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17 登校初日 4


「うわー美味しそう!!」


 出来立ての料理から温かそうな湯気が立ち上がり食欲をそそる美味しそうな料理が目の前に置かれ、お腹が減っていたローズは、公爵家の子息と一緒の席に着いている事も忘れ、出来上がった料理の匂いに釣られて思わず大きな声で呟いてしまう……


(はっ!!!ヤバい!!!初対面の人がいる事をすっかり忘れてた!!)


 微笑ましそうな顔でローズを見つめるフリードを視界の端に捉えた事で、その存在を思い出し慌てて取り繕うが、ローズが嬉しそうに瞳を輝かせて料理を眺めていたのを、ばっちりと見られており幼い子供を優しく見守る父親のような顔をしたフリードや無表情が常のアベルやブラットにも微笑ましそうに見つめられている事に気づいたローズは、やっと引いてきていた顔の赤みが再燃するのだった……


「全く……ローズ様は、もう少し、どうにかなりませんかね……」

 

 一応、フリード達がいる為、他所行きのルイにやんわりと嫌味を言われて更に羞恥が増すが、もう 言ってしまった言葉は取り消せないと半ばヤケになりながらローズは「フン!!」とルイに八つ当たり気味に悪態を吐くと一人で勝手に「頂きま〜〜〜す」宣言してそのまま食事を食べ始めてしまうのだった……


 公爵家の子息が居るにも拘らずルイに嫌味を言われ皆んなからは生暖かい視線を向けられて恥ずかしそうに顔を赤く染めて食事をはじめたローズが少し不憫に思えたジョイは、ローズを慰める意味も込めて俯き気味のローズの頭をぽんぽんと撫でてやると、ジョイの気遣いに少し癒されたローズはモヤモヤしていた気持ちがいくらか落ち着きを見せたのか、軽く溜息を吐いて一呼吸置くと、顔を上げてルイに向かって更に「いーだ!!」と、口を左右に開いて威嚇して見せるのだった。


「ブッハッ!!!ローズちゃんって本当に面白いね!!!何なの……!?全然、令嬢っぽく無いんだけど…………

 あっ!!いい意味でね!!!」

 

 フリードの言葉に初対面と言う事も忘れて思わず睨みそうになるローズは、フリードと目が合った瞬間、宝石のような輝きを見せる金色の瞳が細められ優しく微笑まれてしまい思わず顔を晒してしまう。

 爽やかイケメンの破壊力はハンパ無いのだ……

 ローズが羞恥に悶えて慌てて視線を逸らす……そんな仕草も新鮮で、楽しくて仕方が無いのかクスクスと食事もそっちのけで楽しそうに笑うフリードに、いつしかローズも釣られて笑い出してしまっていた。

 2人が楽しそうにクスクスと笑い合っていると、横に座っているルイは先程とは違い面白く無さそうにムッとした表情を浮かべるとローズとフリードの楽しそうな雰囲気に水を差す様に火に油を注き出す……


「いや〜〜でも…本気で、もう少し 令嬢らしくお淑やかにして欲しいもんですけどね!!こちらとしては()()()()本当に困っているんですよ!!」


 アンニュイな雰囲気を滲ませながら髪をかき上げ眉を下げたルイは困った表情を演出する。

 その仕草を目の当たりにしたローズはイラッとしたのか頬を膨らませると


「むぅ………せっかく楽しく食事してるのに……ガミガミ ルイー!!そんな、ネチネチと細かい事ばっかり言って気にしてるとその内禿げるからね!!禿げルイ!!」


 ちょうど髪をかき上げていたルイは、ローズの言葉に思わずかき上げていた手を止めるとギギギィと言う音でもしそうなほどゆっくりとぎこちなくローズの方に向き直り、ずっと被っていた猫を脱ぎ捨て眉間に皺を寄せた。

 視線を絡ませ鋭い瞳で見つめた事で、ローズがマズイと感じた時には既に遅く咳を切ったように説教をし始める。


「ぁん!?禿げねぇよ!!禿げるわけねぇだろ!!!だいたいお前は、毎回、毎回……」


「あーーーーー!!!聞こえない!!聞こえな〜〜い!!」


「チッ!!!」


 また、いつものお説教が始まると思ったローズは両手で耳を塞ぐと声を発しながらルイの言葉を遮り出した。

 何だかんだで仲の良い兄弟のような2人のやり取りに、ジョイは呆れた様な表情を見せると軽く息を吐きながらルイとローズに注意し出す。


「………ルイ……ローズ様……既に素が出まくってるけど、いいのか!?」


「はっ!!!テヘっ!!!」


「だーかーらー!!お前、そう言うのやめろって!!!無闇矢鱈に愛想振りまくなよ!!」


 ルイ達以外の男性もいるにも関わらず、戯けた様に軽く舌を出しながら茶目っ気を振り撒くローズに 到頭ルイの我慢も限界だった様で、猫を被り直す事もせずにローズのこめかみをグリグリと締め付け始める……


「いつ……痛い…よ……!!………ル…イ……ゴメン……って……」


「まぁ。まぁ。そう怒るなって!!ローズ様には言ったって無駄なんだし……」


 何気に酷い一言を放つジョイに反応したくてもルイに締め付けられている頭が痛くて強制的に黙らざるをえない。


「…わっ……分かった!!ちゃんと大人しくしてるから!!ごめん……って!!」


 悶絶しながら反省を口にしたローズに、本当だろうな…と、怪しむ表情をしつつもルイはやっとローズの頭から手を離した。

 ローズは痛む頭を摩りながら恨めしそうにルイを見上げるのだった……


 ジュリアスが居ないのをいい事に、ルイはローズに対してやりたい放題だった……


「ブッ…アッハハハ!!!何なの君達!!!超ーーー面白いねー!!この子が国一番の2大貴族の娘さんなんだよね!!!信じられない……凄いよ……」


 さっきから笑いっぱなしのフリードは、とても楽しそうにしているし、その横に居るあまり表情を出さないアベルもローズ達の気安さに驚きが隠せない様で目を見開いている。

 口元は笑いを堪えているのかプルプルしていたが……


「ハァ〜〜久しぶりにこんなに笑ったよ!!これから宜しくねローズちゃん!!僕も仲良くなれたら嬉しいな!!」


 よほど楽しかったのか目に涙を浮かべながらフリードはローズに片手を差し出した。


「お見苦しい所を見せてすみませんでした。ルイ共々、これから宜しくお願い致します!!」


 ローズも差し出された手を握り返してニッコリと微笑んで挨拶を返す。

 こうして、異性ではあるが、同じ公爵家同士 対等な初めての友達がローズに出来たのだった。




***




「何あの子……公爵家の娘だかなんだか知らないけど、養子のくせに調子に乗って……

 この国 有数のいい男達を侍らせて楽しそうにしてんじゃないわよ!!今に見てなさい……」

 

 ローズ達が楽しそうに食事をしている側で食事をしている一組の男女が何やら不穏な空気を流していた。


 側にいる栗色の髪に鼠色の瞳の従者らしき男性は主の女性の話に大して興味が無さそうで黙々と食事を食べ進めているが、金髪縦ロールでグレーの瞳のプライドの高そうな女性の方は怒りが収まらない様で仕切りに机を人差し指で打ち付けている。

 長い爪が机に当たる度にカツカツと嫌な音を響かせるが、男性は特に何かを気にする素振りも見せずにその後も黙々と食事を続けていた。


「ローゼマリーとかって言ったかしら、本来ならあそこに居るのは私だった筈なのに、横取りするなんて絶対に許さないんだから!!

 ちょっと、聞いてるの!!あんたみたいな辛気臭い男しか周りに居ないなんて認められないんだから!!」


「そんな事を仰られましても、私は……一体どうすれば……」


 従者の男は、困ったように女性の顔を見つめるも、またいつもの癇癪が始まったのかと心の中で呟くと大して気にも留めずに、軽く話を流し出す。


「そんな事は自分で考えなさいよクズ!!いい。数日中に私とあの子の立ち位置が入れ替われる様にどうにかしなさい。分かったわね!!!」


「はぁ……」


 男はやる気無さそうに返事をすると、そのあとは何か言葉を発する事なくそのまま無言で窓の外を眺めるのだった……



 

 


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