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15 大人


「ねぇ〜ローズちゃん!!後で少し、私とお話ししましょう?」


「はい!いいですよ!!」


 今日は、紅雨が降り続き、庭をいつもとは違う形で色付けていた。

 外に出られないローズは、ジュリアスに書斎に連れてきてもらい、お気に入りの本を読んでもらっている。


 そこへ…ふらっと、一人でエリオットが尋ねて来たのだった。


 今 、ローズ達が居る書斎はとても広く、沢山の本が並んでいる。

 ジュリアス達も、調べ物をする時や、暇な時に、よく使用するらしく、天気の悪い日などは、連れて来てくれて、ローズの好きそうな本を読んでくれたり、図鑑を見せてくれたりする。

 ちなみに、今のローズのお気に入りは、冒険物である。

 旅人が、色々な所を旅しながら、仲間と出会い成長していく話である。

 ローズの乙女心が発達するのは、まだまだ先のようだ…….

 ジュリアスは、法律関係や領地関係の本をよく見ている。


 ただジュリアスの今のお気に入りは、膝の上でローズに聞かせる物語りだった。


……


……


「じゃあ、午後のお茶でも、一緒にしましょうよ!!大丈夫よ!ミレーナはちゃんと置いて来るから!!」


 そう言うと、エリオットは、ローズに軽くウインクして去って行った。


「大丈夫ですよ……ローズ様…!私もご一緒しますので!!」


 あんな事があったので、ローズの事が心配で仕方がないジュリアスは、クロードに頼まれている仕事を無視して、付き合うと言い出している事は、ローズには秘密である。


「ありがとうジュリアス!!」


 何も知らないローズは満面の笑みでお礼を言うのだった。


 昨日は結局、晩餐会は中止になり、ローズの様子を見ながら、もう少しローズが落ち着いてから改めて行う事になっていた。

 ミレーナは、自分の歓迎会ではないのかと怒っていたらしいが、エリオットに上手く宥められたようで、今朝は、ご機嫌で朝食を取っていたらしい。

 ちなみに朝食は、エリオットとミレーナが客室でとり、ローズ達はいつものメンバーと食堂でとった。

 ローズは、表面上は元気にしているが、食欲はまだあまり無く、今朝もフルーツとヨーグルトしか食べられなかった。

 その事を、クロード達は、とても心配しているが、あまり態度に出してもローズが気を使ってしまうと思い、ローズの変化に注意しつつ、表面上は普通に接している。


 このまま、何事も無くミレーナが帰ってくれる事を、全員が願っていた。




***



「ローズちゃん…昨日はごめんなさいね…」


 エリオットは、こんな小さな子供に、恐怖を与えてしまった事に、多少なりとも心が痛んでいるようだった……


「いえ……もう大丈夫です!!ご心配を、おかけしました!」


 ローズは、昨日の事を言われ少し顔が曇ったが、しっかりと答えた。


「あら!!!あなた…お利口さんね!!!本当に女の子なのかしら…!?まさか…小さい頃は、皆こうなの???ジュリアス…この子ちゃんと見てないと、このまま育ったら大変な事になるわよ!!」


 あんな事があっても、しっかりと人に配慮できる小さな女の子に衝撃を受けたエリオットは、このまま素直に純粋に育ったら男性達が群がって大変な事になると、今から心配になる。


「貴方様に言われずとも分かっておりますよ!!」


 ジュリアスは、ローズの純粋さや素直さに、癒されつつも、このまま育つと男性達が群がり純粋なローズが汚されては困ると、普段から気を揉んでいるので、ローズが大きくなる前に何か対策しなくてはと考えていた。


「………」


(えっ??何???礼儀正しいと、何か問題でもあるの???寧ろこっちは、前世で、礼儀正しくしなさい!! しなさい!! って耳にタコが出来るくらい言われて育ったんだけど……??今更、この染み付いた日本人気質が、抜けるか〜?? イヤ〜でも……ミレーナ様みたいには、なるとは思えないけど……??まさか…このまま過保護に育てられたら、なるのか??えっ…??なんか、嫌なんだけど!!)


 そんな事を考えつつミルクティーを一口飲んだ。


 ローズ達は、今、庭の見える一室で、アフタヌーンティーをしている。


 メンバーはエリオット、ジュリアス、ローズの3人で、アルベルトとクロードは仕事中である。


アルベルトは騎士団で部下の指導をしていて参加出来ないが、クロードは、執務室で領地の仕事をしているので、仕事が一段落したら、顔を出すと言っていた。


 ルイは、当然のようにローズの後ろに控えてる。


 ミレーナは、客室に居るようだが、ちゃんと大人しくしているかは、皆の疑問でもあった……


 本日のおやつは、フルーツゼリーに可愛らしいカップケーキ、軽食でサンドウィッチが並んでいる。


 飲み物は数種類の紅茶と葡萄ジュースが用意されている。


 エリオットは、アッサムティーをストレートで、ローズは、蜂蜜入りのミルクティー、ジュリアスは、ローズ専属の給仕を行なっている。


「ねぇ〜ローズちゃんは、食べ物だと何が好き?」


「う〜ん…なんでも好きですけど、野菜たっぷり入ったスープが好きです!!あとミルクティーが最近好き……!」


 好きな物の事を考えているうちに笑顔になってしまう単純なヤツである。


「ふふっ!では、ローズ様……今日から、毎日、野菜のスープをお出ししましょう!」


 ローズのこの笑顔を常に見たいジュリアスは、急いで料理長に伝えに行こうとする。


「…えっ……い……や……あの……えっ……」


( いや、いやジュリアスさん……極端過ぎるよ!!毎日食べたら飽きるから!!愛が重いよ……….!)


「ジュリアス……あなた…誰???私の知ってるジュリアスじゃないわ!!!いつ、誰と、入れ替わったの??怖いわよ…!!」


 昔から無愛想で無表情が常のジュリアスは、人にイヤミを言ったり、誰かに仕返しをする時以外は、笑顔になる事が滅多にないのでエリオットは、ジュリアスの笑顔に本気で恐怖を感じていた。


「さぁ!!ローズ様!!何を言っているか、分からない人間は放っておいて、このゼリー美味しそうですよ!私が食べさせてあげましょう……さぁ…ローズ…様…口を開けて……」


 余計な事を言うなよと、エリオットを軽く睨むジュリアスは愛しいローズに向き直り、蕩けるような甘い笑みを浮かべて手ずから食べさせる。


「…う…うぅ……あ〜ん……」


 ローズはとおずおずと口をあけた。


(流石、ジュリアスさん!!安定の、エロスがダダ漏れですよ!!)


「おっ…美味しい…です……。あ…りが…とう…ジュリアス…」


 ローズは、ジュリアスの色気に当てられてクラクラしてしまい、本当は食べ物の味など全く分からなかった……


「ジュリアス……あなた…子供に そんな、フェロモン振り撒いてどうする気よ!!!ジュリアスの本気っ…恐ろしいわね!! まぁいいわ!さぁ!気を取り直して、ローズちゃん!!私達、家族になるんだから仲良くしましょう!!私、ずっと女の子が欲しかったの!!!お義母様って呼んでもいいのよ!!」


「………」


(おぉ…うん…なんか凄いですね!!!お義母様って……あなたは男性ですけどね!!!)


「さぁーーローズちゃん!!はいっ!!!」


「……お…義母…様……?」


「イヤ〜〜ン!!!可愛い〜〜〜!!!ぎゅっとしていい??抱っこしていい??」


「………」


「それ以上、近づかないで頂けますか!?ローズ様に悪影響を及ぼします!」


「何よ!!!ケチっ!!!ローズちゃん私ね、キレイな物が大好きなの!!女の子って、キレイでしょ!?頭の先からつま先まで気を使って、男を惑わすの!!素敵でしょ!だから私は、女の子が大好きなの!ローズちゃんが今、着ている洋服とかも、クロード達に頼まれて、私が用意したのよ!女性が苦手な彼等が、女の子を引き取ったって聞いて…本当にビックリしたんだから!!」


 興奮気味なエリオットに押されてローズはダジタジだ……


「そう…だったんですね……ありがとうございます!ジュリアスもありがとう…!でも…ジュリアス達って女性が嫌いなの??」


「ローズ様は好きですよ!」


 ジュリアスは都合の悪い質問をシレッと躱す。


「あ……ありがとう……ジュリアス……そういえば、あの…エリオット様……ミレーナ様は、放っておいて大丈夫なんですか?」


 ローズはミレーナがそろそろ突撃して来そうで不安になりエリオットに尋ねると


「あぁー大丈夫よ!!しっかり、疲れさせておいたから、まだ寝てると思うわ!!」


( ………はっ?? ぎゃーーー!!何???なにーー!! 大人!!!えっ…えっ…どうゆう事??そうゆう事なの??幼女だと思って!!心は思春期だぞ!!色々、知ってるんだからな!!エリオット…ヤバい…大人だ!!要注意だ!!!)


 エリオットの疲れさせた発現にパニックに陥っているローズは、横目でチラッと周りを見ると、斜め後ろに控えている、ジュリアスは苦虫を噛み潰したような顔をしているし、後ろに居るルイは、心なしか固まってるような気がする……


( うん……気持ちは分かるよ…!!! ルイ……ファイト……!)


「そ…そうなんですね……!」


「もうー!ローズちゃん!!家族になるんだから、敬語なんて要らないし、エリオット様じゃなくて、お義母様でしょ!」


「………」


 ローズが、エリオットのノリについて行けずに困っていると、ノックの音がして部屋の扉が開いた。


「あぁー良かった!!まだ、終わってなかったんだな!」


「クロード様!!!お仕事、終わったんですか!?」

(よかった…ミレーナ様かと思って、一瞬…ドキっとしたよ…)


 一瞬ミレーナかと思い身構えたローズだが、クロードが来てくれた事により嬉しくなって心なしか言葉が弾んでいる。


「いや…仕事は、まだ終わって無いんだが、とりあえず一段落したからな、私も休憩しに来た。ジュリアス、私にも紅茶を淹れてくれ」


 そんな事を言っているクロードだが、本当は残っている仕事を無視してやってきたのだ!!

 クロードは、ローズもまだ不安定だし

エリオットとお茶をしている事がどうしても気になってしまい仕事が手に付かなかったのだ!!


「畏まりました」


 クロードが顔を見せた事により、その場の雰囲気が変わり、エリオットの発言のせいによるローズ達の何とも言えない気持ちが軽くなった気がした。


 クロードは、ジュリアスにジャワティーを淹れてもらうと、ローズの横に座り、何故かローズにマフィンを一口食べさせた。


「美味しいか?」


「……はい……美味しい….です…!」


「あぁ…今日も可愛いな…仕事の疲れが取れる…」


 ローズが恥ずかしそうにしながらも一生懸命マフィンを食べている姿に癒されたクロードはひと息吐きながら紅茶を飲んでいる。


(嘘だ!!!そんな事じゃ、絶対疲れは取れない!!)


 ローズは胡散臭気な目でクロードを見つめるも、全く気付かれないうえ愛おしそうに微笑まれてしまう。


「クロード……薄々…気づいてたけど、あなたも末期ね!!みんなをメロメロにする、ローズちゃんの魅力……私も知りたいわ!!」


 エリオットは、ローズの他の女性には無い人間性に徐々に惹かれ興味を持ち始めていた。


「……」


「そんなの見れば分かるだろ!」


「そうですね…分かりますね!」


(おぉ…うん……なんか…すみません。

 でも、ローズは確かに可愛い!中身は平凡な日本人だけど…)


 なんだかんだ言いながらも、和やかな雰囲気の中、皆でお茶を飲む…


 雨も次第に小雨になり、そろそろお開きになりそうな時、急に外が騒がしくなった。


 ミレーナが来たのだ!!


 今は扉の前の護衛が対応しているようだが、止めきれないようだ。

 逸早く、その事に気がついたクロードが席を立ち、ジュリアス達に指示を出す。


「ジュリアス、もうお開きだ!私と先に出るぞ!!」


「承知致しました」


「エリオットも一緒に出てアレを引き取ってから行け!!」


「了解!!もう…起きちゃったのね……」


「ルイはローズを抱えて最後に出ろ!!いいな!!」


「はい!!」


「ローズ…また後でな!!」

 

 そう言ってローズの頭を優しく撫でると


「はい!大丈夫です!!クロードもジュリアスもお仕事頑張ってくださいね!!!」


 ローズは元気いっぱいに微笑んでクロード達を労った……


「「……っん……!!!」」


 クロードもジュリアスも、女性からそんな言葉を掛けて貰った事が無く、そんな気遣いが出来る女性が居るのかと言葉にならずに悶えながら部屋を後にする。



 「ローズちゃんまたね!!」


 そう言いながらエリオットが、部屋を出る瞬間、ミレーナが顔を出した。


 そしてミレーナがローズの姿を見つけ、目があった瞬間、凄い顔で睨まれた気がしたが、すぐにエリオットに連れられて歩いて行ってしまう


 ローズもルイに抱き抱えられて部屋を後にするが、ミレーナの顔が脳裏に焼き付いた様に忘れられなかった……


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