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12 入学式 2


「あれ!?ローゼマリー様です……よね…!?」


 ローズがルイ達を連れて一階にあるホールに向かって歩いていると、後ろから不安そうにローズを呼び止める声が聞こえてきた。


 ローズは、自分の事を知っている歳の近い人間なんていただろうかと不思議そうに振り返り 声のする方へ視線を向けると、そこには見覚えのある顔が真新しい制服に身を包んで立っていた。


「ブラット…….??……ブラットだ!!!そっか…!!ブラットも同年代だよね!?何か見ない間に大人っぽくなったんじゃない!?」


 ローズは車大工のベェータの孫であるブラットとの久しぶりの再会に顔を綻ばせると、令嬢とは思えない力強さでブラットの肩を数回叩き、嬉しそうにブラットの隣に並んで歩きだした。


「ふふっ。ありがとうございます!!ローゼマリー様も一段と美しくなられましたね。これから3年間宜しくお願い致します」


 以前はひょろひょろとした少年と言う感じだったのに、少し逞しくなり青年の姿になっているブラットが礼儀正しく腰を折ると笑顔で挨拶してきた。


「ふふ。嬉しい……ありがとう!!

 でも、これから一緒に学園に通う同じ生徒なんだから、あまり畏まらなくてもいいよ!!気軽にローズって呼んで!!」


 ローズは小走りでブラットの前に回り込み斜め前に立つと顔を覗き込む様にしながら楽しそうに話しかける。


「なっ……そ…そ…そ…そんな訳には参りません!!!ローゼマリー様は取り引きさせて頂いているお嬢様で、気安くなど接したら師匠に怒られてしまいます!!!」


 突然、美しい少女に覗き込まれたブラットは、上目遣いで見つめるローズの破壊力の強さに驚いて頬を真っ赤に染めながら少し仰反る様な形になりつつ辛うじてローズにそう伝えるが、ローズは尚も楽しそうに笑っている。


「クスクス。堅いな〜!!大丈夫だよ!!じゃあ、徐々にね!!とりあえずローゼマリー様だと長いからローズ様って呼んでみて!!」


「えっ……はっ……ロ…ロ…ロ…ローズ様……」


 ローズに詰め寄られて完全に挙動不審になったブラットは、顔を真っ赤にしながらも必死で口を開いて返事をする。


「プッ。。。まだ堅いなぁ……!!じゃあ、これから宜しくね。ブラット!!」


「はい……宜しくお願いします。ローズ様……」


 首を傾げながら可愛らしく挨拶したローズに、全力疾走してもここまで心臓の鼓動が早くならないって言うほどドキドキと高鳴る鼓動を隠しつつ しっかりと腰を折ったブラットが挨拶を返した。


「よし!!じゃあ一緒に行こう!!」


 胸の前で力瘤を作ったローズはブラット達を引き連れて楽しそうに歩き出した。


 そんなやり取りが交わされていた間も周りに居る生徒達は


「ローゼマリー様って言うらしいぞ」や「俺も仲良くしてもらいてぇ」など、少し遠巻きに眺めつつもヒソヒソと噂している。


 その度にルイの耳がピクつきジョイの視線が鋭くなるが、ローズは少しの優越感に浸りながら誰の話しも気に留める事なく、ホールの入り口へと辿り着いた。


 入口にある扉の前には数人の教師らしき人物が立っており、そこで名前と年齢を言い、リストに記入されていれば中へと案内される。


 ローズもルイ達を伴って、一人の男性教師の前に立つと名前と年齢を伝え始めた。


「ローゼマリー・ファディル・ファルスター、13歳です!!」


「これは……お…待ちしておりました。ファルスター嬢。中へお入り下さい!!」


 ローズの名前を聞いて驚いた様に軽く目を見開いた教師は、丁寧に腰を折ると名簿の名前を確認せずにローズを中へと促す。


「ありがとうございます。先生でいらっしゃいますか!?」


「はい。わたくし、魔法学を担当致します、ケイン・バーシルと申します。全学年の魔法学を担当致しますので宜しくお願い致します」


 先生のくせに生徒のローズに対して深く腰を折ったバージルは、そのまま姿勢を戻す事なく直角の綺麗な礼をしつつローズに向かって挨拶している。

 バージルの態度に若干引き気味なローズは引き攣りそうになる口元を必死に抑えて挨拶を返す。


「先生、顔をお上げ下さい。こちらこそ。3年間宜しくお願いします!!バーシル先生」


 そう言うと、溢れるような笑顔を見せローズは綺麗なカテーシーを行った。


 その瞬間、バージル先生の顔が湯気が出そうな程赤くなっていき、ローズの姿を見つめたまま固まってしまうのだった……

 ルイはそんな様子を側で見つめながら、また余計な事をしやがってと軽く舌打ちし、ジョイとブラットは視線を合わせると苦笑いしながら2人の様子を眺めるのだった。


 全員の確認が終わり、ホールに入るためにルイとジョイに扉を開けてもらったローズは緊張しながらもホールの中へと視線を向ける。

 その瞬間、ローズの目に入ってきたのは溢れんばかりの生徒達の姿だった。

 人気のテーマパークで並んでいるかのような人の多さにローズは、少し圧倒されてしまうものの、先程まで不機嫌そうにしていたとは思えないほど別人の様に優しいルイのエスコートで中へと足を踏み入れる


 日本の格式張った入学式とは違い、立食パーティー形式の入学式は飲み物を持った男子学生達でごった返していた。


 だが、やはり女性は珍しいのか、ローズが扉から現れた瞬間、時が止まったように学生達の視線がローズに突き刺さり、その事もローズが気後れしてしまう要因の1つでもあった。


 ローズを見つめる学生達は、ローズがルイにエスコートされて進む度にモーゼの如く道を開け、ローズを遠巻きに見つめているのだが、何かのきっかけさえあれば、彼等が押し寄せて来そうな怖さが感じられ変な緊張感が漂っていた。


「ルイ……凄くいっぱい人がいるね……」


「あぁ。そうだな……これには、俺も少し驚いたな…」


 普段ポーカーフェイスのルイでさえもホールに居る人の多さに驚いて目を見開いている。


「俺も!!こんなに沢山の同年代の奴らなんて見た事無いもんな!!」


「そうですね!!なんか……圧巻です」


 ジョイとブラットもお互い顔を見合わせて感極まっている。


「でも……ここまで、男の人達ばっかりだと、なんか……少し怖いかも……」


 ローズは前世含めても、こんなに大人数の男の人達ばかりの集団と同じ空間にいた事がない為に少し気後れしてしまう。


「ぁ??大丈夫だよ!!俺やジョイも居るんだし、きっとクロード様達もそのうち来るんだから何も心配するな!!

 何かあっても必ず俺らが守ってやる。だから、絶対に俺らから離れるんじゃねぇぞ」


 ルイはローズをエスコートしていた手を一度、ギュッと握りしめてローズの気持ちを和らげる。


「は……い」

(何なの……一々 発言がイケメンなんだよね!!)


 照れながらもルイの力強い言葉に勇気を貰ったローズは、少し元気を取り戻したようで、ブラットに話しかけた。


「そう言えば、ブラットは何歳になったの!?」


「私は、現在17歳になりました!!」


 未だに固さは抜けないが、それでもどうにか会話をしているブラットはジョイと同じ学年だった。

 それを聞いて嬉しくなったローズは、密かに嬉しそうにしていたジョイに向き直り


「あっ。そうなんだ!!そしたらジョイと同じクラスだね」

 

 そう言って微笑んだ。


「あぁ。そうだな!!ブラットって言ったか!?俺は、ジョイ・ダチェスだ。宜しくな!!」


 嬉しそうなジョイは、しっかりとした声でブラットに挨拶すると片手をブラットの前に差し出した。


「はい!!ブラットと申します。宜しくお願い致します」


 軽く腰を折り、ジョイの手を取って握手しながら挨拶を交わすブラットに、ジョイは軽い笑みを返すと、最近まで平民だったのに、人から畏まられる事に気恥ずかしさを感じるのかブラットと交わした手を離すと照れ臭さそうに頭を掻きながら自分の事を話し出す。


「フッ。そんな畏まらなくていいぞ!!俺もつい最近まで平民だったんだ。

 ローズ様達と知り合って、アルベルト様の養子に入ったんだけだから、気軽に接してくれよ!!ブラット」


 そう言いながらジョイはブラットの肩を騎士団で鍛えた馬鹿力で叩く。

 叩かれた勢いで軽く前のめりに2、3歩足を踏み出すが、ブラットは嬉しそうにジョイに微笑み返した。


「あっ……ありがとう……!!じゃあ…こらから…宜しくな。ジョイ」


 そんな初々しいやり取りを交わし合いながら、各々が飲みたい飲み物を手に取り出した時、ローズ達が入って来たホールの扉がまた開いた。


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