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31 魔術師 6


「魔術塔楽しかったね!!次、行く時はなんか魔法見せてくれないかなぁ??」

 

 ローズは先日行った魔術塔が余程楽しかったのかシスラー達との話を思い出すかの様にルイに話しかけた。

 シスラー達の様な国のトップが扱う魔法とは一体どんな物があるのだろうと想像を膨らませるローズは、ロールプレイングで勇者が使用する様な派手な魔法を想像して心を躍らさせるのだった。


「あ??お前そんな事言ったって一体どんな魔法が見たいんだよ!?」


 獣人であるルイは幼い頃から本能的に魔法を使用しており、常に魔法を使用する生活を送っていた為、魔法になど大して興味が無いようだが一応ローズに聞き返した。

 基本的に何に対しても対しても興味を示す事は無いルイなのだが、ローズのどんなにくだらない質問や疑問に対して無視をする事だけは絶対にしないのだ。

 何だかんだで面倒見のいい奴である。


「う〜ん……そう言われると困るけど、国で一番の魔術師さん達が沢山いるなら何か凄い魔法とか見れそうじゃない!?」


「全く興味ねぇ……」


「俺はちょっと気になるかも」


「でしょ!!気になるよね!!ルイってば自分だけ魔法が使えるからって感じ悪いよね!!」


「ぁん!!??おいっ!!!おま……」


「悪いけど、俺 もう魔法使えるぞ」


 ローズの余計な一言にルイのこめかみが一気にピクつき出したが、それ以上何かを発言する前にジョイの一言に遮られた。


「へっ???何で???いつ???」


 ジョイが魔法を使えるなど聞いた事も無かったローズは、てっきり自分と同じでまだ魔法を使い熟せないと思い勝手に仲間意識を芽生えさせていたのに想像もしていなかったジョイの発言に驚きすぎて思わず詰め寄ってしまう。

 目と鼻の先までローズの顔が近づいた事でジョイも驚いて思わず後ろに仰け反ってしまい少し焦った様に口籠もりながらローズに説明し出す。


「えっ???いや……だって、騎士団に勤め出したし。年齢的には魔力も安定してる年齢だから、アルベルト様とかに習いながら少しづつ……な……」


 焦りつつも少し照れ臭そうにしながら話すジョイと何だか裏切ららたような気持ちに陥り上手く状況が飲み込めないローズとの温度差が凄まじいものがあった。

 ただ驚いている様なローズを他所に大して驚きもしていないルイはジョイに向かって淡々と話の先を促した。


「…っで??お前はどんな魔法が使えるんだよ!?」


「あぁ。そうだなぁ‥基本的な魔法は一通り使えるぞ!!火・水・風・雷・土・緑・光……得意な魔法はまだ無いけどそんなところかなぁ」


「チッ」

 

 先程まで勝ち誇っていたルイだったが、自分より多くの魔法を扱えると分かると不機嫌そうに舌打ちするのだった。

 そんなルイの悔しそうな姿を感じとったジョイは、普段やられっぱなしのお返しとばかりに嫌らしい笑みを浮かべ勝ち誇ったように見返すと上から目線で

「お前は、風と火だけなんだよな??でも魔力が高いってアルベルト様が言ってたから、もしかしたら他の魔法も扱えるかも知れないぜ。今度試してみろよ」

 などと上から目線で話しかけるのだった。


 ジョイの発言を受けてぐうの音も出ないルイは苦虫を噛み潰したような顔をすると

「っるせぇ。ほっとけ!!!」

 と捨て台詞を吐き捨て乱暴な足取りで自分の部屋へと引き篭もってしまうのだった。




***




「ファルスター嬢。こんにちは。今日も団長達の元へ行くんですか!?」


「こんにちは。今日もお邪魔します!!皆様お忙しいのにすみません」


 いつもの様に魔術塔を訪れたローズは階段から降りて来る一人の魔術師と挨拶を交わしていた。

 あれから何度か魔術塔へと足を運んでいるローズはシスラー達以外の何人かの魔術師達とも顔見知りになっていた。


「ふふ。全然構いませんよ。いつか私もご一緒したいですね」


「はい。是非!!!」


「ローズ様。団長達がお待ちですのでもう行きますよ」


「申し訳ありません。そう言った話は団長様とお願い致します。

 さぁ。参りますよ……」


 クロード達に止められているもののこう言った事にあまり危機感の無いローズは笑顔で答えてしまう。

 これ以上他の魔術師と話されて何か余計な事を言われる前にルイとジョイによって素早く話を切り上げられてしまうのだった。


「はーい。では失礼致します」


 ルイとジョイに向かって軽く返事を返すと魔術師に向けて軽く頭を下げてその場から離れて行く。

 一人残された魔術師らしき男性はローズのその姿を笑顔で見送っていた。

 ローズが他の魔術達と話す事をあまり良しとしないルイ達は毎回早々に会話を切り上げようとする。

 ちょっとした日常会話くらいでそんなに目くじら立てなくてもとローズは思うのだが彼等の守りは鉄壁だった。


 転移装置を使いローズ達がシスラーの待つ執務室へと姿を消してから一人残された魔術は人好きのする笑顔を消してその場を離れるのだった。


「俺が……俺だって………本来ならあそこの中に居るのは本来なら俺だった筈なのに……今に……見てろよ………絶対に元に戻してやるからな………」


 何やらぶつぶつと呟く男はイライラした様子を隠す事なく自分の持ち場へと戻って行くのだった。

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