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誰が為に  作者: 白亜タタラ
閑話:こうして歯車は狂い始める編
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賢者

 ーーside:車谷拓斗ーー


 学校とは社会の縮図であるとよく言われる。しかし、それは違う(・・)と声を大にして言いたい。


 こんなところが本当に社会というものなのであるなら、世の中は腐りきっていることだろう。


 拓斗が通う学校は県立のごく普通の高校だ。家からもほど近く、拓斗の学力でも無理なく入ることができる為にここを選んだ。しかし、ここで拓斗が学んだのは人間というものの残酷さだ。


 高校入学から間もなく、最初のテストがあった。中学までで習ったことの復習がほとんどで、そこまで難しくはなかった。しかし、このテストの点数はクラスの中での”最初の格付け”を行ってしまった。


 点数の良い者は良い者同士で、悪かった者は悪かった者同士でつるむようになった。テストや授業を重ねる毎にそのまとまりは明確になり、点数の悪かった者達はどこか良かったものたちに遠慮し始めた。それこそ、目に見えない格付けがあるかのように。


 拓斗はそんな雰囲気がどこか居心地が悪く、点数的には上位のグループに入るはずだったが好んで一人で過ごすようになった。


 その日はたまたま家に家族が誰も帰ってこない日だった。両親は仕事で、弟は友達の家に泊まるらしい。拓斗はその日の夕飯を買う為に教室に残り、スマホで近所にあるスーパーの安売り情報を確認していた。拓斗のクラスに残っていたのは拓斗だけで、そろそろ買い物に行こうかと考えた時にそれ(・・)は起こった。


 「えっ?.........」


 不意に足元に現れた魔法陣にしか見えないそれは徐々に輝きを増していく。


 「あーマジですか。この魔方陣が出てから動くこともできないし、これ、完璧に詰んでるわ。」


 目を開けていられないほどに魔法陣が光り輝き、拓斗が次に目を開けると、そこは神聖な雰囲気漂う教会だった。


 (うん。これはやっぱりあれ(・・)だな。魔法陣が出たあたりで薄々気づいていたさ。そう。出来れば考えないようにしたんだが、事ここに至っては間違い無いよな〜。...これは異世界転移(・・・・・)ってやつだよな。)


 拓斗が目を開けた時には今までいた教室の風景ではなく、明らかに違う建物だった。

 拓斗が確認のために辺りを見回すと、自分の他にも数人の”転移者”と思わしき人を見つける。そもそも、服装が今までの世界でありふれたものを着ていたり、自分と同じ学校の生徒であることを示すように同一の制服を着ている者までいる。


 (あ〜。この目の前にいる人たちが召喚主か。物語などでよくある展開すぎて笑えないんだけど。ただまあ、俺の思う通りなら今は大人しくしておくべきだな。)


 拓斗のいた世界でもラノベやネット小説などは大いに栄えていた。故にこの状況で暴れたり、右も左も分からないままに反抗的な行動を行うのは得策では無いと判断した。


 「皆様。ようこそ私たちの呼びかけに応えて召喚に応じてくださいました。我ら法皇国アルガイア一同、皆様を歓迎します。」


 召喚者であると思われる者達の中でも上等な服装で拓斗達の前に立っていた神官らしき人が口を開いた。


 (いやいや。応じてないし!動くこともできない確定された召喚だったじゃん!法皇国ってことはやはりこの人は神官と見て間違いなさそうだ。それも上位の立場にいるんだろう。ただ、この状況は小説然り、俺たち的には良く無い雰囲気だな。)


 「私はこの場を取り仕切り、皆様をここへと導かせていただいたネウロと申します。いきなりの召喚でこの世界の右も左も分からない状況に不安もあるかと存じますが、我が国が生活は保証しますし、これより大部分の説明はさせていただきますのでご安心を。」


 (うん。これは自分の能力を確認して、できるだけ早くこの場、この国から離れた方がいいな。口調は丁寧だが、俺たちを慮っての行動ではなく、取り込んでうまく掌の上で使いたいって言う雰囲気がある気がする。)


 ネウロの話に耳を傾けながらも、拓斗は自身の身を守るためにこの場を収めて離れる作戦を考える。


 その後も話は続いたが、どれも拓斗にとっては予想していたものとそうは変わらなかった。しかし、自分と共に召喚された者達の話やこれまでの行動を観察する限り自分の枷になる事はあっても、共に逃げると言う選択肢にはなり得ないと考えた。


 「皆様にはまず、御自身のステータスを取得して頂きます。ここに用意しましたステータスプレートに1滴で良いので血を垂らして頂きます。それにより皆様の個人情報が登録され能力、すなわちステータスが表示されます。まずはどうぞご実行ください。」


 (さっき、勇者召喚がどうとか言っていたな。このメンバーであり得るのはやっぱりあのイケメン君かねぇ?とはいえ俺も勇者とは言わないから最低限この世界で生きて行ける能力があります様に!)


 拓斗たちは皆が同じ学校に通う生徒たちだったが、学年も違うし、クラスも違えば自ずと顔を知らないこともままある。そんな中で漸く、今後を左右するステータス取得の時がきた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 コンドウ ユウタ



 【レベル】:1



  称号:勇者



 【HP】(体力):70


 【MP】(魔力):55


 【STR】(筋力):70


 【END】(耐久力):60


 【DEX】(器用):50


 【AGI】(速度):65


 【LUC】(幸運):50



 【エクストラスキル】


 言語理解


 勇者の威光


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 クルマタニ タクト



 【レベル】:1



  称号:賢者



 【HP】(体力):30


 【MP】(魔力):50


 【STR】(筋力):25


 【END】(耐久力):30


 【DEX】(器用):60


 【AGI】(速度):55


 【LUC】(幸運):30



 【エクストラスキル】


 言語理解


 賢者の原典


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ここにいる者たちは知らないことだが、カナタの職業勇者とユウタの称号勇者はまったくの別物である。称号の勇者は勇者として召喚された者の証であり、ステータスが低レベルの内から高いことが特徴だが、職業勇者は神のシステムが認めたたった1人しかその職につく事はできない。どちらが優れているかは一概には言えないが、召喚されれば必ず与えられる勇者より、世界でただ1人しかつく事のできない職業の勇者の方が希少性は高いような気がする。


 拓斗の称号賢者はステータスはそこまで初期から高くは無いが"賢者の原典"により、知識を得ることが出来る少し変わったものだ。


 (エクストラスキル?賢者の原典って......うおぅ!)


 賢者の原典は本の形をした知識の塊だ。その本に書かれるのは、世界の地図や魔物の生態、個々人の情報まで、レベルの上昇に比例して開示される情報の内容が増えていく。


 (なるほど。俺の知らない情報まで知ることができるのか。賢者の名は伊達じゃないな。このスキルがあるなら彼等から情報をもらう必要もないし、っと......あった!)


 「おぉ!勇者の称号がちゃんとあります!」


 「おぉ!」


 「これで我が国も安泰だ!」


 「勇者様ぁぁ!」


 拓斗は自身の心の内でステータスオープンと唱えて自身にのみ見えるようにステータスを表示させていた。この辺はラノベ知識を用いて試した行動力の賜物だった。


 (やっぱりあのイケメンが勇者だったか。俺の方も準備はできたし、そろそろ見せるか。)


 その後も聖者や聖騎士、弓術士の称号が勇者と一緒にいたメンバーから発現し、周囲の人々を沸かせた。また、ヤンキーたちからはそのリーダたる男が暗殺者の称号を得て剣士、武闘家、戦士、盗賊と他の四人もそれぞれ称号を獲得した。異世界人の召喚者たちはその称号の効果もあって皆、ーー勇者の称号程ではないがーーステータスが高かった。


 そして最後は拓斗の番になる。しかし、拓斗のステータスプーレートに表示されたのは.......


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 クルマタニ タクト



 【レベル】:1



  称号:賢者



 【HP】(体力):10


 【MP】(魔力):25


 【STR】(筋力):15


 【END】(耐久力):10


 【DEX】(器用):30


 【AGI】(速度):20


 【LUC】(幸運):10



 【エクストラスキル】


 言語理解


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 本来のタクトのステータスよりもだいぶ低い数値が並び、スキルも他の転移者たちとは違い、言語理解しか持ち合わせていないと言う表示だった。


 (他のメンバーの数値よりかなり落とした表示になるように設定したから、これで俺を期待外れだと認識してくれれば作戦成功なんだが、どうなるかな?)


 タクトは賢者の原典で得た知識によりステータスプレートの改竄を行なったのだった。もちろん詳しく調べられてしまえばバレてしまうが、この場での表示だけならこれで誤魔化せると踏んだ。


 「おや?賢者という称号は誠に素晴らしいのだが......ステータスが低すぎる?いや、そもそもスキルが言語理解だけというのも......」


 ネウロはタクトのステータスを見て何事か考えだす。また、後半の呟きは声を出したというより口の中で呟いたというような感じで、その言葉を聞くことができた者はいなかった。


 「おいおいマジかよ?俺たちと同じように召喚されたくせになんだそのステータス!しょぼいにも程があんだろ!?」


 「ぎゃははっ!マジ超ウケるんですけど。召喚する人間を間違えたんじゃね!?弱すぎるんですけど〜!」


 「君たちそれ位にしないか!俺たち同様好き好んでここに召喚されたわけじゃないんだし、彼の気持ちも考えてあげるんだ!」


 不良グループの男女がそれぞれタクトのステータスを見て蔑んだように笑う。そして、辛辣とも言える言葉を浴びせる中、勇者の称号を得たユウタが仲裁に入った。


 「さっすが勇者様(・・・)は言うことが違うね〜。確かに弱い者に構っていられるほど俺たちも暇じゃね〜や。この国を救わなきゃならね〜もんな〜俺たちはっ!」


 「......?......ッ!」


 しかしタクトはこの場のメンバになど特に関心も示しておらず、今後の自分がどう行動していくかを考えるので精一杯で周りの言葉など耳に入っていなかった。


 しかし、突如感じた猛烈な気配(・・)に身を固くして動けなくなってしまった。だが、頭はこの状況についての思考を続け、目は周囲を油断なく観察した。


 (誰も反応を示していない!?このとてつもないプレッシャーに気づかないなんてことがあるのか?いや、むしろ賢者の称号が咄嗟にこの気配を掴んだのか!?一体何が起きたんだ?こんな馬鹿げた力を持った奴がいる世界なのかよここは!?...この場を離れる計画はもう少し慎重に行った方がいいかな。)


 こうしてよくわからない圧倒的な気配を感じて、人知れず作戦を練り直したタクトだったが、同時刻にいたる場所で同様の気配を感じた者たちが瞬時に反応して身構えた。また、気配を感じた者の中でも上位の能力者たちは気配の発生源を探ったり、笑みを浮かべたり、面倒臭そうに溜息を吐いたりなどなど、それぞれが反応を示したのだった。



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