ネメシア世界
神々のダンジョンは普通のダンジョンとは違い難攻不落というのが今までの歴史だった。これまでの攻略に乗り出し挫折した人々は知らないことだが、カナタたちが攻略したダンジョンでもその階層は100もあり、1階層1階層が広大なフロアになっているために普通に進んだのでは時間がいくらあっても足りなくなる。それこそ長命なエルフやドワーフといった種族でもなければ一生を費やしても終わりは見えてこないだろう。
ダンジョンから遂に外に出られたカナタたちは、初めての(異)世界を各々感じた。召喚獣のノルンとフィルは自分の主人と共に見る新たな場所に尻尾を盛大に降って喜びを表していた。この2匹の判断基準は主人のカナタとアリス、それから最近仲間になったヤクモが共に存在し、楽しめているかという事なので新しい景色などはあまり関係はなかったが、それでも目新しさは感じるらしく気分が上がっていることは容易に察することができる。
ヤクモは長年思考の中でしかその存在を感じることができず、妄想を深めることしかできない憧れた光景が視界一杯に広がっているためこちらも興奮気味である。
カナタとアリスも召喚されてから初めて本当に降り立つ異世界の地に対して辺りをキョロキョロと見まわしたりと、落ち着きがない。だが、実はカナタとアリスがこのネメシアに召喚されてから既に100年以上が経過しており、2人もダンジョン攻略というとりあえずの目標を超えたことで気分は最高潮まで高まっていた。
そんなカナタたちは全く気付いていないが、ダンジョンから出たことで神々が施したダンジョンの結界から出てしまいカナタたちの気配が無防備に放たれてしまったのだった。100年以上の歳月で成長した2人の気配はこの世界に存在する真の強者達や察知能力に優れた者が遠方からでも知覚できてしまうほどになっていた。そしてその気配はカナタたちがこのダンジョンから出る少し前に召喚されたタクトに察知されてしまいカナタたちが知らない所で予定を変更したのだが今は置いておこう。
閑話休題
そうして漏れ出た気配をネメシアの上位の者たちに気づかれてしまったのが問題だった。カナタたちは皆この世界の常識には疎い。そもそもここに居る面子を除けば魔物位しか他の生物と遭遇していないのが現状であり、今この周囲に他者の気配がないと調べて知っていたために燥いでしまったのも無理からぬことではあった。
『............』
故にそれに気づくのに少し時間がかかってしまった。最初に気づいたのはフィルである。
「グルルル!」
低く鳴いたフィルの視線を追ったメンバーは地上からだいたい5、6メートルの位置に浮かぶ玉を見つけた。宙に漂うように浮かぶのは直径10センチほどのでかい目玉だ。それがカナタたちを視界に捉えて動かない。特に何かをするわけでもなく、じ~っと見つめてくる。
「.....っ!」
アリスも気づいて即座に神眼スキルを発動して相手の情報を視ていく。そしてアリスが視た情報は......
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【遠見の目】
【HP】(体力):90
【MP】(魔力):10
【STR】(筋力):5
【END】(耐久力):88
【DEX】(器用):5
【AGI】(速度):25
【LUC】(幸運):0
【スキル】
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【エクストラスキル】
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スキルやエクストラスキルは文字化けして全く読めなかったが、遠見の目という何かであることは分かった。また、名前から自分たちを見た目通り見て観察しているという事も理解した。
(私たちを見ている!?私たちの能力まであの目で見られるとバレてしまうっていう能力なら拙い!”深淵の立方体”)
アリスは視界を潰すために先ず、真っ暗な闇で目玉を覆った。そして大きな目玉を闇で出来た箱に隔離してしまった。この間何と一秒に満たないほどの早業である。
自分のようにステータスまで覗けるスキルを使われていたらと思うと、警戒を解いていた自分に歯噛みするアリスだったが、遠隔操作で相手のステータスを盗み見るなんて言う芸当を自分たちに気づかれない隠密行動ができる個体に持たせるなんて想像がつかなかった。さらに言えば、自分たちがこの場所に出てきたのはつい今しがたであり、タイミングよくこの場所を監視でもしていなければ早々都合よくこの場所にあんなものがいるとは考え難い。
つまり、移動してきたのか転移してきたのかはわからないがその時に用いた魔力的気配をアリスには感知できなかった。さらに、カナタやノルンにすら気づかせない隠形能力を有していて鑑定能力の付与まで行うとすればこの目玉の主はかなりの実力者という事になる。
「...このあたりには俺たち以外の気配はないぞ!?もう起ってしまったことだし、ステータスを見られていたならもうどうしようもないな。あと、たぶんだが俺たちが此処に居ることが分かった理由は俺達から発せられているこのプレッシャーだろうな。殺気とか気って言われたりもするだろうが、これを気取られた可能性が高そうだ。とりあえず皆はこの無意識に体から発しているエネルギーを抑えるんだ。」
「......何故カナタは既に制御できておるのだ!?」
カナタはすぐに眼玉がここに現れた理由について気が付いた。
「俺は目玉が俺たちがここにいる事を知っている理由を考えてこのプレッシャーのせいだと感じた時から対処した。それに、この気配はダンジョンの魔物たちも放っていたから密かに練習していたら威圧スキルが手に入った。俺はこのスキルで制御できる。」
「カナタばかりズルい。」
「ぐるぅ!」
「こん!」
「そうじゃそうじゃ!」
カナタ以外のメンバーがアリスのカナタへの批判をきっかけに愚痴を漏らす。ノルンたち従魔も不満な顔ーー態度ーーをしているようだ。この2匹も少なくない時間をカナタたちと過ごしてきて感情豊かになっているようである。
「はいはい。口はいいから手を?......気配を動かして~。」
アリスたちはその後数分の時間で何とか自分の中にその気配を押し留め、辺りに無闇矢鱈と放たないようにすることができるようになった。
「あの目はかなり高精度。私たちを見ていたのは確実。名前は遠見の目。スキルに限っては私の眼でも確認できないようになっていた。」
「遠見の目とはそのまんまのネーミングだな。...この世界の上位者は俺達から放たれたあの程度の気配すら感知して、偵察を送り込んでくるほどの能力を持っているらしい。どの程度の数がそれだけの力を持っているのかはわからないけれど、ここでも状況が判明するまでは慎重に行動をしていかないといけないらしいな。」
「とりあえずはこの辺りで一番近い町や集落に行くことが第一目標かな?」
「そうじゃのう。情報を得るにはやはり人と接触するのが手っ取り早かろう。」
「そうだな。当面はアリスの眼で周囲を探って第1村人を探したいな。ノルンたちは小さいタイプの形体でいてくれ。」
「わかった。」
「グル!」
「コン!」
気配を駄々洩れにするという失敗を経験すると共に、この世界における上位能力者の力の一端を垣間見る機会を得たカナタたちは軽く今後の方針を話し合い、歩みを進み始めた。アリスの眼には周囲には特に人の痕跡や気配は見つけられなかったので適当に進むことにして、時々アリスの神眼スキルで確認するという方針になった。もちろん、ノルンの鼻や耳も大いに活躍中である。
ーーside:とある国の王ーー
(くっくっくくく。何やら強大な力を持た者が現れたようじゃのう。方角は......|人間の王都のある方角か!?また楽しみが増えてきたわい。)
--side:辺境の仙人ーー
(うわー。何?今の気配......面倒ごとはよそでやってよねー。面倒事はごめんだよー。)
--side:???ーー
「......ほう。見た目はただの子供の男女が1人ずつに少し年上の女子が1人。後は、ほう。フェンリルと幻狐とはこれまた珍しい。なかなか......儂の目を何の情報も与えないように潰したか。あの中のどいつがやったか分からんが確かに力はあるようじゃな。......まあ。儂の邪魔をしなければどうでもよいか。」
こうして気配を無意識に放ったことでネメシアに存在する力ある者達はカナタたちの気配を感じて各々が様々な思考をした。その個人の性格や置かれている立場や状況などにより対処法は異なったが、皆が新たな実力者の存在を認めたことは確かであった。
「ところでこの目はどうする?」
「いらないし潰せば?経験値にはなるかもだし。」
「ワシも同意見だ。アリスでも再現できぬのならもう必要ないだろう。」
「そう。じゃあ遠慮なく。」
アリスは魔法で作ったキューブに”遠見の目”を閉じ込めたままそのサイズを縮小させ、ゴマ粒ほどのサイズにして圧殺した。
出だしから躓いたカナタたちだったが、数時間の移動とアリスのスキルにより漸く町、というより村を発見することができたのだった。
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