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誰が為に  作者: 白亜タタラ
世界の常識と陰謀編
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一般常識

 この世界における国や町、集落などの規模は全くわからないカナタたちは現在、漸く発見したこの村の宿屋に居る。

 お店に入ってみるとそこではエプロン、というより前掛けをした恰幅のいいおばさんが大きな声で接客をしていた。ここは1階部分が食堂になっており、朝、昼、晩と食事を摂る事が出来る。また、宿泊者以外のでもここで食事をする人間は多くいるみたいだ。


 この宿屋兼食事処の入り口を潜ればすぐに受付カウンターがあり、そこで宿泊の手続きが出来る。此処にはカナタたちと同じくらいーー外見年齢的にーーの年頃の女の子が椅子に座ってこちらを見ていた。


 「いらっしゃい。うちの利用は初めてですか?」


 「こんにちは。今日初めてこの村に来たのでここの利用も初めてになりますね。」


 見た目的には10歳前後の少女が接客するのを見て前世の知識的に偉いな~とか頑張ってるな~と考えるカナタだが、実際はこのネメシア世界ではよくあることだ。働かざるもの食うべからずとは寧ろネメシア世界の方でこそ体現されている。しかもここではそれが格言などではなく現実の事だ。


 生きるためには金を稼がねばならず、日本などよりも圧倒的に貧しい人間が多くいるこの世界では1日の糧を得るために子供でも汗水たらして働いている。


 だがこの受け付けの少女はそんなことなどおくびにも出さずカナタたちの接客を続ける。カナタが感じた感覚のように少女からしてもこうして働いているのが日常で特別でもなんでもない。


 「では、少し説明しますと、うちでは1泊50ケルで食事は1回毎に100ケルになります。部屋は1人部屋と2人部屋があって二人部屋だと100ケルです。飲み物に酒類をご注文だとさらに100ケルいただきます。いかがいたしますか?」


 「じゃあとりあえず食事は朝、晩の2回でいいです。酒は頼まないのでそちらは必要ないです。...その条件で7日分をお願いできるかな?」


 「大丈夫です。......えっと部屋はどうしますか?」


 「そうだね。......みんなはどうしたい?」


 「私はカナタと一緒の部屋。」


 「そうすると、ヤクモは1人になってしまうけれど大丈夫?」


 「ワシならそれで構わんよ。どうせ寝るとき以外は一所に集まるのじゃろうし。」


 「なら2人部屋を1つと1人部屋を1つ......それからこの子たちは従魔なんだけれど、一緒の部屋に入れてもいいかな?」


 「......魔物は......大丈夫なの?お母さんに聞いてくる。」


 流石に従魔を連れている客はそうそう来ないのか、少女もどうしていいのか分からずに母親の元に走って行ってしまった。


 「従魔って安全なのかい!?大きさはどんなだった?......ああ、それなら部屋に上げてもいいかもねぇ。その従魔のエサはどうするのかもネル(・・)が聞いておきな!あとくれぐれも暴れないように言うんだよ!」


 おばさんの声はなかなかに大きく、ほとんど筒抜けな会話を終えて少女、ネルはまた駆け足で戻ってきた。


 「従魔もそのサイズなら部屋に上げてもいいって。ただ部屋で暴れないことと汚さないことが条件......です。あと、その子たちの食事はどうしますか?」


 「わかった。わざわざ聞きに行ってもらって悪いね。ご飯は俺達と同じものを用意してくれればいいですよ。」


 「では......えっと......あのぅステータスプレートの提示をお願いします。」


 「えっ!?」


 「え?」


 「いやっ......あの...ステータスプレートって......何?」


 「えっ!?何ってステータスプレートはステータスプレートですよ。お代はステータスプレートからの引き落としが普通ですよね!?って、まさか持ってないんですかぁぁぁ!?」


 ネルは短く肩の所で切り揃えられた赤い髪を左右に揺らしながら驚きに体を震わせていた。この世界の常識的には、ありえない事だったのかその声のボリュームも自然と大きくなって騒いでいたため奥からあばさ......女将さんがでてきた。


 「ネル。そんなに大きな声を出しどうしたんだい?あんまり騒ぐんじゃないよ。」


 「ききき、聞いてよお母さん!この人たちステータスプレート持ってないんだって!それどころかステータスプレートが何かも知らないって言ってるんだよ!」


 「......あんたたち一体どこから来たんだい?この世界に生きていてステータスプレートを知らないとか聞いたことが無いんだがねぇ。」


 「.........」


 カナタたちは顔を見合わせてどうしたものかを考えた。此処で何も考えずに自分たちのことを打ち明けるという選択肢は勿論ない。だが何も話さないのはあまりにも訳ありであるという事を物語り過ぎていた。まあ、今の状況で黙り込んでしまったカナタたちを見れば誰でも何かある事位は分かるのだが。


 「......俺たちはこの辺りのことをよく知らないのです。此処まで案内してくれた門番の人にも伝えましたが、この辺りでの常識などを教えていただければと思っていました。そして一方的になって申し訳ないのですが、俺たちのことはあまり明かせない......です。ごめんなさい。」


 カナタは言葉を選びながら自分たちに常識が無いことを伝えた。さらに自分たちにモノを教えてほしいと願いながら、剰え自分たちのことは話せないという。あまりにも傲慢で自分本位なお願いをしていることは理解しているために自然と謝罪の言葉が口を突いて出てしまう。


 「やっぱり訳ありなのかい......あんた達みたいな見た目(・・・)のメンバーで旅をしていて、従魔まで連れているんだから何かあるだろうとは見た瞬間から分かったが、あまりにも一方的な申し出じゃあないかい?」


 「勿論いろいろとしてもらうのですから、お金は宿泊費とは別に支払います。そちらの都合も勿論最優先しますので、どうかお願いできないでしょうか。」


 カナタが頭を下げるのを見て他の面々も頭を下げてお願いする。ノルンとフィルも頭を下げている。


 「ああ、もう!どういう生き方をしてきたらあんた達みたいな年でそんな言葉使いと態度になるのかねぇ。見た感じはネルと同じくらいだろうに。......私たちの都合を優先してくれるというならモノを教えるくらい構わないよ。いいから頭をお上げ!って何変な顔をしてんだい?」


 「いえ。ありがとうございます!」


 女将さんに促されて1度顔を上げてからカナタは今度は感謝の気持ちを伝える。その時にまた頭を下げたのだが他のメンバーたちもそれに続いていく。だがその時に見えたカナタの顔は、話を聞き入れてもらえた嬉しさと強引な話をしていることの心苦しさで変な顔になってしまったのは仕方がないことだろう。いくら人種の原種で他者への関心が薄いとはいえ、人としての道徳や常識が無いわけではないのだ。感謝などは普通に行う。


 「もういいって言っただろう。ネル。早いところステータスプレートの話をして金を貰ったら部屋に連れて行きな!どうせうちに宿泊客なんて早々来ないんだから話をしておあげ。話が終わったら村長の所に行ってステータスプレートを貰ってくるんだよ。」


 女将さんもずっと頭を下げていられるのは居心地が悪いのか、話を切り上げて食堂の方に戻って行ってしまった。


 「では取り敢えずステータスプレートについてですが、人は生まれた時からステータスを有しています。幼少の頃は当然ステータスは低いですが、スキルを先天的に与えられていたりするのでそれを確認したり、今回のように日常生活でも使用するので基本的に生まれてすぐに自分のステータスプレートを取得するのが普通です。ステータスプレートはここのような小さな村なら村長から、街などの大きなところなら役場に行けば費用を払って入手できます。さらに、ギルドや大きな街に入る時などではこのプレートに個人の情報が蓄積していく特性からその情報を魔道具を使って読み取ることで、身分証として使用したりもできる優れものなのです。」


 「なるほど。これは知らないやつが居れば騒がれる話だな。かかる費用っていうのはどれ位なんですか?」


 「5000コルですね。どこで入手しても一律同じ値段で国から支給されている物なので変わらないんですよ。」


 「ノルンたち従魔のステータスプレートは取得する方がいいのですかね?」


 「う~んどうなんでしょう?この村に魔物使いのスキルが使える人はいないですし、私にはわからないですね。でも食べ物などの買い物は主人がするのですし、従魔には必要ないんじゃないですかね?一応村長からステータスプレートを貰う時に聞いてみた方がいいと思いますよ。」


 「なるほど。ステータスプレートは個人の情報を蓄積していると言っていましたが、どういうことですか?」


 「ステータスプレートは登録する時にその人の血を必要とするんですが、その血から何かの個人情報を得ているみたいです。詳しいことはまだ解明されていなくて、このプレート自体が何時からあって、誰が作ったのかも解っていない物なんですよ。」


 その後も少し話を聞いていたがいつまでもここに居るのは流石に邪魔なので、カナタたちは先に2階にある部屋に案内してもらいそのまま話を続けた。そうしてこの世界の事や国の事、この村のことなどいろいろな話を聞いて理解を深めていく。

 説明しているネルはカナタが出した飲み物とお菓子を食べてその美味しさに目を輝かせながら喜んで話をしてくれた。


 知らないことが多い、というよりネメシアのことなど知らないことしかないカナタたちへの説明は昼御飯の支度が出来たと女将さんが呼ぶまで続き、それだけの時間を用いても語り足りないほどだった。

 カナタはまた教えてくれると嬉しいと伝え、その時にはまたお菓子を用意すると話すと食い気味で了承してもらえた。


 カナタたちはネルのその反応と言葉を聞いて少しだけ罪悪感が薄れたような気になりながら階段を降り、食堂へと晩御飯を食べに向かうのだった。



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