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14 登校初日


 あのあと、入学式は無事に終了し、ルイ達と一緒に寮へと戻ったローズは、少し遅れてやってきたクロード達と夕食を共に取り、その後は大した問題もなく1日を平和に乗り切ったローズ達であった。


 夕食後、クロード達が自分の領地へと泣く泣く帰る中、1人だけ笑顔のギルバートが、その日は寮の部屋にお泊まりしていった為、一夜明けた現在は、ギルバートとルイ、ジョイで朝食を摂っていた。


 本日、ローズ達の学園の予定は、各学年ごとに分かれて自分のクラスへ行き、担任紹介と同学年の子達との顔合わせを行いながら、今後の学園生活の流れを説明していく予定になっている。


 今日から、本格的な学園生活が始まる為、ローズは、この国に来てから始めて ルイ達と離れて1人で同年代の子達と過ごす事になる。

 これから始まる学園生活に朝から少し緊張気味のローズは、いつも以上に落ち着きが無かった。


「ローズ。いいか!!よく聞くんだぞ!!!

 俺かジョイがローズを迎えに行くまでは、()()に無闇に教室から出るんじゃねぇぞ!!」


「もう。。。分かってるよ!!でも、移動教室とかだったらどうするの!?」


 がっちりとローズの両肩を掴んで拘束すると、真剣な顔をしながら注意するルイに対して、少し面倒くさそうにしながらも、疑問を口にする……


「それでもだ!!!どんな時でも必ず俺らを待て。

 たとえ仲良くなった同学年の男が連れて行ってくれると、言ったとしても絶対について行くなよ!!分かったか!?」


「は〜い!!本当 心配症だなぁ……まったく……もう、私だって赤ちゃんじゃないのに……」


 たかだか数分の学校の休み時間まで、わざわざ御守りをしに来なくても一人でちゃんと出来るのにと、過保護過ぎな気がするローズは、呆れ気味に溜息を吐くが、側に居るギルバートは、そんなローズを見兼ねて、苦笑い気味にローズの頭を撫でながらフォローを入れる。


「ふふっ。ローズ……ちゃんとルイの言う事を聞くんだよ!!女の子は心配しすぎなくらいで丁度いいんだ。何かあってからでは遅いからね。分かったかい??」


 ルイの言葉を補う様に優しくローズに語りかけるギルバートの気遣いに 癒されたローズは、緊張のため昂っていた気持ちが落ち着きはじめるが、まだ少し緊張感が燻っているようだった。


「はい。ギル兄様!!!

 はぁ……今日から始まる学園生活……なんだか少し緊張しちゃいます……」


 ローズがドクドクと普段より大きく脈打つ心臓を両手で抑えながら息を吐くと、これから始まる新生活に緊張している初々しさを見せるローズを微笑ましそうに見つめながら


「大丈夫だよ。基本的には男性達は女性にとても優しいし、ルイとジョイも側に居るんだから、何も心配する事はない。

 ただ、困った事や気になる事があるなら、どんな些細な事でもいいから俺たちにきちんと相談する事!!自分でどうにかしようとしないでね!!約束!!」


 そう言いながらローズの頭を優しく撫でる。


「じゃあ、約束を破らないようにするために指切りげんまんしませんか!?」


 約束と言えば、コレでしょうと、思い立ったローズは、徐に小指を差し出した。


「指切りげんまん??」


「そうです。私の前の世界で約束する時によくやるんです!!」


 言葉だけ聞くとなんだか物騒な感じがする響きに、眉間に皺を寄せながら首を傾げるギルバートにローズは前の世界の約束の交わし方だと説明する。


「へぇ。いいよ!!」


 ローズの前の世界のものと聞いて、興味を示したギルバートは、楽しそうに片眉を上げるとローズに同意した。


「じゃあ片手の小指だけ出して下さい」


 ローズは見本を見せる様にギルバートの前に軽く握って小指だけ立てた手を差し出した。

 ギルバートもローズに言われた通りに片手の小指をローズの前に差し出すとお互いの小指同士を絡めてローズはお馴染みの歌を歌い出す。


「指切りげんまん〜〜嘘付いたら 針〜千〜〜本〜飲〜〜〜ます。指切った!!!」


「ブッハッ!!あははは。ローーーズ!!!ローズの前の世界では、怖い事、言うんだなー!!」


 ローズが歌い終わった瞬間に思わず吹き出したギルバートにローズも釣られて楽しくなったのか、2人で見つめ合いながらクスクスと笑い出した。


「ふふっ。これでもう約束破れませんね!!」


「クスクス。あぁ…そうだな!!これで安心だ」


 そう言いながらローズとギルバートが約束を交わすと、ギルバートとのやり取りで幾らか気持ちが楽になったローズは、学園に向かう為に元気よく部屋を後にするのだった。



***



「ローズ……大丈夫か??」


「……うん……何か……でも…これから教室に入ったら、ルイ達も居なくて、一人なんだと思ったら……また緊張してきちゃって……」


 公爵家で真綿で包むように大切に、大切に、育てられたローズは、ガラスのハートの様に繊細な為、新入生特有の緊張感に包まれて戸惑っていた。


 学園の玄関前で思わず立ち止まって、学園を見上げてしまったローズは、極度の緊張からか、その場から足を一歩踏み出す事が出来なくなってしまい、その様子をルイとジョイが心配そうに見つめている。


 不安そうに瞳を揺らすローズに、ルイが無理する必要は無いんだと言おうとした その時、先日、見かけた侯爵令嬢のマーガレットとウサギの獣人のメルがローズの側を通りかかった。


「あっ!!昨日の子だ!!!」


 ウサギの獣人のメルを見かけた瞬間、先程まで不安そうに瞳を揺らして動けずにいたのが嘘みたいに瞳を輝かせ、メルを追いかける様に意気揚々と学園内に足を踏み出すのだった!!


 ローズの心臓は一見ガラスで出来ていそうだが、実はプラスチック製だったようだ!!

 ちょっとやそっとじゃ壊れそうも無い安価な心臓を引っ提げて意気揚々とメルを追いかける。


 そんなローズを横目で見ながら、長い付き合いなのに繊細そうな見た目に騙されて、心配してしまった馬鹿な自分を悔しく思うルイとジョイであった……


 そうして、ウサギの獣人のメルを追い掛けるかたちで、ルンルン気分で校舎に入ったローズだったのだが、その子とは学年が違うのか、ローズの上の階まで足を踏み出すのを確認すると、ローズは少し気落ちしたように肩を落とし、そんな事ではもう騙されないルイ達に連れられて自分の教室まで辿り着くのだった……


「ローズ。昨日も言ったけど、授業が終わったからって、()()に一人で行動するなよ!!」


「もう……朝から何度も聞いたよ!!大丈夫だって!!ちゃんと待ってるから!!」


 真剣な顔でしっかりと答えるローズなのだが、今一 信用出来ないのか、それともルイ自身も少し不安なのかルイは、難しい顔をしながらローズから離れる事が出来ない。


「ほら、ルイ達も早く行かないと時間になっちゃうよ」


「あぁ。分かってるけど……」


 ローズに行く様に促されるが、何故か離れる決断が出来ないルイは、言葉を濁し行くのを渋る。


「おい。ちょっとは信じてやれよ!!なっ。ローズ様!!!」


 いつまでもはローズの側から離れよとしないルイに痺れを切らしたのか、溜まらずジョイが横から口を出す。


「そうだよね!!ルイは心配症すぎるんだよ!!私だってもう13歳なんだから」


 得意げに言い放つローズに、その お前にどんだけ迷惑かけられたと思ってんだよと、心配と不安から怒りに変わったルイだったが グッと堪えると渋々ながらも「じゃあ、後でな…」と言いローズの頭を軽く小突いて自分達の教室に向かい出した。


 ルイ達を見送ったローズは意を決して教室の扉を開いた。


 ローズが扉から姿を現した瞬間、教室内に軽い響めきが起こり戸惑ってしまうローズだったが、震えそうになる足を一歩踏み出して何食わぬ顔で何処に座ればいいのかと辺りを見回した。

 だが、だいたい主要な席には誰かしらが座っており、空いている席は自ずと前の方しか無く、ローズは仕方がないのでその中でも一番ましそうな窓際の一番前の席に腰掛けた。


 ローズの一挙手一投足を見守る男子達は、声を掛けたそうにウズウズしているものの、その中の誰も先陣をきる人はいなかった。


 その事に少し安心してホッと息を吐いた時、またしても教室の扉が開いた……


(あっ!!!!ウソ!!!あの子だ!!!!!)


 教室の扉を静かに開けて中に入ってきたのは先程、上の階に上がって行ってしまったメルだった。

 

(ヤバ〜〜〜い!!!!超ーーーテンション上がるんだけど!!!仲良くなりたい!!お喋りしたい!!出来ることなら触りたい!!)


 変態オヤジの様な事を考えているローズは、自分の顔が興奮でおかしな事になっているとも知らないでメルの事を見つめ続けてしまう。


 メルの方も何処に座ればいいのか困っている様で辺りを見回している時にふとローズと目が合った。


 お互い時間が止まったように視線を合わせていたが、次の瞬間ローズはメルに向かってニッコリと微笑む。


 その瞬間、教室内に男子達の雄叫びが響き渡りローズもメルも男子達の声の大きさに思わずビクリと肩を跳ね上げてしまう……

 興奮冷めらぬ男の子達の叫びに押されるように少しづつローズに近づいて来たメルにローズも近づくと


「私の隣に座りませんか!?」


 と微笑みながら声を掛けた。

 ローズの言葉に軽く目を見開いたメルは


「えっ……あの……私みたいな獣人が、隣に座っても大丈夫なんでしょうか??」


 と、申し訳無さそうに少し首を傾げながらローズの様子を窺うように恐る恐る声を掛けてきた。


「クスクス。全然大丈夫だよ!!寧ろこれから仲良くしてくれると嬉しいです!!

 私は、ローゼマリー・ファディル・ファルスターです!!家族からはローズって呼ばれてるの!!貴方も気軽にローズって呼んでくれると嬉しいな!!これから3年間宜しくね」


「えっ!!!貴方様が噂の……!!めっ…め…め…め…め…滅相もございません!!私の様な身分の者が気安く接するなど……」


 ローズは、せっかく同じクラスになれたのだからと嬉しそうに自己紹介する。

 嬉しそうなローズとローズの名前を聞いて驚愕に目を見開き恐縮しまくるメルとの温度差がすさまじかったが必死な2人はお互いの温度差が理解できない……


「何で!?これから一緒に学ぶ仲間でしょ!?お友達になってくれると嬉しいんだけど……名前はなんて言うの!?」


「はっ……はい!!!申し訳ありません。私の名前はメルと申します!!

 あっ……あの……本当に私で宜しいんでしょうか……」


「うん!!宜しくね。メルちゃん!!!」


 そう言って、ローズは半ば強引にメルを隣の席に座らせた。

 高貴な身分の少女が獣人の少女に優しく接する一連のやり取りを周りの男子達は驚愕しながら見つめるのだった……

マーガレット・フレンシア 侯爵家 16歳 


黒髪ストレートで眉毛の辺りで切り揃えた前髪がある。


黒い瞳の美しい女性 


 プライドが高く、何事も自分が1番でありたい。


 今まで出会った事も無い沢山の男性達を目にして日々興奮気味で常に浮き足立っているが本来は冷静沈着な女性。


 身分制度を重視していて、自分より爵位が下の人間を見下す傾向がある。



………


メル  (マーガレット侍女) ウサギの獣人  13歳


 ペールオレンジの髪 赤紫の丸い瞳


  大人しく気の弱い可愛らしい少女だが、実際は魔力が高く身体能力も高い緑魔法が得意な少女。


 

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