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17 お願い


「ルイ〜〜お願いがあるの!!」


「なんか…嫌な予感がするんだけど……」


 部屋に入って途端 ローズが甘えた声でルイに話しかけるも、ルイは、そのローズの可愛らしい顔が、何か企んでいるように思えて無意識に腰を引いて眉間に皺を寄せてしまっていた…。




 今、ローズ達は自室でエリオットを待っている。


 あの一連の騒動の後、ミレーナは、すぐに別の取り巻き達の所へ行き、そこで毎日楽しく過ごしているようで、

 その事を眉間に皺を寄せながら嫌そうにしたジュリアスが教えてくれたのだが、様々な情報を細かい所まで知っているジュリアスに一体、何処からそう言った情報を仕入れて来るのか、ローズはいつも疑問であった。


 エリオットは、ローズともっと交流を深めようと、商団には戻らずに現在も屋敷に居着いているのを、若干ウザいなぁと思っている事は、ローズだけの秘密だった。

 ローズと一緒に過ごす為の、ローズローテーションにも加わったので、クロード達は、回ってくる順番が遅くなったと不満そうにブツブツと呟いているのをローズはいつも楽しそうに眺めているのだった。


 そして、今日はエリオットの順番だったのだが、現在 彼は急な来客の為、不在だったのだ。



***



「あのね……クロード様達にナイショで、お庭に行きたい!!」


「……はっ??何で…??別に言えばいいじゃん!?」


 そんな事を内緒にする意味が分からないと、首を傾げるルイに、ローズは有無を言わさず言う事を聞いて欲しい為、最終手段の必殺技を使い仕留めにかかった。


「いいから〜!!おーねーがーい!!」


(必殺!!美幼女の上目遣い!!)



「チッ……仕様がねぇーな!ホラ!じゃあ今すぐだ!!行くぞ!!」


 (ちょろいゼ!!ルイさん)


 舌打ちをしながらも満更でも無さそうなルイにローズはニヤつきながら心の中でガッツポーズをする。

 ルイはローズの上目遣いに弱かった……

 ただでさえ大切に思っているのに、とにかく小さくて可愛らしいローズの何かを訴えるような仕草はとてつもなくルイの庇護欲を掻き立てるのだ。

 あの大きな澄んだ瞳で見つめられると何故か断れなくなってしまい、何故かなんでも叶えてあげたくなったしまうのだ。

 そんな風に大切に思っているローズに、ちょろい扱いされているルイは、そうとも知らずに渋々了承する。

 そして、ローズを少し乱暴に抱き上げて、ニヤッと片側だけ口角を上げると…突然、ローズの自室の5階から飛び降りた。


「ひっ………」


(ぎゃーーーー死ぬーーー怖っ!!!怖ーーー!!!飛び降りるなら、飛び降りるって言ってよ!!まぁ……言われても困るけど……怖すぎて、声も出なかったじゃん!!)


 ローズは、突然5階から飛び降りた事による浮遊感が、あまりにも衝撃的すぎて言葉も出せずに、大きな目を零れ落ちそうな程 見開いてルイを見つめているが、ルイは軽い意趣返しと言わんばかりに何食わぬ顔でシレッとローズに問い掛ける


「よし…っと!!ホラ!!……っで??何処に行くんだ??」


 少しの間、呆然としていた、ローズだったが、一度首を振り気を取り直してから元気に答える。


「……いつもの木の所!!」


「はいはい…!!」


 呆れたように返事をするルイは、一度ローズの頭を少し乱暴に撫でてから抱えたまま歩きだした。


 ルイも、クロード達に大分、感化されているようだ。




「ホラ着いたぞ!…っで?一体何したいんだよ??」


「 Let's木登りーーーー!!!」


「……はっ?……えっ……はっ?……」


 ローズの突然の宣言にいつもの少しだるそうな目を、大きく見開いているルイは戸惑いを隠せなかった。

 あまり人間の女の子の事は知らないが、比較的活発な獣人の女の子でさえも、スカート姿で自ら木に登ろうとする子など居ない為、ローズのしようとしている事が理解出来なかったのだ。

 ローズは活発で日々色々と自分で動きたがるが、まさか木に登りたいと言うとは思わなかったようでルイは未だに戸惑っている。

 そんなルイの戸惑いはお構いなしにローズは木に小さな手足をかける

 でも、自分の体が思ったよりも小さく、手足に力もないので、思うように登れない。


「おっ……おい……っ……ダメ……危っ……やーーめーーろ!!!」


 ハッと我に返ったルイは、焦ってローズを木から剥がそうと、ローズの腰を掴んで引っ張った。


「はーーーなーーーしーーーてーーー!!」


「あっ……ダメだって………コラ……降りろ………」


 2人の攻防が、暫くの間、続いていた…



……



「「はぁ…はぁ…はあ…はぁ…」」



……



「……お前……何考えてんだよ……!」


「絶対……登れるのに…!!」


「そんな小さいのに…無理に決まってんだろ!!」


 ルイに、上から頭を鷲掴みにされて怒られたローズは、少し不貞腐れたように下から軽くルイを睨む。


「ルイのケチ!!」


 ローズにケチ呼ばわりされたルイは、小さくため息をついた後、少し呆れたような顔をすると、ローズの顔を見ながら諭し出した。


「……ケチって……お前……無理に決まってんだろ!!万が一、怪我でもされたら、俺がアイツらに殺されんだろが!!!」



「そんな…大袈裟だ….よ……?」


 ルイの言葉を否定するも、クロード達ならやりかねないと、いまいち確信が持てなくなったローズは、最後が少し疑問形になってしまう……

 そんなローズを眺めつつ、どうして木に登るなんて言う発想が出たのか不思議に思ったルイは、首を傾げながらその疑問を口にした。


「なぁ…何で木に登りたいんだ?」


「だって…上まで登ったら気持ち良さそうでしょ!?」


 ローズの単純だが純粋な答えに、可愛らしくて微笑ましく思い、何とも形容し難い愛しさが込み上げたルイは、一度目を閉じてからもう一度見開くと、そのまま木の上を見つめてからローズの方に振り返った。


「あぁ…そう言う事!!じゃあ…仕方ねぇな!ホラ、来いよ!ちょっとだけだぞ!!」


 そう言うとルイは、ローズの可愛らしいささやかな願いを叶えてあげようと思い、諦めたような、それでいて納得しているような顔で、ローズを両手で優しく抱き上げると、一呼吸置いた後 一瞬で木の上に飛び上がった。


「うわーーー!!!高ーーーい!!ルイ!!気持ちいいね!ありがとう!!!」


 ローズは、とても嬉しそうに目下に広がる圧巻の景色を見つめ目をキラキラさせて楽しんでいる。


 木の上から見る園庭や公爵邸はまた違った趣がありローズをとても感動させていた。


「あぁ……別に……このくらい、どうって事ねぇよ!!…でも……お前にだけだ…!」


 そう言って素っ気なくも愛を感じられる返事をしつつ、木に登っただけなのに純粋に喜んでいるローズの横顔がとても神聖なものに思えて、眩しいモノでも見るように目を細めると、ローズの頭を優しく撫でた。


(甘ーーーい!今日一の甘さ、頂きました!!ツンのデレですね!そのルイさんの……何とも言えない表情……素敵です!!!甘酸っぱいです!!思春期男子……ご馳走様です!!)


 いつものように、変態じみた事を考えているローズの顔に気付くと、さっきはあんなに神々しかったのに一瞬でアホ面に変わっている事にさっきの顔は幻だったのだかと、眉を寄せ若干呆れながら呟いた……


「お前……また……顔…ヤバいぞ…!! おい……ボーとすんなよ…!!落ちるって……!!」




 今日も平和です……。





「「あっ!!エリオット様忘れてた!!!」」




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