13 顔合わせ
「本日、午後にローズ様にご紹介したい方が、いらっしゃいますので、その予定でいて下さいね」
「はいっ!!」
「ふふっ…いいお返事ですね」
ジュリアスから、伝えられた今日の予定に、ローズは元気よく返事をした。
今は、クロード達3人と、朝食後の一杯をゆっくり楽しんでいる。
クロードとジュリアスは、ダージリンをストレートで飲み、ローズはミルクティーに蜂蜜を少し入れる。
アルベルトは休みを取ったと言って、紅茶にウォッカを少し入れて飲んでいたら、ジュリアスからお小言を貰っていた。
アルベルトがわざわざ休みを取ったのは、今日、これから他の婚姻契約者との初めての顔合わせがあるからで、ローズは少し緊張していた。
「あぁ…今日はアイツが来るんだったな…はぁ…今から….なんだか疲れてきたよ……ローズ…お前の家族になる1人だよ!きちんと紹介するし、私達も居るから心配しなくて大丈夫だからね!!」
( 何……??来る前から疲れちゃうって、どんな人なの??なんか会うのが怖いんだけど……)
クロードは、思い出した瞬間、少し疲れた表情になり、片手で髪をかき上げながら遠い目をしていた。
ローズはクロードが言葉では心配ないと言っているが、全然心配ないような顔ではない気がして少し不安に思っていた……
……
……
初顔合わせを心配するクロードに抱き上げられて、一度、部屋に着替えに戻ったローズは、仕事を終わらせてまた来ると言ったジュリアスが来るのを待ってる間、暇なので、気を紛らわせる為にも、いつものようにベッドの上を、横にゴロゴロ転がりながらルイに話しかけた。
「ねぇ〜〜ルイ〜〜〜!新しい家族ってどんな人だと思う??」
「知らねぇ…!興味なし…!!って…オマっ…また転がって……いい加減…落ちるぞ!!オイ……!!
はぁ……まぁでも……お前には優しいんじゃねぇのか??この国で、女に冷たい奴なんて滅多に居ないんだし……」
「もう…!!ルイだって、本当は気になるくせに!ねぇ〜気になるよ〜〜〜ねぇ〜〜〜!!」
「 ったく……うるさいんだよ……!ませガキ!!チビはチビらしく、黙って俺等に守らていればいいんだよ!!」
ルイはそう言いながらローズなら頭をクシャッと撫でた。
( 甘〜〜〜い!!ヤバい!!ちょっと古いけど使っちゃう!!甘〜〜〜い!!甘すぎるよ!ルイさん!!!10歳でこのクオリティー、ツンデレの極み!!お姉さんはこの先が心配だよ!!今は年下なんだけど…)
……
「お前…またなんかロクでもない想像してそうだな…….ほら、ローズ!そろそろジュリアスが来るぞ!戻って来い!!おい…お前……寝るなよ…!!ったく…!本当……お子様だな……」
***
「さぁローズ、おいで!今日は天気もいいから庭のガゼボに顔合わせの為の準備をしたよ。もう皆、揃ったから迎えにきたんだ!」
ジュリアスが初顔合わせの為に拘ったローズの準備が終わって、少し経った後、クロードが迎えに来た。
今日は、クロードたっての希望で、全体的にグリーンのプリンセスラインの膝下のドレスで、胸元にパールとエメラルドを使ったブローチ、スカート部分にはレースが縫い付けてあり、靴は白いフラットシュースで、足の甲の部分にリボンがついてる。
頭に、白いレースのリボンを使った編み込みを、後ろでまとめ蝶のバレッタで留めた可愛らしい姿だ。
出来上がりを見た本人も本物の人形かと思うくらい、完璧な仕上がりだった!!
( ありがとう!!ジュリアス!!)
「今日のローズは、お姫様見たいだね!!とても可愛いよ!知っているかい?今日のドレスは私の瞳の色とお揃いなんだよ…凄く幸せだ!」
「…そう…ですね….凄く可愛い…ね….」
( 知っていますとも…ジュリアスさんが、私の支度中ずっと、ブツブツ仰っていましたから……)
一頻りクロードに絶賛された後クロードに抱えられて庭に出ると、初夏の日差しの中、色とりどりの花が咲き誇る庭の一角に少し大きめのガゼボがある。
20人位は悠に入れそうなガゼボは、白を基調とした木製の作りで、ガゼボの中には、細長いテーブルと椅子が何脚か置いてある。
テーブルの上には、白い大きなクロスが履いてあり、美味しそうなお菓子が綺麗に並んでいる。
今日のお菓子は、一口サイズのケーキ、フルーツたっぷりのサバラン、トマトやハム、チーズやサーモンなどをのせた数種類のカナッペが並んでいてとても美味しそうだった。
飲み物もシャンパン、ワイン、紅茶にジュースなどいつもより沢山の種類が準備してあった。
そのテーブルの中央に、見知らぬ女性が、2人並んで座り反対側にアルベルト、少し離れたテーブルの端の方にジュリアスが此方を向いて立っている。
「待たせたな………ってオイ…!!エリオット!!今日はローズと初めての顔合わせなのに、知らない人間を連れてくるなよ!ジュリアスも……無闇に入れるんじゃない!!」
「申し訳ありません。客室でお待ちいただく様にお伝えはしたのですが……」
( はっ…?知らない人??何で??どっち??ってゆうか女性??)
ローズは、頭の中がパニックになりすぎて、無意識に、クロードの服をキュッと握りしめていた。
クロードは、その仕草を怯えと勘違いしてローズをギュと抱きしめ不機嫌そうな顔をすると、ローズを抱いたまま席についた。
「あの…クロード様…私…1人で座れるよ…!」
「ローズ心配しなくても大丈夫だよ。キチンと支えてるから…落としはしないよ!!」
「………」
(いや……そういう意味ではないんだけど……)
前世合わせても初めての…イケメン男性の膝抱っこに恥ずかしくて……ローズは困惑気味に主張するも、クロードとは全然、話が噛み合わない……
そこへローズの前に座ってる、茶色の長い髪を束ねて横に流した、グレーの瞳の美しい女性(?)がローズに声を掛けてきた。
「まぁあ!!あのクロードが、幼い子供を膝の上に乗せてるなんて、噂通り溺愛してるのね!初めて見る光景だわ!!こんにちは、初めてまして!貴方がローズちゃん!?私はエリオット・ファルスター、これから家族になる予定みたいだから宜しくね!!」
( えっ?女性?女性なの??女性と結婚しないから皆で契約結んだんじゃなかった???どう言う事???)
突然の美女の自己紹介に困惑してると、横のアルベルトが一つ溜息をついてから、ローズの頭を優しく撫でると、エリオットを注意しつつローズに説明してくれる。
「オイ!!エリオット!ふざけるのもいい加減にしろ!!ローズが困惑してるだろ!!初めての顔合わせなんだからちゃんとした格好して来いよ!!ローズ…コイツはこんな格好してるけど……歴とした男だぞ!騙されるなよ!!」
「あら??ひどい言われようね!!初めてだから、気合い入れてきたんじゃない!!!似合ってるわよね?ローズちゃん!?」
「……はい……」
( やっぱり男性だーーー!!薄々そんな気はしてたけど…!凄い……見た目、完璧!!
仕上がってる!!!むしろ横の女性よりキレイ…………って、横は女性だよね?まさかの男性?もう……全く分からない…)
そんなプチパニック状態のまま、色々考えてるとクロードのすぐ後ろまで来たジュリアスにも頭を撫でられながら慰められる。
「ローズ様…可哀想に…!こんなに小さな子を困らせるなんてダメな人間ですね。一回キチンと分からせますか??しかも、こんなに大切な日に、知らない女性を同席させるなんて……」
( おぉ〜ジュリアスさん意外に言いますね…!!!
流石……溺愛が凄いです!!心なしか、横の女性(?)に睨まれている気がしますけど……私…幼女ですよ……!!!)
「あぁ〜その事については、ごめんなさいね。私が他の女性に会うと知ったら、付いて来るって聞かなくて……ローズちゃんにも紹介するわ、今、付き合っている、私の彼女よ!!!」
「………」
……
……
……
( はっ…?えっ…?はっ…?もう分かんない….?キャパオーバー!!えっ?トランスジェンダーじゃないの?ただの女装男子って事???もう〜パニック!!異世界の世界観についていけない!!)
エリオットに彼女と紹介された女性は、紹介されたにも関わらず、この場で自己紹介はせず黙ったままローズを軽く睨んでいる。
それに気付いている彼等はここで長居するのを止め早々にガゼボを後にする事にしたようだ……
「では紹介も済んだ事ですし、そろそろお開きに致しましょうか?ローズもお昼寝の時間ですしね!また夜に晩餐会がありますので、とりあえずこの場はこれで!!」
ジュリアスの言葉を皮切りに各々席を立ってガゼボの横で軽く言葉を交わす。
ローズは庭の花がキレイなので近くで見たいと、ルイと一緒に少し離れた場所で花を見ながらクロード達を待っていた。
エリオットやクロード達が、今後の予定を示し合わせていると、そっとエリオットの彼女が近づいて来て、クロード達には聞こえないような声で、話しかけてきた。
「貴方、小さいからって調子に乗らないでよね!!彼等はいずれ私のモノになるんだから……小さい癖に、いい男達に囲まれて生意気なのよ!!!」
そう言いながら…怖い目で、より一層ローズに近づいてきた時…
「それ以上ローズに近づくな!!!」
そう言って険しい顔のルイが、ローズの前に立つのだった……