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誰が為に  作者: 白亜タタラ
世界の常識と陰謀編
94/108

アスカ改造計画

 神々のダンジョン、第1階層


 「......」


 ダンジョンコア改め”シュリ”が此処に開いたゲートを通って転移してきたアスカは緊張した面持ちで周囲の様子を伺う。今ならこの階層どころか上層階はカナタたちにとって大した脅威の無いものと化してしまっているが一緒に転移してきた原種仲間であり同じく地球出身の仲間でもあったリリーたち3人を失った場所でもある。


 アスカはカナタたちが別室で見守っていることは予め説明を受けて頭では理解しているが、それと今の精神状態とはイコールで繋がらない。ただの一般市民だったアスカが今、ダンジョンの中では最高難易度を誇る神々のダンジョンに単身で挑んでいる事実にその辺の感覚が狂ってしまったカナタたちは気づかないし、それどころの騒ぎではないアスカは周囲の警戒に意識全振りなのでそんなことを考えている余裕は無かった。


 「もう!カナタさんたちは一般的な強さの外にいるからいいのかもしれないけど、私みたいな一般人にダンジョン攻略なんて無理なのよ!」


 アスカは周囲を警戒しつつも声を殺しながら叫ぶという器用な事をしてのけている。もうそうでもしていないとこの状況と雰囲気に呑まれて心が折れてしまいそうなのだ。


 ガサッ


 「ッ......!」


 近場の茂みから出てきたのはカナタたちにはお馴染みの”ゴブリンさん”だった。第1階層に湧くのは基本ゴブリンだけなので気をつけてさえいれば知能の低いこいつらは音を気にせず動き回るため接近には気づくことができる。

 今回現れたのは運よく1匹だけだった。しかもその手には何も持っておらずアスカが近くに居ることに気づいてもいないという好条件だった。


 即座にアスカはその場に身をかがめてその身を隠す。しかも、アスカは獣人のポテンシャルを活かして気配も限りなく消すように心がけた。先ほどまでの弱弱しい発言をしていたアスカはもうこの場にはおらず、いつの間にか狩人の目になっている。


 「......」


 アスカはゴブリンが自分に気づかずに、無防備に背中を晒した瞬間に伏せていた体勢から飛び起き、彼我の距離をあっという間に詰める。しかし、アスカのその動きに無駄はなく、発する音も極僅かだった。そのおかげでゴブリンはかなり近いところまで近づかれるまでアスカに反応すらできず、漸く反応してもあっさりとアスカにその首を圧し折られてしまった。獣人の野生の勘なのか、はたまたアスカにその才能が元々備わっていたのかはわからないがゴブリンが息絶えるその時までアスカの体に無駄な力みなどはなく完璧な動きだった。しかも止めを刺す瞬間にも声を発しはしなかった。カナタたちも戦闘時は筋肉の無駄な力みをとるために若干声を発するが、アスカはそれすらもなくきっちり止めを刺した。その姿はさながら暗殺者(アサシン)のようであった。


 「ふぅ~~。や、やったよ~。心臓が飛び出るかと思ったよ~。」


 アスカはゴブリンに止めを刺すと先ほどまでの鋭く張りつめた様な雰囲気は嘘だったかのように掻き消えていつもの弱弱しい状態に戻っていた。そして緊張が解けたのかその場にへたり込んでしまっている。

 ただ1つアスカは失念しているのかもしれないが、この状況をカナタたちも見ているのだ。いつもの奴隷としてキリっとした態度で働いているのとは違い、こうして年相応な安堵した姿は最下層で見ているカナタたちにも安心感を与える。

 カナタたちも表面には出していないが一応アスカの事を心配していたし、即座に助けに入れる準備もしっかり整えていたのだ。


 「おお~ゴブリンを瞬殺か。完全な不意打ちとはいえかなり良い動きだったな。」


 「アスカのポテンシャルなら当然。まだレベルが低いからステータス的にはまだまだだけど実力をつければ確実に化ける。」


 「ほう。儂はアスカを鑑定していなかったから分からなかったがアリスがそこまで言うとはのう。」


 「どんなステータスなんだ?俺も気になる。」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  アスカ


 【レベル】:16


  職業:奴隷

 

  種族:聖犬種


 【HP】(体力):5


 【MP】(魔力):4


 【STR】(筋力):10


 【END】(耐久力):10


 【DEX】(器用):8


 【AGI】(速度):14


 【LUC】(幸運):22


 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 「今のアスカのステータスはこんな感じ。最近は相手のスキルとかは勝手に見ないようにしているからそっちは省略で。」


 「アスカのレベルからしたらステータスが平均よりも若干低いな。幸運だけ異常に高いが。」


 「私たちは幸運に関してはもう諦めたからね。ただ見てほしいのはその種族の方。”聖犬種”。初めて聞く種族だけど名前的に期待していた。」


 「儂も知らない種だのう。そのままだが()なる()の種族なのだろうがアリスが言うようにその成長には期待が持てそうだのう。」


 実はアスカの種族である聖犬種はノルンたち以上にレアな種族だ。獣人たちが長い年月をかけて交配してきた中で生まれた種族で現在確認されているのはアスカしかこの種族はいない。アスカの両親ですら聖犬種ではなく異なる種族だったのでこの種族で生まれたのは完全なる奇跡の確率と言っていい。

 獣人は人と同じように子を成して育てるので生まれてくる種族なんて本来はだいたい決まっている。アスカが聖犬種になったのは完全なる偶然でありその確率はカナタたちの先祖返りと同じくらいに稀有な存在だった。


 「たぶんステータスがレベルのわりに低いのも彼女のこれまでの生い立ちのせいだと思う。アスカはあの年齢でその殆どの人生を奴隷として生きてきたらしいしステータスが育ってなくても不思議はないと思う。レベルも奴隷商で無理やり上げたらしいしな。これからはきちんと3食よく食べてよく戦い、レベルが上がっていけばレベル相応のステータスになると思う。」


 「なるほどな。アスカの1週間後の結果は俄然楽しみになったな。」


 アスカの装備はカナタたちが着ているのと同じ日本式スタイルだ。防御力や性能などは高くなり過ぎないように意識的にそれなりで抑えてある。あまりに高性能なものだとアスカの成長には繋がらないと考えたためこのような形になった。カナタたちがやりたいのはパワーレベリングではなく自分の力量の底上げと自分に合ったレベリングである。実力に見合わないレベルまで無理やり上げても、それは本当の力を引き出さねばならないような極限の戦いでは役に立たないしアスカの為にもならない。

 故に武器もそれなりの質の物である。得物はナイフを選んだ。獣人のスピードを生かした戦い方を考えたアスカは小回りと扱いやすさ、そして振り回しやすさを考えてこのナイフというスタイルに落ち着いた。因みに二刀流である。状況に応じて順手持ちと逆手持ちをそれぞれ使い分けられるようになるのが目標だと言っていた。


 現在アスカの腰には2本のナイフがそれぞれ左右に下げられている。このナイフを腰で止めているのはカナタが創ったベルト状のものに鞘が一体化した形をしており、取り出しやすさと携帯性にこだわった代物である。色は本人の希望でシックな茶色になった。とはいえさっきのゴブリンとの戦いではナイフは使わずに素手で首を圧し折っていたのでまだそちらのお目見えはお預けである。


 「お疲れ、アスカ。夕食の時間だぞー。」


 「今日は初日だし焼肉!いっぱい食べていいよ!私も食べるっ!」


 「はは、焼き肉には白飯だのう!儂も最近ではあれの虜になってしまった。」


 「はいはい。今回の主役はアスカなんだから俺たちが騒がないの!というわけでこっちで焼き始めるからアスカは回復したら適当につまんで食べてくれな。」


 今回は修行に集中できるように食事はカナタたちが運ぶ。というより一緒に食べる感じだ。夜はともに生活をして朝の食事を終えたらまたカナタたちは転移で最下層に戻っていく。探知と警戒心を持続させる修業は大切だとは思ったのだが今回は見送った。そもそも獣人の耳や感覚はそういった事に優れているのでこの場所に転移して来た当時のカナタたちより既に上手にこなせる。なので夜はゆっくり休もうと今回はこのような形で落ち着いた。毎回思うがダンジョン内で十分な食事と睡眠、そして魔法で作り出したお風呂まで完備された生活は他の人間が聞いたら驚くどころの騒ぎではないだろう。

 現にアスカがダンジョンに潜った初日は常識とのズレに何度も叫び声を上げていた。


 それから約1週間のダンジョン生活を経てカナタたちは修行の日程を無事に終わらせた。到達階数は残念ながら8階層に留まったがカナタたちは皆アスカの成長に喜んでいる。


 そして、その翌日にシュリの転移によって元の宿屋に戻っていくのだった。そしてこの時シュリは『またいつでも戻って来てください』と見送ってくれたのだった。



読んでくださってありがとうございます。

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