロラインが産まれてからクロードとの婚約話しは出ていたらしいが結婚の意思が無いクロードが、のらりくらりとかわし続け、クロードが200歳位までにお互いに良い相手がいなければ婚約する約束をしていたらしい…

幼い頃からクロードが結婚相手だと教えられ彼の事がお気に入りだったキャロラインは、クロードが誰とも結婚の意思が無い事を知っていた為、時期が来ればいつか自分と結婚する事になると高を括っていたが、ここへきていきなり養子を迎えた事に納得が出来ず養女のローズに当たりが強くなると言う訳だった!


 まぁクロードはカッコいいし、家柄もトップクラスなのでモテるのも仕方ないかと思っていたローズは次のクレイブ王の発言に耳を疑った!!


「其れでだ、クロードとキャロラインの事は置いておくとして、リアムとローズの婚約発表はいつ頃にするかな!?」


「……はっ……??」


 ローズは目を見開き驚いたが、次の瞬間、何故か周りの温度が下がった気がして、怖くてクロード達の方を向けなくなってしまった……


 だが、そんな空気など全く読まないクレイブ王は1人だけ機嫌が良さそうに話を続けている…


「ローズは今、6歳になったばかりか??リアムは今年で40歳とまだ若いから丁度良いな!!ローズの成人に合わせるか!?それまでは交流を深めさせながら…な!?」


(はっ……??いやいやいや〜6歳と40歳のおじさん合わせてお似合いって……見た目若そうでも40歳……日本で言うところの中年ですよ!!勘弁して下さいよ!しかもキャロラインが姉になるなんて恐怖でしかない!!まぁイケメンではあるけど…)


 突然の婚約宣言にローズが動揺していると、ギルバートが不機嫌そうに口を開いた。


「婚約なんてさせるわけないだろ!!ローズは俺の大切な娘でもある!!40歳そこそこの若造になんかローズを任せられるか!!」


「そうだな!ローズと婚約したいならまず私達を負かせられる位にはなって頂かないと……」


 ギルバートとクロードが2人してそんな事を言っているが、ローズは40歳以上のおじさん達など求めていないし、腕っ節の強さなど全く必要では無い……欲しいのは自分の事を大切にしてくれる同年代のイケメン彼氏だけである……

 不機嫌そうなクロード達を横目に、変な基準を設けるなと、思っていると


「クロード……無茶を言うでない……お前ら2人を負かせられるようになれるなら1人で国でも落とせるではないか!!温室育ちの此奴には無茶だぞ!!」


「陛下…ご冗談を……2人では無く5人ですので、お間違い無く…!!」


「はぁ……全く……ジュリアスまで……厄介な奴らが父親になったもんだ……ローズ……お前…此奴らが生きている間は婚約者は愚か男性と口を聞くのも難しいかもな……」


 と、言いながらガハハハーと笑い出すのだった……


(いやいや……笑い事じゃないから……クロード達が生きている間って、後何百年あると思ってるのよ!!怖っ!!前世からずっと彼氏欲しかったのに、この先…父親達に阻まれて何百年も彼氏出来なかったら……震えるんだけど……)


 前世からずっと素敵な彼氏が欲しいローズはこの先、お爺ちゃん達に囲まれ何百年も彼氏が出来ない事を想像してしまい震え上がっていた。


 だがその想像もあながち間違いでは無さそうではある…


 そんな想像に震えているローズの後でルイが可哀想な子を見る目でローズの事を見ていたのは誰にも気付かれていなかった。


「まぁ…とりあえず交流でも深めて見れば良いではないか?リアム、キャロライン、ローズを庭へ案内してやれ!!」


「え〜嫌よ!!何で私が………!!もう……早く来なさい!!」


 キャロラインが嫌そうに顎でローズを呼ぶと、すかさずリアムがローズの横へきて


「ローズ嬢、ご案内致します」


 と手を差し伸べてきた。

 ローズはどうすれば良いのか分からなかったが恐る恐るリアムの手を取ろうとすると


「大丈夫です!!ローズ様は人見知り致しますので、私が一緒に連れて行きます!!案内だけお願い致します!!」


 ジュリアスがしっかりとした口調でキッパリとリアムのエスコートを断った。

 ローズは王族に対して、その様な態度をとって大丈夫なのかとオロオロし出すが、全く気にも留めていないクレイブ王は、交流をさせるのに邪魔なジュリアスを引き留めにかかる。


「コラ、ジュリアス!!お前はここで留守番だ!!若い奴らの交流だぞ!!これは国王命令だからな!!」


「……畏まりました……しかし、ローズの従者は付けさせて頂きます。ルイ頼みましたよ!分かっていますね!!」


「はい……では、ローズ様、失礼致します」


 舌打ちでもしそうなほど苦々しい顔をしているジュリアスに一礼すると、ルイはローズを抱き上げた。

 まだまだクロード達に比べると小さいが、最近また少し逞しくなったルイに軽々抱き上げられたローズは、一人では無い事に少し安心したようでホッと息を吐き大人しくルイに体を預けた。

 そして、そのままリアムとキャロラインに付いて庭の奥へと消えていった。



「ノア……お前も行け!!」

 

 ギルバートの短い指示にノアは無言で一礼すると、ローズ達を追って直ぐに庭へ消えて行く……


 残ったのはクロード達と他の貴族だけだが、いつもとは全く違うギルバートとクロードの顔がそこにはあった…


「はぁ……まったく……」


クレイブ王の小さなため息が庭に響いた…


クレイブ・ファステリア(国王)


身長178㎝ 金髪の少し長めのストレート グレーの瞳 口髭を生やしている


年齢250歳 楽しい事が大好きで国王と言う立場から自分に意見する人があまりいない為、少しぞんざいに扱うと喜ぶ……


クレイブは自分に国王は向いていないと思っており、本来は能力の高いギルバートに国王を譲りたかったが結婚する気がないギルバートによって国王の座を押し付けられる。


魔力が高くオールマイティーに仕えるが雷の魔法が得意。


リアム・ファステリア(王子)


身長173㎝ 金髪の短いストレート グレーの瞳、クレイブ王の若い頃にそっくり


年齢42歳の争い事を好まない優しい性格だが……


魔力自体は高いが使用するのは苦手、オールマイティーに一応は扱えるが得意な物は無い。


キャロライン・ファステリア(王女)


身長162㎝ 長い金髪をカールさせている金色の瞳の少しきつそうな美女。


年齢52歳 交戦的で意思が強い。


魔力が高くオールマイティー。得意な魔法は雷だが、水の魔法を使用し対象物が苦しむのを見るのが好き。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 王女の態度が高圧的なのでローズを怖がらせてルイに助けてもらいつつ、過保護な父様達がもっと過保護になる未来が見えます笑 王女だろうと関係なく怒っちゃいそうですね笑笑 [気になる点] 第43部…
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