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あやかし酒場と七人の王子たち ~珠子とあやかしグルメ百物語~  作者: 相田 彩太
第九章 夢想する物語とハッピーエンド
276/409

痛快! 作者の駄文と補足説明

 初めての方ははこんにちは! 

 またねの方はスゴイです! ここまで長期に渡りお読み頂けるなんて光栄です!


 最初に余談ですっ!

 既にバレバレかもしれませんが、この作者の駄文の頭に付く言葉は『三匹が斬る!』シリーズ名から取っています。

 ですが、この”痛快!”で三匹が斬るシリーズのタイトルは終わってしまいました。

 なので次回からの作者の駄文の枕詞は目下鋭意検討中ですっ!

 まあ! なんという駄文なんでしょう!



■登場人物紹介(追加と更新)

有栖院(ありすいん)アリス


 1978年生、戸籍上は40歳ではあるが、15歳の時に(1993年)夢の中に入ったため、肉体年齢は15歳。

 本作では珍しくフルネームのあるキャラクター。

 カクリンコン・カクーラーとかライラ・ミラ・ライラとか、ちょっとガンダムに登場するキャラっぽい名前です。

 ちなみに『不思議の国のアリス』や『鏡の国のアリス』と同じで、アリスの精神がアリスの夢に迷い込んでいるというダブルミーニングを含んだ名前でもあります。


 前々章から彼女は藍蘭(らんらん)の登場回の代わりに思わせぶりに登場させていたので、その正体に気付いていた方も多かったのではないでしょうか。

 ジャジャーン! なんと! 山男と以津真天の話は藍蘭(らんらん)が自分の体験を夢で見て、それをアリスと共有していたという伏線だったんですよ!(バレバレ)


 この章のヒロインですので、出来るだけ好感を持たれるキャラクターにしようとしつつ、夢見がちな女の子を表現したつもりですが、上手くキャラ作りが出来たかと言われると……、が、がんばっ!

 彼女は病気がちで家で本やTVをずっと見ていたという設定があるので、首吊り狸の話では、昭和末期から平成初期の男女交際の雰囲気を何とか表現出来ないか試行錯誤しました。

 作者はその時はまだ少年だったので、当時の自分が感じた(TVや本で知った)のと上手くリンク出来ているといいなーとも思っています。 

 

 ちなみに、山男とか以津真天の話で、彼女が耳が聞こえないと感じてたのは、夢の中では本当は音は聞こえていないからです。

 また、西に行きたがっていたのは西方浄土(さいほうじょうど)から、彼女が無意識に”死”に進もうとしていたのを示していたのですが、そこを表現する作者の技量が足りず、本章では上手く活用できませんでした。

 くっ!? ガッツが足りない!

 

 今後は昭和ネタ担当として、ちょいちょい登場させようと考えています。


・珠子(更新)

 2018年11月11日に誕生日を迎え、アラサーからモロサーに突入した本作の主人公。

 本章では夢の中に囚われ、七王子たちがそれを助けに奔走するヒロインポジションなのですが、アリスと比べてヒロイン素養がないため、相変わらず場をかき回しています。


 鳥羽天皇の中宮、藤原璋子(ふじわらのたまこ)の縁者の系譜という設定がやっと公開されました。

 とはいっても、宮家に連なる血筋ではなく、あくまでも縁者です。

 イメージ的には比較的メジャーな苗字の藤原姓が摂関家に連なるくらいだと思って下さい。


 30歳まで生きたものはいないという悪いモノを引き付ける夭折(ようせつ)呪詛(じゅそ)を継いでいましたが、今までに得た(えにし)や加護でそれを乗り越えました。

 これは平安末期に鳥羽上皇に取り入って傾国させようとした玉藻が、当時の中宮”藤原璋子(ふじわらのたまこ)”に放って、弾き跳ばされた呪詛の一部という設定です。

 

 この藤原璋子は白面金毛九尾狐”玉藻”のモデルとなった藤原得子(ふじわらのなりこ)のライバルと言われているようないないような……。

 いや、だって得子は璋子より17歳若いんですよ!  

 得子が鳥羽上皇の寵愛(ちょうあい)を受けるころには30代半ばになっていて、五男二女の七人の子を産んでいるんですよ!

 (璋子の母、藤原光子(ふじわらのみつこ)も8人の子を産んだ多産の家系)

 もう、障子の方が立場的には上で、安泰じゃないですか!

 と思いきや、帝の座を巡っての争いや、朝廷の権勢争いの中に巻き込まれて対決することになったりする波乱万丈の人生を送った人物です。


 璋子は幼いころから奔放(オブラート、オブラート)だったらしく、鳥羽天皇の后になる前に藤原忠通(ふじわらのただみち)との縁談が持ち上がったのですが、忠通の父、藤原忠実(ふじわらのただざね)の反対に遭い、破断になっています。


 璋子が鳥羽天皇の后として入内(じゅだい)する話が持ち上がった時、忠実はその理由を『殿暦(でんりゃく)』という日記に記載しています。

 その記述曰く、


 院の姫(璋子)は実に奇怪不可思議(きかいふかしぎ)の女御なり。

 その女は乱行の人である。

 そのことは(おおよ)そ世間の知る沙汰なり。

 こんな女を入内(じゅだい)させるなんて、日本第一の奇怪事なり。

 

 と書かれています。

 仮にも白河法皇をパトロンに持ち、鳥羽天皇の后になろうとしている璋子に対し、


 『この女はド淫乱にて奇行変人女で、その事はみんな知ってんだぞ!(だから息子の縁談に反対した)。なのに、そんな女を入内させるなんて日本一の珍事!』


 と書いてしまうんですよ! 

 ひどい言われようですね!

 

 ひょっとすると璋子の正体は、


 『転生したら平安時代だったけれど、白河法皇や鳥羽天皇や藤原摂関家の男たちに言い寄られて困っちゃう。だけど、この平安の男って平成に比べてデリカシーやモラルに欠けるのよね。なので、あたしが教育することにしました』


 ……という女の子だったりするかもしれません(大嘘)。


 ですが、人物的には美しさもさることながら、人間的な魅力も高かったと伝えられています。

 璋子の臨終の際には鳥羽法皇が駆け付け、大いに泣き叫んで彼女の死を(いた)んだというエピソードも持っています。

 1145年没(44歳)死因は疫病(疱瘡(ほうそう))説が有力です。

 

 近年の漫画や小説で”あやかし”物には必ずといっていいほど玉藻が登場するのですが、この藤原璋子は滅多に登場しないんですよね。

 玉藻のライバルとして登場するのは安倍晴明か安倍泰成(やすなり)ばかり。

 璋子の英霊は『あたし、もっと創作物に登場してもいいんじゃないかしら』なんて思っているかもしれません。



■七王子の権能(ちから)に関する設定(追加)

本章で新しく3名の権能(ちから)が判明しました。


・太極の権能(ちから)

 藍蘭(らんらん)が継いで、実は過去に覚醒していた権能(ちから)です。

 本来は相反するものを太極図のように合致させて調和を取る事が出来ます。

 作中のように『同床異夢(どうしょういむ)』と『異榻同夢(いとうどうむ)』を共存させたり、敵の『鉄壁防御』を『鎧袖一触(がいしゅういっしょく)』で中和して無効化したり出来ます。

 『活殺自在』もその権能(ちから)の一側面で、夢の中といった特殊フィールドでなければ無敵に近い権能(ちから)です。

 

 こんな最強の権能(ちから)を持っていた彼の母(八稚女(やをとめ)の一柱)ですが、彼女を八岐大蛇(ヤマタノオロチ)に差し出す時、両親の足名椎命(あしなづち)手名椎命(てなづち)は、


 『最強無敵の娘を出す! これで八岐大蛇(ヤマタノオロチ)に勝つる!』


 と思っていましたが、太極は陰陽合体のシンボルでもありますので、男女合体! 神と妖怪、禁断の恋! キュン!

 ……という太極の女神の恋愛脳が発揮されて負けた(というか嫁になった)という裏設定があります。


迷廊(めいろう)権能(ちから)

 これも緑乱(りょくらん)が継いで、実は覚醒していた権能(ちから)です。

 攻撃を迷わせて命中させなかったり、果てには時や運命を迷わせて歴史改変まで出来てしまう権能(ちから)です。

 ただ、本人も正解にたどり着けない、たどり着けたとしてもそれが最善か確信が持てなくなる副作用があります。


 ”あやかし”はそう簡単に老けたりはしないのですが、彼はこの権能(ちから)で時を迷わせ、二周目に入ったため、他の兄弟に比べ老けています。

 今はこの権能(ちから)橙依(とーい)が所持しています。


 彼の母はこの権能(ちから)八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を自分ごと出口のない時と空間と運命の迷宮に閉じ込めたのですが、


 『八岐大蛇(ヤマタノオロチ)! いくら貴方(あなた)でもこのゴールのない迷廊(めいろう)の迷宮から脱出できないわ!』

 『君のいる、ここが俺のゴールだ』

 『えっ!?』トクゥン


 みたいな展開にトキメいてしまい、その迷宮から一緒に脱出してしまったという裏設定があります。


・得心の権能(ちから)

 蒼明(そうめい)が継いだ権能(ちから)です。

 世界の(ことわり)()り、理解し、得心することで、その事象を使う事が出来ます。

 蒼明(そうめい)は主に科学知識を基にした物理現象を中心に戦っています。

 ですが、それだけでなく、相手の攻撃や防御方法を理解し、得心することで自分もその能力を使えるという、ゲームでいう所のラーニング能力があります。

 いわゆる『聖闘士に一度見せた技は二度通じない』が出来たり、『どんな攻撃も通じないと言ったな! ならお前自身の力ではどうかな!?』

ということも出来る権能(ちから)です。


 かなり強いはずの権能(ちから)ですが、実は何にでも興味深々で、相手の心との相互理解の側面があり、


 『どうしよう……姉さんたちが、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の下を離れないのは何か理由があるのかしら』

 →『彼のことをもっと知りたいわ』

 →『好きっ!』


 という見事な三段論法で八岐大蛇(ヤマタノオロチ)側に付いてしまったという裏設定があります。


■各話のやくたいもない解説


〇第九章 夢想する物語とハッピーエンド

 

 章名の通り、夢が話の中心にあり、そこから現実世界への夢想を夢見るアリスの物語です。

 ……かなり苦しかった。

 大悪龍王編に決着を付けるため、今までの伏線とか、夢と現実世界のザッピングとか、タイムテーブルがキリキリ舞!

 従来と書き方をちょっと変えて、ひとつの話の最後に別の登場人物視点を付けて、以降の話へと繋がるシステムとかも試みてみました。

 ちょっとしたクリフハンガー状態で話が終わった方が盛り上がるんじゃないかなー。

 なんて思っていたのですが、想像以上にめんどくさい。

 最後まで書ききれたのが不思議なくらいですね。

 でも、作者はがんばった! 出来る子! スゴイ! これなら大人気間違いなしっ!

 そんな夢想を描いてしまう章です。

 

 大悪龍王(狐者異(こわい) & 夢の精霊)は『あれだけ引っ張ったんだから、強敵じゃなければ嘘だよねー』という思いで書きました。

 七王子とその仲間たち VS 大悪龍王の総力戦で、本来はあまり強くない夢の精霊が天下を取るために色々と策を練って七王子側を陥れていく展開は、フラグ立てを間違えると七王子側が敗北すると思わせるくらいに仕上がったと自負しています。

 じがじさーん!


・2018年11月4日

 『大悪龍王と髪菜蠔豉(ファーツァイホウシー)


 大悪龍王の正体を長々と引っ張ると、永代静雄版の『アリス物語』に読者が到達することを恐れて、本章の最初に登場させました。

 元ネタが少なかったり二次創作も皆無なのでキャラ付けが難しかったです。

 ちなみにお品書きには『”大悪龍王”で検索しても中々見つからない』と書きましたが、”アリス 大悪龍王”で検索するとすぐに見つかります。


 『アリス物語』に記載してある、『海藻で作られた紙絹に包まれ、中の貝を開けると親指ほどの大きさの食べ物。作るのに三日も手間が掛かり、其上(そのうえ)材料(たね)も少なく大量に集め難い、宮殿(みや)中第一の御馳走』が髪菜蠔豉を示しているのかは不明です。

 ただ、『アリス物語』が雑誌『少女の友』に連載開始された1908年は日露戦争後で、中国大陸の文化が日本に本格的に広まった後です。

 永代静雄の生まれ故郷の神戸にも中華料理が広まって、彼は商売繁盛の意味を持つ髪菜蠔豉を知ったのではないかと推測しました。

 作者が勝手に!(ここ重要)

 ちなみに永代静雄は1944年没ですので、彼の作品の著作権は死後50年経過した1994年に切れています。(余談、2004年からは死後70年に改正されました)。

 なので、『アリス物語』の大悪龍王や老真珠王といったキャラクターを使ってを作者が勝手に創作してもいいってことなんですよ!

 ホームズやモリアーティー教授を自由に使って作品を創るのと同じってなもんです。


・2018年11月5日

 『遺言幽霊とハンバーグステーキ』


 幽霊は飯を食わぬと思ったか!? 馬鹿め! それは現実(リアル)での話だ!

 ということで、夢の中でも相変わらず料理を続ける珠子ちゃんの話です。

 昭和スタイルのハンバーグステーキは軽い焦げ目どころではなく、ガッツリ焦げ! というくらい真っ黒です。

 作者が少年のころに読んだ料理本のハンバーグの写真が心に残っていたおかげで作れたお話です。

 もし、当時(昭和後半)と現在でハンバーグの味が違うと思っている方は、このお話を読めば納得するのではないでしょうか。

 そう! 調理法と牛肉自由化による素材の違いが主要因です!

 あとは思い出補正!(これ重要)


・2018年11月5~6日

 『隠神刑部と珈琲』


 四国といえば狸のボス”隠神刑部”。

 そして狸なら相手を化かして糞を食わせねば!


 ……という謎の電波が作者の頭に降りてきて作ってしまった話です。

 近年、『かぐや様は告らせたい』など様々なメディアに登場して知名度が上がったのでコピ・ルアクが登場しても『ふーん』と思われるのではないかとヒヤヒヤしました。

 狸の糞に銀杏が含まれるのは比較的有名ですが、糞に含まれる銀杏の核を食べるだなんてお話の中だけ……だと思っていたら、ネット上にはそれを食べてみたという記事がちらほらと……。

 うーん、事実は小説より奇なり。


・2018年11月6日

 『置行堀とバカになる料理』


 バカリャウ(ポルトガルの干しタラ)は『くーねるまるた』や『信長のシェフ』で登場したので知名度は高くなったのではないでしょうか。

 ”バカ”で始まるので台詞のミスディレクションにも使える便利な食材です。

 塩漬け干しタラは世界各地で保存食として利用されてきたので、日本人にも馴染み深い味です。


 全体的に殺伐としている本章の中で、箸休め回と思いきや、本章の勝利の鍵となるアイテムをことごとく赤好(しゃっこう)が持ち出したという重要なフラグを立てている回でもあります。

 

・2018年11月7日

 『八百比丘尼とクワイ』


 緑乱(りょくらん)の伏線を回収しつつ、夢の中では無意識に過去の記憶を夢見てしまうことがあるという設定を説明する回でもあります。

 八百比丘尼は人魚の肉を食べて不老不死となったけど、人魚伝説は日本各地にあるのに、どうして不老不死になったのは八百比丘尼だけなんだろう? という疑問への答えを作者なりに導きだしたつもりです。


 ……ですが、よく考えてみると『人魚の肉を食べた人間が薬そのもの(・・・・)になる』という設定は実は高橋留美子先生の人魚シリーズで描かれているんですよね。

 人魚シリーズでは『不老不死となった人間は人魚の若さを保つ薬となる』という設定ですが。

 ま、まあ、作者は偉大な先生の作品にインスパイアされたひとりってことで。


・2018年11月8日

 『経凛々と知育菓子』


 水入れてっ♪ 粉入れてっ♪ 1分たったらカチンカチン♪

 作者の耳に残っていたCMソングを思い出して作った話です。


 料理の美味しさを決めるのは、味、香り、ビジュアルの3要素が基本ですが、それに続く料理の第4の要素が食感です。

 サクサク、シャクシャク、ザリザリ、ポリポリポ、のように食事にリズムと楽しさを与え、それを活かしたお菓子や料理がたくさんあります。

 そして、さらに第五の要素として、知的好奇心も加えたお菓子が知育菓子ですっ!


 知育菓子は80~90年代が最盛期を迎えたお菓子ですが、今は一時の勢いは無くなりました。

 理由は少子化や開発の手間などがありますが、やはり第一と第二と第三の要素(特に第三)が弱めなのが原因ではないかと……。 


・2018年11月8~9日

 『濡女子とカタパン』


 カタパンを濡女子がふやかして食べるというのはちょっと安直かなとも思いましたが、珠子が居ないのに複雑な料理ギミックを橙依(とーい)が考え付くのも妙だなと思って、そのままにしました。

 本当はもっと香川グルメめぐりをしたかったのですが、ここから緊張感が増していく展開になるので、のんびりするわけにもいかず、一気に話を進める展開になっています。

  

 おや? 当初は満濃池に棲む龍の話の予定だったのに、いつの間にかヤンデレ風チョロイン属性の濡女子の話になっているぞ?

 なぜだ!?(作者の趣味です)

 

・2018年11月9日

 『英霊とばっけ味噌』


 高知のマイナー英霊! 林有造先生のお話です。

 いや……マイナーは失礼ですね。

 ですが、作中で書いた通り、坂本龍馬や板垣退助に比べると知名度は劣るかもしれません。


 ですが、林本人も、彼を取り巻く人物もドラマチックで、兄の岩村通俊(いわむらみちとし)は岡田以蔵に剣を習っていたり、弟の岩村高俊(いわむらたかとし)と親友の大江卓は坂本龍馬暗殺の仇討ちだと天満屋で新撰組と交戦したりしています。


 この大江卓と林有造のエピソードがドラマチックで、林と大江は維新後に立志社の獄で叛乱を企てて失敗し、岩手監獄に送られることになるのです……、親友の大江卓も一緒に。(明治11年9月)

 ただ、監獄といっても維新志士のふたりの待遇は良く、座敷牢か蟄居(ちっきょ)と同程度の良待遇であったと伝えられています。

 出所も同じ! (明治17年8月、仮出獄)

 日本の第一回の総選挙でもダブル当選! (林は高知から、大江は岩手から出馬)

 そして、果てには大正10年9月21日に大江卓が亡くなると、林有造もその後を追うように同年12月29日に没!

 親友というか、悪友というか、想像力というか、妄想がふくらみんぐ!


 作中に登場する”あさ(ひらき)”は明治4年に創業なので、その酒蔵の酒を獄中や出所祝いに林有造と大江卓は飲んだかもしれません。

 酒は飲んだはずです! 土佐人ですから! (偏見)


 うーん、幕末の動乱から大正時代までの社会の大変革とか、大江卓との友情とか、兄弟の話とか、晩年の真珠王国への見果てぬ夢とかを考えると大河ドラマのテーマになってもおかしくないくらい林先生の人生はイベントが盛りだくさんなんですが……。

 この話を読んだ方が少しでも興味を持って小説とか漫画とか書いてくれないかなー(チラッ)


 鳥居耀蔵が林有造や土佐の維新志士と面識があったというのは作者の完全な創作です。

 ですが、完全な与太話でもありません。

 丸亀藩お預けの身となっていた鳥居耀蔵は万延元年から丸亀城下にて診察や施薬を行う事を許可されており、明治元年十月に丸亀藩を去るまでの9年間で6000人以上の患者を診たという記録が残っています。

 その他に若い丸亀藩士に動乱のこの時代にどうあるべきか教えを説いたという記録もあります。

 このころの鳥居耀蔵は還暦を超えていたので、孫に教えを施すような気持ちで教えていたのかもしれません。

 作者が鳥居耀蔵を悪人に書ききれないのは、この晩年のエピソードがあるからです。


 そして、丸亀は四国と本州の玄関口であり、土佐藩の参勤交代の本陣が置かれた地でもあります。

 なので、記録に残ってなくても、土佐藩士がこっそり鳥居耀蔵の元へ訪れたりしていても無理な話ではないんですよ!

 特に脱藩同然で活動してたり、薩長との密約に動いていた超有名な土佐の人物とかが、歴史の表舞台には内緒で鳥居耀蔵と会っていたかもしれませんね。

 妄想は無限大!


・2018年11月10日

 『首吊り狸とタヌキケーキ』


 首吊り狸は実は2種類いて、徳島県三好市に伝わる人を自殺に導く悪い首吊り狸と、江戸時代の江戸の怪奇集『耳嚢(みみぶくろ)』に記載されている、恋人の仲を取り持つために娘に化けて首を吊るという良い首吊り狸がいるというミスディレクションを誘ってみました。

 さらに”くび”まで同じ名で縊鬼(くびれおに)も登場させて、読者の予想を裏切る展開にしたいと試行錯誤したお話です。

 上手くいったかは不明ですが、弊害として料理要素が薄くなり、タヌキケーキが取って付けたような感じになってしまったのが心残りです。

 さらに藍蘭(らんらん)とアリスの回想も兼ねたので、ちょっと詰め込み過ぎた感があります。


 この話の藍蘭(らんらん)の行動やアリスの心情は読者の共感を得ずらいかなぁと思いましたが、本作に登場する恋愛ドラマはサッパリとし過ぎている感があったので、作者は不得手ですが、少しドロドロしたドラマにチャレンジしてみました。

 このふたりの歪みながらも相性バッチリな恋愛観は太極の勾玉をイメージしています。

 勾玉は単体では調和とは遠い形ですが、合体すると太極という根源の混沌より生まれた最初の調和の形になるというイメージです。

 うまく表現出来たかは不明ですが……。


 そして、アリスの病名”急性前骨髄球性白血病”が判明!

 大変! この時点で、医療関係者や少し学識のある方は先の展開をピンと来ちゃう!

 なので考える暇を与えないよう、本章のラストまで毎日更新した次第です。

 作者はちょっとがんばった!


 この話の最後にあった赤好(しゃっこう) VS 玉藻の雲外鏡のシーンでデジャヴを感じた方がいらっしゃるのではないでしょうか。

 そうです! ”ダイの大冒険”のポップ VS 大魔王バーンの『シャハルの鏡!?』→『はね返せーっ!!』の流れです!

 あと、ダイアモンドアイの外道照身霊波光線げどうしょうしんれいはこうせんも入っています。

 本作ではパロディ要素は控えるはずだったのですが、どうしても漏れ出てしまったぁ~!

 玉藻に『バ~レタカァァ』と言わせなかったのが作者の最後の自制心です。



・2018年11月10~11日 

 『胡蝶の夢のドリームケーキ』


 つめこみすぎぃ!!


 狂った真珠王を救う話とか、狐者異(こわい)と夢の精霊とのバトルとか、死を受け入れる覚悟を持ってしまった少女の心の救済とか、主人公である珠子ちゃんが最後に決める所とか、きっと誰もが忘れている誕生日イベントとか、玉藻の本格始動と後の章への伏線とか、夢がテーマの章にふさわしいラストシーンとか!

 しかも、ここまで散りばめていた伏線を一気に回収しなくっちゃいけないんですよ!!

 最初の方は『この話は最初から最後までクライマックスだぜぇ!』と意気揚々と書いていたのに、最後の方になると『お、おわらない……』と根を上げる始末です。


 伏線とその回収が上手く出来たか不安になりながら書いていました。

 読者に『夢の中に持ち込める伝説の武器”水破”と”兵破”を早く出せ!』と思われているのではないか、とか。

 『”急性前骨髄球性白血病”か、”前”が付くってことは、90年代後半に認可されたレチノイン酸による治療の話ね、ふーん』とか思われているのではないかと。


 狐者異(こわい)と夢の精霊との最終決戦では久しぶりに作者の少年漫画脳を発揮させて書きました。

 プロットでは『ちっくしょー! 夢の中に持ち込める伝説の武器さえあれば!』→『あったよ! 水破と兵破が!』→『でかした!』

 ……という流れしかなかったのに、よくここまで話を膨らませたなぁと感心している次第です。


 医療ギミックの方では『急性前骨髄球性白血病』を用意しました。

 この病気が取って付けたような舞台装置のように思われるかもしれません。

 90年代後半に実用化された『急性前骨髄球性白血病』の画期的な治療薬についてのエピソードは、知っている人には有名な話かもしれません。

 でも、作者は伝えたかったのです。

 四半世紀前には助かる見込みの少なかったこの病が、医学の進歩に注力した人々の努力と研究の成果で、この急性前骨髄球性白血病は今や寛解(かんかい)から10年生存率8割以上の比較的治療可能な白血病になったってことを。

 知らない人もきっといて、その方の知識の礎になるのではないかと。


 <余談>

 『急性前骨髄球性白血病』は骨髄の中で白血球になるべき細胞が異常成長してしまい、骨髄の中で詰まった状態になり、他の血液細胞(血小板や赤血球)の生成が出来なくなる白血病です。

 レチノイン酸はビタミンAから体内で代謝され生成される物質ですが、これを摂取することで、骨髄の中で詰まった異常白血球は血液の中まで出て行くようになります。

 白血球の寿命は数日なので、この異常白血球も数日で血液内で死んでいき、骨髄の中で他の血液細胞が生成されるようになって、症状が改善されるのです。


 つまり、詰まり(・・・)が取れる!

 ガン・ガナ・オール! 


 …

 ……

 失礼しました。


 ちなみに、アリスの『未来にはガン・ガナ・オールが本当にあったのね!』という台詞の元ネタは1982年度の小学四年生に連載していた『およげ ことりちゃん』に出てきた癌を治す薬です。

 紙飛行機で過去と未来をタイムスリップするSF作品です。

 誰がわかるんだよ! この元ネタ! 

 ある意味、一定以上の医学知識があれば知ってる急性前骨髄球性白血病の治療薬のエピソードより難易度たけぇぞ!

 

 そして、作者は好きなんですよ、笑わなくなった少女が再び笑えるようになる話が。

 アリスの心は藍蘭(らんらん)と夢を共有したことがリハビリとなり、8割がた笑えるようになっていましたが、その最後の一押しをしたのが珠子です。


 この話のラストシーンだけは1年くらい前から決まっていたのですが、そこに到達するのが大変でした。

 ですが、苦労しただけあって、個人的には良く出来たなーと気に入っています。

 じがじさーん!


◇◇◇◇


 さて、今後の展開ですが、再びいつもの料理と”あやかし”の愉快な物語に戻ります。

 どうしてもストーリーを進めると料理要素がおざなりになってしまうので、料理メインに戻したいなー、と考えています。

 そして小イベントをこなして、ラストイベントとエクストライベントで完結予定です。


 話のストックが尽きてしまったので、しばらく充電期間に入りますが、筆を折ることは作者の身に重大な事が起きない限り無いと思いますので、再開までお待ち頂けると幸いです。

 チャンネルは……ではなく、お気に入りはそのまま!


 百物語も77話を消化し、残り23話になりました!

 最初は書き切れるか心配したけど、このペースなら何とかなるかもしれません!

 

 よーし、この残り23話で他愛ない日常のエピソードを書きつつ、合間に伏線とか最終決戦へのつなぎとか、珠子の恋のから騒ぎの行方とか……

 七王子の母の八稚女(やをとめ)の探索とか……、玉藻との因縁の決着とか……

 あれ? 本当に書き切れるかな?

 でもま、それは未来の作者が何とかすることでしょ!

 ではまた、再開時にお会いしましょう!

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