死闘
ついにここまできましたね。黒竜の登場で一層作者の尊敬する作品に似てきている気がします。
それぞれのキャラクターは全く違うけど種族がね・・・
こう書くとこの先の展開を予想されやすいかな?(~_~;)
この階層は他の階層とは異なり、歩いても数時間で端から端まで辿り着ける。そしてこの階層には野生生物も、魔物も存在しない。辺りに広がるのは木々と大地と空とそして、高濃度の魔素だけである。
そして放たれる気配を辿り、すぐに扉に辿りついた。その扉はかつて無いほどに荘厳だった。黒地に金の装飾で端を花が伝っている風に描かれている。さらにその金の花の装飾の中に白い玉が描かれていた。その玉は楕円の形をしており、さながら卵のように見えた。
「ここだな。明らかに、扉が違うんだが。......50階層、もしかしたら区切り的にここは中ボス、あるいは最下層で真のボスってこともありえるな。」
「扉の模様って、中のボスのことを示しているヒントの可能性があると思ったんだけど、流石にこれだけじゃあ分からない。でも行く価値はありそうね。」
「ガルルル」
「......」
カナタたちは皆、戦意も湧き沸きと満ち、決意を決めた目をしている。
そうしてカナタたちは扉に手をかけ、そして開いた。
カナタたちが中で見たものは......
「......ちっ!そういうことかよ。」
(まさか龍種が相手とはね)
「「............」」
扉の中にいたのは龍であった。魔物のランクは種族によって分けられているが、下位はゴブリンやコボルトなど数えるのも嫌になるほどの種類がいる。しかし、上位は数種しか存在せず、その中の頂点に立つのが龍種である。
もちろん、個体による差異はある。生まれてから生きてきた年月や戦闘センス、また特殊な能力を生まれつき持っている個体もいる。
このボス部屋はまっさらな空間だった。地面と空があるだけで他は何もない。ーーいや、敵はいるがーー
そして、カナタたちの前に立つそれは全長十メートルを超える。またその身体は漆黒の色をしており、光すら飲み込むのでは無いかと思うほどに濃い黒色だった。鱗は漆黒なのに光を反射し、その光沢がその身体の頑丈さを物語っているように感じる。
竜種の中で黒龍は白龍と対をなし、竜種の中でも最強の強さを持つと言われている。白龍は光魔法を使い、回復することで長期戦闘を得意とする。だが、黒龍はただ硬く、ただ鋭く、ただ力が強かった。
黒龍は純粋に個としての存在が、こと戦闘に即しすぎている。そもそも、龍とはステータスが高く、存在そのものが種として上位なのだ。ただの人間が普通の武器を用いて攻撃しても、龍はその鱗で何事もなく平然としているだろう。
カナタたちは油断なく敵を見据え、そして構える。
「あの扉の模様はこいつの卵ってことか?くくっ。こりゃーやべーわ。素で格が違う。くくくっ。アリス、最初は眼を使うな。こいつ相手に短期決戦はない。まずは体で相手の戦力を測るぞ。」
「わかった。今回は状況を見ながら適宜各々が最善を果たす。」
カナタは戦闘への思考がMAXまで高まると口調が変わる。そしてネメシアに来て成長した今では戦闘が、いや自分の成長の証を測れることが楽しかった。もちろん恐怖もあれば痛みや苦痛に対しての嫌悪もあるが、自分が強くなっている実感を得る。また、それがこの場所にいる充実感にも繋がっていた。故にカナタは嗤う。
だが、何も変化したのはカナタだけではない。アリスもまた、この戦闘ばかりの世界に長期間いることで多かれ少なかれ変化しているのだ。
アリスは口調も思考も変化はない。しかし、カナタ同様、自身の成長が試せる強者との戦闘は恐怖と共に楽しくもあった。さらに、ずっと一人だったアリスはカナタと共に行動できる今の状況が楽しく、そして嬉しかったことで、尚一層アリスをやる気にさせる。
「さて。ノルン、様子見でいい。初手は任せる。絶対に即死に至る攻撃は受けるな!」
「フィルもお願い!安全第一でいい!」
「グラァァァァアアアアアアアア!!!」
「ギュァァァァァァアアアアアア!!!」
まずはノルンとフィルが咆哮と共に黒龍に突撃した。普段の可愛らしい姿とは程遠く、フェンリルと幻狐としての威圧感たっぷりの凛々しい姿だ。
「.............」
黒龍は冷静に突っ込んできた侵入者を眺める。
「グル!」
「コン!」
ノルンがそのスピードを最大限に活かして敵を翻弄し、鋭い爪を突き立てる。
「......」
だが黒龍は動くことすらしなかった。
ギャリィィィンンン
黒龍の鱗はノルンの爪すら通さない。激しい衝突音と硬質なモノ同士をぶつけた時特有の高音が鳴り響いた。
時間差で攻撃したフィルも鱗に弾かれる。
「「っ!」」
わずかに尻尾を振っただけだった。本当に動いたのは尻尾のみ。だが、その高質量の物質が動くだけで風が巻き起こり、ノルンたちを襲う。
咄嗟に後ろに跳んで回避をしようとする二匹だったが、尻尾は見切って回避できた。しかし、吹き荒れる風の範囲は予想以上に広くて吹き飛ばされてしまった。
「ふう。行こうか"凪"。」
(ライトニング!)
カナタは腰に差した凪を構えて黒龍に突っ込む。アリスはカナタの背後から雷魔法のライトニングで敵を撃つ。
だが、
「.......」
黒龍は右手を前に出してその直撃を受けた。黒龍は某アニメなどで見る細長い身体ではなく、その身体には不釣り合いに短い手足を持ち、少しお腹がぽっちゃりした体型だ。だが長い身体でない分、その身の質量は莫大になる。
アリスのライトニングの直撃を受けた黒龍は、少し腕を焼かれたが大したダメージにはなっていなかった。
「しっ!」
カナタの抜刀術は腕を下げることで回避し、さらに黒龍の反対の腕がカナタを襲った。
「くっ!」
回避は出来ないと判断したカナタは刀を巧みに使い、受け流すように動く。
ミチッメキッ
「ぐっ......」
受け流すように接触した刀はいとも簡単に砕け、カナタの両腕をもへし折りながら吹き飛ばした。だが、黒龍の攻撃はそれで終わらず、腕を振り抜いた。
その余波だけでカナタの上半身は吹き飛び、下半身はそのまま支えを失い倒れた。
(そう。カナタを瞬殺とはね......もう様子見はいいか。"雷装")
カナタの惨状を見て、アリスも行動の方針を様子見から全力戦闘に変えた。
(我が冠するは雷の印。その咆哮を解き放つ。【ライトニングドラゴン】)
アリスは体に雷を纏い反射及び、身体能力を向上させた。その状態で次の魔法の詠唱を始め、アリスの作成した現状アリスの手札としては最大威力の魔法を放つ。
「グラアアアア!」
ノルンの咆哮は、その周囲に氷の礫を発生させて打ち出した。アリスの雷魔法でできた竜の前を先導するように礫が飛ぶ。
「コーーーン!」
さらに、雷の竜と礫の数が三倍になって飛んでいく。フィルの幻術による作用だ。
逃げ場もないほどの範囲攻撃となった魔法は黒龍を襲う。
だが黒龍はその口を開き、高密度の熱線を放つ。所謂龍の咆哮と呼ばれる攻撃だった。
お互いの攻撃は辺りを巻き込み、そこにアルモノ全てにダメージを与えた。
「はぁはぁ、はぁはぁ」
(私が撃てるライトニングドラゴンは体の調子的に推測すると残りMPから考えてあと二回が限度。なのに、黒龍にはあんまりダメージはないみたいね。)
「グルル」
「シュゥゥ」
ノルンたちも例外なくダメージを受けているが、アリスのそばに戻り敵を威嚇する。しかし、黒龍だけは被害が少ない。体から煙を上げて所々火傷をしてはいるがまだまだピンピンしている。
キンキンキンキン
「やっぱり鱗の硬度を貫けないか。」
アリス達との戦闘によって時間ができたことで、カナタは一度目の致死ダメージから復活した。そして、死角をついて投擲した短刀は全て体を覆う鱗によって弾かれてしまった。だが、全くの無駄でもない。鱗には薄いながらも線状の傷がついていた。
「あー痛てー。こんな大ダメージを受けたのは初めてだったが回復できてよかったよ。それに、回復にかかる時間も前より早くなっていることも知れた。」
「カナタ。私のとっておきでも、ほとんどダメージを与えられない。秘策はある?」
「いや、無いな。我慢比べといこう!とりあえず、ノルンとフィルは今撃てる最大遠距離攻撃をしたら紋章に戻っていろ。ここからは最低限の防御のみで攻撃主体の特攻でいく。」
「ガル!」
「コン!」
ノルンもフィルもこの状態で主人たちを残して紋章に戻りたくはなかった。だが、我慢比べでの文字通り削り合いとなると、自分達はむしろ居ないほうがいいと判断して返事をする。
(ふふふっ。上半身を跡形もなく吹き飛ばされたのに、その戦闘方法を選択するとはね。アイテムボックスに仕舞っている回復アイテムも血の小瓶も沢山ある。勝ち目は、まだある!)
アリスもカナタに頷くことで了解の合図を送り、その決意と意思を伝える。
「よし!じゃあ、第二ラウンドといこう!」
こうして戦闘はさらに激化して、受けるダメージも増える。だが、黒龍にも徐々にその肉体へのダメージを与えていく。
カナタの言う通り第二ラウンドの始まりであった。
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