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37 お茶会 6


「あら??イーサン様はもうお戻りになられるんですか??私…もう少し皆様とお話ししたかったのですが……」


 トコトコと小走りでやって来たレイラはイーサンを覗き込むような形であざと可愛く引き留めにかかる。

 だが、そんな小手先の仕草に引っ掛かる様な軟弱な精神など微塵も持ち合わせていないイーサンは冷めた目線をレイラに向けると「何故ヴィヘルム嬢と話す必要があるんだ??」と少女に対してはするには少々キツめの発言をする。


「えっ???酷いです!!!私はせっかく来たんだから皆様とこの綺麗な園庭を見て回りながらお話ししたかっただけなのに……

 ローゼマリー様。イーサン様の発言って酷いと思いませんか??」


「……………」

(止めてよ!!今まで全然話して無かった癖にこんな時ばっかり私に話を振らないでよ!!

 イーサン様とだって、たった今打ち解けられそうになったばっかりなのに……

 これでまた敵視される事になったら責任取ってくれるんですか???)


 本人に向けては口が裂けても言えないがレイラの無茶振りにローズは無言で固まってしまう。

 これが他の貴族の令嬢だったなら自分の気持ちに正直に同意するでも否定するでも好き勝手に振る舞うのだろうが小心者のローズには上手い返しが思い当たらなかった。


 ローズが言葉に詰まり無言で立ちすくんでいる事に剛を煮やしたレイラは「ちょっと聞いてますか??」と上から目線でローズを詰めにかかるのでローズは更にパニックになるのだった。


 そんなローズの心の葛藤を知ってか知らずかフリードはそっとローズの側まで近づくと


「じゃあ、ローズちゃんはもう少し私と一緒に園庭を見て回ろうか??ローズちゃんは私が引き受けるのでイーサン様はお一人で戻られればいいと思いますよ」

 

 と言いながらそっとローズを自分の方に引き寄せて助け船を出してくれるのだった。


「いや……私が初めに誘った訳ですし、ローズ様の事は最後まで責任を持ちます。別に急いでませんので私も残りますよ」


 キャロラインミッションを遂行する為にあんなに早く帰りたがっていたのにフリードの言葉にカチンと来たのか自分も残ると言い出したイーサンは半ば強引にローズを自分の方へ引き戻すとまるで目の前にいる敵から守る様に軽く後ろ手にローズを庇うのだった。

 2人の間にまた見えない火花が散っている気がするが、これが決して好きな女を取り合っている訳では無いところがローズを微妙な気持ちにさせるのだった。


「まあ〜〜流石 噂のご令嬢はやる事が素早いですね!!もうイーサン様まで虜にしてしまわれるなんて目の前で起こっている事なのに今見ている光景が未だに信じられませんわ!!」


「いゃ……違っ……」

 

(うお〜〜い!!!レイラ様の盛大な勘違いだけど、この状況で何を言っても無理な気がする……

 はぁあああ……面倒臭い!!!もう皆んなで部屋に戻ろうよ!!!寒いんだけど………)


 レイラの言葉に反論しようとしたローズだったが側から見

た自分の状況はどう見ても取り合っている様にしか見えず、目の前で嫌味ったらしく文句を言うレイラには何を言っても無駄な気がするローズだった。

 だが、ここには空気の読めない人間が多数混じっていた様で、周りの空気など読む事無く自分勝手な意見を言い出し始めた。


「おい!!私は別にローズ様に虜になった覚えは無いぞ!!さっき会ったばかりなのにそんな風に思う訳ないだろ!!

 あっ……いや…まぁ…好感は持てそうではあるが、実際どんな子なのかはこれから友好を深めていかないと分からないからな」


 思わず口から付いて出た言葉だったが、直ぐに横にローズが居る事に気付いたイーサンは流石にまずいと思ったのか苦しい言い訳を始めるのだった。

 そんなイーサンの目の前に居るレイラは、イーサンの発言に納得している様子は全く無く冷めた顔で2人を見つめている。


 その視線に更に居た堪れなさを感じたローズは外の寒さも相まって体を小さく丸めてしまい骨身に染みる寒さに体を震わせてしまう。

 ただ、イーサンの発言に対して何故か先程まであった敵意を薄めたフリードは表情を少し緩めるとフォロー(?)を入れてくれるのだった。


「私もローズちゃんの事は可愛らしく素敵な女性だと思っているが、異性として付き合いたいとかそう言った感情はとくに持ち合わせていないよ。

 ローズちゃん同様レイラ様も素敵な女性だと思っているしね」


 流石のフリードは100点満点の解答でその場を収めるとレイラのキゲンも少し上向いたようだった。


「じゃあ、フリード様はローゼマリー様の事を愛しているとか婚約者になりたいとかでは無いのですね!?」


「まぁ……そう…だね……好感は持っているが、まだそこまでの気持ちは無い……かな……」


「そうだったんですね!!私の勘違いでした。

 ローゼマリー様なんかすみません!!改めて宜しくお願いしますね」


「…宜しく……お願い致します……」

(えっ???何なの???この告白した訳じゃ無いのに皆んなの前で次々に振られた感 満載なんだけど……

 まぁ……別にいいけど、何か釈然としないんだけど…)


 告白しても居ないのに2人の男性から振られた様な気持ちに陥ってしまったローズは何故かモヤモヤする気持ちが抑えられなかった。

 釈然としないローズとは逆に何処かスッキリした表情のレイラは

「じゃあ、私も友好を深めたいからローゼマリー様一緒に戻ってお話し致しましょう!?」

 と機嫌良くローズに話をふるので、それがまたローズを微妙な気持ちにさせた。


「はい……宜しくお願い致します」


 レイラにそう返事をしてやっと会場に帰れる事になったローズは寒さと何とも言えない空気からの解放の目処が立ち、早足になりそうな自分を必死に抑えながら会場へと戻るのだった。

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