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22 誕生日



「えっ!!ルイ!!!明日、誕生日なのーーーー!!!」


 朝っぱらから、ローズの絶叫が木霊した…



 いつもの如く、クロードが朝から色気、ダダ漏れ状態で、ローズの頬や髪を撫で起こしてから、ローズの支度をクロードが嬉しそうにしている時の、何気ないルイの一言


「そう言えば、俺、明日、誕生日だ!」


 今日、何する?くらい軽い、ルイの言葉に、ローズが過剰反応したのだ。


 ローズは、今現在も、何故そんな大切な事を今まで黙ってたのかと、プリプリ怒っているが、ルイは、何故 ローズが怒るのか、理解できていないようだ。


「だって!!お誕生日は、皆んなでお祝いする日でしょ!?パーティーの準備を急がないと!!」


 慌てるローズを、ルイが慌てて止める。


「おい!!お祝いなんてしないぞ!!俺は従者だし、獣人には、毎年自分の誕生日を祝う習慣なんて、特に無いぞ!!お祝いって言ったら、新しい年になる時に皆で盛大に祝うか、成人した時や結婚、出産、年齢で言えば、10歳とか20歳とか、10年単位で区切りがいい時に祝うくらいかなぁ?11歳になる俺は特に祝う必要なんかないんだよ……」


 それを聞いたクロードが、軽く頷きながらルイに同調する。


「そうだな!!それは私達の国も同じだ、長く生きる分、10年単位では祝うが、一年単位では、あまり祝わないな。それこそ女性だけかな一年単位でお祝いするのは!!

……そう言えば……ローズの誕生日は、いつなんだ!?

 まさか……私とした事が……自分の事も、年齢も、何一つ分からなかったのに、誕生日なんて分かる訳ないよな!?

 全く……気が付かなかった!!!大変だ!!ローズ…すまなかった!!早く支度して、朝食の席で皆に相談しないと!!」


 そう言うと、クロードはローズの準備を手早く終わらせ、直ぐさま抱き上げて、急いで朝食へ向かった。



……



 朝食の席には、ジュリアス以外は、まだ来ておらず、ローズが顔を出すと、ジュリアスは、嬉しそうに顔を綻ばせ、ローズを迎え入れてくれた。


 暫くすると、皆が食事の席に集まって来たので、ローズは、クロードから、今日の担当のエリオットに手渡されると、エリオットの膝の上に座った。


 (何故だ……)


 それを他の大人達が、少し羨ましそうな目で見ている。


 どこかのカリスマアイドルになったような気分だぞ……


 そして、エリオットの膝の上に座っているローズにピッタリとくっつき、ジュリアスが甲斐甲斐しくローズの世話を焼く。


 (ヤバいゼ!!ジュリアスさん……母性本能が溢れ過ぎて、ダダ漏れしてるよ!!)


 エリオット自ら、ローズに食べさせ、ジュリアスが口の周りを拭く、その一連の作業がまるで要介護老人の世話ようだが、朝食がある程度、落ち着いた頃、クロードが神妙な面持ちで話しを切り出した。


「私は、ある重要な事柄を忘れていた。」


「何だ??どうした!?そんな重要な事か?」


 素早くアルベルトが警戒すると


「どうしました??何か重要な事案でもありましたか?私は把握しておりませんが……何か忘れていますでしょうか!?」


 ジュリアスが、ローズにデザートを食べさせながら不思議そうに問いかけた。


「俺達は、大切な事を忘れている……それは………ローズの誕生日だ!!!!」



「「「「なっ!!!!!」」」」


   皆の時間が止まった………


「あっ…ああぁぁぁ!!私とした事が、ローズ様の誕生日を把握しておりませんでした!!!それなのにこのように日々、伸う伸うと過ごしていたなんて……」


 頭を抱えだすジュリアスに


「まぁ……ジュリアス……落ち着けって!!で??ローズいつなんだ!?」


 ギルバートがジュリアスを嗜めて、ローズに問いかけると、何か思い悩んだ後、ローズは小声で


「………分かりません………。」


 と呟いた。


「あっ………!ごっ…ごめん!!!ローズ!!そうだよな!!記憶が無いのに自分の誕生日なんて、分かるわけ無いよな!!」


 しまったと、申し訳なそうなギルバートが慌ててローズに謝ると、ローズを抱きしめていたエリオットが、ローズの頭を撫でながら口を開いた。


「そうしたら、皆で決めましょうよ!!ねぇ〜!ローズちゃん!!」


「はい!!お願いします!!」


 エリオットの発言で、皆の空気が変わり、そこからローズの誕生日会議が始まった。


 まず皆は、自分と同じ誕生日がいいと主張し出した。


 次に彼等は、自分と出会った日だとか、いつが気候がいいからその日にするとか言い出して全然話が纏まらなかった……

 このままでは埒があかないと皆が頭を抱え出した時…

 遂に痺れを切らしたアルベルトが、ローズに問いかけた。


「なぁ。ローズ…!!ローズは、いつがいいとかあるのか!?」


 暫く考えたあと、ローズは…


「う〜ん………私は………この屋敷に来た時がいいです……!!あの日、アルベルト様に助け出されて、ルイと2人で公爵邸に保護されたから、私の人生は大きく変わった気がするんです!!皆と出会って、大切にされて、あの日がなければ、今、私はここには居なかったから。皆への感謝も込めて、出会えたきっかけでもある、あの日がいいな!」


「ローズ………!!君はなんて素敵な女の子なんだ!!!ジュリアス!!いつだか、きちんと把握してるか!?」


 クロードは、感極まってエリオットごとローズを抱きしめた。


 ジュリアスも直ぐに「把握しております」と言うとローズの頭を優しく撫でた。


 エリオットは、頭上で瞳を潤ませて


「何この子、本当にいい子なんだけど」


 と呟いているし、アルベルトは


「お前は、本当にいい女だな!」


 なんて妙齢の女性が聞いたら卒倒しそうなセリフを口にしている。


 ギルバートも感動しているし、あのルイでさえ感極まっているようだ!!


(マジか…あんな何気ない言葉に、そんなに感動するのか?異世界基準が未だに理解できないぞ!!日本人なら謙虚、堅実、感謝をモットーに生きているのに……

 私は大人になっても、絶対、その三原則は忘れないように心掛けないと!!)


 そう…心に固く誓ったローズだった……。


「じゃあ、ローズの誕生日は、私と初めて会った日だな!!」


 クロードは、溢れるような笑顔で喜びを表している。


「俺が助け出した日でもあるな!!」


 アルベルトは、どこか自慢げだ。


「私もおりましたよ!私達の初対面が誕生日なんて……光栄です…ローズ様!!」


 どこか光悦としてるジュリアスが、天を仰ぐ。


 他の2人は少し不満そうだが、ローズの言葉が、可愛過ぎたのでそれ以上は何も言わなかった。

 ただ、無言でエリオットは、膝の上に居るローズの事をギュッと抱きしめた。



 皆が思い想いの感情に浸っていると、ローズは、おずおずと話し出した。


「あの…私の誕生日を決めてくださってありがとうございます!ですが、皆様に一つお願いがあるんですけど、いいですか?」


「「「「「あぁ、いいよ(ゼ)(わよ)」」」」」


 皆の声が揃った!!


「ありがとうございます!!!それじゃあ明日、ルイがお誕生日なので、お祝いをしたいんです!獣人国やこの国では、一年単位ではあまり祝わないって聞いたんですが、私はどうしてもお祝いしたくて!」


「あら!?そんな事!?いいじゃない!!楽しそうだし!」


 エリオットが真っ先に賛成してくれた。


「また可愛らしい事を言い出して、大丈夫だよ!」


 クロードが優しく頭を撫でる。


「では、私は色々手配致します。」


「あぁ、俺もいいぞ!!」


「俺も賛成だよ!!」


 ジュリアスが準備を手伝ってくれるし、アルベルトもギルバートも賛成してくれた。


 皆から賛成を貰って、ホッとしたローズは、話を続ける。


「良かった!!でも、それだけじゃないんです!ルイだけじゃなくて、皆様の誕生日も一年ごとにお祝いしたいんです!!あまり、この国の習慣ではないけど、私は、皆様の誕生日に、出会えた事の奇跡を喜び、感謝して、ありがとうの気持ちを送りたいんです。細やかなものでもいいので、お祝いしてもいいですか?」


「「「「「………………」」」」」


 皆、目を見開き固まったまま暫く言葉が出ないようだ……


「こんな事ってあるの??もう……いい子すぎて…怖いわ…!!本当に人間なのよね??」


 エリオットが感極まって意味の分からない事を言い出した。


「天使だ……天使は本当にいたんだ!!」


クロードも少しおかしい……


「ローズ様…貴方様は危険です。屋敷の中に閉じ込めて外の人間と触れ合わないよにしないと……。皆が狂ってしまう……」


(いやいや……貴方が一番狂ってますよ…ジュリアスさん……誰かに洗脳でもされてるんですか!?)


「ローズ、お前…それは反則だ!!可愛すぎるぞ!俺でも外に出れないように囲い込みたくなる!」


(ヤバい!!!アルベルト様まで洗脳され始めてる!!)


「ローズ、君はどこまで素敵なんだ!!そんな事が現実に起こり得るなんて!私まで神に感謝したくなる!!」


(ギルバート様まで……!!何なの!!この人達!!感動する沸点が低すぎる!!)


 ………っで???結局、貴方達の誕生日はお祝いしてもいいんですかねぇ???


 皆がローズの言葉に感動し、ローズは1人で困惑している中、ルイは、顔を真っ赤にして、ずっと黙って俯いていた……

 朝の何気ない会話でポロッと発してしまった自分の発言を完全に後悔しているルイだった……


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