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41 魔術師団 2


「よし。そしたら次は、魔道具を研究している所へ行くぞ。この上の階だからな。皆しっかりついて来いよ!!」


『はーい。今日はありがとうございました!!』


 ダニエルに挨拶した後、バーシルとシスラー達に連れられてすぐ上の階へと歩いて行く。

 階段を登った先は下の階の雰囲気とあまり変わらない感じの場所で扉が一つ付いているだけだったが、扉を開いて中に入ると魔法薬の研究室とは全く違っていた。

 個人個人の机は無く理科の実験室の様な大きめな机と丸椅子が乱雑に並べられていて4階部分まで吹き抜けになっている見上げるほど高い天井に実験を行う時に使用するかの様なガラス張りの部屋が数部屋あり、上の階にも同じ様な部屋が数箇所あった。


「さっきの研究室と全然違うね……」


 ローズがメルに向かって呟くように小声でそう言えばメルも小声で「そうですね……同じ建物内でも全く違うんですね……」と周りを見回しながら不思議そうに答えるのだった。


 そんなやり取りを微笑ましそうにバーシル達は眺めながら全員が入ったのを確認したところでシスラーが口を開いた。


「此処では、魔道具の研究や開発を行なっている。様々な道具が並べてあるが絶対に無闇に触らない様に。触れた瞬間何が起こるか保証出来ないからな!!

 君達が居るこの魔道具の研究室は、魔導師団一班の人間が在籍していて、約100人前後の人間が交代制で勤務している。

 一班は、戦闘時に攻撃を主として行う戦闘部隊だ!!

 だから常に半数の人間が休みを取り交代制で勤務して体力を温存していて、いざと言うときは直ぐに動ける様な体制をとっている。

 では、此処からは一班隊長のニック。宜しく頼む」


「はい!!!」


 シスラーから名前を呼ばれたニックは爽やかな笑みを浮かべしっかりと返事をするとと素早くローズ達の前に立った。


「初めまして。僕の名前はニック・アンジュラーです!!魔術師団一班隊長を任されていて魔道具や魔法に関して専門的な知識も人よりは多く持っていると思う。何か質問とかあるかな??」


 親しみやすそうな笑顔を浮かべながら自己紹介したニックは周りを見渡しながら話を続けローズと視線が合わさった瞬間 一層笑みを深めるのだった。

 沢山の生徒達が居るにも関わらず、自分だけに溢れるように笑みを深められたローズは思わず顔を赤らめてしまい恥ずかしさから俯き、沢山質問したい事があるはずなのに質問する為の手を挙げる事が出来なかった。




…………



「よーし。そろそろこれが最後の質問になるかな……誰か聞きたい事がある人は居るかな!?」


 そうニックが質問するが、大方 質問がある生徒達は手を挙げ質問した後なので誰も手を挙げる生徒は居なかった。

 シスラー達もそろそろ魔道具の研究室を後にしようと思い出した時、今までずっと大人しくローズの側に立っていたメルが申し訳なさそうに小さく手を挙げた。


「はい。どうぞ!!そこの可愛らしい獣人のお嬢さん」


 メルが手を上げている事に気が付いたニックはメルに向かって親しみやすそうな笑みを浮かべるとメルの緊張を感じ取ったのか丁寧に話を振り始めた。


「あ…ありがとうございます!!メルと申します。

 あ…あの……獣人でも魔術師になれるでしょうか……」


「う〜〜〜ん………難しい質問ですね……騎士団の方ですと、獣人の方も何人か入団する人がいる様ですが、魔術師になると少し難しいかも知れませんね……

 やはり、人と獣人とでは、魔力の量が断然に違います。

 獣人の平均的な魔力量では、魔術師の訓練に付いてくるのは少し難しいと思います。

 ですが、絶対ではないので目指す事は否定しませんよ!!

 メルさんといつか一緒に働ける事を楽しみにしていますね」


 そう言いながらニックはメルに向かって優しく微笑み掛けるので、免疫のないメルもローズ同様に顔を真っ赤にしながら俯いてしまい蚊の鳴くような小さな声で「ありがとうございます」とお礼を言うのだった……



……………



「ねぇ、ねぇ、メルちゃんって卒業した後もフレンシア侯爵家で働くんじゃないの!?」


 ニックが一班の主な仕事内容を説明し出した時、てっきりメルはずっとフレンシア侯爵家で働くと思っていたローズは先程のメルとニックの会話の中で魔術師になりたそうなメルの発言がどうしても気になってしまい小声でメルに問いかけた。


「いえ……私は、学園にいる間だけの侍女ですので、卒業したら契約終了です。

 でも、そのおかげで学園に通えてお給料も頂けるので、フレンシア侯爵家にはとても感謝しております」


 前に獣人の事をあまり快く思っていなそうな話を聞いていたのを思い出したローズは学園を卒業した後は侯爵家に戻るビアンカの事を考えるとメルがそのまま侍女になるのは難しいのかと思いを巡らせていた。

 大体、ジョイの事も始めは学園に居る間だけの従者と勘違いしていたのを思い出したローズはそう言う事もあるんだろうなと自己完結するのだった。


「へ〜ぇ……そう言う事もあるんだね……

 ねぇ、じゃあ卒業してもやりたい仕事が見つからなかったら、私………」


「失礼致します。ファルスター公爵が火急の用事で応接室でお待ちです。急ぎ同行願えますか!?」


 ローズがメルに向かって、私の側で一緒に何かしませんか??と言おうとしたところで、こちらに向かってきた魔術師の一人にそんな事を伝えられた。

 現在授業中にも関わらず急いで呼び出すほどの用事とは、一体何があったのだろうと不安に思うローズを察したのか、アーノルドがニックに声を掛けた。


「ニック。此処はもういいからファルスター嬢を連れて応接室まで案内してくれるか!?」


「はい。了解です団長!!ファルスター嬢、ご案内致しますよ」


 アーノルドから指示を受けたニックはしっかりと返事をするとローズの前に手を差し出した。


「あ……ありがとうございます……あの……でも……」


「ん??どうかしましたか!?」


 普段からルイとジョイが迎えに来るまでは絶対に誰にも付いて行ってはいけないと言われているローズはアーノルドとニックのやり取りを聞きながら戸惑いを隠せなかった。


 授業中のローズを急いで待つ用事とは一体何があったのだろうとその事に対しても不安になりつつローズを案内する為に側まで来ているニックの手を取れずにオロオロと不安気に瞳を揺らしてしまう……


「……えっ………いえ………あの……」


「大丈夫ですよ。ファルスター公爵の所に着くまではしっかりとお守り致しますから。これでも、魔術師団一班の隊長ですからね!!では、行きましょうか!!?」


「……は……い…………」


 未だに不安が拭えないのか戸惑いを隠せないローズは不安そうに瞳を揺らしながらも、恐る恐るニックの手を取りエスコートされて研究室を後にする。

 部屋を出る瞬間にアーノルドから「ニック。頼んだぞ」と声を掛かられて「大丈夫ですよー!!!」と軽く答えるニックとは対称的だった。


 ただクラスの人達やシスラー達は、授業中に呼び出す程の用件の事で不安に思っているのだろうと、不安そうにしているローズの本来の思いとは違った解釈をしていた。




…………




「ファルスター嬢。すぐそこの扉が応接室なのでそんなに不安にならなくても大丈夫ですよ。ご安心下さい。」


  コン  コン  コン


「ファルスター閣下。御息女をお連れ致しました」


 普段なら入室を許可するクロードの少し低い声が聞こえる筈なのだが、何の反応もない事にニックもローズも少し不安に思い、お互い訝しげに顔を見合わせるとニックは警戒しながらそっと扉を開いた。


 扉を開けた先の応接室にはクロードどころかジュリアスさえも居なく一体どう言う事なんだろうと頭を捻るニックと不安そうなローズは顔を見合わせると少し中まで入り辺りを見回してみる。

 パタンと言う音と共にそのまま部屋の扉が静かに閉まり、微かな衣擦れの音すら聞こえてきそうな静けさに包まれローズの緊張がマックスになった時部屋一面が眩い光に包まれる。

 目が開けていられないほどの眩しさにローズが思わず目を閉じてしまった横で焦った様な声のニックが「まずい……」と呟いた瞬間、光と共にニックとローズの姿が消え去るのだった。


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