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あやかし酒場と七人の王子たち ~珠子とあやかしグルメ百物語~  作者: 相田 彩太
第十二章 到達する物語とハッピーエンド
371/409

楊貴妃と薺(なずな)(その3) ※全9部

◇◇◇◇


 「オラァ!」


 亡者の、特に地獄に堕ちた魂を打倒するのは大変さ。

 実体が無いから妖力(ちから)を込めなきゃならない。


 それに。


 ブォン


 「ちょっと温羅ちゃん! あぶないじゃない!」

 「ガッハハ、すまぬすまぬ」


 こっちには頼りになるガサツな鬼の味方もいるからな。

 幸運の位置取りを間違うと、こっちがあぶねぇ。


 「赤好(しゃっこう)さん、大丈夫ですか? 息が上がってますよ。ハァハァ」

 「そういうお前もな。黒龍」


 ちょっと強がって”戦える大人の男”としてこの地下空間に残ったけど、正直つれぇ。

 神代の鬼”温羅”とか、それを倒して仲間にしちまった一番上の兄貴とか、太極とかいうスゲエ権能(ちから)を継いだ兄貴とか、実力を隠していた弟とか、ここは化け物の巣窟(そうくつ)かよ。

 この中じゃ、俺と黒龍が最弱じゃねぇか。


 「べっ、別に僕が弱いわけじゃないですよ。練習が足りないだけです、人間の姿で戦うのが不慣れなだけです。龍の姿なら簡単になぎ払えるんですけど、こんな地下で暴れるわけにはいきませんからね」

 

 あ、そういうこと。

 まずいな、俺が本当に最弱かもしれない。

 

 「いったいどんだけいんだよ! こんなに運動すると明後日から一週間は筋肉痛になっちまうぜ!」

 「ボヤくな緑乱(りょくらん)! 今に橙依(とーい)が戻ってくる! 地獄門を閉める鍵を連れてな!」

 「あら~、そんなに上手く事が運ぶと思っているのでありんすか? おめでたいでございますね。それとも、わっちの勝利がめでたいと祝って下さっているのでしょうか。今だから言っちゃいますけど、地獄門を閉じる鍵のひとつは”天に上がった人”。つまり神や神使となった人間ですのよ。あー、むりむり、ぜったいむりでーす。ココンコンッ」


 地獄門の隣で玉藻は高笑いを上げる。


 「はっ! テメェは知らないかもしれなけどな、顔の広い珠子さんは色んな所にコネがあるのさ! ”あやかし”には言うに及ばず、退魔僧から元貧乏神、果ては天神まで!」

 「そっちこそ、わっちを見くびらないで下さいます。天神、確かに恐ろしいどす。怖くて尻尾が震えちゃうくらい。ですがぁ、それはここにやって来れればの話。わっちには可愛い切り札がいるのでございますから」


 切り札!?

 大嶽丸以外にか!?


 「はい、可愛いわっちのボウヤです。んー、いい子、いい子」

 「う、うん」


 玉藻に撫でられているのは緑乱(りょくらん)

 そこのおっさんの方じゃない、まだ幼さが残る少年の緑乱(りょくらん)の方だ。

 地獄門が開いてから姿が見えないから、珠子さんたちと一緒に逃げたと思ってたが、残ってたのか。


 「お前! 俺たちの仲間になったんじゃないのかよ!? タマコママとか言ってたじゃねぇか!」

 「なってないもん! タマコママもすきだけど、タマモママもすきだもん!」

 「あらまぁ、うれしいこと言ってくれはるねぇ。あとでごほうびあげますからね」

 

 ヤバイ。

 何がヤバイかって、アイツが玉藻の味方している所じゃない。

 このままだと、アイツに不幸が訪れるのが俺に()えている所だ。


 「これが切り札でありんす。この子の迷廊(めいろう)権能(ちから)で迷宮と化したここなら、外からの援軍到着の時間が稼げます。でも、そんなことをしなくても良さそうです。もう、わっちのクラスメイトは近くまで来てますから。この気配はあと数分といったことでしょうか。そしたらもう、たとえ天神はんといえども、この地獄門へ近づくのは不可能。晴れて日ノ本は魔国となります。コココンコンッ!」

 「数分だと!? それでは、たとえ今、外に天神が来てようと無理ではないか!?」

 「はい、大蛇の長男さんも頑張りましたが、どうあがいても無理どす。コココンコンッ」

 「ま、無駄なあがきをするなら付き合いますけど。カココンコンッ!」


 数分という短い時間に仲間たちの顔が一瞬暗くなる。

 だけどさ、俺は違うぜ。

 俺には視えているからな、幸運の道が。


 「心配するな! まだこんなのは八方塞(はっぽうふさ)がりじゃないぜ!」

 「あら、三下大蛇が粋がってますねぇ。数分で地獄門を再び閉じる鍵を揃えるには因果を捻じ曲げるくらいの奇跡でも起きないと無理でありんすよ」

 「へぇ、だったら奇跡なんてものは軽いんだな。出前のおかもちでも運べるくらい」

 「何を愉快なことを、ああ、おかしい、カココ……」


 それは、玉藻が(わら)い出そうとするのと同時だった。

 誰もが耳を疑ったさ。


 「こんにちは! 『酒処 七王子』のデリバリーサービスでーす! ご注文は奇跡一丁でよろしかったでしょうか!」


 明るい声で戻って来たミラクル珠子さんの声を聞いた時には。

 

◇◇◇◇

 

 「さあ! 時間もないのでとっとと行きますよ! 人の世で生きる人の珠子は同意する! 地獄門の閉門を!」

 「地より戻りし人のアリスも同意します! 地獄門が閉じることに!」

 「天に上った人、鈴鹿御前も同意だ! 閉じよ地獄門!」


 勢いのある珠子さんに続けて、なだれこむようにやってきたアリスちゃんと、鈴鹿御前が声を上げる。

 そういや、彼女は人から神になった人間だったな。

 よしっ、でもこれで地獄門が閉じ……ない。


 「ど、どーいうことですか!?

 「ひょっとして順番が違ったのかも!?」

 「ならもう一度!」


 彼女たちが再び地獄門を閉じようと声を上げるが地獄門はピクリとも動こうとしない。


 「コココンコンッ! ざんねんでございました~! 地獄門はそんなことで閉じまへん」

 

 玉藻の高嗤(たかわら)いに一同の目が(さとり)に集中する。

 ”心を読む”、その能力(ちから)だけに特化した(さとり)が読み間違えたのかと。

 いや、そんなはずがない。

 だとしたら、結論はこれ以外にありえない。


 「玉藻、いや君は玉藻じゃないな。一意専心一途狐、阿環(あたま)だろ?」


 あの日、玉藻と合体していた二尾の狐、その名を俺は口にする。

 (さとり)は読めなかったわけでも、読み間違えたわけでもない。

 偽の情報を掴まされたのさ、玉藻の中の別の心に。


 「ざーんねん。いい線行ってるけどちがうよ。ボクはコタマモ。”将来成長半熟狐しょうらいせいちょうはんじゅくのきつね”、半尾のコタマモさ。久しぶりお兄さん」

 「あの時、湯田の子狐か!?」

 「覚えてくれててありがと。どう? ボクの演技上手かったでしょ」

 

 ポロロン


 「そうでございましたか。アタマが簡単に玉藻に取り込まれている理由はそちらでございましたのね」

 「成長してたってわけね。二尾の玉藻は二尾半にまで。それで九尾のあたしたちと同じように違う心が生まれていたってことね」

 「そうでーす。アタマは最初は逆に玉藻を取り込めると思っていたみたいだけど。ざーんねん! ボクの分だけ妖力(ちから)が上だったってわけ」


 妖狐の妖力(ちから)の大きさは尻尾の数で決まるって話だ。

 なるほど、狐吉さんが『おひいさまを救って下せえ』と言ってたわけはこういうことか。


 「なら、話は早いわね。みんな、わたしとコタマを援護して! わたしたちが玉藻の中に入って、玉藻の心を表層に追いやるわ」

 「そうしましたら心を読んでくださいまし。地獄門を閉じる方法を」

 「コタマちゃん。だいじょうぶなの? あぶなくない?」

 「大丈夫よ。わたしとミタマで五尾。アタマの妖力(ちから)を吸収してたとしても、相手は四尾半よ。勝てるわ。それに迷っている暇はないわ。いくわよ!」


 コタマちゃんが先頭になって亡者の群れに突入する。

 それに続いて紫君(しーくん)も。

 なんだ!? ふたりに幸と不幸が入り混じっている視える!?

 運命はどっちに転ぶかわからないってことか!?


 「よし、ふたりの道を拓け! みなで玉藻へ吶喊(とっかん)するぞ」

 「ガッハハ! そいつはいい! 我輩はそっちの方が楽しそうだ!」

 「ここの外への扉はいいの!? アタシたちがいなくなっちゃうと悪人の魂が外に出ちゃうわよ!?」

 「やむを得ん! 女中たちを守りながら、さらに扉を守り、ミタマとコタマを援護するには戦力の分散が過ぎる。ここは、非戦闘員の周囲を固めながら一丸となって進むしかない!」

 「いい作戦だ! ならば私が扉を妖力(ちから)を込めた蜘蛛の糸で塞いでおこう! 一時しのぎにはなる」

 

 若菜姫さんの出した蜘蛛の糸が巣の形となって扉を固める。

 これなら、少しの間くらいなら何とかなるかもしれない。

 ヒロイン珠子さんやアリスさん負傷中の酒呑童子を中心に俺達は繭のような陣形で亡者の群れを打ち払いながら進む。


 「赤好(しゃっこう)さん」

 「なんだい、コア珠子さん」

 「赤好(しゃっこう)さんが作戦に反対していないってことは、この作戦はうまくいくってことですよね」

 「わりぃ、わからねぇ。幸も不幸がチカチカ入り混じり過ぎちまってな」

 「えっ!? それって……」


 距離はさほど遠くない、時間にすれば数秒。

 珠子さんとの甘い会話は惜しいが後回しだ。


 「わるいけど、あなたの身体に侵入させてもらうわ!」

 「アタマはこちらに返してもらいます!」


 くそっ、幸と不幸がチカチカして作戦が正しいか判断できねぇ。

 どっちだ!? 止めるべきか!? 進ませるべきか!?

 

 「わかりました赤好(しゃっこう)さん! チカチカの原因はきっと緑乱(りょくらん)君の迷廊(めいろう)権能(ちから)です! 能力(ちから)じゃなくって自分を信じて下さい!」


 迷廊(めいろう)権能(ちから)!?

 俺が小さい方の緑乱(りょくらん)を見ると、あいつはすまなそうに目を逸らしやがった!

 同時に玉藻の勝ち誇った顔が見えた。


 「ふたりとも止まれ! これは罠だ!」

 「もう遅いどす! コタマモ!」

 「はいはーい!」


 玉藻の身体から子狐が飛び出したかと思うと、それがミタマさんの胴に衝突し、しがみつく。

 

 「これは!?」

 「ボクを取り込んでいいんだよ。その間に玉藻があの子を取り込むから」

 「こちらはそちらと一体化する気なんて……」


 ミタマさんが止まったのは一瞬。

 だけど、それだけで十分だった。


 「ごめん、ミタマ……。ミス、しちゃった……。同時に入らないといけなかったのに」


 コタマちゃんはその身体の半分を玉藻に埋め、沼に沈むようにズブズブと沈んでいく。


 「ふふふ、今のわっちは四尾。これなら二尾を取り込むくらいお茶の子さいさいでありんす」

 「まってなさいコタマ! 今、こちらも!」

 

 子狐を引き剥がし、ミタマさんは玉藻の身体に侵入しようと手を伸ばすが、それは玉藻の掌から生じる妖力(ちから)の壁によってガチンを弾かれる。


 「わかりませんか? 今のわっちは四尾なのですよ。三尾の妖力(ちから)では本気を出したわっちの中に入ることは出来まへん」

 「コタマちゃん! いまたすけるから!」

 「あら、おさわりは厳禁でございますよ」


 コタマちゃんに触れようとした紫君(しーくん)に玉藻が掌を向けると、そこから放たれる妖力(ちから)紫君(しーくん)が吹っ飛ばされる。

 

 「なら貴様を倒せばよかろう! こんな身体であっても、たかが女狐ひとり! 俺様が引き裂いてくれるわ!」

 「やめて! コタマちゃんまで死んじゃう!」

 

 怪我を押して戦おうとする酒呑童子を紫君(しーくん)がガシッと止める。


 「玉藻、これが貴様の策であったのだな。地獄門の開放と九尾への進化。それを同時に成し遂げることが」

 「はい。そうでございます長男さん。みなさんがわっちの思惑通りに動いてくれて助かったでありんす。地獄門を開放出来たとしても、みなさんが地獄門のことは諦めて、ヤケになってわっちを殺そうとしたならかないませんから。六尾となったなら逃げるくらいは出来ます。あわよくば、そこの三尾も吸収して九尾だっていけるかもしれまへん。カココンコンッ!」

 「玉藻、今、わかったぜ。お前が酒呑童子を異常に警戒していた理由が。」

 「いまさらぁ、ですね。サンピン大蛇さん。で、その理由は?」

 「お前の弱点は純粋な戦闘さ。二尾の状態だと俺とどっこいどっこいくらいか。温羅と大嶽丸を味方に付け、二尾の阿環さんを吸収した時点でお前を戦闘で倒せそうなヤツはいなくなった。九尾の料理担当コタマちゃんが『酒処 七王子』と接触して”あやかし”界の有名料理人珠子さんや俺たち兄弟と仲良くなるのはわかってたからな」

 「そうでーす。アタマがいる限り九尾の分体のコタマはわっちに攻撃できまへん。そしてそれと仲良くなった珠子と大蛇の兄弟も。みなさんお甘いですから。ですが……」

 「酒呑童子だけは違う。こいつだけは戦いの非情さを知っているからな。今でも紫君(しーくん)が止めてなければ刺し違えてでもお前を殺すだろうよ」

 「あたり前だ! 放せ七の兄者! ここで玉藻を殺しておかねば取返しのつかないことになるぞ!」

 「だめー! コタマちゃんを助けてから!」


 紫君(しーくん)が押さえてなければ今にも襲い掛かりそうな形相で、酒呑童子が叫ぶ。

 いや、負傷がなければ振りほどいているだろう。


 「いやーん、殺すだなんて玉藻こわーい。でも、正解でありんす。最弱大蛇さん。最後だから褒めてあげます。よくできまちたー」


 最後か……、本当に終わりかもな。

 どんな時だろうと俺の能力(ちから)ならハッピーエンドへの道が視えると思っていた。

 だけど今は視えない。

 玉藻の方に視線を合わせると小さい緑乱(りょくらん)迷廊(めいろう)権能(ちから)で幸と不幸がチカチカしちまう。

 地獄門も開いたし、間もなく玉藻の援軍が来るだろう。

 そう思って俺は視線を地獄門の方へ……。

 

 !?

 

 そうか、そういうことか。

 わかったぜ、最強の弟。


 「そうだな、どうやら俺たちの負けのようだ」

 「赤好(しゃっこう)さん!? ここで諦めるんですか!?」

 「しょうがないだろ。いつもなら俺の()で勝利への道を見つけて、どんなに細い道だろうがそれにみんなを導くのが俺の強みさ。だけどさ、それが封じられ、逆転の手も思いつかないとなったら諦めるしかないじゃないか」

 「ごめん、にーにー。でもタマモママの言いつけだから……」


 少しすまなそうにちっさい方の緑乱(りょくらん)は玉藻の裏に隠れる。


 「いいってことよ。なあ玉藻、冥途の土産。いや、地獄への片道切符代わりに教えてくれないか。本当はどうやったら地獄門は閉まるのかをさ」


 俺の申し出に玉藻はうーんと悩むようなフリをみせる。

 

 「いいどすよ。もう、考えてしまいましたからね。天より下った鬼、地より出でし鬼、人より生じた三鬼の同意の逆でありんす。天に上った人、地より戻りし人、人の世で死んだ人(・・・・・・・・)。これらの条件を満たす者が地獄門の岩戸に触れること、それが地獄門を閉じる方法でありんす。不可能でっしゃろ。しかも、地獄門の向こう側にわっちのクラスメイトが来ているのでございますよ! 感じません? ()の強大な妖力(ちから)が迫ってますのが。わっちと同じ第四天魔王様の配下”十悪(じゅうあく)”のみなさんでありんすのよ。カココンコンッ!」


 確かに感じる、強大な十の妖力(ちから)を。


 「十悪、そいつは仏の十悪のことだね。殺生(せっしょう)偸盗(ちゅうとう)邪淫(じゃいん)妄語(もうご)両舌(りょうぜつ)悪口(あっく)綺語(きご)貪欲(どんよく)瞋恚(しんに)邪見(じゃけん)。私たちの敵さね」

 

 十悪、その正体を退魔僧の築善が語る。


 「十悪か。理解した。玉藻、お前は十悪の中で言葉によって争いを生み出す両舌(りょうぜつ)を司る第四天魔王の配下だな」

 「長男さんは冴えていますね。左様でありんす。わっちは甘言諫言両舌狐かんげんかんげんりょうぜつのきつね、二尾の玉藻でありんす。言の葉によって争いを生み出します」

 

 両舌か、こいつにピッタリだな。


 「なら、なおさら地獄門を開いたままには出来ません! 地獄門の岩戸に触れるのが条件ならダッシュで動くまでです! 鈴鹿御前さん! アリスさん!」

 「おうよ!」

 「わかったわ!」


 快走珠子さんが声をかけると、鈴鹿御前さんとアリスさんのふたりもその足を速める。


 「無駄でありんす。もう十悪のみなさんはそこまで来ていますから」

 「いや、そうでもないぜ玉藻」

 「カコンコンッ、面白い冗談ですね。最後まで笑わせてくれます。この失笑大蛇さんは」


 鼻で俺を笑う玉藻に、俺も鼻で笑い返す。


 「玉藻、お前も事前に『酒処 七王子』に調査に来るべきだったのさ。そうしたら、アイツの気配を覚えていただろうよ」

 「気配?」


 玉藻の視線が地獄門へと移り、そして初めて彼女から余裕の笑みが消える。

 

 「気付いたか? 扉の向こう側の強い妖力(ちから)を気配は()じゃなくって十あるぜ」


 さっきは驚いた。

 迷廊(めいろう)権能(ちから)の阻害で玉藻を視ても何が幸か不幸かわからなかった。

 だけどよ、視えちまったんだ。

 地獄門の方から幸運がやってくるのがよ。

 一瞬の間を置いて地獄門から十の影が現れる。

 

 「どうやら間に合ったようですね」クイッ

 「おっ! コタマが半分取り込まれているけど、ミタマは健在じゃねぇか。待たせたな! 褐色臍出随一狐かっしょくへそだしずいいちのきつね、おタマ! 遅刻ギリギリで参上だぜ!」

 「蒼明(そうめい)さん! おタマさん! 来てくれたのですね! そして、よっちゃんさんたちまで!」


 地獄門から現れたのは俺の頼もしい弟、蒼明(そうめい)と最近仲のいいおタマという女の子。

 そして現れたのは、たまにスイーツを買いに『酒処 七王子』を訪れている女の子。

 顔はちょっと怖いが心や仕草がキュートなレディたち。


 「緑乱(りょくらん)様! ひいひい孫様たち! お待たせしました! 黄泉の女神イザナギ様の近衛団! 八名全員でお助けに上がりました!」


 黄泉醜女(よもつしこめ)さんたちだ。

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