一つ目
最近少しづつですが皆さんがポイントとブクマをしてくれていて、それを見る度にだらしなくニヤける私です。ああ、キモイとかの悪口はおやめください。豆腐どころかもっと柔いメンタルなので立ち直れなくなる恐れがあります。
それはさておき、今後も頑張って行くのでよろしくお願いします。
火、水、雷、氷、土と五種類の魔法を同時に操り、自身の周りにそれぞれの属性の玉を浮かべながらアリスは100階層ボスのコーヤの隙を窺う。また、それとは別に"ライトニング"の魔法など、出が速く、使い勝手の良い小魔法を様子見として放った。
奇しくもほぼ同時に動き出したカナタとコーヤだったが、コーヤの速力はカナタを上回っていた。お互いに相手に向かったために、瞬時に距離が詰まる。
カナタは即座に華月を振り上げるが、コーヤの右足がカナタを吹き飛ばす方が早かった。
一瞬遅れて放たれたアリスの"ライトニング"は体の軸を少しブレさせるだけで最小の回避をされた。
ドガガガガガン!
戦闘開始からあっという間にカナタは数メートルは離れた壁に激突させられるほどの蹴りをもらい、アリスの魔法も簡単に避けられた。
「痛ってぇ!魔法で強化された俺たちを簡単にあしらいやがって。"火纏"、"飛炎"」
纏い術を用いて刀に炎を纏い、その炎の刃を斬撃として飛ばした。勿論ダメージを狙った攻撃ではない。
「ワヲヲヲヲヲオオオオオン!」
「コーーーーーン!」
カナタの斬撃に合わせてノルンも氷の礫をコーヤの周りにばら撒き、フィルの幻術がさらに避け難くなるように方向感覚を狂わせる。
「"紫電"」
『GYYYAAAAAAAA!』
アリスとヤクモは回避箇所を潰すために避ける先に魔法と龍のブレスを放った。
全員が遠距離からの攻撃だったが、爆煙が晴れると元々コーヤがいた場所は大きく陥没していた。
「ふふ。危ない危ない。どの攻撃も高威力でタイミングも良く考えられている。ただ、僕に届かせるにはまだ足りないかな〜。」
コーヤは多少のダメージはあったようだが、状況から見て直撃は一つとしてなかったようだ。
「マジかよ。」
カナタたちは相手の力量をかなり高く見積り、そして警戒をしながら戦っていた。しかし、今のコーヤを見てその見積もりは低すぎたようだと再認識した。
「ふふっ。」
コーヤはとても楽しそうに笑う。永い年月をこのダンジョンで生きてきたことで、やはりこんな場所では目新しいことは起こらなかった。さらに、この場所まで辿り着いたのはカナタたちが初めてだと言っていたことから、こうして戦うことすら初めてで楽しいというのはわかるような気がする。
「......っ!」
突如としてギアを上げたかのようにコーヤの速度が上がった。一番近くで戦っていたカナタは背後を取られ、一息で両手をもぎ取られてしまった。掴まれたと認識した時には両の腕がなくなり、血液が噴き出していた。
その状況を捉えられていたのはアリスとヤクモの二人だったが、カナタとの距離が離れていたことと、お互いの速力差によりその瞬間を止められなかった。だが、ただ見ていただけではない。
「こっの!」
カナタの悪足掻きとして放った反撃の蹴りは、少し後退したコーヤの前を素通りする。無理な体勢とはいえ完全に虚を突いた攻撃にも関わらずに蹴りを外されたカナタは瞬間的に完全な無防備になる。両腕の引きちぎられた個所からは血液を撒き散らしながらの攻撃は、普通なら確実に虚をつける筈の攻撃だったのだがコーヤにはあえなく回避されてしまった。
「”雷牙”」
「コーン!」
アリスの魔法で作られた雷の牙はカナタとコーヤの間の地面を境にコーヤの周りを広範囲に渡り牙を突きたてる。
フィルの”狐火”はカナタを守るようにカナタの周りに生み出され、アリスの雷魔法での攻撃の結果を伺っているように展開されている。
「【ブラックアウト】」
「「「「『!』」」」」
アリスの雷魔法は突如として搔き消え、カナタの周囲に浮かんでいた狐火は蝋燭の火のように火力が衰えるようにして消えた。
「隙だらけですよ!?」
カナタたちはほとんど誤差もなく腹部に掌底を受けて、自身の背中方面に弾かれたように突き飛ばされた。ノルンとフィルは小さく鳴き声を漏らして地面を転がる。カナタは掌底を受けた腹部の装備が破れている。また、地面にバウンドするたびに咄嗟に手や足で受け身をとりながら転がるがダメージは少なくはない。ヤクモはその巨体故に殆ど吹き飛ばなかったが、体を突き抜けた衝撃によるダメージは確実に効いておりその場で少し硬直してしまう。
アリスだけは掌底を一度回避していた。だが、その眼で視てからの回避では一度目で体勢が崩れて間髪入れずに放たれていた攻撃は杖でガードすることしかできなかった。アリスは極力隙を晒さないように足を地面から浮かせてしまわないように踏ん張って数メートル程離された。
(”かまいたち風牢の舞”)
しかし全員が手を休める状況だけは作らない。アリスは無詠唱で風の刃をコーヤの周囲に展開させて縦横無尽に攻撃させる。
「コーーーン!」
コーヤはどうやっているのかフィルの幻術がほとんど意味をなさない。なので、狐火や体術による攻撃で攻めている。また、瞬間的に幻術を使うことでかく乱をする戦い方にしている。
「ワォーーーーン!」
そして、ノルンもその速力を活かすように動き回る。氷の礫や氷の柱、さらに最近習得した闇の属性をも合わせた氷も用いて攻撃を繰り返す。
先のコーヤの動きだけで接近戦は分が悪いという事が分かった。いや分かってしまったから行動パターンを変えて挑む。
「はぁ~。強すぎる。これは甘えて出し渋っていられるほど暢気にはしていられないな。」
カナタの雰囲気が変わる。
カナタは強敵と闘うと、そして、危機になればなるほど、人種の原種の兆候が表れる。それはより冷静になり、自己完結の思考が加速する。そして......
「......フッ!」
カナタは飲んでいたポーションの瓶を投げつける。そしてそれとともに走り出した。その行動に合わせるようにノルンはカナタと反対の方向から氷刃を飛ばしながらから迫る。フィルも幻術を最大限の力で繰り出した。
ヤクモはその巨体から右の拳を突き出す。
フィルの幻術は仲間を多く見せ、全方位からの攻撃に見せる。
(花舞い散るはその月也。火燃ゆるは水の導き。雲纏うは光る閃光。我併せ持つは三属の光玉。”白夜の月光爆散”)
自身に向かってくるカナタに向いていたコーヤの視線をアリスは自身の眼で捉えながら今放てる最大魔法の”ホワイトノヴァ”を放った。改変をしてなお四節もの詠唱を必要とする魔法は正真正銘アリスの切り札の中でも最大の一手だった。勿論、近づくために走っているカナタもその魔法の効果範囲内に居るが、寧ろそれがコーヤの虚をつけるとアリスは考えた。
カナタたちは皆、アリスたちの魔法が消された方法は分からなかったが、コーヤの能力であるのは疑いようもなく、そして検証する余裕すらないために全開行動に移ったのだ。
「......!”ブラックア
パリィィン
アリスの魔法の気配に気づいたコーヤは先ほどの力を使おうとした。しかし、目測では最初に投げられた瓶はまだ届かない筈であったのにその瓶を粉砕しながら三本のナイフが両の目と心臓の位置に迫っていた。
一瞬の、本当に一瞬の硬直であったがアリスの魔法は消されることなく周囲を真っ白に染め上げながら飲み込んでいった。
それは白い太陽のようであるが、熱はなく熱くはない。だがその内部は酸素もなく、前後左右に吹き荒れる暴風は内部のモノを捩じりながら押し伸ばし、そしてかかる重力も数倍になっているため体への負担は相当のものになる。さらに内部を目に見えるかどうかというほどに極微細な雷が荒れ狂って白い色を作り出していた。当然ダメージは蓄積されて普通なら跡形もなく消滅するのが道理と言えるほどの破壊の権化と言える魔法だった。
効果範囲はカナタとコーヤをほぼ中心に円形に広がり、直径は十メートルほどだ。二人以外はギリギリ効果範囲外に居るし、そうなるようにアリスが調整して魔法を構築している。
大体一、二分だろうか?突如アリスのホワイトノヴァが掻き消えた。ついさっきも見た現象にアリスたちはさらなる攻撃準備を整える。だが、最大火力で放った魔法にアリスの疲労はかなり溜まっていた。また、コーヤ自身が発するプレッシャーは本来、一般人ならそれを受けただけで即死するレベルのものであり、運が良くても失神するレベルのものだ。そんな中で極限の戦闘をこなす面々は当然疲労も溜まるというものだろう。
(あれでまだ生きてるの!?MPもかなり消費したし魔力欠乏の症状がキツイ。でも流石に無傷じゃないみたいで良かった。)
アリスは唇を噛みながら震える脚に鞭を打って堪える。そしてアリスの魔法を受けたコーヤも全身血だらけになりながらアリスを睨んでいた。脇腹や右肩が抉れており、体は雷によって所々が炭化し、その両目は酸素がない空間に居たことにより、白目の部分が黒く変色していてよく見ると涙のように血涙が流れていた。
「......いたい......痛いイタイいたいイタイいたいいたいたたいたたたっ.......楽しくない。つまんないよぉぉぉ。もういい!もう君たち要らないよぅ!!!」
先ほどとは別人のように怒り狂っているコーヤは、満身創痍とは思えないほどの速力で戦闘を再度行っていく。だがダメージは確実にあり、ノルンとフィルは攻撃を躱しながら二匹でうまく連携をとりながら動く。ヤクモは二匹が離れた瞬間を狙って溜めに溜めた龍のブレスを集束してコーヤに放つ。
ダメージのせいなのか発動に制限があるのかはわからないがコーヤはブレスを消すのではなく回避をする。しかし上手く連携をして限りなく避け難くなるようにしたブレスは左手と左の踝から下を消し飛ばした。
カナタは先ほどのホワイトノヴァに巻き込まれてから姿が見えないが、死ぬことも消滅することもスキルの効果でありえないためにいずれは戻ってくると仲間たちは思っている。
徐々に数の有利とダメージすら構わず攻撃を行うアリスたちが少しづつ押し始めて来た。
だが唐突に見開かれたコーヤの両目が光ったかと思ったアリスたちは自身の体が動かせないことに気づく。
一つ目という魔物から進化したというコーヤはまだ奥の手を隠していたようだ。そしていきなり逆転された形になったアリスたちの顔は若干の焦りを見せるのだった。
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