32 お茶会
「お茶会……ですか……??」
「あぁ。そろそろ学園にも慣れた頃だし、一度茶会に来ないかって言う内容の招待状が届いたんだ」
魔術塔で話をしてから数週間が経ち、毎週のように
魔術塔へ通い出したローズが、学園にも、魔術塔にも慣れ出したある休みの日、公爵家に戻っているローズが午後のお茶を楽しんでいた時、クロードからそんな話を伝えられた。
「お相手は誰なんですか!?」
「ローズも良く知っているキャロライン様だよ。
場所が王城だから少し畏まった感じになるが、キャロラインも会いたがっているようだし同じ学園の生徒も何人か招待しているらしくてローズの交流のきっかけになればと言っているんだ どうする!?」
学園に慣れる事に必死で王都にいるにも拘らず一度も王城に顔を出していないローズは、学園が始まり王都で生活し始めたら必ず顔を出すとキャロラインと約束していた事を思い出した。
同じ学園の生徒達も集めてくれて交流の機会まで与えてくれるなんて、流石キャロライン様は気遣いの出来る完璧な令嬢なんだと、ローズはまた一段とキャロラインを崇拝するのだった。
本来のキャロラインは好き嫌いの激しい戦闘タイプなんだがローズに対してだけは優しいお姉様であった。
「行ってみたいです!!でも、きちんとお呼ばれして行くのは初めてで少し緊張してしまいます……」
「ふふっ。大丈夫だよ!!当日はルイとジョイもローズに付けるし、私達は同席しないが一緒に城には行くつもりだ。
何かあれば直ぐに行ける距離に居るから何も問題ない。
何よりローズの事を娘の様に可愛がっているキャロライン様もいるしな!!」
「クスクス。そうですね!!!」
「アイツはその辺の男よりよっぽど頼りになるからな……
敵に回すと恐ろしいが………」
やはりクロードでもそう感じているのかとキャロラインとクロードが一緒になったらクロードが尻に敷かれるであろう事が容易に想像出来てローズはクスクスと楽しそうに笑ってしまうのだった。
「クロード父様のお嫁さん候補ですものね」
「こらっ。大人を揶揄うものではないよ!!」
楽しそうなローズに痛いところを突かれたクロードは軽く目を見開いてローズのおでこを突っつくも尚も楽しそうなローズは自分の気持ちをクロードに正直に伝える。
「揶揄ってはいませんよ!!私、キャロライン様大好きです!!」
「ふふっ。そうか……では、こちらで返信は返しておくから楽しみにしていなさい。
後で商会の人間が来るから当日着るドレスなどの打ち合わせをするといい」
「はーい」
なんだかんだで明言を避け誤魔化された気がするが、こればかりは他人がとやかく言う事でも無いのでローズもそれ以上は掘り下げなかった。
午後になり、ライカー達の来訪が告げられると彼等と一緒に普段着からお茶会に来て行くドレスまで様々な事を打ち合わせし始めた。
ある程度 打ち合わせが終わり、目の前に置かれたルイが淹れてくれたお茶でホッと一息吐いていた時、ライカーが不意にローズに話し出した。
「そう言えば、少し前に公爵様からファルスター領の屋敷の側に寮の様な屋敷が欲しいと伺いまして、探しておりましたところ目星い屋敷を何軒か見つけましたのでご検討頂いても宜しいですか!?
公爵様にお伺いしたところローズ様にお聞きしろと言う事でしたので……」
「ありがとうございます。流石仕事が早いですね!!」
そう言いながらライカーが見つけて来てくれた数軒ある候補の屋敷を見せてもらう事になった。
この世界で物件を確認する時は、小さな映写機のような魔道具から写し出された映像をその場で確認できるようになっていて、そこである程度確認をして気に入った物件が有れば直接見学して購入するようだった。
魔法がある事でこう言う所はハイテクなこの世界の道具に一々感心しながらローズは物件を絞っていくのだった。
結果的にはファルスターの屋敷からあまり離れていない。跡を継ぐ人間が居なくてほぼ手付かずの屋敷を買い上げる事に決め、そこまで大掛かりにはならずに簡単なリホームで使用出来る様になる様だった。
「ローズ様はこの様な屋敷を買い上げて獣人達を住まわせ何をなさるおつもりなのですか!?」
「そうですね……大体の方向性は決まりましたので、屋敷が整い次第父様達を含めてお話させて頂きます」
「分かりました。では、早速準備に取り掛からせて頂きます」
そう言ってライカー達は静かに退出していくのだった。