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19 相談 2

 

「……と、言う事なんですが、ご協力頂けますか!?」


 申し訳なさそうな顔をしているラウルが、ローズの様子をを伺いながら不安そうに瞳を揺らしている。


「そんな事!?全然いいよ!!寧ろ今日からでも大丈夫だと思うけど……!?」


「えっ!!??宜しいんでしょうか!?」


 ラウルのお願いしてきた提案に何て事ない様に明るく答えるローズに目を見開いたラウルは自分の主人との違いに驚くあまり普段より大きな声を上げてしまっていた。

 思わず出てしまった自分の声量の大きさに自分でも驚いてしまったラウルは急に恥ずかしくなったのか頬を染めて俯いてしまうのだった。


 ラウルの主人のビアンカは自分至上主義で、少しでも自分の思い通りにならないとイライラし出し癇癪を起こす。酷い時はその辺にある物をラウルに投げ付けたりして当り散らす事も珍しい事ではなかった。

 ラウルは平民だったが父親同士が同学年で知り合いだった事もあり、従順そうな見た目と魔力の高さからビアンカの父親に目を付けられビアンカの従者に選ばれた。

 その事を家族はとても喜んでいたが、現在のラウルがどう思っているかは微妙なところだった。

 

 そんな自分の主人との違いをまざまざと見せつけられたラウルは未だに惚けた様にローズを見つめるが、何をそんなに驚いているのか分からないローズはそんなラウルを見てクスクスと笑い出す。


「何で??ふふっ。全然大丈夫だよー」


 両手で口を隠す様にして楽しそうに笑うローズに普段は感情を押し殺して何も感じないようにしている胸が暖かさを取り戻したように癒されたラウルは何故だか泣きたくなる様な気持ちに苛まれ少し顔を歪めると

「ローゼマリー様は本当にお優しいですね……」

 と、自分でも気付かないうちに瞳を潤ませて不器用な微笑みを返す。


「大袈裟だよ。。。別に普通じゃない!?」


 今一、この国の人達の基準が理解出来ていないローズは、優しいと感動されたところであまり実感が無いのか不思議そうに頭を捻ってしまう。


「そんな事はありません!!高貴な身分の女性なのに……」

 「ローーーズ!!!行くぞ!!」


 高貴な身分の女性なのに、その事を鼻に掛けずに平民の自分にも分け隔てなく接してくれて本当に嬉しいです。

 と言い掛けたところでラウルの言葉を遮る様にルイが普段には無い大きな声でローズを呼び出した。

 その声に反応したローズが思わずラウルから視線を離してドアの方に目を向けると、難しい顔をしたルイとジョイの姿がそこにあった。


 ただ、常に不機嫌そうな顔をしているルイは、その状態が普通なのでローズは特に気にした様子もなくラウルを連れてルイ達の方へと歩き出す。


「ルイ。ジョイ。お昼行こう!!お腹減っちゃった!!

 今日はラウル達も一緒でいい!?」


「ラウル達……と仰いますと??」


 ジョイは嫌な予感がしつつもしっかりとローズに聞き直す。


「ラウルとビアンカ様だよ!!なんか一緒に食べたいみたい。今日もフリード様は一緒だよね??

 ルイ、先に行って聞いてきてくれない??」


「ぁん??面倒くせぇな。。。ジョイ!!ローズから目離すんじゃねぇぞ!!」


「あぁ。分かってるよ」


 面倒くさそうにそんな事を言いつつもさっさと踵を返したルイは、その場から離れる前にジョイの肩に手を置いて しっかりと念を押すと足早にその場を立ち去った。


「ありがとうございます。では、私はビアンカ様の所へ行って参ります」


「じゃあ、後でね!!!」


 そう言ってルイとラウルと別れるとジョイと一緒に歩き出した。


「おい!!お前!!無防備に男と話してんなよ!!」


「えっ??何で!?ラウルは友達なんだから別にいいじゃん!!」


 何処かの嫉妬深い彼氏みたいな発言をされたローズは、軽く引き気味に胡散臭さげな視線を向けて反発する。


「はぁ……これだからお子様は……男の事何にも分かってねぇんだから……」


「何なの!!ちゃんと分かってるもん!!」

(はぁ??こっちは前世合わせたらアラサーだっつーの!!!精神年齢はジョイより年上なんだから、色んな男達とだってそれなりに触れ合ってきたもん!!)


 男達と触れ合うと言っても、前世で体育祭などのイベント毎に一緒に作業するくらいしかした事がないローズは、あとは、ほぼクロード達に構われている記憶しかない癖に何をどう触れ合ってきたのか、幼い子供を抱き上げたり、膝抱っこするのとは訳が違う事を分かっているのか甚だ疑問ではあるがローズは完全に上から目線だった。


「へぇ……その色々ってヤツを俺にも教えて欲しいもんだな……」


 ローズの言葉を聞いて瞳の奥を鈍く光らせたジョイは高圧的にローズに詰め寄りだす。

 ジョイの異様な圧に負けて徐々に追い詰められるローズは到頭 壁際まで追い詰められてしまうのだった。


「ほら。ローズ様。こんな風に追い詰められたらどうするつもりなんだよ!!」


 そう言ってジョイはローズを追い詰めると壁に両手を付いてローズを腕の中に閉じ込める。

 そのまま顔を近づけて真剣な顔をしながら囁く。


「……っ………」

(あっ……これが、噂の壁ドンですか……)


 ローズは一瞬そんな馬鹿みたいな事が頭に過ぎったが、やられっ放しも癪に触るので「こうするのよ!!!」と、目と鼻の先にあるジョイの顔を強い眼差しで見つめ返すと思い切り靴の踵でジョイの足を踏みつけた。


「いってーーー!!!」


 勝ち誇ったようにローズを追い詰めていたジョイは、足を踏まれた瞬間、大きな声で痛がるとローズから思わず飛び退()いてしまうのだった……


「ほら。どうにかなったじゃん!!ノア直伝痴漢撃退法だよ!!」


「チッ!!全く……本当、じゃじゃ馬だな!!

 あぁもう!!分かったよ!!オラ行くぞ!!」


 なんだか釈然としないジョイだったが、ローズに一本取られたのは事実なので痛む足を我慢しながらローズを食堂まで連れていくのだった……



***


「どうしたんだジョイは??何かいつにも増して不機嫌そうじゃないか!?」


「そうですか!?俺にはいつも通りに見えますが……!?」


 よく分からない殺気を放ちながら歩くジョイを遠目に見つけてフリードとルイが話しているとご機嫌のローズと不機嫌そうなジョイがフリード達の居るテーブルへとやって来た。


「ごめんなさい。お待たせしちゃったかしら!?」


「いや。僕らも今、来た所だよ」


 そんな会話をしながらいつもの席へと腰掛ける。

 ローズ達が最近 座る二階の窓側の席は、角の2席をくっつける様なかたちで座っている。

 初めの頃はフリードの従者のアベルが早めに来て席を取っておいてくれたのだが、最近は取らなくても自然と空いている様になっていて、公爵家の有無を言わせぬパワーを感じるローズだった。


 そんな感じでいつものメンバーが席に着いた時、ローズの背後から声が聞こえてきた。


「ファルスター嬢。お連れしましたが宜しいでしょうか!?」


「あっ。来たのね!!フリード様。今日は、この方達も ご一緒しても宜しいでしょうか!?」


「あぁ。僕は全然かまわないよ」


 声を掛けられたローズは、向かいに座るフリードに伺い立てるとフリードは、ローズの横に居る二人を見て笑顔で軽く会釈する。


 フリードの了承を得たローズは静かに立ち上がるとラウルの連れてきたビアンカにきちんとした礼をとった。


「初めまして。最近ビアンカ様の従者のラウルと親しくさせて頂いています、ローゼマリー・ファディル・ファルスターと申します。宜しくお願い致します」


 ローズは、他所行きの猫を目深に被りきちんと挨拶をする。


「あぁ。存じてますわよ。きちんとご挨拶するのは初めてですわよね。(わたくし)は、ビアンカ・アシュラーと申します。フリード様、ルイ様、宜しくお願い致します」


「……あぁ……宜しく……」


 ローズが挨拶したにも拘らず、ビアンカは目も合わせずに軽く流して、何故かフリード達へ向けて挨拶をし始める。

 フリードは、ローズが同席を願い出た筈なのに、邪険にされている事に戸惑いが隠せない様で動揺しつつもどうにか返事を返していた。


「…………………」

(おぉい!!!挨拶したのは私だぞ!!

 なんだよ…畜生……清々しい程のスルー。まぁ別にいいけどさ……なんだろう……なんか釈然としないんだけど……)


 ローズがそんな事を考えている間にしれっとフリードの横に座ったビアンカは本来ならビアンカの横に座る筈のラウルを強制的に向かいに座らせローズの横にルイとジョイが並べない配置に付かせた。


 なんだかルイ達も釈然としていない様子だが、一々席について文句を言う訳にも行かず、ローズの横にジョイとラウル向かいにフリード、ビアンカ、ルイと腰掛けアベルが補助席を持ってきてフリードの横に着席すると言う、何とも言えない席順となった。


 何とか全員が着席したところで楽しい(?)昼食会が始まる。


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