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23 let'sクッキング


「料理長!!今日は、宜しくお願いします!!」


「はい!ローズ様!こちらこそ、宜しくお願いしますね。ただし刃物や火を使うのはダメですからね!いいですか?」


「はーい!!」


……



 ローズは今、ルイのバースデイパーティーを行う為に、朝から厨房にいる。


 プレゼントなどは買えないので、元料理部のスキルを活かして、ケーキでも焼こうと思い至ったのだ!!


 ルイは、アルベルトにお願いして稽古と称し、ローズから引き離してもらっているところだ。


 普段から早朝や、アルベルトの空いている時間に稽古をつけてもらっているルイは、薄々、何かを勘付きながらも、渋々アルベルトについて行った。


 ローズは、ジュリアスにお願いして、料理長に話を通して貰い、料理長とジュリアス監視の元、ルイにケーキを焼く事にした。


 いくら幼女と言えど、前世は料理部!!!自信満々のローズは、意気揚々とキッチンに立った!!




***



 「では、ローズ様!早速、始めましょうか!?コイツは、厨房見習いのディタです。今日一日、ローズ様についてケーキ作りを一緒に行いますので、宜しくお願い致します。私もパーティーの準備等で、常に見てはいられませんので、分からない事があれば何でもディタに聞いてください。では、失礼致します。」


 そう言うと料理長は、ディタに「しっかり見てやれよ」と言い、今日のパーティーの準備に取り掛かりだした。


……


 ケーキ作りに取り掛かって数分………ローズは、調理台の前で愕然としていた……。


 まず秤もなければ、レシピも無いので分量も分からない!電動泡立て器も無ければ、電子オーブンもない……

 この世界の食材は基本、前世と同じで食材に困る事はないが、高校入った直後に彼氏欲しさで入った料理部の知識なんて、あって無いようなものだった。


 ローズは、半泣き状態でケーキのスポンジ生地を混ぜるが、幼女の幼い手で混ぜるのには限界があった……!!


「ふっんぬぬぬぬ……うぅ〜………全然混ざらない……ふんぬ〜〜〜!!!」


……


……


「……ローズ様……とても上手に生地が混ざっていますね!!後は、私が確認してみますからね!」


……えっ???まだ、全然混ざって無いけど……しっかりと混ぜられてないから、ダマになりまくってるよ……!これで焼いたらお腹壊しますけど……


 そんな事を考えているローズから、サッと生地を取り上げると、見習いのディタは手際良く混ぜ始めた。


……


「ローズ様…大変…頑張りましたね!!ほら、とても上手くスポンジの生地が混ざっていますよ!!」


ジュリアスは目に涙を浮かべて感動してる。


「あ……ありがとう……」


(そりゃそうだろうよ!!ほぼ半分以上プロが混ぜたんだから、ジュリアス…お前の目には一体何が映っているの!?怖いよ……!!ジュリアス……)


 ローズがジュリアスに若干の怯えを見せている間に、見習いのディタは生地を綺麗に混ぜ終え、ケーキの型に流し込むとニッコリ笑ってローズに喋りかけた。


「それではこの生地を焼き上げている間に、生クリーム作りをしましょうね」


「は〜い!!」


 生クリーム……前世から思ってたけど、電動泡立て器が無いと、これ…大変な作業なんだよね……


 そんな事を考えている間にディタが「まずは泡立ての見本を見せます」と、生クリームを手に取り、手際良く混ぜ始めた。


 それを見ながらローズは、コレは見てるだけで泡立つので、電動泡立て器より便利だなぁとアホな事を考えているのであった。


 ただ、これでは一体誰が作ったケーキになるんだろうとローズはクリームを泡立てるディタを眺めながら漠然と思うのだった。


「では、あとは今見せた見本の様に、こちらを混ぜて仕上げて頂けますか?」


 そう言って、ディタは笑顔で、ほぼ完成されている生クリームをローズに手渡した。


「………はい………」


(なんか本当にスミマセン!!これが噂の接待プレイ的な物なのですか??

 こんな幼女が、大人の男性を従えて、気を遣わせるなんて……!!教育上、絶対良くない気がするんだけど……!!流されるな自分!!しっかり自分を持て!!)


 などと、前世の価値観を頼りに自分を叱責するローズは、どう考えても厨房の人達の邪魔でしかなかった。


 (本当申し訳無い………)


……


……


 そうして焼き上がるのを待つ間に、料理人達に給仕のような事をさせて、ジュリアスとローズは厨房の横でお茶をする、マジで仕事の邪魔な奴らだった。




***




「さぁ!!生地もキレイに焼き上がって、しっかり冷めたので、先程、作った生クリームを塗ったり、この切ってあるフルーツを、飾り付けたりしましょう。」


「はーい!!」


……



……


(む……ず……何…??この幼女の手…??いつも、いつも、全然、思い通りに動かせない!!コレは本当に作りたてなケーキなのか??

 私の見てない所で、一度落とした訳じゃ無いよね??

 誕生日のお祝いと言うより、罰ゲームに近い気がするけど……

 自分で作ったけど……全然美味しそうじゃない……!!全く食べたく無い……!!)

 

 そんな事を考えているローズとは反対に、感動しているジュリアスが瞳を潤ませながら話しかけて来た。


「ローズ様……素晴らしいケーキが出来上がりましたね」


「本当に、とても美味しそうです!!」


 ジュリアス…ディタさんよ…君達の目は節穴なのか??

 

 そこへ料理長も来て、素晴らしいと絶賛するのでローズは堪らず目を逸らし、居た堪れなくなるのだった。




***




 「ルイ!お誕生日おめでとう!!」


 ローズは、庭が見渡せるバルコニーでルイを待ち構えていた。


 バルコニーには、ダリア、ガーベラ、サルビア、マリーゴールドなど色彩豊かな花達が綺麗に飾られていてバルコニーから見える園庭も相まってバルコニーがとても華やかに彩られている。


 そこに、スイートピーをモチーフにした様な、ノースリーブのハイウエストドレスで、肩から胸の間に透け感があり、白から徐々ピンクになっている本物のスイートピーの様なドレスを着たローズが立っていて、手には先程、頑張って編んだであろう花の冠を持ち、ルイにおめでとうを言いながら、ルイの頭の上に被せたのだった。


 ルイは、顔を真っ赤ににして俯いていて、いつもなら嫌がる花冠も嫌がる素振りは見せずに、小さな声で


「……ローズ…ありがとう……」


 と、ローズに向かって呟いたのでローズは、とても嬉しそうに破顔した。



「はいはい!ルイ君良かったわね!さぁ、主役はこちらにいらっしゃい!!」


 少しニヤついているエリオットに、エスコートされて、ルイはローズが用意したお誕生日席に着席する。


 机の上には、ローズがジュリアスに習ったばかりの拙い文字で、お誕生日おめでとうと書かれたプレートが置いてあり、その手前にカトラリーセットが用意してあった。



 ルイは瞳を潤ませながら、暫くプレートを見つめた後、


「最高の誕生日だよ!!」


 と、瞳を潤ませながらローズに笑いかけた。


 その、ルイの笑顔がとてもキレイに見えて、ルイの笑顔を見たローズの時間も一瞬…止まってしまう程だった。



……



 そうして皆がやっと席に着いた頃、クロードの軽い挨拶と共にパーティが始まった。


 今回は、丸いテーブルなので、皆が料理を囲む様に、ルイを真ん中にして右にローズ、ジュリアス、ギルバート左にエリオットクロード、アルベルトと言う順番で席に着いている。


 皆で他愛もない話をしながら、ルイの誕生日を祝い、食事を食べ進め、そろそろ食事も終わろうとしてきた頃、ローズ作の、問題のケーキが運ばれてきた。


 運ばれて来たケーキを見たローズは、材料は高級品だし、味付けはプロがしたんだから不味いわけ無いと、開き直り、グチャグチャな見た目は、見て見ぬ振りをした。


 テーブルの上に置かれたケーキを見て、皆が一瞬止まった様な気がしたが、直ぐ持ち直したクロードが真っ先に声を上げた。


「ローズ!!!とても美味しそうなケーキだね!!こんなケーキは、見た事がないよ!食べるのが勿体無いくらいだ!!」


 軽いイヤミでも言われたのかと、勘ぐりたくなる程の、クロードの賛辞の次に、エリオットがローズに声をかける。


「こんなに小さいのに、とても頑張ったのね!!私、女の子の手作りケーキなんて、初めて食べるわ!楽しみよ!!」


 純粋に褒めてくれている様なエリオットの言葉に、ローズは少し安心した。


「あぁ本当に素晴らしいな、物作りだけじゃ無くて料理も出来るなんてローズは天才かもな!!」


 ギルバートの少し大袈裟な賛辞にローズは少し恥ずかしくなるが、アルベルトは簡潔に


「とても美味しそうだ!頑張ったな!!」


 と、褒めてくれたので、ローズはまた嬉しくなった。


 ジュリアスは目に涙を浮かべて感動していて、それを見たローズは、作ってる時からずっと一緒に居たじゃんって、内心つっこんでいた。



***



 和やかにパーティーが進んでいく中、ローズが楽しそうに笑っている。

 その、笑顔のローズの死角になる位置で、1人の男性が、柱の横から、じっと……ローズを見つめている……



「ハァ…ハァ…ハァ…俺のローズ、俺の天使、俺の……俺の……」



 誰かの視線を感じて、ローズが辺りを見回すも、クロード達以外誰もいない……


 気のせいだったのかと頭を傾げるも、そのまま幸せな空間に身を委ねていくローズだった……




***



「ローズ…本当にありがとう!人生で一番、嬉しい誕生日だったよ!」


 ルイは嬉しそうに顔を綻ばせた。


「ルイが喜んでくれて嬉しい!!こらからもヨロシクね!!」


 ローズもルイに笑顔でかえす。


「うん、ヨロシク!!あの、グチャ……ヴッンンッ……ゴホッ…!可愛いらしいケーキも美味しかったよ!!」


「今!!!グチャグチャって言おうとしたでしょ!?やっぱりグチャグチャって思ってたんじゃん!!まぁ、グチャグチャだったけどさ!!」


「ごめん!!ごめん!!そんなグチャグチャ言うなよ!!あっ!間違えたグチグチ言うなよ!!」


「あぁーーーーまた言った!!しかも馬鹿にしてる!!チクショウ!!もう少し大きくなれば、私だって……」


「ローズ……猫が剥がれてるぞ!!女の子がチクショウなんて言うなよ!!プッ…クッククッ!!」


「むっ…………んん………」


「ふふっ、なんだよそれ!!ホラもう寝るぞ!ベッドに入れ!!」


 ローズは、頬を膨らませながらも素直にベッドに入って横になる。

 その横でルイもベッドに入り、2人は向かい合わせに向き直った。

 いつもの気安い雰囲気に、少しホッとしたローズは、今日は一日中、慣れない事をしていた事もあり、多少、気を張っていたのか、久しぶりにルイにお願いをした。


「……ねぇ…ルイ……お耳触ってもいい??……」


「……仕方ねぇな!今日だけだぞ!ホラ寝ろ!おやすみ…ローズ………いい夢を!」



……



 ルイも目を閉じ、ローズに耳を触られながら、ローズの事を考える。


 ローズ…俺の守るべき大切な存在…

 出会った時は、こんなに大切な存在になるとは思ってなかったのに、どんどん俺の中に入り込んできて、今では彼女無しの人生は考えられない。

 誰よりも優しく、誰よりも清らかで、誰よりも輝いている。

 天真爛漫なその姿は、見ていて飽きない。

 俺の何に変えても、どんな奴からも守ってやりたい!

 この気持ちが何なのかは、まだ良く分からないけど、これだけは言える、ローズの為なら俺は何でも出来る。


   大切な……俺の唯一……


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