16 登校初日 3
「よし!!だいたい今後の流れとしてはこんな感じかな!?今日はここまで。皆んな明日からしっかり頑張れよ!!」
『 はーい!!!』
「よし。じゃあ解散!!」
今後の流れや授業の説明などを受け終わった生徒達は、バーシルの言葉をきっかけにしてちらほらと教室を後にし出す。
そんな中、ローズも自分の身の回りを片付けながら 横で同じように片付けているメルに話しかけた。
「メルちゃんはマーガレット様と一緒にお昼食べてから帰るの!?」
「はい。これからお迎えに上がって、そのまま食堂へ向かうと思います」
メルは、やはりマーガレットを迎えに行って一緒に食事を取る様で、片付ける手を止めてローズの方に向き直るとそう伝えてきた。
「じゃあ、食堂で顔を合わせるかもね!!」
「そうですね……ただ…お嬢様が居る前では、あまりお喋り出来ないかも知れませんが……」
マーガレットといる時は、マーガレット中心に物事を運ばなければいけない為、メルの私用や他者との会話は禁止されている。
その為、教室の内の様な気軽なお喋りは出来ないだろうと、申し訳無さそうにするメルを微笑ましく思うローズは、気にする必要は無いと笑顔で答えるのだった。
「クスクス。大丈夫よ!!気にしないで!!明日からも宜しくね!!!」
「はい!!宜しくお願いします!!!」
そう言って机にぶつけそうな勢いで思い切り頭を下げるメルは、急いでマーガレットの元へ向かうのだった……
…………
「ローズ。行くぞ!!!」
メルが去ってから幾らも経たない間に、ルイ達がローズを迎えに教室を訪れた。
「はーい。今、行く!!!」
そう返事を返しながら急いで身支度を整えると小走りでルイ達の元へ向かうのだった。
「ルイ達は友達できた!?」
ルイ達の元へ駆け寄ったローズは、自分が仲良くなりたいと思っていたメルと仲良くなれた事で彼等よりも少し優位に立った気分になり得意気に声を掛けると、見慣れた男性もルイ達と一緒に立っていた。
「あっ!!!ブラットだ!!学校どうだった!?」
「こんにちは。ローゼマリー様。クラス自体は、まぁまぁでしたよ!!ただ、常にジョイが話し掛けてくれたので、とても嬉しかったですし、この先の学園生活が楽しみになりました!!」
「そっか、2人とも仲良くなれたみたいで良かった!!」
ローズは、自分の知っている2人が入学早々友好を深められた事を自分の事の様に嬉しく感じ、思わずジョイの顔を覗き込む様なかたちで嬉しそうに微笑むのだった。
「それで…ローゼマリー様…本日は、私もお昼をご一緒してもいいですか!?」
真っ赤な顔のジョイの横で楽しそうに立っているブラットは、ローズと共に食事を取ってもいいかと少しハニカミながらローズに問いかけてきた。
「もちろん!!!皆んなで一緒に食べよう!!」
お腹も減り 気兼ねしないメンバーで楽しく食事が出来る事を嬉しく思いながら、皆でこれから送る学園生活などの話しをしながら食堂へと向かい出すが、ローズは まだ、この人の多さに慣れて居ないのか、溢れかえる人の波にキョロキョロとよそ見してしまう。
「ほら!!キョロキョロしてると逸れるぞ」
周りに気を取られよそ見をし続けるローズに、ほっといたらコイツ絶対逸れるぞ!!と、危機感を感じたルイはローズの斜め後ろを歩いていたが横に並び立ち ローズの腕を引っ張るかたちで歩き出した。
ルイの少し強引な行動を見兼ねたジョイは
「ルイ……ローズは女の子なんだから強引なのはダメだよ」
と言いながら、優しくルイの手を離すと、ローズの手を取りスマートにエスコートし出す。
少し得意げなその仕草にルイが堪らず舌打ちすると苦笑い気味のブラットがルイに話し掛けたところで食堂に辿り着いた。
「うわ〜〜〜!!凄い人だね!!!お昼ご飯食べる場所あるかなぁ!?」
元々広い食堂ではあるのだが、それでも溢れる人の波にローズは圧倒されてしまう。
ルイとブラットを先頭にしてジョイにエスコートされながら空いている席がないか探していると近くからルイを呼び止める声が聞こえてきた。
「ルイ君……だよね……!?今からお昼かい!?」
金髪に黄金の瞳の優しそうな男性がルイにそう問いかけてきた。
「先程はどうも……
はい。これからお昼にしようと思い、席を探している所です」
ルイはローズと接するのとは違い少し畏まって男性に返事を返す。
「それなら一階はご覧の通りいっぱいだから、2階の俺らの席に一緒に座るかい!?」
「いえ……友や主人もおりますので……」
男性の提案に申し訳なさそうな顔をしながら返すルイに男性は爽やかな笑顔で話し出す。
「それなら大丈夫だよ!!広い席を確保しているし、女の子をあまり歩かせては可哀想じゃないか!!」
(うぉーーーー!!紳士!!!紳士マンだ!!!
この人って確か…新入生挨拶してた人だよね……
流石……挨拶とかする人は人間ができてる!!)
「……ありがとうございます……ローズ様。こちらの方と一緒の席でも構いませんか!?」
「へっ??はっ!?よっ…宜しいでごじゃ¥$*%……」
(Noーーーー!!!噛んだ!!!ルイの突然の敬語に戸惑いまくって、紳士マンの前で噛んだよ〜〜〜)
普段からぞんざいに扱われているローズに、突然爽やかな笑顔で礼儀正しいルイから突然話を振られたローズは、よく分からない緊張から噛みまくってしまう……
完璧な紳士マンの前で自分のポンコツぶりを披露してしまったローズは、羞恥心から顔を真っ赤にして俯いてしまうのだった……
そんなポンコツなローズに呆れ顔のルイと、苦笑いしてるジョイに連れられてショック過ぎて魂が抜けているローズは引き摺られる様にして席まで移動するのだった。
………
「初めまして。僕はフリード・ファロン。ファロン公爵家の息子だよ。こっちは従者のアベル。
僕とは乳兄弟として幼い頃から共に育った仲なんだ!!
君はファルスター公爵家のお嬢様であっているかな!?」
フリードが爽やかに挨拶すると、横にいるアベルも丁寧に頭を下げた。
「はい。初めましてローゼマリー・ファディル・ファルスターです。宜しくお願い致します」
ローズは席から立ち上がると先程のポンコツぶりが嘘みたいに綺麗なカテーシーを披露した。
よし!!完璧!!と、ローズは伏せた顔でほくそ笑むが、横で座っているルイは、そんな事でさっきのポンコツが巻き返せると思うなよと鼻で笑い残念な子を見るような目でローズを見つめていた。
「ローゼマリー様は何学年なんだい!?」
「はい。私は13学年で、ケイン・バーシル先生が担任です。フリード様はルイと同じ学年なんですよね!?」
「あぁ。そうだよ!!僕なんて、今はまだ 公爵家の息子ってだけだけど、ルイはこの歳で爵位を継いで、国一番の財力を既に持ち合わせているなんて、興味しか湧かないだろ!?仲良くなりたくて声をかけたんだ!!」
「いえ…そんな……大した人間ではありませんよ……」
国で一番の財の内、その殆どがお前の目の前に居るポンコツ女の物なんだぞ!!と、心の中で悪態を付いているが、フリードの前ではしおらしく謙遜して見せる。
「そんな謙遜するなよ!!だいたい、僕はまだ爵位を継いでいない唯の息子に過ぎないけど、ルイはもう爵位を継いでいるんだ。
立場的にはルイのが上なんだから敬語を使う必要なんて無いよ!!気軽にフリードと呼んでくれ!!なっ。いいだろ!!!」
ルイに向けて爽やかに笑うフリードに、今まで自分の周りに居なかったタイプの為、目を見開き固まるルイと、同じように軽く感動しているローズは
(おぉ……なんて爽やか青年なんだ!!同じイケメンでも私の周りに居るダーク臭が漂うイケメン達とは纏うオーラが違う気がする……)
などと失礼な感想を抱いていた。
「皆も気楽にフリードって呼んでくれて構わないよ!!」
「ありがとうございます!!そしたら私の事もローズとお呼び下さい。親しい人にはそう呼ばれているので!!」
「じゃあ、宜しくね。ローズちゃん!!」
「はい。宜しくお願いします!!フリード様。
あと、こちらは私の従者をしてくれているジョイ・ダチェスと友人のブラットです」
紹介されたジョイも素早く立ち上がると綺麗な礼をしながら
「ジョイ・ダチェスと申します。私も最近、父から爵位を譲り受けましたので、ローズ様の従者兼ダチェス領の領主も兼任しております。宜しくお願い致します」
ジョイの方も普段はローズに見せないような畏まった態度でしっかりと挨拶をしているところを見て、ジョイもやれば出来る子なんだなぁ…と幼い子供の成長を喜ぶ母のような感動をしていた。
「…流石……ローズちゃんの従者ともなると、2人とも凄い肩書きだね!!
国一番の財力を持つ男爵と、多くの騎士団長を輩出してる騎士団一名門の伯爵家の伯爵自らが従者するなんて、凄すぎて誰も近寄れないんじゃないかなぁ??」
「はははは……」
(やめてよーーー!!話だけ聞くと物凄い感じがするけど、実際は私の扱い結構 雑なんだから〜……)
ジョイとフリードの会話がある程度ひと段落ついた時、フリードがブラットの方に視線を向けた。
するとブラットは驚いた様に一度 肩を跳ね上げると慌てて立ち上がり
「はっ……は…は…初めて!!ブラットと申します。平民ですが、ジョイ様と同じ学年で仲良くさせて頂いております!!!」
「ブラットは、ファルスター公爵家や王家の馬車などを手掛ける職人さんのお孫さんで、私が個人で仕事をお願いした時に知り合った時からの仲なんです」
「王家の馬車を手掛けるって言ったら、あの有名な職人さんだよね!!
自分が納得しなければ、どんなに高い身分であっても仕事の依頼は受けないとかじゃなかったかな!?
子供の個人の仕事の依頼なんて、よく受けてくけたね…….」
「よくご存知ですね!!僕の師匠も初めは断る気満々だったんですけど、今はローズ様の虜なんですよ!!」
「へぇ……それは凄いな……一体どんな依頼をしたんだい!?」
フリードは、頑固な一流職人を虜にするほどのローズの依頼とは一体どのような物なのかと興味津々のようで、宝物を見つけた子供の様に目を爛々とさせながらローズに話しかける。
「ゴホンッ。そんな事より早く何か頼みませんか……ウチのローズ様は、お腹が減り過ぎると突然、奇怪な行動を取りますので!!」
「ルイ!!!ちょっとーーー!!!根も葉も無い事言うの止めてよ!!!そんな事しないじゃん!!何なのーー!!初対面の人の前で!!!信じちゃったらどうすんのよ」
ルイの言葉に思わず被っていた猫を脱ぎ捨てて横にいるルイをポカポカと殴り出したローズをニヤつきながら見つめるルイは
「ほら。そろそろ限界そうですので、宜しいでしょうか!?」
などと言いながらしれっとフリードに話を振るのだった。
「ふふっ。あぁ…とても可愛らしいね!!こちらこそ気が利かないで申し訳なかった。ローズちゃん!!じゃあ先にご飯を頼もう!!」
「えっ……はっ……は……い……」
ローズは恥ずかしさのあまり、また俯いてしまい……クスクスと楽しそうに笑う男達を恨めしく思いつつ、もっと上手い躱し方があっただろうとルイをこっそり睨むのだった。
フリード・ファロン 公爵家子息 18歳
身長 183㎝ 金髪のサラサラストレート 金の瞳 細マッチョ
魔法 オールマイティ
絵に描いたような品行方正な 爽やかイケメン青年。
曲がった事が嫌いで人に対してはそうでもないが自分には厳しい性格。
ただ、将来公爵家を背負って立つのに相応しく、人に対して厳しい判断をする事もある。
女性の事は、苦手では無いが率先して仲良くなりたいとも思っていない。
フリード出産時に母親を亡くしていて、当時遠縁にあたるアベルの母を乳母として迎え、同じ歳のアベルと兄弟の様に育つ
アベル フリード従者(フリードの乳兄弟) 19歳
身長 191㎝ 耳まである黒髪ストレート 黒目 がっしりとした体格
無表情が常で、喜怒哀楽をあまり表に出さないが、何も思っていない訳では無いようだ。
フリードと乳兄妹でフリードだけはアベルの喜怒哀楽が分かっているようで、幼い頃から共に育ったフリード至上主義。
フリード以外の他人に興味なし。
フリードを害そうとする人間に容赦はない。
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