新たな仲間を迎えて
遂に50話到達です!
ダンジョンもまだまだ先があるのでこれからもよろしくお願いします。
そしてブクマや評価をしてくださった皆様、本当にありがとうございます!
読者があってこそ書いていけるというものだと書いてみて、そして実際に評価を貰って初めて知りました。
今後とも誰が為にをよろしくお願いします。
50階層のボスたる黒龍はダンジョンの魔物として幼竜の姿で生まれた。もう遥か昔、遠い遠い昔のこと。そして、人間なら世代が代わり、国が起こり、国が滅びるくらいの年月を経て今の姿まで成長と進化をしてきた。
本来のダンジョンの魔物は、自我は無く、侵入者を迎撃することが存在のあり方だった。黒龍のヤクモも最初はそうしたことを考えて、いや、そういう存在として生きてきた。もっと言うなら、それしか考えることができなかった。
だが、長い年月の中でヤクモのスキルは”龍眼”スキルとしてその身に発現した。
ヤクモの目は、当初はほんの少し目が良い程度だったが徐々に見える範囲が増え、ついにはダンジョン全ての階層を見通すほどになった。最初はその目で周囲を伺い、自身のことを知り、自分がいるこの階層のことを理解し、このダンジョンを少しずつ、それはもう膨大な年月をかけて理解した。
そうして知識が増え、行動を起こすうちに自我が芽生え、ここから外の世界を見てみたいと言う欲が生まれた。
真にヤクモという存在が生まれてから今までで初めてこのダンジョンの10階層を超えた者が現れた。ヤクモはすることもなくただその者たちを見ていた。そしてその人間に興味をもった。その人間はこのダンジョンで普通に生活していた。飯を食い、夜を超え、魔物を倒し、階層を進みながらも彼らは笑顔が尽きることがなかった。
彼等ならワシをここから出してくれるのではないか。そう考えることも増え、そしてついに自身のいるところまでその人間はたどり着いた。初めて遭遇した自分以外の生物。嬉しさと興味を堪えることができなかった。そして彼等の力も確かめ、自身の長年思い続けた願いを告げたのだった。
カナタたちはとりあえずその場に腰を下ろした。このヤクモと名乗った黒龍を簡単に信じ切ることはできなかったが、話の内容と雰囲気、またアリスがその眼で嘘か真かをおおよそ見極めた。そして今日は疲労もあるのでここに留まり、ヤクモの話を詳しく聞こうと言うことになった。
「それでこの階層を抜けるにはお前......そうだな、普通にヤクモと呼んでいいか?」
『もちろんだ。ワシのことは気安く呼んでおくれ。』
「ヤクモ、とりあえずさっき言っていた、この階層を抜ける為にお前の承認があれば良いと言うことだったがどう言うことだ。」
『各階層ボスであるワシらは本来、それぞれの階層を自由に行き来できるよう自身でワープゾーンを召喚できる。だが、ワシらに自我はないからそうそう使われる事は無いものだ。そして、ここより先の階層はボスが通常エリアを徘徊する。』
「「なっ!」」
「そっ、それは本当なの!?そんなの、そんなのもはや難易度がどうこうの話ではないではないか。」
『そうだ。ここは"神々の迷宮"、【フミーレ】という。過去に一度の攻略者もおらず、さらに10階層を超えた者すら居ない最難関ダンジョン。さらに、ここに存在する魔素濃度は長い年月を経て上昇し続づけた為にここに存在する魔物も強くなり、そしてまたこのダンジョンの攻略難易度を上げる。これの繰り返しでここがある。普通の存在ではここは攻略できない。』
「「............」」
「こーん......」
「ぐるぅ......」
階層ボスが普通にその辺に出現する。それは常時気を張って備えておく必要があると言うこと。そしてそれは、いつでもボスと激しい戦闘の危険があると言うことだった。
あまりの事実に声も発しない主人に寄り添い悲しげにノルンたちは鳴いた。
「はぁ〜。甘く見ていたわけではないつもりだったが、これほどとは。.......そうだな。アリス、ヤクモお前らとノルン、フィルもいる。恐らく、相当長い時間を要すると思う。だが、俺たちならいけるだろ!俺たちになら研鑽していける。お互いを支え合える。ヤクモ、悪いがお前に遠慮していられるほどこの先は生易しくないらしいから、覚悟を、いや決意をしてくれ。」
『決意だと?ワシはもう既にここを出るためなら、いや、今ならお主らと共に行くためならなんでもすると決めているぞ。』
「いや。そっちじゃない。今ここにいる俺たち、この仲間たちは身体は異なるが心は同一だと考える。もちろん、意見を出すなと言うことじゃない。共にあり、共に生きていく。そうして、ただ仲間を大切にしてくれ。.......それだけ、ただそれだけだがその心を維持し続けるのはキツイと先に言っておくぞ。これが決意だ。」
『.......くっ、クハハハハ!そんなこと!そう、そんなことだ。ワシはお主らを、カナタとアリスを見込んでここに今おる。"舐めるなよ"人間!我が、なんの意図もなくお前らを選んだとでも思っているのか?人の生など、たかが知れている!だがお前らは違うだろ。これから幾年の月日を重ねても別れのない個体。共にあることのできる個体を選んだのだ。お前たちの周りは良い。......そこの二匹も安らかで穏やかで朗らかな気配をしておる。お前たち二人は離れていながらもその行動と研鑽の各所にお互いの存在を感じるほどに寄り添っている。我とて、偶々ここにお主らが来たからではない。お主らだからと、その程度の心くらい決めて懇願しておるわ!』
「ヤクモももう既に自分に決めていたのか。」
「くくっ。俺の方が甘く、そして完全に見誤っていたわけだ。いやー、すまなかった。ヤクモ。これから宜しく。」
『ああ。ワシが滅びるその時まで、よろしく頼む。ワシを先に一人にしないでくれ。温もりを知ってしまったワシではもう、あの時間は耐えられんよ。』
「ああ。」
「......」
「グル!」
「こん!」
カナタは短くそう告げ、アリスはただ頷いた。ノルンもフィルもただよろしくと告げるように鳴いた。
それだけでいいのだ。ヤクモが答えたように、決意など自分がその意思を曲げないと決めることだ。その決めたことを守るのがどれほど難しいかは個々人によって変化するが、カナタたちが決めたモノはそう簡単じゃない。それも共にあるというのはかなり重たい選択だ。
「じゃあこれからのためにも、この後の階層の特徴を教えてくれ。ああでも、魔物の特徴とか、注意点。後はその徘徊するボスのことだけで良いぞ。」
『教えるのはもちろん良いのだが、次の階に降りるための経路などのことは良いのか?』
「それらは、自分たちで埋めていくよ。そのくらいできなきゃこの先は生き抜けないよ。」
『そうか。確かにそうだな。単体能力ならここ、50階層のボスたるワシに敵うのは90階層以降のボスたちくらいだろう。しかし罠や数を用意した戦力もある。備えるのは良いことじゃ。』
こうして、ヤクモのことも少し知ることもでき、カナタたちは正式に仲間に迎え入れようとそれぞれが心で決めた。
「このダンジョンって何階層あるんだ?」
『このダンジョンは最下層を100層に置く。そして、ダンジョンコアが101層にある。今はちょうど半分といったところだ。ただしこの先は魔物のレベルも仕掛けられている罠も危険なものが多くなる。難易度は上がっていくと思ってくれ。』
「100、か。まぁ、その辺じゃないかと思ってはいたが。やることは今までと変わらない。なぁ、アリス。」
「そうね。私たちは一歩ずつ成長していきましょう。」
ヤクモとの打ち合わせと情報収集、それに各々が自分のことを語りながらご飯を食べ、その日を明かした。
「うん。昨日話をしてみて考え直した。もう少し作戦と状況、そして連携をこの階層に留まって考えよう。進むのはいつでもできる。でも刻一刻と変わる戦況に対応できる力を身につけるのは早いうちから行った方がいいからな。」
「そうね。久しぶりに再会して、新たな仲間も加わった。備える時間を設けるのは悪くないと思う。」
「ガル!」
「コン!」
ノルンたちも力を蓄えるのに賛成のようだった。それにアリスの言ったように再開してからの時間はあまり経っていない。そのためゆっくりとした共にいるだけの時間というのも悪くないと考えたのだ。
この階層には敵となる魔物も、一般生物もいない。つまり普通の人間では食料が手に入らないと言うことでもある。
この階層のボスたるヤクモは食事も睡眠も必要ない。そして、カナタたちも食料はまだまだアイテムボックスに収納されているため、ここに留まることに危機感は無かった。
こうしてカナタたちはしっかりと準備をし、さらには各自が模擬戦をすることで戦力の確認と戦い方の把握も行なった。
約一月ほどの入念な準備を行ったカナタたちは漸くヤクモのワープゾーンを召喚し、次の階層に進んで行くのだった。
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