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18 質問


「あの!!質問してもいいですか!?」


 ローズは勢いよく片手を上に突き上げた!ローズには、どうしてもずっと気になっている、クロード達に聞きたい事があったのだ。


「いいよ…どうしたんだい?」


「なんでしょう?」


「どうした!?ローズ!!」


「あら?何かしら??」


 今日も元気な可愛らしいローズの姿に癒された様で4人はニコニコしながら返事を返した。



***



 今…ローズ達は、皆で夕食後に談話室で会話を楽しんでいる。

 皆、各々で違う仕事をしている為、誰かしらが欠けることが多く、夕食で全員が一緒になる事は殆どない。

 なのでせっかく全員がそろった今日は、ゆっくり話でもしようかと言う事になり皆で談話室での食後のひと時を楽しんでいた。


 クロードは、ウイスキーと一緒に数種類のナッツを摘んでいる。


 アルベルトは、ウォッカをストレートでライムをたまに咥えながらスモークされた肉などを齧る。


 エリオットは、シャンパンをイチゴやフルーツと一緒に。


 ジュリアスは、ローズの横に陣取って、世話をしながらワインをチーズや生ハムと一緒に嗜んでいる。


 ローズたっての願いで、ルイも珍しくローズの側に座り、オレンジジュースと軽食のサンドウィッチを、頬張っている。(さっき夕食、食べた筈なのに…)


 ローズは、フルーツジュースを飲みながら、皆から少しずつ色々な物を食べさせてもらっていた。




***




「あの……皆さんって何歳なんですか??大人なのは分かるんですけど、凄く長く生きる国って前にいってたので、今、何歳なのかなぁって??20歳は過ぎてますよね??」


 ローズの何気ない質問に真っ先に嬉しそうに顔を綻ばせたエリオットが反応した。


「あら!!可愛い事言うのね!!」


 そう言って、ローズの方に向きながら机上に片手で頬杖を付くと、ニコニコしながらシャンパンを一口飲んでいる。


「本当ですね…可愛いすぎます!!」


 ジュリアスは、目を優しく細めて愛しそうにローズを見ると、手の甲でローズの頬を優しく撫でる。


「あぁ…本当に可愛いな!」


 クロードは、ウイスキー片手に優しく微笑むとローズの頭をクシャリと撫でた。


「あまり、可愛い事を言ってくれるなよ!!」


 アルベルトは、皆に褒められて恥ずかしそうなローズを楽しそうに眺めると、ウォッカを一気に煽った。


「…………」


 皆がローズを順番に褒めている中、ルイは何故か無言で前を向いてサンドウィッチを頬張っている。


(おぉ…うん…可愛い連呼…なんかスミマセン!!!……っで??何歳なんですか??それにルイさんは何故無心でサンドウィッチを食べてるんですか?…私……何か、聞いちゃいけない事でも聞きました??ただお世話になっている人達の年齢を知りたいって言う…幼女の素朴な疑問なんですけど…….)


 そんなローズの心の葛藤などお構いなしに、4人での年齢確認が始まった。


「クロードって何歳になったのよ!?私、年齢ってあまり興味がなくって!!」


「あぁ…私は、94歳になったよ!」


「じゃあ私は、3歳若いから91歳ね!!なんか…ある程度歳を取ると忘れちゃうわよね!!!ジュリアスは??」


「私は102歳ですね。アルベルト様は89歳でしたか?まだまだですね!」


「……あぁ!そうだよ!!!ジュリアス!!少し年上だからって……上から目線やめろよ!!しかし…よく覚えているな!!……まぁ…でも、あっという間だったな!!まだまだ、皆、これからだけどな!!」


 4人が昔を懐かしむようにワイワイと年齢を確認し合っているが、ローズは現在…それどころではなかった…


(マジか…!!!まさかとは思っていたけど……クロード達って…前世の祖父母より年上なんだけど……!!!見た目は20代のイケメン達だけど、完全におじいちゃんじゃん!!!私との年齢差!!!そりゃ甘やかすよ!!祖父母が孫を可愛いがるのと一緒じゃん!!)


 何故、ルイが無言だったのか…理由が分かったローズは、二十歳なんて馬鹿らしい事を言っていた自分を恥ずかしく思いつつも、クロード達に対して思い切り失礼な事を考えながらジュースを飲んでいた。

 すると、そんな失礼な事を思われているとは知らないクロードが、嬉しそうに声をかけてきた。


「分かったかい?ローズ…! !20歳なんて可愛い事を言ってくれてたけど、私達は大体100歳前後だ。ただローズから見たら大人でも、この国では100歳位じゃ、まだまだひよっ子だよ!!だからゆっくり一緒に大人になろうねな」


 そう言ってクロードはイタズラっ子ぽく微笑んだ。


「………はい………」


(一緒に大人になるって……4〜5歳と100歳前後を一緒にしないでよ……!って……この先…なっ……が!!想像するだけでクラクラする……私って今、何歳よ??4歳??5歳???これからどんだけ生きるんだよ!!マジか……)


 気の遠くなるような話しに、ローズの頭がついていかずクラクラしていたが、ふと気が付いた疑問を口にする。


「ルイは??普通の獣人はどのくらい生きるものなの??」


 我関せずと、1人で違う世界に行っていたルイは、突然振られた質問に意識を戻すと面倒くさそうにローズを見つめ返して


「あぁ??多分…100歳くらいなんじゃ、ないんですかね??」


 普段から自分の事に、全く興味が無いルイは、少しぞんざいに、けれども周りを気にして敬語を使ってローズに答えた。

 ただそれだと、あまりにも簡略し過ぎているので、横からジュリアスが的確に補足し出す。


「まぁ…基本、獣人の寿命は、100歳前後ですが、ルイは魔力が他の獣人よりも高そうなので、もう少し長生きすると思いますよ!200歳前後なんじゃないですか…!? あぁ…それと、そのうち言おうと思っていたのですが…ルイもローズ様も、もう少し大きくなって成人を迎える頃に、お互いが納得できるなら従属契約を結んで、魔力を供給しながら一緒に生きて行くのもいいと思いますけど……如何ですか?ゆっくりでいいので、考えてみてもいいと思いますよ。」


 ジュリアスの言葉を聞いてローズは、初めて異世界で気が付いてから、ずっと一緒に居てくれるルイを、家族みたい思っているので、この先もずっと一緒に居られれば嬉しいと純粋に思った。

 けれども従属契約と言う形だと、ルイを従えてしまっているような気がして…どうしても素直にずっと一緒に居たいとは言いづらかった……


「私は…ルイさえ良ければ…ずっと一緒に居たいけど……でも…契約で縛るのは…嫌だな……ルイの気持ちは絶対に無視したくないから…ルイが大人になったら一緒に考える!!」


 ローズは、遠慮気味に少し口籠もりながら答えるも、最後は自分にも言い聞かせるようにハッキリと口にした…!!


「そうですか……優しい答えですね!」


 ジュリアスは、ローズの人を思いやる純粋で優しい気持ちに、眩しいものでも見るように目をほそめた。


 するとルイが少し照れ臭そうに俯きながら話し出した。


「……俺は…もう……お前の側にずっと居るって、決めている…!!だから…ずっと一緒だ!」


 そう言って最後は顔を上げ力強くローズを見つめた。


(あっまーーーい!!!流石ですよルイさん!10歳のクオリティじゃない!日本に居た馬鹿な同級生達に、爪の垢でも煎じて飲ませたい!!!ハァ……キュンキュンする!!)


 そんな呑気な事をローズが考えていた時、ルイは、ローズと一緒に閉じ込められてからの事を思い返していた。

 小さな体で必死に耐え、家族の事も自分の事さえ分からないのに前向きに生きようとするローズの事を、いつからか、とても大切な存在に思っていて、年上の自分が守らなくてはと考えるようになっていた。

 まだ幼いローズの事を、ルイも大切な家族のように思っていた……

 かなり手のかかる妹なのだが…


 そんな時、ルイの言葉にキュンキュンしている能天気なローズを、可愛らしい生き物でも愛でるように微笑むクロードは、重要な事を口にする。


「微笑ましいな。だが今は、お互いの気持ちが同じだからと言って、契約は出来ない!!ルイは知ってると思うけど、人は子供の頃から普通に魔法を扱う獣人と違って成人すると同時に、魔力検査を行う!魔力の種類や量を調べて決定してからじゃないと、一般的な魔法契約は結べないんだ!!だから、まぁ…まだ時間はたっぷりある!それまでゆっくり考えろ!!」


 クロードの説明に、もしかしてと少し不安になったローズは瞳を揺らし寂しそうにクロードに問いかける


「そうしたら、私との養子縁組も成人してからですか?家族になるのも魔法契約なんでしょ?」


 そんなローズの不安を察知したのか、安心させるように優しく微笑むと先程の説明の補足を、愛しむようにローズの頭を撫でながら説明し出す。


「あぁ…そうではないよ!養子縁組と結婚は例外なんだ。契約主となる人の魔力を主として契約するから、子供や扶養者の魔力は関係無いんだよ。簡単に言えば契約主が責任を持って、自分の魔力で保護対象者を守る為の契約かなぁ?」


「そうなんですね!!良かった……大人になるまで家族になれないのかと思っちゃった!!」


 そう言ってローズは、安心したように胸に両手を当て可愛く微笑んだ。

 その姿を見たクロードは、胸を撃ち抜かれたような衝撃を受け


「可愛い事を言うな!!もう離してやれないぞ!」


 そう言いながらローズの事をギュッと抱き締める。


「何!?この可愛い生き物!!」


 エリオットもローズの可愛らしい発言に胸を押さえて悶えている。


「可愛すぎて頭がおかしくなりそうです。」


 ジュリアスもローズの可愛さに頭を抱えながら崩れ落ちる。


「来いローズ!!今日は一緒に寝るぞ」


 アルベルトはクロードに抱き締められているローズに向かって両手を広げてアピールしている。


「ちょっとダメよ!!!今日は私の番よ!!」



   「「「 チッ 」」」



  その瞬間、3人の舌打ちが部屋に木霊した……。




***




 寝支度を整えたローズとルイは、いつものようにベッドで横になっている。


 エリオットは薔薇を浮かべたお風呂を1人でお楽しみ中だ。


 ルイは、いつもより心なしかご機嫌の様子だったが、今は、ローズの方を向いて眠るために目を閉じていた。

 ローズは眠る為に目を閉じているルイに再度問いかけた。

 今日の出来事が、ローズとルイの絆を一層強めた気がしたからだ。

 異世界で気がついてから、家族も居なくてとても心細かったので、ルイも自分と同じように、ずっと一緒に居てもいいと思ってくれている事が、本当の家族のような絆が出来た気がして、とても嬉しかったのだ。


「ねぇ…ルイ…この先もずっと一緒に居られるといいね……?」



「…………」



「もう……寝ちゃったの??」


……


……


「はやっ……おやすみ……ルイ……」


 ローズの問いかけにも返さず無言のルイに、疲れて眠ってしまったのだろうと軽く息を吐いたローズは自分もねむろうとベッド中で蹲る。


……



……




「スー……スー……スー……」



……



 ローズの静かな寝息が聞こえてきた少し後、ルイはそっと目を開いた。

 横を向き幸せそうに眠るローズを眺めながら、ずっと一緒に居たいと言っていたローズの姿を思い出す。

 とても幼いローズの、切実な思いにルイの胸は締め付けられる様に苦しくなった。

 この小さな存在を、何があっても守らなくてはと、自分の中で改めてかたく誓った夜だった。


「………おやすみ……ローズ……ずっと一緒だ……」


 そう言って優しく頭を撫でるとルイはローズの額にキスをした。




「あら??ルイ君……やる〜〜〜!!」


 その声に驚いて振り返ったルイは、エリオットが扉に背を預けて立ちながらニヤニヤしている姿が目に入った。


「…チッ………うっせ!!……」


 ルイは、見られてた事が恥ずかしくて目線は逸らしつつも苛立ち紛れに悪態を吐くと


「ふふっ!!青春ねぇ〜〜!おやすみなさ〜い!カワイ子ちゃん達!!」


 ニヤついたエリオットが、ルイを見ながらローズの額にキスをした……



……



……



「……くそっ………はぁ………寝よ………」


クロード 94歳


アルベルト 89歳


ジュリアス 102歳


エリオット 91歳


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