一件落着からの・・・
PV数が10000を超えました!これもひとえに応援して下さる読者の皆様のおかげなのは分かりますが、言わせてください、本当にうれしい!!
今後も頑張って行くので変わらぬ応援をお願いしますm(__)m
とりあえず一通りの話し合いを終えたカナタたちは、少し申し訳なさそうな顔をしながらハックとエリーナの元へ近づいていく。カナタたちは今自分たちのとった一連の行動を見られて怖がられたり、最悪は拒絶されてしまうのではないかというちょっとした不安を抱いた。カナタたちとて、好き好んで関わりを持った人たちから拒絶されたいとは思う筈は無い。心の内で見ず知らずの人間たちがどう思おうが、態度で拒否されようがカナタたちにしたら些細なことだが、今回のように少しでも友好的な繋がりを持った人間が相手だとその気持ちも揺らいでしまうのだった。
「......せっかく友好的に接してもらっていたのにこのような事になってすみません。今回の件で侯爵が不利益を受けそうになったら俺たちのことなど見ず知らずの冒険者であると押し通してください。侯爵なら地位的にも発言は通りやすいでしょうし、実際今回のことは俺たちがほとんどの事を担当したので後から調べられても大丈夫だと思います。」
カナタの発言に合わせてアリスたちの雰囲気も一層申し訳なさを含んだ色に染まる。いくら言葉を重ねても最後の惨殺に関してはカナタたちの感情が暴走した結果で、想定していたプランとは大きく異なってしまった。実際はこのままベッソ伯爵を追い込んで名実ともに逃げられなくして、王侯貴族たちに今回の件で明るみになった事件の数々を報告するだけで良かった。そしてその為の準備も既に整っていて、ハックは今回の件を報告するためにそう時間を空けずに出発する運びとなっていた。
エリーナは先ほどの惨劇を目撃して蒼い顔をしながら立ち尽くしている。カナタの発言はハックに向けたものなので彼女に言葉が届いていなくても問題はなかったが、やはり心境的には少しばかり寂しく思ってしまうのは過ごした時間の長さと関わった事柄の深さが故だろう。一方で、執事のセイスは最初こそ驚きを顔に浮かべていたが、もう既にいつもの無表情に戻っており、主であるハックの少し後ろに佇んでいる。
そして、当のハックは少し厳しい顔をしながらもカナタたち全員の顔を1度ずつしっかりと見てからゆっくりと口を開いた。
「......君たちはまだ私たち貴族というもののことを分かっていないんだな。確かに今回の斬首に関しては私も少なからず驚いたし、今後少々面倒ごとが起こる可能性もある。いくら私が君たちとの関係を否定したとしても貴族たちの中で私とは違う派閥の者たちは今回の事を揶揄してくるだろう。しかし、私は自分の身可愛さに受けた恩があるにも関わらずこのような事で関係を切って無かった事にするなどあり得ない!確かに貴族の中にもその責務を全うせず、自分の欲と権力にしか興味を待たない者や、恥知らずな者が居ないとはそこの者を見た今となっては口が裂けても言えないが、少なからず私は今回の件で君たちと距離を置こうなどとは思っていないと今1度はっきりと宣言しておこう。」
「「「......」」」
カナタとアリスは地球において他人との関係とはお互いの利害の上にしか成り立たないと思ってきたし、現に2人の境遇的には今回のような1件があれば間違いなく縁を切るような人間たちとしか付き合ってこなかった。それに2人の交友関係ではそういった人間以外の存在など居なかった。
そして、ヤクモにしても実際に知っている人間はカナタたちだけではあったが、人の業などに関してはダンジョンに生れ落ちてから自然と理解している知識の1部にあったため今回のハックの言に素直に驚いた。
だが、ハックは毅然とした態度であっさりとカナタたちの予想もしていないことを言ってのける。ハックやセイスにとっては大切な愛娘や孫のように成長を見てきた娘の命の恩人に対して、そして今回の1件を引き受けてくれたことに対してこの程度の面倒事など何でもないと思っていた。
「それに、ベッソ伯爵の事に関してはこれから上位貴族たちや王族の方々にも報告を入れることになっているから、発覚した汚職や裏の事業などの事を伝えれば君たちの行動はそこまでの大事を起こしてはいないと言われると思うぞ。ハハハ。そんな呆気にとられた顔で見つめられると私もおかしく感じてしまうではないか。ともかく、今回の件に関して君たちはそこまで深刻に考えなくてもよいと言っておこう。」
「......そ、そうですか。それはまた、なんとも言えない感じです。少し覚悟して話を切り出したつもりだったんですがね。」
ハックがそうは言うがそこまで簡単な話にはならないだろうとカナタは考える。確かにベッソは汚職塗れの男ではあったがカナタが殺したのはその息子だ。彼についてもベッソを探る上でいろいろと情報を得ていたし、善人でないことは明らかだった。しかし、むやみに人を殺してお咎めが無いとは流石に思えない。
ハックが少しでも自分たちの気が楽になるように言ってくれている、もしかしたらカナタたちの知らない所で口添えをしようとしてくれているのかもしれない。そんなことが頭に浮かび申し訳なさで胸が締め付けられる錯覚を覚えるがここで浮かべる表情は沈んだものではないだろう。空気を読むなら少しでもハックたちを安心させるべきだと表情を取り繕うのだった。
それに、ハックたちが明らかな拒絶を示すことなく今まで通りに接してくれていることが大きかった。カナタたちが少し安心した表情になり話も1段落といったところでハックは先ほどの表情から1変して悪い顔でカナタたちを見た。
「くくくっ。さっきは深刻に考えなくても良いと言ったが、実は君たちに1つ言っておかなばならんことがあってな。」
「うん!?」
ハックはこの先の事を話した時のカナタたちの反応を予想して堪えきれずに声を零して笑った。そして笑みを深めながら再度口を開く。
「うむ、実は屋敷を出る少し前に話を通していた貴族たちが連名でしたためた書状が届いてな、今回のベッソ伯爵の件は王都の貴族たちの品位や外聞的にいろいろと大きな話になっているそうだ。そこで王宮から召還されるらしいのだが、そこに今回の1件で目覚ましい調査力と成果を上げた君たちにもその召還の範囲が及んだと書かれていた。つまり、君たちにもこの後私と一緒に王宮へ出向いてもらわなければならないわけだ。」
「......へっ!?」
いきなりのハックの発言にカナタたちはさっき以上の間抜け面を晒してしまった。いや、いくら何でも自分たち一般庶民がーーカナタたちはそう思っているーー一貴族の不祥事を暴いたくらいで王宮に呼ばれるなどとは考えてもいなかったわけで、さらに言うなら貴族や王族といった人たちと接触したのは今回のハックたちが初めてであり、漫画やラノベの知識でそういった事を大まかには知っていても当然経験などは無いため実際に自分が当事者になるというハックの話の理解に時間がかかるのは仕方がないだろう。
「ふふっ。いつも大人びて見える君たちのそんな顔や態度を見るのはやはりいいね。実際は話すタイミングを逃していてこんなタイミングになってしまったわけだけれど、これはこれでベストなタイミングだったのかな。」
「い、いや~なかなかに心臓に悪い報告ですね。でも俺たちは王族の前に出ていいような教養はないですよ?知らず知らずのうちに不敬を働いていたなんて言うのは流石に拙いんですが。」
「勿論そのあたりも心配はないよ。だいたい、最初に私からの書状で君たちの事を冒険者であると明かしているし、向こうもそのあたりのことは承知しているという旨が書いてあった。まあ流石に常識外の行動を態とされればその範囲ではないが、普通にしていてくれれば大丈夫だよ。」
「そうですか。......ではその時は一緒に向かいましょう。出来れば不慣れな俺達をリードしていただけると有難いです。」
「勿論さ。そのときは「ぐわぁぁああああ。」」
カナタのお願い事に対してハックは肯定の意を伝え、さらに言葉を重ねようとしたところで背後から大きな悲鳴が聞こえた。声は明らかにベッソのものだったがアリスの魔法に囚われた彼をいまさら攻撃する者などこの場には居ない筈だった。勿論アリス自身もベッソを拘束はしているが、それだけで締め付けたり棘を刺したりなど、そう言ったことは全くしていない。
「アリス。」
「いや、さっき視た時は普通の人間だった。私の眼をも欺ける偽装系能力なのか、そういう効果のある魔道具を装備しているのか、どちらにしろあれを殺した時点で敵。」
カナタに名前を呼ばれただけでその真意に気づいてアリスの推測をカナタに伝える。まあ声のボリューム的に他の面々にも会話は聞こえている。
『はぁ~。全くもって想定外デスよ。当初の計画では私の存在は完全に隠して事を成すハズでしたのに。ああ、すみませんがそういった物騒な物は取り出さないで頂きたいデスね。』
カナタは即座にアイテムボックスから華月を取り出したがその動き出しより早く相手は右手を前に突き出して制止する。
拘束されたベッソの首をカナタがグレゴリーにしたように切り飛ばしたそいつは元はベッソの執事であった男だった。しかし彼が放つプレッシャーは先ほどまでとは比べ物にならず、ハックたちは再び青い顔でその場から動けなくなった。それを察してヤクモが庇うような位置取りに移動して彼を見据える。
「それで魔族が何の用!?というか使える主を殺すなんて言い訳出来ないと思うけれど。」
アリスが再度発動した神眼スキルの鑑定で見たのは【魔族】の表記だった。しかしその口調以外は先ほどから変化がなく、そこらに居ても全く分からないだろう。そもそも先ほどまではベッソの執事としてこの屋敷で働いていたのだ。この調子で他の魔族も各地で潜伏しているのなら発見は至難の業だろう。
アリスの問いを受けた魔族の男は口をそれまでとは桁違いなほどに開いて邪悪な笑みを浮かべるのだった。
少しでも面白いと思っていただけたなら下の所にある☆で評価やブクマ、感想などを頂けると励みになりますし、とても嬉しいです|oく)




