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33 ピクニック


 秋晴れのような快晴の中、ローズはアルベルトとルイと一緒にピクニックの準備をしていた。


 今日は久しぶりにアルベルトが休みなので、朝からローズにべったりで、今は、不器用ながらも一生懸命に、ローズの髪の毛を纏めてくれている。

 アルベルトは何度かローズの髪を結ったことがあるが、あまり上達はしていないようで、少し伸びたローズの髪を後ろで一つに纏めて、紺色のリボンを結んだだけのシンプルな髪型である。

 でも、ローズはアルベルトが偶に結んでくれるシンプルな髪型を結構気に入っていて、今も鏡に映っている自分の姿にとても満足しており、アルベルトに「ありがとう!可愛い!!」と、素直にお礼を言った。


 するとアルベルトは「どう致しまして!!お褒め頂き光悦です!お姫様!!!」と言いながらワザと仰々しく腰を曲げお礼を言った後、顔だけ上げてローズを見つめニカッと笑うのだった。


(なんだよ!!イケメンめ……ちくしょう〜)


 イケメンの成人男性に、完全に、弄ばれているローズの今日の洋服は、クリーム色の襟がフリルになっている半袖のブラウスで襟と袖口に淡い小花の刺繍が入っている。

 スカートは膝丈の紺色でスカートの裾に沿って白の太めのラインが一本だけ入っているシンプルな、普段ワンピースが多いローズには珍しいセパレートタイプの服だった。


 ローズの準備も、整ったので、クロード達と一緒に馬車まで移動する。


 簡単にピクニックに行くと言っても、公爵家の人達が行くとなると色々と大変なようで、馬車だけでも3台を用意してあり、一台にローズとジュリアス、エリオットが乗り、ルイとギルバート、アルベルト、クロードはローズの護衛も兼ねて馬に騎乗して着いてくる。

 残りの馬車2台には、ピクニックの荷物と向こうでお手伝いをしてくれる使用人数名が乗っている。

 それ以外に護衛が数名、馬に騎乗して待機している結構な大所帯でのピクニックとなる。


 ローズは迂闊にピクニックに行きたいなんて、この先、言えないなぁ……とこっそり溜息を吐くのだった……



 諸々の準備も整い、ローズ達も馬車に乗り込んだのでピクニックに行く為に出発するが、まず先頭に護衛騎士2名が馬に騎乗して、先導する。

 次にローズが乗っている馬車の前方左右にアルベルトとクロードそしてローズ達の乗っている馬車、後方左右にギルバートとルイを伴い、さらに後ろに使用人と荷物が乗っている馬車2台が続き、最後尾にまた護衛騎士を配置した、仰々しさ満載の移動となっている。


 元庶民のローズには、すれ違う人達の視線がとても痛かった…


 しかもローズは今……公爵家の大きい豪華な馬車に乗っているはずなのに……大変窮屈な思いをしていた……


 何故なら、公爵家のとても広い馬車の中でジュリアスとエリオットがローズの隣を譲らなかった為、3人並んでピッタリとくっついて座ると言う……押し競饅頭状態だからだった……


 何故こうなったかと言うと……


…………


 馬車で屋敷を出る時点では、エリオットはローズの向かいに座っていたのだが……

 屋敷を出てから少し走り出すと、ローズは、監禁されていた時の事を思い出してしまったのか少しずつ怖くなってきてしまっていた……


 だが、せっかくこれからピクニックに行くのに雰囲気を悪くしたくないローズは、同乗している2人には何も言わずに、小さな手で自分のスカートをギュッと握りしめ耐えていた……


 そのローズの小さな変化に逸早く気付いたエリオットは徐ろに立ち上がると


「やっぱり、私もローズちゃんの隣に座りたい!!ジュリアス狡い!!」


 と、駄々を捏ね出し、ローズの変化とエリオットの意図に気が付いたジュリアスがローズを抱き締めるように


「絶対に譲りません!!ローズ様の隣は私です!!」


 と、言い放った。

 そこから、二人は押し問答の末、ローズにピッタリとくっついた、押し競饅頭が完成された訳だ!!!


 ただ…ローズは、2人がいつもの調子で盛り上げながら、横にピッタリと寄り添ってくれた事で恐怖心が薄れて、とても安心する事ができたし、そんな2人の気持ちが嬉しかった……


 まぁ……外に慣れて仕舞えば…ただ窮屈なだけだったが……


 そこから湖に着くまでは、馬に乗っているクロード達に手を振ったり、話しかけたりしながら、仰々しい行列を伴って、何事も無く(?)安全に目的地に着く事が出来た。




***




「うわーーーー凄ーーい!!ルイ!!見てる!?凄くキレイだよ!!!」


「あぁ…….本当だな……」


 公爵家から出て1時間程、進んだ先にある森を抜けると、そこは見渡す限りエメラルドグリーンの湖が広がっていて、湖の先には小さな島の様な物が一つだけ浮かんでる。


 水も透明度がとても高く、湖の手前には真っ白な砂浜もあった。


「ねぇーねぇージュリアス!!水の側まで行っていい!?」


「良いですよ!!でも危ないので…」


 そう言いながら近づくと、ジュリアスはニッコリ笑って、ローズを抱き上げた……


(違ーーーーう!!!ジュリアス……違ーーう!!!私は歩いて行きたいの!!!!……ここは一つやるしかない…!!秘技!!!幼女の上目遣い!!!)


 ローズは意味の分からない技を使い、ジュリアスの頬を小さな手で押さえると潤んだ瞳で小首を傾げて


「…ジュリアス……私…歩きたいの…」 


 と可愛らしく訴えた……


「……っ………か……可愛…い……!!では……手を…繋いで行きましょうね……」


 ジュリアスはローズを下ろすと、片手でローズと手を繋ぎ、もう片方の手で額を抑えてから、一度、天を仰いだ……

 そして、ローズの方に向き直り見つめ返すと、透けるような笑みを浮かべ、そのまま手を繋いで歩いていく……

 ルイとその横からエリオットもついて来て一緒に湖の側まで歩いて行った。



「うわ〜水も本当に綺麗だよ!!ねぇ触ってもいい??」


 ローズは逸る気持ちを抑えきれずにワクワクしながら、ジュリアスに問いかける…

 

「良いですよ!でも危ないから気を付けてくださいね」

 

 ジュリアスは可愛い生き物を愛でる様にローズの頭を優しく撫でた。


「はーい!!」


 ローズは、ドキドキしながら湖の水に手を付けてみた…

 その瞬間、水の冷たさと気持ち良さ、外に出た嬉しさでローズは瞳を輝かせて喜んだ。


「あっ…冷たい……ふふ…!ジュリアス!!気持ちいいよ!!……クスクス……楽し…い!!!!」


「はぁ〜………なんなんだ………!この可愛い生き物は……!!俺は…….俺は……」


 ジュリアスは、水に触れただけなのに、とても楽しそうに瞳を輝かせるローズの純粋さと、清らかさ、笑顔の可愛いさに、自我が保てなくなってしまっている……


「ジュリアス……あなた…素が出ちゃってるわよ!!まぁ…ローズちゃんの可愛さは、常軌を逸してるけど……!!ねぇ…ローズちゃん…お義母様にギュッとさせて〜〜〜」


 ジュリアスを鼻で笑った後、ローズに向き直り、胸の前で手を組むと体をくねらせお願いする。


 それを見たジュリアスがローズを後ろ手に庇い「寄るな変態!!」と言い放つ。


 ジュリアスに一蹴されるも、お構い無しにルンルンでローズに近づくとエリオットはローズをムギュっと抱き締めた。

 その瞬間ローズは思わず「グエッ」と声を漏らしたが誰に聞かれる事も無かった……


 ルイが可哀想な子を見る目で見ていた以外は……


 そんな風にジュリアス達と水辺で楽しんでいると、アルベルトが大きな声で叫んだ。


「おーい!!ローズ!!準備出来たぞ!!」


 いつの間にか、砂浜の一画にテーブルがセットされていてテーブルの上には真っ白なクロス、その上に綺麗に並べられたお菓子のマカロンやカップケーキ、フルーツゼリー、軽食でラップサンドに、ピロシキの様な物やピンチョス、数種類のお茶のセット、お酒、人数分の椅子にパラソル…

 一体何処にそんなに入っていたのか……ローズはビックリし過ぎて思わず数歩、後退ってしまった。

(異世界マジックだ!用意して下さった方々ご苦労様です……)


 それでもアルベルトが呼んでいるので、有無を言わさずジュリアスに抱き上げられて、お茶の準備が整っている場所まで行くと、何故かアルベルトの膝の上へ座らせられる……(解せぬ…)


 給仕が、皆に飲み物を配りクロードが「ローズの初めてのお出かけを祝して」と乾杯の音頭を取ると楽しいピクニックが始まった。


昨日は更新間に合いませんでした。


次回から火・水は更新お休みします!!


引き続き宜しくお願い致します。

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