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19  最後の1人


「ローズ、ここに居たのか!?少しいいか?話があるんだ!」


「クロード様…大丈夫ですよ!どうしたんですか?」


 今日は、アルベルトがお休みなので使用人が準備してくれたおやつを持って、いつもの木の下に行くと敷物を履いて、楽しくピクニックをしていた。


 ローズは何故だか…アルベルトの膝抱っこだが……(解せぬ…!!)


 すると不意にクロードが靴を脱いで敷物の上に上がるとアルベルトの横に座り、ヒョイとローズを持ち上げ自分の膝の上に座らせた。


「あっ!!テメェ……」



「……ローズ、今日は何をしてたんだ?」


 横で睨むアルベルトの事など素知らぬ振りでローズの頭を撫でながら愛おしそうに話しかけると


「朝からアルベルト様と一緒に過ごしていて、今はピクニック中です!」


 ローズは楽しそうに元気に答えた!


「あぁ…それは良かったね!しかし、外で見るローズは…また一段と可愛いな!!」


 また、いつもの誉め殺しである……彼らにとっては、軽い挨拶なのかもしれないが、元日本人にはすんなりとは受け入れられない習慣だった……


「あ…りがとう…ございます……クロード様も素敵ですね!」


 ローズもクロード達に習って褒め返してみたところ、ローズの大人な返しに成長を感じ、感動したクロードは、自身が素敵と、褒められた事も相俟って瞳を輝かせてローズを更に褒め讃える。


「そんな返しが出来る様になったんだな!!ローズは天才だ!!!」


「………」


 結局誉め殺しである……


 親バカすぎる……あっ…違った……祖父バカすぎる!!失礼な事を思いつつも、いちいち大袈裟なクロードに呆れて無言になっているローズには全く気づかないクロードはマイペースにも話を続け始めた。


「それはそうと、さっき言っていた話なんだけど、婚姻契約を結んでいる、最後の1人の都合がやっとついたみたいで、来週にでもこっちに来るみたいだから宜しく頼むな!!」


「あーアイツやっと来るんだ!!面倒くさっ…!」


 クロードの言葉を聞いたアルベルトは眉を寄せ心底、面倒くさいと言う顔をしている。


(えっ!!また面倒な人が来るの??嫌なんだけど……ただでさえ皆キャラが濃くて平凡女子の手には余るのに……何処かに普通のイケメンいないかなぁ???って…まだ私、幼女だったわ!!でも皆顔だけは良いんだよね!完全なお爺ちゃんだけど……)


「どんな人なんですか?」


 また失礼な事を考えていたローズだが、しれっと素朴な疑問をクロードにぶつけてみた……するとクロードから帰ってきた答えは


「ゔーーん……強いて言うなら王子様??」


 などと言う素っ頓狂な答えだった……


(…はっ??王子??…ってあの…絵本に出てくるような、真っ白タイツに頭に冠かぶって馬に乗ってる??)


 ローズの女子力の無さから、王子様に対する想像力が乏しすぎて頭にハテナが浮かんでいると、アルベルトが適当に答えだす……


「まっ!会えば分かさ!!女には優しいし!…って言うか…もう、ローズ返せよ!」


 そう言って無理矢理クロードからローズを取り上げると、アルベルトは満足そうにローズに向かって微笑む。


 結局アルベルトの関心はローズの事だけなのだ!!




***




「ローーーズちゃーーん、!!今日は私がお洋服決めるわよ!!お義母様と一緒に選びましょ!!」



「あ……はい……宜しくお願いします……お義母様」


 初めの頃は、ずっとエリオット様と呼んでいたローズだが、お義母様と呼んでおいた方が面倒くさくないと気が付いてからは、ずっとお義母様と呼んでいる。

 お義母様と呼ぶとエリオットはとても嬉しそうに破顔して、その後一日中ご機嫌なのでローズにとっても色々と都合がいいのだ。


………


 今日は、新しい家族候補との顔合わせなので、ローズは少し緊張気味だった。

 そんなローズの緊張を、吹き飛ばすほど陽気なエリオットが今日のローズのコーディネーターだ。

 ジュリアスは、最後まで自分がやりたそうにしていたが、エリオットに強引に押し切られていた……(どんまいジュリアス!!)


「さぁ!!今日はどのお洋服にしようかしらね??

ローズちゃんは何色が好き??」


「ゔ〜〜〜ん……オレンジとか黄色が好き!!」


「………」


 そうローズが答えると……何故か、ルイがプルプル震えながら顔を真っ赤にして俯いている。


(どうしたルイさん……お腹でも痛いのかい?)


 何故ルイが俯いて震えているのか理解出来ないローズは首を傾げながら不思議そうにルイを見つめていると


「やだーーーローズちゃんそれって……ルイ君の瞳の色じゃない!!!ローズちゃんの初恋!!!初恋なのーー!!!」


 エリオットが興奮し過ぎて目をギラつかせながら鼻息が荒く詰め寄って来た。


「えっ…えっ…あーーー!!ち…ち…ち…違うんです!!たまたま…たまたまで……」


 ローズは、何となく前世からの好きな色を言っただけなのに、この世界で色には特別な意味があり、好きな相手の瞳や髪色を服などに使う傾向があるのを忘れていたのだ。

 日本は基本、黒目、黒髪が多いので日本で育ったローズはそう言う概念がない。

 何気なく言っただけの言葉なのに、この世界ではルイに好きって言っているようなものである。

 

    まぁ好きだけれども……

 

 ルイは完全に巻き込み事故の被害者であった……


 ごめんよルイ……と、心の中でローズは何度も謝った。 


「ふふっ!!2人とも赤くなっちゃってか〜わ〜い〜!!」



「「…………」」




***




「よし!!決めた!!じゃあ…今日はコレ!!」


 エリオットが手に取ったのは、ピンクオレンジ色のノースリーブの膝丈のドレスで、全体はオレンジ色で、その上に薄いピンクのレースが重ねて付いていて、風が吹くとレースがフワフワと揺れる。

 レースの表面には所々モスグリーンの葉の刺繍がされていて、その上に少し大きめの立体的な黄色い花が縫い付けてある。

 レースと一緒に花も揺れる、とても可愛らしいドレスだった。


 髪の毛をふわっと巻いて頭の上に花のカチューシャをすれば天使のように可愛らしい子が鏡の前に立っていた。


エリオットは完成した姿を、手を叩いて褒めちぎり、少し落ち着いた後、ニヤニヤしながらルイを見た。


「どう??ルイ君……!ローズちゃん可愛いでしょ!?」


 チラッと横目でローズを見たルイは……


「……っ……かわ……い……ぃ……ょ……」


 顔を真っ赤にして瞳を潤ませているルイは、一応…ローズを褒めたもののその後、全くローズと目を合わせる事はなかった……

 自分の色を身に纏ったローズがあまりにも可愛らしく見えているからだ!!

 

(おぉ……ルイさん……そのまま蒸発するんじゃないかってくらい顔が真っ赤ですよ!!最後、声が小さすぎて何言ってるのか聞こえなかったし!!可哀想にエリオットにイジられて……10歳思春期男子には軽い拷問ですよね…ご愁傷様です。)



 エリオットは終始ご機嫌で、ルイを見てはニヤニヤしているので、人の悪さが滲み出ているなぁとローズは心の中で思っていた。





***




「ローズ!!!今日はまた一段と可愛いね!!ローズが眩しすぎて目が開けられないよ!!」


 いつもより目を見開いたクロードが大袈裟にローズを褒める。

 言っている事とやっている事が滅茶苦茶なクロードに正気の沙汰とは思えないローズは「…ありがとうございます……」と無心で答えるのだった。


「ローズ、もうすぐ彼が来るから、今日は門まで、お出迎えしに行くよ」


 今までとは違う迎え方に、高貴な人でも来るのかと疑問に思うが、クロードは、特別意識はしていないようでいつも通りローズを抱き上げる!

 ローズが来てから、初めての門前でのお出迎えなので、少しの緊張しているローズは、ドキドキしながらも大人しくクロードの腕の中に収まっている。

 今までは、まだ小さいからと門の近くにもあまり行った事がなかったので、その場所に行くのもほぼ初体験であるからだ!!

 

 クロードに抱っこされながら長い廊下を連れられて行くと、玄関前には全員が揃っていた。(おぉーなんか壮観だ…!!)


 暫くそこで皆と会話をしていると、門番から間もなく到着するとの合図があったので、そのまま皆と門前まで移動して到着を待つ。


 すると一台の馬車が近づいて来たが、前には馬に乗った騎士が数名、後ろにも数名騎士が付いて警護するという、物々しい雰囲気の中、馬車がゆっくりと到着した。


 馬車自体も凄く高級感があり、遠目に見ても偉い人が乗っているんだと分かる作りになっていた。

 馬車の外装は金を使った煌びやかな装飾がしてあり、横には大きな紋章が付いていて何処かで見た事のあるような紋章で、ローズはなんだか凄く嫌な予感がしていた……


 馬車が停車すると、馬に乗っていた騎士の1人が颯爽と降り馬車の扉を開けて中の人物に「どうぞ…」と促す。

 すると、馬車の中から銀髪に赤目の作り物のようなとても綺麗な男性が現れて、優雅に馬車から降り立った。

 その姿を見たローズは、(王子様だ……!!)と、心の中でつぶやくのだった。


 クロードの言っていた意味がやっとわかった気がしたローズだった。


 ローズは馬車から降りた王子様を、クロードに抱っこされながら眺めていと、王子様は綺麗な所作でローズの前に立ち、腰を折ると優雅に挨拶をした。


「初めましてお嬢さん!!僕はギルバート・ファディル!この国の王弟で、今は、隣の領地を任されている公爵だよ!!」


(やっぱり!!嫌な予感はしてたけど、まさかの王族……面倒くさそう……って……あれ……??でも…皆と名前が違くない??家族になるのは別の人なの??そうすると彼は何故ここに??)


 ローズは戸惑いながらも丁寧に挨拶をした。


「初めまして、ギルバート様!ローゼマリーです!!」


 前世合わせても、初めての王族との対面にローズはとても緊張していた。

 側で見ても、ギルバートはとてもキレイで存在感があり、いくら素敵な男性に出会いたいと思っていたローズでも、ここまでは望んでいなかったと思う程だった。

 立ち姿も気品に溢れていて、白シャツの上に黒地に襟から裾にかけて赤のラインが入った長袖のロング丈のジャケットに同様のベストを着用し、ズボンとダービージュースを履いた、完全な王子様だった。

 そんな王子様もといギルバートはニッコリ微笑むと小さなローズの手を取りキスをした。


「可愛らしい、お姫様!これから家族になるみたいだから宜しくね!私も諸々の調整がついて、暫く滞在出来るから、仲良くしてくれると嬉しいな!!ローズ…!」


「………」


 ローズは、色々な疑問があったのだが……ギルバートからのキスの衝撃で何もかもが吹っ飛んでしまうのだった










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