15 登校初日 2
「よーし。皆んな居るか!?各々好きな席につけよ!!」
教室の扉が開き、男性の良く通る声の方に視線を向ければ、そこには入学式の時にローズを受付してくれたバーシル先生が立っていた。
「よし!!皆、席に着いたな!!
初めまして!!君達の担任をする事になったケイン・バーシルだ!!全学年の魔法学も担当する事になるから、これから宜しく頼むな!!」
そう言ってバーシル先生は、ニカっと爽やかな笑顔を生徒に向けよく通る大きな声で挨拶した。
とても爽やかな笑顔の優しそうな先生の筈なのに、バーシル貼り付けたような笑顔にどこか胡散臭さを感じてしまうローズだった……
「まずは。出欠を取るから、名前を呼ばれた者は立って皆に向かって軽い自己紹介をしてくれ!!
3年間、この顔ぶれで授業を行う事になるからな!!
それと、ここからは大事な話になるが、この学年には女生徒が2人居る。
でも………だからって、あまりがっつくなよ!!この先 3年間もあるんだ。初っ端から嫌われたら目も当てられないぞ!!」
片目を瞑って茶目っ気を出すバーシル先生に、一体なんて事を言い出すんだと、ローズは軽く目を見開くが、他の男子生徒達はクスクス笑いながら「はーい!!」と楽しそうに返事を返している。
クロード達と同年代っぽいバージル先生は、それからも楽しそうに出欠をとりだすのだった。
………
殆どの男子生徒達の自己紹介が終わり、生徒達が自分の出身領や爵位、好きな食べ物などを言っていく中で、ローズの心のアイドルのメルの名前が呼ばれた。
「メルです。フレンシア侯爵家のマーガレットお嬢様の侍女をしております。皆様、宜しくお願い致します」
(きゃーーー!!!メルちゃん!!!素敵!!!可愛らしいよーーー!!)
ローズが自分の好きな推しを応援する様な気持ちでメルにエールを送り続けた挙句、その後もメルの事で頭がいっぱいのローズは他の男子達が自己紹介と言う名のアピール合戦を繰り広げるも、全く耳を傾けずにスルーし続けていると、最後にローズの名前が呼ばれるのだった。
「ファルスター嬢」
名前を呼ばれた瞬間、周りが水を打った様に静まり返り皆の視線がローズに突き刺さるが、ローズは震え出しそうになる声を抑えようと グッとお腹に力を入れて声を出し始めた。
「初めまして。ローゼマリー・ファディル・ファルスターです。ファルスター公爵領から来ました。
好きな事は身体を動かす事で、好きな食べ物は野菜がたっぷり入ったスープです。3年間、宜しくお願い致します」
猫を目深に被り、そう言いながら微笑むと綺麗なカテーシーを行った。
その瞬間、何人かの顔が燃え上がるんじゃないかと言うくらい赤くなってしまうが、ローズは彼等に他所行きの顔で綺麗に微笑むと、そのまま静かに着席するのだった。
(うっし!!完璧!!!決まったぜ!!!)
何処ぞの野球少年みたいに、心の中でガッツポーズをとるローズをよそに、一度 その場を締める様にバーシル先生の声が響いた。
「よし、これで全員の出欠が取れたな!!3年間、ここに居る仲間と一緒に過ごす事になるんだから、仲良くするんだぞ!!いいな!!!」
『はーい!!!』
生徒達はバーシルの言葉に素直に返事をする。
ローズもせっかく同じクラスになれたメルと仲良くなれる様にと願いながら元気良く返事をした。
「フッ。いい返事だな!!そしたら この後は、小休憩を挟んだ後、今後の流れと授業の説明などを行う。
今日は、初日と言う事もあるから、昼前には解散になる予定だ。
本格的な授業などは、明日から始まる。皆もそのつもりでな!!
よし!!そしたら小休憩の後、また、この教室に集合だ!!鐘の音で知らせるから、ちゃんと戻って来るんだぞ!!2度目の鐘が鳴る前には席に着いておくように!!
あぁ。そうだ!!!今後も席は特に決めないから、来た順に好きな席に座っていてくれ!!よし。じゃあ解散!!!」
そう言うと、バーシル先生は足早に教室を後にするのだった。
「ねぇ。ねぇ。メルちゃんは好きな食べ物とかあるの!?」
「えっ??あの……私…は……果物が…好き……です……」
ローズの問い掛けに、恥ずかしそうに頬を染め俯きながら話すメルの可愛さにトキメキが抑えられずに思わずローズは胸を押さえてしまう。
「……っ………」
(くぅ〜〜〜可愛い!!!こんな可愛らしい事ってある!!!???可愛すぎて鼻血出そうなんだけど………)
ローズもジュリアスの事を言えない変態っぷりを見せるが、辛うじて声には出さずに心の中で留めている……
ルイに見られたら呆れられそうな表情ではあるが………
「あっ……でも、野菜スープも大好きですよ」
(うぉーーーーー!!!!好きだ!!!好きだ!!!好きだーーーー!!!何なのこの可愛さ!!!惚れてまうやろーーーー)
メルちゃんの可愛らしい気遣いにローズの気持ちが爆発しかけるのだが、どうにか堪え 息も絶え絶えに「一緒……だ……ね………」とだけ呟くのだった。
完全に変質者みたいな動向なのだが、それを照れているのだと勘違いしたメルは嬉しそうに
「ふふっ。一緒ですね!!」と答え、側にいた男子達は、ローズが顔を赤くさせ悶える姿を見て、何を勘違いしたのか ガタガタと何人かが椅子から転がり落ちるのだった。
そんなカオスな状況の中、突然焦った様にメルが立ち上がると、
「いけない!!!お嬢様を迎えに行かないと!!!ローゼマリー様。失礼しても宜しいでしょうか!?」
そう言いながらメルは視線を彷徨わせ慌てふためいてしまっている……
「あっ!!!ごめんね引き留めて!!早く行って!!!」
きっと、終わったら直ぐにマーガレットの事を迎えに行かなければ行けなかったのに引き留めてしまった事に罪悪感を感じつつ、ローズも焦った様にメルを送り出す。
メルが焦って教室を後にした直ぐ後に、ルイ達がローズの教室を訪れるのだった。
………
「ローズ居るか!?………
おっ…よし!!ちゃんと待ってたな!!!」
ローズを見つけて心なしか安心した様な顔をしたルイに軽くムッとしたローズがルイの側へと歩み寄る。
「むぅ……待ってるに決まってるじゃん」
(何よ!!!人をペットの犬猫みたいに……)
「悪りぃ。悪りぃ。もう、あんまり時間ねぇけど便所とか行くか!?」
妙齢のレディーに対してする様な発言では無いが、デリカシーと言うものが元々備わっていないルイは、全くその事には気付かずに沢山の生徒達がいる前であからさまな発言をしてしまう。
「ルイ!!!言い方!!!レディに対して便所はやめてよ!!しかも別に行かないよ!!!」
「お前…ほんと口悪りぃよな!!流石にそれは無いわ……」
ジョイも行儀がいい方では無いが、ルイの口の悪さに流石に呆れた様な顔をするとルイの肩叩きながら首を振る。
珍しく自分の味方に付いてくれたジョイに気を良くしたローズは、もっと言えとジョイの背中を押しながら囃し立て始める。
「そうだよね!!ジョイ。もっと言ってやって!!」
「うぁ??おっ……おぅ。ダメだぞ!!!ルイ!!」
「ぁ??何だよそれ……フッ。バカか……
じゃあ、もうすぐ授業が始まるから俺らは行くぞ!!
次の授業が終わったら、昼だから食堂でも行くか!?」
ローズに頼まれたにも関わらず、大した援護射撃も出来ないままルイに鼻で笑われたジョイは、負わなくてもいい傷を負ってしまい軽く肩を落とすが、同じ様に鼻で笑われた筈のローズは大して気にも留めずにご機嫌のようだ。
「わーーい!!楽しみ!!!今日は食堂にいっぱい生徒達が来るのかな!?」
「フッ。多分な!!!じゃあいい子にしてろよ!!」
素朴な疑問を口にするローズを可愛らしく思い 頭を軽く小突くと、ローズに背を向け手を振りながら自分の教室に戻ろうとする。
「もう…子供扱いしないでよ!!」
「じゃあな!!ローズ」
ルイの背中に向かってブツブツと文句を言っているローズの頭を軽く撫でてジョイも教室に戻ろうとするのでローズは「ルイもジョイもいい子にしてるんだよ!!」と、叫びながら手を振るのだった。
「「チッ」」
背を向けたままお互い同時に舌打ちして去って行くのを見つめながら、なんだかんだ言って息ぴったりの2人だなぁ……と、呑気な感想を抱くローズはそのまま自分の教室に入って行くのだった……
ケイン・バージル(男爵) 魔法学教師・ローズ担任
身長 179㎝ 92歳 クロード達と同年代
長い藤色の髪 眼鏡をかけた切長の瞳で整った顔立ち
クロード達と同年代で魔法の扱いは国でもトップレベルだが、剣術は苦手
一見人当たりが良さそうではあるが、好き嫌いが激しい。
学校では自分の好みに左右されない様に割り切って生徒と接してる。




