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誰が為に  作者: 白亜タタラ
世界の常識と陰謀編
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お買い物

 アスカの1週間の修行を終えてカナタたちは王都の宿屋に戻ってきた。この1週間の間、1日1回はカナタかアリスのどちらか一方がシュリにゲートを開かせて、宿屋に顔を出して王都の状況の確認と不在の誤魔化しを行った。

 そして調査の結果、どうやら後1、2日くらいで各国とのやり取りと調整も終わり、5国会議の日程が決まりそうだとわかった。


 「よし。ちゃんとみんないるな〜。」


 「大丈夫。」


 「うん。」


 「はい。」


 「がる!」


 「こん!」


 みんながそれぞれ点呼のように返事を返して全員がいる事を確認する。カナタとアリスが既に何度も転移を行っているので心配はしていないが、それでもちゃんと無事に転移できたのかと、全員が揃っているかの確認は念のために毎回行うようにしている。


 「さて、とりあえずアスカはこの1週間の修行お疲れ様。」


 「おつかれ〜。」


 「うむ。良くやった。」


 みんながアスカに修行を終えたことへの労いの言葉をかける。既に昨日の時点でこのやり取りは行っているのだが、ダンジョンを出た今の段階でもう1度言いたくなったのだ。


 「ありがとうございます。正直かなり大変でしたが、皆様の足を引っ張る存在にはなりたくなかったのでレベルの底上げができて良かったです。これからも皆様のお側で精進していきます。」


 「アスカ堅いよ〜。もっと楽にしていいのに。」


 「そうだのう。仲間なのだから時には気を抜くのも大事だと思うぞ?」


 「いえ。口調に関しては私はこれが普通なので気になさらなくても大丈夫です。それに皆様の側にいる今の私はこれでもリラックスしているのですよ?なので大丈夫です。」


 1週間程度とはいえ極限状態にあったアスカは、ダンジョン内で寝食を共にしたカナタたちに対してだいぶ心を開けるようになった。口調こそ丁寧だが、カナタやアリスのボケに対してツッコミを入れたり、表情なんかも柔らかくなった。


 アリスやヤクモが同じ女性としてよく接しているし、カナタも料理をアイテムボックスから出す際に記憶にあるレシピを伝えたりと、何かと話す機会があったことでお互いの距離はかなり縮まった。


 「まあ、アスカがそれでいいならこれ以上は言わないよ。で、今日はみんなはどうする?多分明日か明後日くらいに王城から使いの人が来ると思うけど今日ならまだ時間はあると思うよ。」


 「アスカの修行が終わったばかりだしゆっくりする方が良くない?」


 「私は大丈夫ですよ。皆様について行きます。」


 「アスカはそう言うが、この先5国会議や魔族への警戒と、なにかと忙しい日々が続くと思うし儂はアリスの意見に賛成だのう。」


 「じゃあのんびりする方向でいくとして、少し買い物をしてもいいな?」


 「買い物?」


 「うん。王都にいる間に特産品や食材を買い足そうかなって。ついでに屋台ですぐ食べられる物もアイテムボックスにストックしておきたい。自分たちで創り出してばかりだと味も偏るし、一応国の経済面から考えてもお金は使うべきだからな。もちろん無駄遣いをするつもりはないけど。」


 「なら、どうせだからみんなで別々に別れて買いに行かない?各自買い物が終わったら何を買ったか見せ合うとか面白そうじゃない?」


 珍しい発言をしたアリスだが、もちろんみんなと共に行動するのが嫌なわけではない。言葉通り面白そうだと思って言っている。だが、アリスは別に無理して共に行動したいと思っているわけでは無い。その辺はカナタもだが、人と吸血鬼の原種の2人はそれぞれ1人でいることを苦としない。カナタもアリスも最初に誓い合ったこととは別にお互いが自然体で過ごし、それでも一緒にいるのが楽しいのだ。今ではヤクモやアスカと仲間も増えてより日々が楽しく感じている。


 ただこのカナタパーティの面々は楽しいことには貪欲だ。と言うより自分に正直と言うべきだろう。魔法の探究や剣術の修行、食の追求に至るまでカナタたちはダンジョンの中ですら好きなように生きているのだ。そしてそれは召喚紋に戻らないノルンたちや生まれた神々のダンジョンの支配の頚城から外れたヤクモも同様のことが言える。

 まだ入って間もないアスカは若干躊躇いが残るものの、今では奴隷として虐げられていた頃の面影などどこにも見られない。


 「反対意見はある?......無さそうだし各々見て回るってことで。んじゃあ行きますか。」


 奴隷の身分だったアスカもダンジョンで魔物を倒すことによりお金を手に入れた。それはアスカが人生で初めて手にした大金だったが今のアスカのレベルなら簡単には奪われる事もないだろう。


 side:カナタ


 「よーしノルン、お前の食べたいものから回っていこう。案内よろしく。」


 「がるるぅ!」


 ノルンとフィルは流石に別行動で単独行動とはいかないのでカナタとアリスにそれぞれついている。

 カナタの提案にノルンは尻尾を大きくフリフリしながら先導を始める。


 「がる!」


 「おお、最初はここか。すいませーん!」


 「あいよ、いらっしゃい!って、どうした坊主?客か?」


 「はい。ここは何のお店ですか?」


 「おう、客ならちゃんと接客するぜ。俺の店は串焼きだ!ホーンラビットの肉から珍しいところならテールバードの串もあるぜ!とにかく美味いから買ってってくんな!」


 「テールバード?聞いた事ない鳥ですが、どんな感じなんですか?」


 「テールバードは飛べない鳥って呼ばれていてな、近づいただけでその発達した脚力でどこまでも追ってきやがるんだ。そして長く伸びた尻尾を振り回して攻撃してくるんだぜ!鳥というより獰猛な猪だなありゃ。だけどその肉は良く動くからか引き締まっていて肉厚でジューシーなのにめちゃくちゃ柔らかいときている。1度食ったらやみつきになること間違いなしだ。」


 「それはぜひ食べたいですね。どのくらい売ってもらえるんですか?」


 「うん?どれくらいってそりゃあたくさん買ってくれた方が俺は嬉しいが、何でそんなこと聞くんだ?」


 「では、そのテールバードの串をあるだけ下さい。それと他の串も全部12本ずつ下さいな。」


 「えっ!?お、お前そんなに買ってくれるのか、いや、貴方はどこぞの貴族のこど、子息の方ですか?」


 串焼き屋のオヤジは迷いなく大量買をするカナタを貴族の子供だと考えたようだ。慣れない言葉遣いに変えて頑張って接客しようとするその姿にカナタは少し面白いと思ってしまったが、とりあえず誤解は解いておいた。


 「それで、結構な量になると思いますが買うことは可能ですか?他のお客さんのために残しておきたいようでしたら数を減らしますが?」


 「いや、たくさん買ってくれるのは大助かりだ。ちょっと待っててくれ、今急いで用意する。」


 串焼き屋のオヤジはこれぞ熟練の技ともいうべき手捌きでどんどん肉串を焼いていく。結構な量を注文したが思ったほど長時間待ったりはしないで済んだ。むしろ流れるような串を焼く動きを見ていたカナタからするとあっという間に感じたほどだった。ただノルンは焼ける肉の匂いを嗅いで待っているのが少し辛そうであったが。


 その後もあちこちと気の向くままノルンの向くままに屋台やお店を冷やかしたり大量購入をしたりしてあらかじめ決めていた夕飯の時間頃に宿屋に戻った。


 side:アリス


 「じゃあ私たちも買い物に向かおう。」


 「こん!」


 アリスとフィルはカナタたちがご飯系を買うだろうと考えてデザート系の店に向かう。


 「おっ、フィルあそこの店に行こう!」


 「こん!」


 ネメシアには米もあるし味噌や醤油もある。各次元の地球を5つ組み合わせて出来た世界なだけに食物も似たようなものがある。しかし、料理という観点で言えば話が変わってくる。カナタたちが食べている地球の料理はこの世界にはほとんど存在しない。この辺は世界が合わさっても独自の文化と進化を遂げていることが影響しているようだ。


 アリスが向かったのはドライフルーツと青果を扱う店だ。お菓子の類も種類が少ないとは言え扱うお店は存在する。ただその辺はカナタが創ったり、作ったりした物のほうが美味しいためこういったお店では買わない。


 「このフルーツをくださいな。」


 「うん?お嬢ちゃんいらっしゃい。スイカだね。いくつ包もうか?」


 「じゃあこれは5つ。こっちが7つ。これは5つかな。後こっちのも6つください。ああこれも4つください。」


 「......お嬢ちゃんお金はあるのかい?今言ったのを全部だとそれなりの値段になるよ?」


 「大丈夫ですよ。心配なら先払いしましょうか?」


 「ああ...そうだね。先に払ってもらおうかね。」


 カナタの時もそうだが見た目が子供の容姿なだけに大金をポンと出せるとは思えないためこういった確認の言葉はよくもらう。カナタもアリスも最初に辿り着いた村からずっとそうなのでもう諦めているが、できるならスムーズに買い物が出来たら楽なのにと思わない訳ではない。


 アリスとフィルはその後も果物やクッキーなどの甘味を買い漁って行った。


 side:アスカ


 「まったくカナタさんたちは自分たちの規格外さをもう少し理解するべきです。私を含めて4人でそれぞれ食料を買い込むとか、お金の面もそうですがそれほどの食料を入れておけるアイテムボックスを持っている事とか普通じゃあり得ないです。」


 アスカはそう愚痴を漏らしながらも食材(・・)を買う。カナタたちが出来合いのものを買っているのに対してアスカは自分で料理を作るつもりなので食材を買っていた。カナタは普通に一般レベルの料理が出来るのだが、何分ものぐさで気分屋なのでなかなか料理を作らない。最近はアスカが地球の料理のレシピや作り方をよく聞いて覚えているところだ。


 「私がしっかりしなくては!」


 獣人であり尚且つ奴隷の首輪をしているという事で売り渋ったり露骨に値段を釣り上げてくる店は何軒かあったが、アスカは気にした様子もなく別の店を回って買い物を終わらせた。

 今のアスカのレベルとステータスなら少し威圧するだけで相手は腰を抜かすくらいに実力差がある。そうとは知らない店の主人たちが好き勝手に振る舞う様を見ると滑稽にしか感じられず、アスカは怒りすらもわかなかったのだ。

 というより、そんなことに対していちいち腹を立てるよりも、身内にいる常識をあえて無視しているように振る舞うカナタたちから受ける衝撃の方が、よほどアスカの心臓に負担をかけてくるので、些細なことを気にしている余裕などなかった。



 「さて。皆んな思い思いに買い物をしてきたと思うから早速見て行こうか。とは言えみんなが一斉に全部出すと場所も取るし、1人1人どんなものを買ったのか数品程度出して行こう。まず俺たちはこんな感じ。」


 「私たちはこれ。デザート類を買ってきたよ。」


 「私はこういった食品にしてみました。カナタさん、またお料理を教えてください。」


 「......」


 カナタ、アリス、アスカはそれぞれ買ってきたものを見せて行く。しかしヤクモだけは黙ったままだった。


 「どうした?ヤクモは何を買ってきたんだ?」


 「うむ。それがのう、儂は買えなんだ。ちょっとトラブルに巻き込まれてな、全てが終わったときにはもう集合時間だったので戻って来た。」


 ヤクモは買い物に行ったらトラブルに巻き込まれたらしい。ヤクモがこんなにも時間がかかったということは力任せに解決できることではなかったということだ。


 「じゃあ時間もちょうどいいし夕飯を食べながら話を聞こうか。」


 今日の話題はヤクモの話で決まった。夜も更けてきていい感じに場も整った。


 宿屋の酒場でカナタたちは注文を終わらせるとヤクモへと視線を向けて話を始めるのを待つのだった。



読んでくださってありがとうございます。

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