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誰が為に  作者: 白亜タタラ
世界の常識と陰謀編
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打ち合わせ

 王城へと遣ってきて門番に声を掛けようとしたら相手の方が先にカナタたちであることの確認をしてきた。どうやらカナタたちの特徴と2匹の従魔、ノルンやフィルを連れて来るだろうという事が先に知らされていたのだろう。カナタたちは門番との確認手続きを終わらせて、現在は以前にも通された一室に居る。


 大体10分ほど待った頃に部屋の扉がノックされた。


 「失礼します。陛下の準備が整いましたのでご案内いたします。」


 入って来たのは王宮勤めのメイドで、前回同様案内をしてくれるそうだ。そしてどうやら今回は以前の部屋ではなく別の部屋でいろいろと話をするらしい。


 「こちらになります。」


 「ありがとうございます。......失礼します。」


 案内してくれたメイドにお礼を言い部屋へと入る。案内された部屋はさっきまでいた部屋の数倍はあろうかというとても広い部屋だ。そこに国王陛下と王太子と王女が部屋の1番奥にいた。

 他にも宰相や軍務大臣、あとローザの姿もある。そしてさらに貴族の中でも高位の者と思わせる豪奢な服を着た面々も今回の話し合いに参加するのか同じ部屋に控えていた。


 「おう、よく来た。とりあえず空いているところに座ってくれ。」


 部屋の中心には大きな丸テーブルが置かれていて、それを囲むように各面々が座っている。カナタたちは1番扉に近い開いていた席に腰をおろした。

 この風景をはたから見たらさながら"円卓会議"といった所だろうか。


 「よし。全員揃ったところで今回決まったことに対する打ち合わせを始めよう。」


 「では、私から説明をさせていただきます。」


 国王の開始宣言に続いて宰相が話を進めていく。


 「ベッソ元伯爵家で起きた騒動の中で姿を見せた魔族の件に関して、事の概要を記した文を指示の通り4つの国へと送りました。そしてつい先日、4国全てが我々王国を含めた5国会議への参加を表明した文が届き5国会議の正式な開催が認められました。開催地は獣王国。日時が2週間後という事で決定しました。」


 ネメシアでは鳥などの飛行能力を持った召喚獣が手紙を持って各国へと届けることで遠方でも連絡を取ることができる。国が擁する一流の召喚士が使役する召喚獣は各国家間を1日から2日ほどの短時間で移動できる。勿論国によって近い遠いの差があるので誤差はあるが、大体平均してそのくらいの時間で到達する。今回は緊急だったこともあり王国がかなり一方的な内容をごり押しして開催日や会議内容を決めたらしい。しかし、開催場所に関しては王国で行う事はできない。これは各国家への"無害アピール"である。開催宣言から一方的に今回の件の通達を行うことで王国が各国家自分たちに有利な場所に誘い出し、襲撃を行うなどの行為が出来ないように、開催場所は会議発案国ではなくその他の国で行うのが一般的とされる。これにより罠や暗殺者を自分たちは用意していないことをアピールするのだ。


 「5国会議参加者は陛下と王太子様そして王女様のお3方が王族代表として、私と軍務大臣そしてローザ様が補佐として付き添います。さらに今回は護衛としてカナタ様達パーティが同行することになります。」


 「話には聞いていたが本当にこんな子供たちが護衛とは」


 「大丈夫なのか?」


 「騎士団の面々を使った方が良いのでは」


 参加メンバーは予め話が通っていたみたいで王子や王女が参加することには異論の声が上がることはなかった。しかしカナタたちの名が出た時は不安の声がチラホラと上がる。カナタたちの実力に関しては知らされているが、やはり見た目的に心配にはなってしまうのだ。むしろ王族の護衛という事を考えるならこの反応は寧ろ当たり前なのだが。


 「静かに!」


 少し場がざわつき始めた時、宰相が一言場を鎮めるように促すとたちどころに部屋に緊張感が戻り静かになる。宰相は決して大きな声を出して注目させたわけではなく、普通に一言発しただけだ。ただ、その声に込められたプレッシャーは流石宰相の地位に居る者と思わせるだけの圧が込められており、この場に居る者たちは皆それを感じ取って黙ったのだった。宰相が言葉に込めたプレッシャーは戦闘面で使うものとは違い威厳(・・)のようなものに近い。これが高い地位に居る者が持つ”言葉の重み”というやつなのかもしれない。


 「彼らの実力は我々が既に認めて、此方から依頼しています。否を発言する必要はありません。......さて、最後に5国会議で話す内容ですが......」


 その後は集められた面々が順に話す内容をまとめて説明してくれる。それぞれの貴族が担当する分野の話を宰相が最終的に上手くまとめてくれるので話が非常に分かりやすくカナタたちにも理解しやすかった。ただアスカは話について行けず頭から煙を立ち昇らせてショートしていたが。


 「と、以上がこれまでに決まった内容ですがカナタ様たちは何か質問などありますか?」


 一通りの説明を終えて最後にカナタたちに質問は無いか聞いてくる。これはカナタたちが分からないことがあって聞くのとカナタたちが分かっていることを確認するために聞くのとで2つの意味がある。


 「とりあえず話していただいたことに関しては一通りのことは理解しました。それを踏まえて、この国の防衛戦力は残った者たちでどの程度になりますか?」


 「防衛戦力ですか?......カナタ様たちは王国戦力として考えないとして、ローザ様と軍務大臣が抜けてもそこまでの戦力ダウンはしませんよ。基準で言えば他国の侵略を食い止めることは常時と変わらず行えるくらいでしょうか。」


 「......では軍務大臣クラスの人は何人ほどいますか?」


 「俺とタメを張れるとなると副官ともう1人しかいねぇ。ただ2人とも俺より若干質が落ちる。さらにその下に居るのがその2人から大分力が落ちていく感じだな。」


 「それだとこの国に魔族が2人以上攻めてきたら落とされる。」


 「だな。王国で俺たちが会った人間以外の戦力は知らないが、もし会議の最中に王国を狙って動かれた場合は魔族が2人以上でこの国は落ちるだろう。その副官さんともう1人が居て魔族1人とやっと戦えるレベルだと思う。これは若干厳しめに見たてての値だからおそらくその副官さんたちは勝てると思うけど2人以上だとおそらく無理だ。しかもその2人以外だと数は関係ない。1方的に蹂躙されるだけだと思う。」


 「......数の力で抑える事はできないのか?」


 「そうだのう。詳しい実力が分からないから大まかな話にはなるが、副官たちの次に実力の高い者が数分魔族を抑えて殺される。次のやつが1分持つかどうか。その後は、まあ言うまでも無かろうよ。全員で1斉に高火力の攻撃をしてもおそらく魔族の外皮を傷つけるにとどまって結果は変わらんと思う。」


 「......そう、か。」


 カナタたちの言葉に室内は一気に空気が重くなる。ただ、なにもカナタはこの雰囲気が作りたいから話をしたわけじゃない。


 「今のは最悪の事態を仮定した時の話です。魔族の狙いが分からないから最悪を考えた場合に起こることを今話しました。まあこの国の上級冒険者たちの頑張り次第で戦況は変わると思いますがね。まあこればっかりはどうしようもないので祈るしかないことです。さて、次ですが獣王国まではどれくらいの距離があるのでしょうか?というかどれくらいで着くんですかね?」


 「王国は獣王国の隣にあるから馬車で7日ほどで着く。ただ今回は念を入れてゆっくり進むので10日をみてもらいたい。」


 「なるほど分かりました。」


 カナタは魔族たちの戦闘力を先ず話すことで今回の敵のヤバさを伝えた。次は純粋に知らなかったので獣王国の事を聞いた。

 そしてカナタはアリスたちをそれぞれ1度見て聞きたいことはないかアイコンタクトを取る。アリスたちはそれに対して一度頷いて質問は無い事を伝えた。


 「では最後に、今回の()は魔族だけでいいですか?」


 「「「「ッ......!」」」」


 最後にカナタが聞いたのは魔族以外の敵(・・・・・・)、つまり他国への警戒はどのくらいすればいいのかという事であった。この場に居た王族と宰相そして軍務大臣とローザはカナタの問いは聞かれれば納得といったもので感心したが、他の面々は魔族を警戒するあまり他国のことに関する警戒が薄れていたらしく驚きの声を上げる。


 「そうですね。流石にこの一大事に他の国もそのような事をしている場合ではないと理解しているはずですが、念の為の用心位には考えていてもらいたいですね。」


 「了解です。とりあえず聞きたいことは聞けたので後は現地に行ってみて考えますね。」


 「はい。出発は2週間後になりますので門の外に日の出の時刻に来ていただければと思います。当日は馬車をつけておきますので見れば分かると思います。」


 「分かりました。当日はお願いします。」


 重要な話し合いはとりあえず終わり、その後はメイドに紅茶とクッキーを用意させて一息つきつつ細かな打ち合わせをしていく。ノルンたちは頭がいいので騒ぎたてずにしっかりと会議の話を聞いている。そのことに関してもこの場に集められた貴族たちが内心驚いていたのだがその話は置いておこう。


 王宮での会議もつつがなく終わり宿屋へと帰ってきたカナタたちは夕食を終わらせると部屋に戻り、久しぶりにあれ(・・)を行うのだった。



読んでくださってありがとうございます。

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