14 エリオット・ファルスター
【 お前…生意気なんだよ!! 】
パシン…!パシン…!と、男にムチで打たれている光景が脳裏によぎる……
ローズは、前の事をフラッシュバックしてしまい体が硬直してしまっていた。
「どうしたんだ!!!ローズ…大丈夫か??」
「ローズ様、大丈夫ですか!?」
「ローズ…どうした…!?」
「「「ルイ!!なにがあった??」」」
ローズを庇いルイがエリオットの彼女を制した声に、驚いた3人が、急いでこちらに駆け寄って来た途端、ローズはその場に縫い止められた様に動けなくなってしまい小刻みに震え出す。
「やっ……怖っ………!!やぁーーー!!こな……いで……!! ルイ〜〜〜! 怖っ……怖いよ〜〜〜!」
ローズは以前、監禁され、躾と称して、ムチで打たれていたので、今でも男女問わず、大人に高圧的な態度をとられると、その時の光景がフラッシュバックしてしまい、恐怖を感じてしまう。
今回も、エリオットの彼女に、突然、高圧的な態度を取られた事により、前の事がフラッシュバックしてしまい、その為、体の大きな彼等が、必死の形相で走り寄って来る姿に、恐怖を覚えて錯乱状態になり、ルイに縋り付いてしまった。
頭では、クロード達は大丈夫だと分かっているのに、気持ちが追いついていかなかった……
最近は、安定していのに久しぶりに見た、ローズの錯乱状態の姿に、クロード達は、辛そうに顔を歪ませるのだった。
クロードは、ローズを怯えさせないように、ゆっくり歩きながらそっと近づき、ローズの前で片膝をつくと、しゃがみ込み、ローズの目線に合わせて、語りかけた。
「ローズ……大丈夫だ!!落ち着いて……私は、絶対にローズを傷つけない…」
ローズは、未だに怯えてを隠せずに前に立っている、ルイに隠れる様に縋り付いている。
その、ルイの服にしがみ付いているローズの片手を、そっと外し、優しく包み込むようにクロードは握り締めた。
ローズは、少しビクついたが、暴れはせずに大人しく手を握られているが、大きな目から涙が溢れている。
「ローズ様…お可哀想に…こんなに怯えて…大丈夫ですよ!私がどんなモノからも必ず貴方を守ります!」
ジュリアスもそっと近づき跪くと、反対側の手を外し、優しく握り締めながら語りかける。
ローズは軽く息を吐いた後、少し安定してきたが、まだ涙を流して、しゃくり上げている。
「ローズ…大丈夫か!?すまない!!守ってやれなくて!絶対に守ると誓ったのに…!!!」
アルベルトは、ローズの前で片脚で跪き、頭を下げた。
「ローズ様が花を見てたら、そこの女性が近づいて来て、ローズ様を威圧する様に脅してきたんだ!!
ただでさえ大人の人を怖がるのに……ローズごめんな……怖い思いをさせて……」
ルイは、エリオットの彼女から目線は外さずに、背中越しのローズに謝った。
それを聞いたクロードは、ローズの手をそっと離すと、立ち上がり鋭い目線でエリオットを睨みつけ、声量は抑えつつも、しっかりと抗議した!!
「エリオット……この状況、一体どう始末をつけるつもりだ!!ローズも最近やっと落ち着いてきたと言うのに…会う時に細心の注意を払えと、言っておいただろう!!!そこの女性のことも、連れ歩くならしっかり管理してくれないと困るんだよ!!」
「ごめんなさい…!まさか、こんな事になるなんて…ちゃんと大人しくしてるって約束したんだけど……もう…ミレーナ……!子供相手に大人気ない事しないでちょうだい!!」
「フン。。。何よ!!まだ女にもなってないような子共を……寄って集ってチヤホヤして!!私は女性なのよ!!!そんな…女にもなってないような子供より…私を持て成さないでどうするのよ!!」
クロードの軽いイヤミを気にも留めずに、ミレーナと呼ばれた女性は、自分本位に文句を言い放つ。
女性が少ない所為で、周りから、チヤホヤされて育つ為、自分への注意など耳に入らず、自分の主張だけを通そうとする。
女性の自分が一番と考える、この国特有の典型的な女性のようだった。
この様な女性達が嫌で、彼等は婚姻契約を結んだと言っても過言では無い。
「エリオット様……これだから女性をこの屋敷に入れないで下さいって、いつもお伝えしているのに……本当に…いつも…いつも……女性は、全てが自分の思い通りになると思ってる……!!申し訳無いのですが、ミレーナ…様…?で、よろしいですか…? とにかく 今後この様な事をされては困ります!!ローズ様に、今後も強くあたる様でしたら、屋敷の近くに部屋を取りますので、エリオット様と其方へいらして下さい!!」
「フン!!何??貴方!!使用人の癖に生意気よ!顔がキレイだからって調子に乗らないで!!もう…いいわ……!あなた…私の部屋は何処???案内しなさい! そしたら私が遊んであげてもいいわよ!!」
「……結構です……!!すまないが……そこの君…!!彼女を客室に案内して下さい……!!場所は分かりますね?」
全然、話にならないミレーナに、疲れたジュリアスは、眉を寄せるが仕方が無いので、近くに居た使用人にミレーナを任せる。
ローズはまだ少し、怯えていたのでルイに任せて、彼等は別室に向かって歩き出した。
「ごめんなさい。きちんと私から言っておくから…今回は大目に見て!!今、ウチの商団、隣国に取り引きしに向かっちゃったのよ!帰って来るのに1ヶ月くらいかかるから、私達だけ此処で下ろしてもらったの、彼女、私にゾッコンだから離れなくって…次は目を離さないようにするから…ね!!」
……
……
「「「はぁ……」」」
3人は一斉にため息を吐くのだった……
***
エリオット・ファルスターは父親の代から商団を運営しているファステリア帝国一の大商団の息子である。
父親と一緒に色々な国を回り、商団運営の勉強をしていたが、クロードの父親と同じ病気で父親を亡くし、跡を継いで商団を運営をしだす。
その時、商談に有利だからと女装を始めると、元々キレイな物が好きだった事もあり、ハマってしまい今や通常スタイルに!!
クロード達とは、父親の代からの仲で、公爵家お抱えの商団という事もあり、子供の頃からよく遊んでいた幼馴染でもあった。
同時期に父親を、同じ病で亡くしたことで、婚姻契約に誘ったところ、了承し今に至る。
***
泣き疲れて眠ってしまったローズは…暖かい温もりを感じて目を開けた……
目線の先にはルイが居て、少し心配そうに、けれど優しく微笑んでローズの頭を撫でていた。
「大丈夫か…?ごめんな……怖い思いをさせて…」
「うんん…!大丈夫……心配かけてごめんね……!! ルイ……私ね……あの人に強く出られたら……急に怖くなっちゃって……ルイは…きちんと守ってくれたよ!!」
ローズは力無くもルイに微笑むと
「お前は…本当に優しいな……」
そう言いながらルイも微笑み返す。
「…普通だと…思うけど…??」
「……そっか……そのまま大きくなれよ!!」
ルイの、ローズが優しい発言の意味が分からずに、頭を傾げていると、ルイは、大きくなれと言いながら、少し乱暴にローズの頭を撫でてきた。
「もうー!ルイ!!髪の毛、ぐちゃぐちゃになっちゃう!!」
「ブハッ…!!おまっ……そんな事言ったって、お前…ヨダレ垂らして寝てたぞ!!!」
「なっ……!!!!」
「お・子・様・!!!……でも、元気になって良かった…!!」
(ルイ…心配かけてごめんね……。ヨダレも垂らしてごめんね…!!チクショーーこの体が幼女でさえ無ければ……!!残念っ!!! でも……今日も、貴方のツンデレは最高です!!!)
……
……
「お前…また…ヤバい顔して……何考えてんだよ……」
……
……
エリオット・ファルスター
身長183㎝ ロングの茶髪を軽く結んで横に流す
グレーの猫目 魔女鼻 赤い口紅 細い体
魔力はオールマイティだがメイン無い。
大商団の経営者で見た目が女性なのに、かなりの女性好き、だが結婚はしない。
クロードの父親と同じ病で父親を亡くす。
クロード達とは幼なじみ。
商団を経営している為、各国を転々としていて、屋敷にあまり居ることはない。