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35 お茶会 4


「ローズ、学園はどう??楽しく過ごしているの!?」


「はい。同じ学年に仲の良い子も出来ましたし、魔術師さんともお話しする機会を何度か設けてもらいましてとても楽しく過ごせています」


「アハっ。相変わらずねローズは!!私が学園に通っていた時から結構な年月が経ったと思うけど魔術師と楽しく話してるなんて話し聞いた事が無いわよ!!

 別に魔術師になりたい訳じゃないんでしょ??」


 キャロラインが学生の時代から魔術に特化している人間は何処かオタク気質な人間が多く、魔術師が着用している濃紺の少し暗めなローブも相俟って近寄り難い どこか暗い雰囲気を纏っており学園内で顔を合わせたとしても気安く話をするなどと言う話はあまり聞いた事が無かった。

 魔法に興味があり魔術師を目指す人間ならまだしも魔術師になりたい訳でもない、ましてや高貴な身分の女性が率先して魔術師達と会話するなど誰に話したところで信じそうにない自分の耳を疑い兼ねないほど珍しい話だった。


「そうですね……これと言ってなりたい訳では無いですが魔法は使ってみたいです」


「あら??そうなの!!??どんな魔法を使いたいの!?ムカつく人間を氷漬けにする魔法!?それとも雷で焦がす魔法かしら??」


 ローズが魔法を使いたいと思っていると聞いたキャロラインは等々ローズにも誰か魔法を使って懲らしめたいムカつく人間が出来たのかと興味津々で話の先を促した。


「ち…違いますよ!!!緑魔法を使って綺麗な花を咲かせてみたいんです!!」


 皆がキャロラインとローズの話に静かに耳を傾けていると言うのにキャロラインは全く気にした素振りも見せずにとんでもない発言をした事でローズは慌てて否定するのだった。


 そんな慌てているローズすら可愛らしく思えるキャロラインは尚も楽しそうにローズと会話を弾ませる。


「ふふっ。いやねぇ〜本当可愛らしいわ!!皆様お聞きになりまして!?私のローズったら本当に可愛らしいでしょ!!」


「そうですね」

「本当に可愛らしいです」

「素敵ですわ」

「素晴らしいですね」


「……ハハっ……アリガトウゴザイマス……」


(ヤメテ………何の拷問なの……私が全然会いに行かなかったからって怒って新手の嫌がらせしてるとかじゃないよね……??同意してる人達だって心なしか顔が引き攣ってる気がするのは気のせいじゃ無い気がするんだけど……

 やだ……もう……なんか気まず過ぎてフリード様の方が見れないんだけど……)


 そんな事を考えながら皆に大袈裟に褒め称えられて居た堪れなさを感じているローズを他所に一人の男性がキャロラインに向けて話しかけた。


「キャロライン様がそこまで他人のしかも女性を気に入るのも珍しいですね」


 ニコやかな笑顔を貼り付けてキャロラインに話しかける男性にキャロラインも同じような笑顔を向けると「だって、ローズは特別ですもの!!」とはっきりと言い切るも明確な理由は明かさずに持っていた扇子を開き意味深に口元を隠す。


 キャロラインに話しかけた男性はグリーンの髪にグリーンの鋭い目つきのガタイの良い男性で、ただ座っているだけなのに物凄い威圧感を与える外見を持つイーサン・ゴネシスと言いう辺境伯子息のローズと同じ学園に通う19歳だ。


「自分にも厳しいキャロライン様がそこまで気に入る女性に自分もとても興味が湧きますね」


 ローズを上から下まで品定めするかの様に見回すイーサンに、このままロックオンされて殺されるんじゃ無いかと嫌な予感が頭をよぎるが、まさか王女主催のお茶会でそんな物騒な事は仕出かさないかとローズは必死で気持ちを落ち着ける。

 口ではローズに興味を示すイーサンなのだが実際はそこまでローズに興味があるようには見えず、その事がより一層ローズの恐怖を煽るのだった。

 イーサンにローズが怯えている事をキャロラインも気付いていそうだったが2人を見つめながら尚も楽しそうに笑みを深めると


「あら!?仲良くして差し上げて。ただ、ローズ周りには歴戦の猛者達が鉄壁の守りを固めてるから下手な事は出来ないわよ!!」


 キャロラインは口元を隠していた扇子をパチンと畳みそのまま手の平に数回叩き合わせなからイーサンに向かって挑発するかの様に意地の悪い笑みを浮かべる。

 流石ドSの女王様だ!!!


「ハハッ。キャロライン様のお気に入りに下手な事は致しませんよ!!ファルスター嬢。宜しくお願い致します」


「あっ はい。こちらこそ宜しくお願い致します。今後は気軽に名前でお呼び下さい」


「ありがとうございます。ローゼマリー様」


 そう言いながら深々と頭を下げるイーサンを見つめながら、ローズを見つめる時の瞳とキャロラインに向ける瞳に温度差がある事に気がついたローズは、キャロラインに向ける瞳の方には何んだか愛しむような熱が篭っている様な気がして この人キャロライン様の事が好きなのかなぁとノミの心臓程の女の勘を働かせるのだった。

 そんな風にローズとイーサンが辿々しい会話を交わしていると2人の会話を遮る様に一人の少女が横から話しかけてきた。


「それなら私も仲間に入れて欲しいですわ」


 そんな風にローズとイーサンの会話に突然加わり出したのは、レイラ・ヴィヘルムと言う16歳の伯爵令嬢で茶色の髪に茶色の瞳のどこかパッとしない顔立ちの少女だった。

 レイラはあまり大きくも無い茶色の瞳をキラキラと輝かせてローズに話しかけるのだった。


「ローゼマリー様はその可愛らしい見た目と平民の男性の様な気安さで周りの殿方を虜になさっていると学園中で噂になっておりますのよ。

 ですので常々私もその気安さを見習いたいと思っておりましたの」


「うふふっ……可愛らしいだなんてありがとうございます」


(おおぅ。先制パンチですね!!心無しかキャロライン様がこっちを見ながらニヤついているのは気のせいですか??私はそんな挑発には乗りませんからね!!触らぬ神に祟りなしですよ)


 無邪気を装う少女のにこやかな笑顔に隠された軽い嫌味をこちらも笑顔で躱す少女達の女の戦いをキャロラインは楽しそうに見つめている。


「そう言えば、フリード様もローゼマリー様ととても親しくしていると噂になっていますわよね??普段あまり他の方に興味を示さないフリード様の心をどうやって射止めたのかその理由を是非知りたいですわ」


「そうだな……ただ、大した理由は無いんだよ。私の学年にローズちゃんの従者兼男爵であるルイ君が居るから彼を通じて会話する様になったってだけだなんだよ」


 ローズに向けて発したレイラの軽い嫌味から庇う様に爽やかな笑顔をレイラに向けたフリードがローズに代わって会話に加わり出した。


(おぉー!!!スマート!!!流石フリード様。当たり障りの無い完璧な解答ですね!!私も見習いたいです)


「そうでしたのね。流石フリード様はお顔が広いですわ」


 きっとフリードの事が好きなのであろうレイラは良いきっかけが出来たとばかりにフリードに満面の笑顔を返し、ローズに話しかけた時とは全く違う甘ったるい少し媚びた様な声でフリードに話しかけるも無言の笑顔で軽く躱されてしまう。

 フリード様……とても爽やかな笑顔ですが目の奥が全く笑って無いですよ……


 フリードの無言の圧に耐えられなくなったレイラは気まずげに視線を彷徨わせるとフリードとの会話に出てきていたローズの後ろで控えているルイが目に付いたのか咄嗟にターゲットをルイに移して慌ててルイに話しかけるのだった。


「そっ…そうでしたわ!!ルイ様も獣人でありながら男爵家の養子に迎えられ今では国で一番のお金持ちなんですのよね!!」


 フリードに軽く躱されて動揺していたレイラは始め少し吃ってしまったもののルイの話題を話すうちに令嬢としてはマナー違反になりそうなギリギリのラインで声を張り上げながら気持を切り替えるように話し出すのだった。

 自分で話しているうちにルイの状況をより深く理解したようなレイラは次第に興奮し出した様で少し鼻息が荒くなってしまっている。

 やはり国一番の財力を持つと言う事はそれだけで他人を惹きつけるパワーを持っているのだろう。

 ルイに興味を示したのはレイラだけでは無いようでレイラが話し出してからずっと気配を殺して黙っていたイーサンも話に加わり出した。


「僕もルイ君には興味があるな」


「そんな事を仰られましても大したお話はできませんよ」


(コラっルイ!!その、俺に話を振るんじゃねぇって あからさまに嫌そうな顔をしないの!!貴方ももう貴族なんですからね!!普段のポーカーフェイスをここで発揮しないでどうするの!!!)


 自分もポーカーフェイスなんて出来ない癖に自分の事は棚に上げて姉の様な気持ちでルイを心配してしまう。

 ローズがまたいつものように頓珍漢な想像をしながら魂を飛ばしているであろう事が後ろにいるルイでも容易に想像出来てしまい、アイツはまた大勢いるお茶会で何やってんだよと、後ろで呆れてしまい そのまま自分に振られている会話を適当に流してしまうのだった。結局は似たもの兄弟なのだ。


「そんなに謙遜しないでくれよ!!君の画期的な発想や行動力は貴族の中で話題だよ!!」


 ルイに軽く遇らわたにも拘らず尚も突っ込んで話すイーサンにそんな事俺に言われても考えて行動してんのは全部お前らの目の前に居るポンコツ令嬢なんだからな!!と軽く溜息混じりに心の中で呟くが、イーサンにはニッコリと微笑み返しローズからすれば背筋が寒くなる様なその笑顔で「詳しい話は秘密ですので」とシラを切り通すのだった。


「でも、そう考えるとローゼマリー様の従者は他の貴族の従者とは別格だな!!

 かたや資産家の男爵当主に騎士の名門の伯爵当主達が自ら従者になるなんて、長い歴史の中でも聞いた事が無いよ」


 それは全部、親バカな父親達のせいなんですよ!!と声を大にして言いたかったローズだったが、そんな事を言ったところで自慢にしか聞こえそうも無いので仕方なく曖昧に微笑みながら口を噤むのだった。

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