表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/135

22 お友達2


「ねぇ、メルちゃんは獣人でしょ!?獣人は幼い頃から魔法を使うって教えて貰ったんだけどメルちゃんも使えるの!?」


 ローズは向かい合って座るメルに興味津々と言ったように先程から料理そっちのけでメルに質問攻めしている


「クスクス。使えるよ!!私は土や植物を操るのが得意なの」


 メルも自分の料理が冷めてしまう事も気にせず楽しそうにローズの話に答えていた。

 普段、マーガレットと取る、出来立てではあるし料理人も同じだが何処か味気ない食事より、冷めてしまっていても楽しい会話を楽しみながらする温かみのある食事の方が何倍も美味しく感じていて、今の幸せを噛み締めていたのだ。


「何それ!!操るってどうやるの!?」


「う〜ん…‥.そうだな……例えば、そこにあるまだ咲ききっていない花に魔力を込めると……」


 そう言って近くの花瓶に生けてあった、まだ咲ききっていないダリアを一本取り出すとそっと手を翳した。

 「アース」

 メルが小さく呪文を唱えると次の瞬間、フワッと音が聞こえてくるかの様にローズの目の前で花が綻び出したのだ。


「うわー凄い!!!キレイに咲いたね!!!」


「ふふっ。ありがとう。こうやって植物の成長を早めたり、他にも土形成したり地割れを起こしたり色々出来るよ」


「じゃあメルちゃんと一緒に土遊びとかしたら楽しそうだね」


 ローズは広い庭でメルと一緒に土を使って色々な物を作るところを想像し妄想を膨らませていた。

 そんなローズを微笑ましそうに見つめながら

「ふふっ。そうだね!!機会があったらいつか一緒に作りたいね!!」

 そう言ってメルはそっとダリアを花瓶に戻した。


「やりたーーーい!!!」


 メルが賛成してくれた事でローズは両手を上げて喜んでいる。

 ルイ達に送り届けてもらったローズは、今日も楽しくメルと食事を取っていた。


 昨日からメルと一緒に食事をしているローズなのだが、フリード達は、ローズが明日までメルと食事をする為、一緒に食事をしないと分かると、早々に個室を予約して、打ち合わせがあるからと言ってビアンカとの食事を断ったらしい……

 仕事の早い奴らである……

 

 個室もちょうどローズ達の横の個室だった様で、先程ご丁寧にも挨拶に見えた。

 メルは突然の公爵子息の登場に恐縮しまくりだったが、何とか挨拶を済ませてお互いの部屋へと入って行った。

 中の個室はしっかりとした造りになっている為お互いの会話までは聞こえないが、偶に聞こえるローズ達の楽しそうな笑い声にフリードとアベルは顔を見合わせて微笑ましそうにするのだった……


 出遅れたルイとジョイはローズから目を離す事も出来ない為、渋々ビアンカ達と食事をする羽目になり、今日もルイの額に青筋が立つことになるのだった……




***



「あっ!!そうだわ!!ラウル。(わたくし)教室に皆様にと用意したプレゼントを忘れてしまいましたわ!!取ってきなさい」


 周りの人間は冷めた表情をしているにも拘らず、ビアンカ 1人が楽しそうな昼食会の最中に何を思ったのか突然ビアンカがそんな事を言い出した。


「……畏まりました。ルイ様、ジョイ様、申し訳ありませんがビアンカ様の事を宜しくお願い致します」


 まだ食べ始めたばかりでほぼ手付かずの食事の手を止めたラウルは自分が主の側から離れてしまうので仕方なく共に食事をしているルイとジョイにビアンカの事を願い出る。


「食べてからではダメなのですか!?ラウルはまだ食事の途中のようですが……」


 何が楽しくてこんな我儘女の面倒を見なければならないのかと内心辟易している嫌そうな顔のジョイがビアンカに提案するも


「うふふ。ジョイ様はお優しいのですね。ですが、ラウルにお気遣いは無用ですのよ。さぁ、早くお行きなさい」


 全く噛み合わない会話と友達のラウルを物の様に扱うビアンカにジョイさえも眉を寄せそうになるが、ビアンカに囃し立てられてラウルは立ち上がると急ぎビアンカの教室へと向かうのだった……


「ルイ様もジョイ様もお二人掛りでローズ様のお世話をしなくてはならないなんて、いつも大変ですわね。公爵令嬢にもなると一人で何も出来ないのかしら!?」


 お前の面倒見るよりはよっぽど気が楽だよ!!と思っている2人だが、言葉には出さずに無言で微笑む、何とも言えない雰囲気がビアンカ達の周りを包み出した時、ビアンカ達の方に向かって歩いてくる男性達が現れた。


「ビアンカ様。探しましたよ!!僕たちとの食事を断ってこの様な者たちと一緒に食事をなさっていたのですね!!」

 ちょうどルイとジョイの前側に立ち視界を遮るかの様にビアンカに話し掛け出した男達のせいでローズの居る個室が見えづらくなってしまった事で少し怪訝そうな顔をするルイに更に追い討ちを掛けるように一人の男性がわざとらしく飲み物を溢した。


「あぁあー。申し訳ありません!!!手が滑ってしまいまして、濡れませんでしたか!?」


「チッ。別に問題ない……だが、次は無いからな」

 軽く舌打ちしながら小さな声で溢した男性に釘を刺したルイだったが、水が溢れた事によりルイとジョイの気がローズの部屋から逸れた瞬間、ビアンカは誰かに目配せするような仕草をとる。

 だが、ルイもジョイもその事に気付くこと無くこぼれた飲み物の処理に追われ落ち着いた頃には男性達も何事も無かった様に帰って行った。

 その後、直ぐにラウルも戻って来た為、食事を再開するがルイとジョイは自身の胸に何か引っかかるような小さな違和感を覚えるのだった。



***



「ローズ様は本当に美味しそうに食べるね」


「へっ??だって美味しいんだもん!!お腹も減ってるし……でも、改めてメルちゃんに言われるとなんか恥ずかしいね」


 互いにこんなに楽しく食事するのは久しぶりの様で何をしてても楽しくなってしまい付き合いたてのカップルの様な初々しさまで醸し出していた。


「クスクス。ごめんね!!でも、ローズ様を見てると何か楽しくて!!」


「もう……揶揄わないでよ……」


 食事もある程度食べ進め、ローズにも大分慣れた様子のメルとカップルばりのイチャつきを見せていると、ノックも無しに突然 個室の扉が開いた。



「あーーー!!本当にいたぞ!!!初めまして、こちらで公爵家のファルスター嬢が獣人の女の子と2人で食事をしてると小耳に挟んだものですから、少しお邪魔しても宜しいでしょうか!?」


 突然部屋の中に入ってきた男性達は言葉では確認を取るもののローズの了解を得る前にニヤついた笑みを浮かべながら静かに部屋の扉をしめるのだった。


 ルイとジョイも居ない状況で密室に知らない男性達が現れた事で変な緊張感に襲われるが、震えそうになる手をギュッと握りメルも一緒に居る事で変に取り乱してはいけないと一度深く息を吐いた。


「どう言った御用件でしょうか!?私達は今、食事中なのでお相手するのは難しいのですが……」


 この場で一番身分の低いメルを守れるのは自分だけなのだから怯えている場合では無いと自らを奮い立たせしっかりとした口調で男達にNOを突き付ける。


「大丈夫。大丈夫。俺らの事は気にせず食事を続けて!!とりあえず一緒に座ってもいいかな!?」


 気にするなと言われても知らない男性が部屋に押し入ってきて側に座り出したら嫌でも気になるだろ!!と、何を気にしなくていいのかさっぱり分からなくイラっとするが、(はな)から2人の意見など聞く気も無いようで、ローズ達の横に無遠慮に腰掛けた男性達にローズは軽くビク付いてしまう。


「ハハッ。初々しい反応だな。そんな緊張しなくて大丈夫ですよ!!俺たちはファルスター嬢と仲良くしたいだけですから。なんなら僕たちが手取り足取りお手伝いしながら食べさせて差し上げましょうか!?」


 気持ち悪い笑みを浮かべる男性達を前にローズは俯き唇をキュッと引き結ぶと心の中でルイとジョイに助けを求めるのだった……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ