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32 言葉の力



「ローズちゃん!!明日は皆でお出かけね!!私、ローズちゃんの為にいっぱいお洋服とか買って来たから、何を着ていくか一緒に考えましょう!?」


「はーーい」


 エリオットが帰って来てから1週間ほど経った頃、前にクロードが言っていた、お出かけをする日にちが決まった。


 屋敷からそう遠くない湖へのピクニックに行くのが明日に迫った今日、ローズは初めてのお出かけに、今からワクワクして胸をときめかせエリオットに尋ねた。


「あの!!湖ってどんな所ですか?お義母様は行った事ありますか!?」


「あるわよ〜!!凄く大きな湖で、とても綺麗だし、湖には珍しい砂浜もあるから暖かければ軽く水遊びもできるかもね!」


 エリオットは楽しげにローズに、ウインクして見せた。


「水遊び!!!!!凄ーーーい!楽しみ!!!!」


 ローズは水遊びと聞いて、大喜びだ!!


 何せ前世はスポーツ少女!!水と聞いたら泳ぎたくなるもので、日々、クロード達に抱き上げられて運動不足の為、フラストレーションが溜まりまくりのローズは思い切り泳ぎたくなったのだ!


 数日前の大浴場もとても広くて、誰も居なければ泳ぎたかったが……何せ…………だったもので、あまり動く事も出来なかった……

 今度こそは綺麗な湖で泳ぎまくろうと意気込んでいるが、クロード達が許すかは謎である。


「それじゃあローズちゃん!!明日のお洋服早く決めましょう!!」


 そう言ってエリオットが衣装部屋へローズを連れて行くと、そこは、部屋の内装から全て昨日とは違い新しい物に一新されていた。

 壁紙や家具、洋服、靴、アクセサリーの数々が全て新しくなっている。


「………へっ??………」


(うわっ……!!すっ……ご……!!いつの間に!!??大体……コレに一体いくらかかってるんだろう……?って言うか…私は、まだまだ成長期、洋服や靴なんて使えなくなってからでいいのに……まだ着てない服とか沢山あった気がするけど……ダメだ!!!ここは1つ!!元日本人の私がキッチリ教えないと!!無駄遣いダメ!!絶対!!)


 そう意気込んでエリオットに物申す。


「お義母様!!子供の服なんて直ぐに着れなくなるのに全部、新しくするなんて……無駄遣いは行けませんよ!!」


 腰に手を当てて、プリプリ怒る幼女を、珍しい物でも見るみたいに見た後、愛おしそうに微笑むとエリオットは


「あら!?ローズちゃん!!小さいのに本当にしっかりしてるわね〜!!でも、そろそろ季節が変わるでしょう??それに、この部屋に誰だか分からないような他人が入ってたって聞いたわ!!気付かなかった私達も悪いけど、気持ち悪いじゃない!?そんな部屋や服、ローズちゃんに使わせられないわ!だから内装も服も全て新しくしたのよ!!しかも今回は鍵付き!!クロード達と私しか鍵は持っていないから安心よ!!あぁ…それと、後でクロードから話があると思うけど、この部屋に、ちゃんとした結界を張ることにしたわ!!詳しくは、後で話してくれると思うわよ!!」


 エリオットは鼻息荒く色々と一気に言い終わると、何故か、得意気だった。


「なんかすみません。ありがとうございます。」


 ローズは、いつもはふざけた調子のエリオットが色々考えてくれていた事に感動してお礼を言った。


「あら??子供が謝る必要なんてないわよ!あなたを守るのが私達の役目だもの!ローズちゃんが安心して暮らせるように、これからも頑張るわよ!!お義母様に任せなさい!!」


 エリオットはそう言って自分の胸を軽く叩くと、ローズの頭を優しく撫でた。

 その仕草が前世の母親と似ている様な気がして、何故だか凄く泣きたい気持ちになった……

 見た目も性別も全く違うのに、ローズに対する愛情が母親のそれと同じように思えたからだ。


 ローズはそのままエリオットに抱き付くと、ギュッと抱きしめて「ありがとう…お義母様大好き!!」と小さく呟いた。


 それを聞いたエリオットは、あまりの嬉しさに我を忘れてローズを抱き上げると部屋を飛び出し、クロード達に自慢する為に屋敷中を走り回りだした。


 そして居合わせた屋敷の人間達に自慢しまくったのである。


 ローズはもう2度と、エリオットに好きとは言わないと心に誓うのだった。




***



「クロード様、ジュリアス、お仕事お疲れ様です。もうお仕事は大丈夫なんですか?」


 ローズは可愛らしく小首を傾げて、クロード達を労った。


「はぁ…ローズは可愛い!!見るたびに可愛くなるから、もう……片時だって離したく無い!!お茶し終わったら一緒に執務室へ行こう!!そして隣に居ておくれ!まだ終わってない仕事があるんだが、ローズが居れば頑張れる気がする!!」


 また、訳の分からない事を言い出したクロードだが……ジュリアスが笑顔で同意する……!!


「それはいい考えですね!!」


「あんた達何言ってるのよ!!今日は私がローズちゃんを見る日よ!!早く飲んで、とっとと仕事に行きなさいよ!!」


  エリオットが横目で軽く睨むと、クロード達を嗜める。


 今は、ローズお気に入りのガゼボでクロード達とアフタヌーンティー中だ。

 ローズはそうだと、気になっていた結界の事をクロードに聞いてみる事にした。


「そう言えばクロード様、さっき、エリオ……じゃない……お義母様が、言っていたんですが私の部屋に結界を張るとか!?」


 ローズはエリオットの視線に負けて言い直した……

(なんだろ…エリオット様って……普段は物腰柔らかいのに偶に有無を言わせない目をするんだよね……)


 エリオットの目力に軽くビビるローズに向かって、クロードがサラッと爆弾を落とす。


「あぁ…!それなら、もう張ってあるよ!!」


「…….えっ??……(いつ……??)……」


 ローズはビックリし過ぎて固まってしまった……


 その後クロードが教えてくれたのは、この国では魔道具という物があるらしく、それをこの国の人は日常的に使用しているらしい…

 ローズは日本に住んでいたので、あまり気にしていなかったが、水道もお風呂も調理場の道具も、あらゆる物に魔道具が使用されていて、この国では、無くてはならない物らしい。

 ただ、結界を張ったりする奢侈品は、結構高価な物らしく、一般的にはあまり手に入らないらしい…

 それを直ぐに用意出来るクロード達は流石としか言いようが無い。

 その、結界の魔道具は、色々種類があるみたいだが、ローズの部屋に使用するのは、魔道具に魔力を流し、登録すると、その登録者以外の者が無断で結界内に入ると登録者に伝わるらしく、それに加え無理に入ろうとした者は外に思い切り弾かれるらしい…………(怖っ!!)


「あれ??でも私は、登録して無いですよね!?魔力ってどうやって流すんですか??」


 ローズは自分の魔力の事は全く分からないので、クロード達に聞いてみた。


「あぁ…それなら、もうローズが寝ている間に済ませておいたから大丈夫だよ!!子供は魔力の使い方がまだ分かっていないから、魔力じゃなくても、魔力が含まれている血液や体液で大丈夫だから………ねっ……!」


 クロードは丁寧に説明してくれてはいたが、最後に含みを持たせる様な言い方にローズはなんだか嫌な予感がした……


「………ねっ!……って??………」


 ローズの頭にハテナが浮かんでいると、すかさずルイが答え出した。


「寝てる時に出てた、お前のヨダレで登録したんだよ!!」


「………っ………」


 (いやーーーー!!!やめてよ!!だって……しょうがないじゃん!!幼いし……ヨダレぐらい出ちゃうよ……もう……やだ〜〜心は乙女なのに……)


 誰も何も気にしていないが、なんたってローズの心は16歳……!!自分がヨダレを垂らしていた事でさえ恥ずかしいのに……ヨダレを垂らして寝ている所を見られ……まさか採取までされるとは……彼等もここまでくれば完成形態と言っても過言ではないと、ローズは苦虫を噛み潰したような気持ちで考えていた。


「あと、コレも渡しておくよ!!」


 ローズのそんな思いなど全く気付いていないクロードは、そう言って、綺麗なブローチをローズに手渡した。

 それは、純銀製の楕円の枠にクロード達の瞳の色の瑪瑙が嵌め込まれていて中央に薔薇を銀で象られているアンティーク調のブローチだった。


「コレは!?」


 とてもキレイなブローチだが、何故、今、手渡されたのかローズは分からなかった。


「これを付けていると、私達にローズの居場所が分かるようになっているんだ!!」


おぉ…う……異世界のGPSですね!!流石、過保護の極みです!!愛が重いです!!まぁ…別にいいけど……


 クロード達は、自分達が側に居たのに連れ去られた事を酷く気にしていて、二度とローズに怖い思いをさせないと、とても神経質になっているようだが、そんな事には全く気が付かないローズは、クロード達を完全に親バカ扱いである。

 そんな親の心子知らずなローズの思いに、更に追い討ちをかけるようにクロードは


「そうだ!大切な事を忘れていた。ローズ……エリオットに大好きと言ったらしいな!!」


「…………」


 (はい……言いましたけど…….何か??)


 ローズが不思議そうに首を傾げて無言になっていると、クロードは少し不貞腐れ気味にローズに訴える。


「私は…一度も言われた事が無い……….」



 (あぁ……そう言う事ですね……本当、いくつになっても……男って……)


  男性経験豊富そうな事を思っているローズだが、前世合わせても好きな人すらいた事が無い恋愛素人である。


 だが、クロード達に溺愛されまくっているので、彼等に対してだけは何故か少し強気だった……ローズのクセに…


 ローズは、いい女気分でクロードを見つめると…


「クロード様…お仕事頑張って下さいね!大好きです!!」


 そう言ってクロードに抱きついた。


「ローーーーズ!!なんて可愛いんだ!!もうダメだ!!!離したくない!!ジュリアス……1人で仕事に戻れ!!!」


 ローズを強く抱き締め返すとそのまま抱き上げ、また、きつく抱き締めた。


 ローズが「クロード様苦しいです…」と言うまで抱き締めたまま下ろして貰えないのだった……


 そしてジュリアスに冷めた顔のまま注意を受ける。


「何を仰っているんですか?残っている仕事は貴方じゃないと出来ないでは無いですか……早く戻りますよ!!」

 そしてローズを切なそうな顔で見つめると

「……ローズ様……あの……」と歯切れ悪くローズを見つめ続ける…… ジュリアスもローズに言って欲しいようだ…

それを察したローズは……またも、いい女気分で…


「ジュリアス様、いつも色々してくれてありがとうございます!!大好きです!!」


 ローズはそう言いながらジュリアスに抱きついた。


「……っ……クロード様……やはりローズ様も執務室へ連れて行きましょう!この可愛さは犯罪です。外へは出しておくのは危険です!!!」


 ジュリアスは片手でローズを抱き締めると、もう片方の手で額を抑えて天を仰いだ!!

 そして目を血走らせてクロードに訴えた。


 するとクロードは「よし!!行こう!!」と真剣な顔でそのままローズを抱え上げた。


「…えっ??……ちょ……えっ??……」


 この後、エリオットにローズを奪還されるも、全く仕事にならなくなった2人を見て

 ローズは、人に安易に大好きは、言ってはいけない行為だと学んだ日になるのだった……


 



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