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誰が為に  作者: 白亜タタラ
世界の常識と陰謀編
83/108

グレゴリーも瞬殺

完全にタイトルでネタバレしとるよねw

 「おおぅ!なんだ!?いい女がいるじゃねーか。」


 カナタの話に被せるように声を発し、また新たにこの部屋へ入ってくる者が現れた。


 「えっと、何方ですか?」


 カナタたちパーティーメンバーは気配を事前に察知して彼が来ることが分かっていたため突然の来訪にも反応は薄いし、この状況からの推測で大体の予想は立てられはするのだが、ここは念の為(お約束)という体で誰何した。

 だがカナタたち以外の面々は突然現れた男に対して驚きのあまり少しの時間の硬直が起り、順次再起動していく。そんな中で真っ先に復活したのはベッソだった。


 「......グレゴリー!良い所に来た。この者たちは我が家に対して宣戦布告してきた賊だ!お前の力ならこ奴らを何とかできるだろう。私は今見ての通り拘束されてしまって動けん。全く忌まわしい。早く助けてくれ!」


 ベッソは現れた存在を知っていたこともあり、すぐさま歪んだ(・・・)情報を彼に伝えて救援を求めたのだった。


 「ちっ、邪魔だ!......おい女、俺の部屋に行くぞ!お前は今日から俺の専属メイドとして雇ってやる。有難くついいてこい。今夜は俺がシテやるからいい声で鳴けよ。」


 フィルの幻術により意識を奪われて入り口付近に倒れていた騎士たちを蹴り飛ばしながらグレゴリーと呼ばれた男はズンズンお目当ての元に進む。身の丈は180センチほどはある高身長で、肉体もかなり鍛えられており例えは悪いがゴブリ...ああ、いやオークのように超ムキムキであった。今は昼過ぎの時間帯なのだがグレゴリーは今起きたばかりのようで、上下を薄い布を加工したトレーナーとスエットのような格好で現れた。そしてグレゴリは伯爵の言葉など聞こえていないのかのようにアリス(・・・)に声をかけたのだった。


 「はぁ!?」


 「ッ!」

 

 一瞬、そう、本当に一瞬でカナタの抑え込まれていたオーラ(プレッシャー)が制御を失って完全に解き放たれた。いや、カナタだけではなく主人であるアリスにこんな男が擦り寄るのが気に入らなかったフィルも男のあまりにもな言葉にオーラを解き放ち、ノルンもカナタに同調するように解き放った。ヤクモだけはカナタたちが先にブチギレたことで逆に冷静になって今は様子を伺っている。当のアリスはそんな仲間たちの行動を見てこんな状況下にありながらも、言い寄ってきた男のことなど頭と視界から消え去り、とても幸福感に包まれていた。


 だが、解き放たれたカナタたちのオーラが部屋中に広がり、この空間に居る者たちはその圧力と本能的に感じる死の恐怖に顔を顰めている。一応カナタたちは新たに入ってきたこの無礼なグレゴリーに向けてオーラを放っているので、ベッソやメイド、ハックたちのような戦闘に縁が無さそうな者たちでもなんとか意識を保つ事が出来た。

 だが直接オーラを向けられて放たれている当のグレゴリーは地面に足を強くついて踏ん張りながらなんとか耐えている状態であった。グレゴリーはベッソが言ったように戦闘能力においてはこの家の騎士団長すらも凌ぐ実力を有していた。グレゴリーは幼少の時から伯爵家という権力者の家系に生まれたことで自尊心だけが肥大化して、横暴に周りに当たり散らしながら自由気ままに生きてきた。幸か不幸か肉体にも恵まれて喧嘩も腐るほどにした。目についた気に入らない者にはすぐに手を上げるほどに乱暴者であったグレゴリーは本来手を出してはいけないような相手であっても気にすることなく力を振るった。

 そしてその事件はベッソが秘密裏に裏から手をまわして握り握りつぶしてきたため益々グレゴリーはつけあがる。

 そしてその力の向く対象が暇つぶしがてらに魔物に変わることもそう時間がかかることはなかった。魔物の中でも下級種とはいえゴブリンなどをグレゴリーは配下も引き連れて数の暴力を存分に生かして面白おかしく倒していたので自然とレベルが上昇していたのだった。

 だが、そんなグレゴリーもカナタたちの前では睨まれただけで動くことを許されず、今すぐにでも膝を屈してしまいそうになっている。分かりやすく言うなら生まれたての小鹿とでも言おうか。


 人間には野生(・・)の頃の記憶から、本能的に強者の気配が分かると言われている。現代の地球とは違い常に命の危険があるネメシアではこの危険感知能力がほぼすべての人間に備わっている。その正確さに差異はあるが冒険者などはこの能力で生死が分かれていた場面も多々あるだろう。

 そしてカナタたちクラスになると感知だけではなく自分から発することが出来る。さらにそのオーラの対象を絞ることも可能になり、この能力を使うことでわざと誤感知を誘いフェイントとして戦闘に幅を持たせたりもしている。


 「おっ、おいグレゴリー!どうしたのだ、私を助けてくれるのではないのか!?こんな子供に良いようにあしらわれるほどお前はやわではないだろう!」


 今この部屋ではカナタたちの放つオーラの影響で常人にはかなりキツイ空間になっている。しかし、ベッソに関してはアリスの近くで拘束している魔法の影響下にあることでハックたちに比べれば多少その影響が緩和されていた。


 「くっ、クソ餓鬼がー!何をしやがった!?おらああぁぁぁああ!はぁはぁ体が、動かねぇ。」


 カナタはネメシアに来てから怒ったことは殆どなかった。リリーたちが殺された時は確かにゴブリンたちに対して怒りを覚えたし、無力な自分に対しても腹が立った。しかし、あの時はそれ以上に生き残ったアリスと自分がこれから生き残ることの方に意識が向いていたことで怒りで頭がいっぱいになる事はなかった。

 しかし今回は、カナタがガチギレである。対象を絞ってはいるがカナタがハックやエリーナにも少なからず影響があることも考慮せずにオーラを解き放ったのがいい例であり、今のカナタにはグレゴリーしか見えていなかった。

 そして、1歩ずつゆっくりとグレゴリーに近づいていく。カナタはアリスに対してグレゴリーが言い放った言葉を看過することはできなかった。グレゴリーがアリスをどうこう出来るとは全く思っていなかったが、女性のアリスにその(・・)言葉を浴びせたことが許せなかったのだ。

 1歩1歩近づいてくるカナタはグレゴリーからすれば、さながら断頭台に備えられた階段を上るが如く死に近づいていく気分だろう。それが自分の意思か他人の意思化の以外はあるが...。


 アリスの魔法によって拘束されたベッソがオーラの影響が少ないのは奇しくも魔法に接触しているからだ。アリスの魔法が少なからず部屋に充満するオーラを弾いている。しかし、そういった要素が無いグレゴリーはカナタが近づく度にオーラの濃度が増していく。最初の段階でもギリギリで耐えていたグレゴリーは冷や汗を流しながら徐々に腰が下がっていく。


 「死ね。」


 無情にもグレゴリーの目の前に辿り着いたカナタは声を張ることも、顔色を変える事すらなくグレゴリーの首を切り裂いた。カナタに間近まで迫られたことであまりの圧力にグレゴリーは動くことも声を発する事もできずに首を刎ねられてしまったのだった。


 「「「うっ......!」」」


 「「きゃあぁあああああああ!」」


 (”エリアキュア”)


 「「「「「えっ!?」」」」


 この部屋に居る全員がカナタがグレゴリーに近づいていくのを見ていたわけだが、まさか何の躊躇もなく首を刎ねて飛ばすとは思っていなかった。まだ、そういった(・・・・・)ことに耐性のあるハックたち男衆は驚くだけで済んでいるが、女衆には刺激が強すぎて叫ばれてしまった。

 しかし次の瞬間にはアリスが部屋に流れた血糊を魔法で綺麗さっぱり消し去ったことでカナタの時とはまた違う驚きが生まれた。


 「カナタ有難う。みんなも怒ってくれて嬉しかった。でもいいの?この状況は言い訳できないと思うんだけれど。」


 「ああ、大丈夫だ。今回のことでこの世界の力量分布が俺たちが予想していたよりも大分低いことが分かった。この王都に入るときの入退場ゲートで会った彼のような例外もいるみたいだが、俺達なら十分に対応できると判断した。」


 「「「「.........」」」」


 いきなり自分たちの世界に入って周りの目を全く気にしないで話すカナタたちに、ベッソやハックたちは置いていかれて呆けてしまう。


 「なるほどのう。では儂たちは気の向くまま自由に生きていくということかのう。」


 「ちょっと言い方がストレートすぎるけどその通りだな。勿論これからも自分たちで積極的に能力を明かしたりはしないが、そこまで気にしなくてもいいかなと。」


 「カナタがそう決めたのなら私から異論はないよ。ノルンたちも今までのように好きに動き回りたいだろうしね。言うまでもないとは思うけれど、人に迷惑をかけないようにする配慮くらいノルンたちならできるよね?」


 「ぐる!」


 「こん!」


 最初にダンジョンから出る当初はこの世界の事は何も知らなかった。それ故に下手に自分たちより強い存在に不用意に接触する愚を犯すわけにはいかなかったのでカナタたちは力を隠すことにした。敵か味方かもわからない相手に不用意に自分たちの情報を与える必要はないのである。だがここまでの旅でそれなりに人と出会い、アリスのスキルで情報を集めてある程度の事は分かった。そして自分たちのステータスがこの世界の中でもそれなりに高い事も把握した。だから今後はそう気にすることはないと判断した、と自分たちの世界に入り会議をするカナタたちとは別の場所で一人呆然としている者もある。


 「そんな......グレゴリーが......私の息子(・・・・)が死んだ!?」


 そう。実はグレゴリーはベッソの実の息子であり、甘やかせて育ったことでこんな性格に育ってしまった。1つの部屋の中で多様な感情が渦巻いておりそして皆が違った表情を浮かべていた。


 混沌と化す室内で話を終えたカナタたちはハックとエリーナに向き直るのだった。



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