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誰が為に  作者: 白亜タタラ
ダンジョン攻略編
40/108

 カナタとアリス、二人の過去はそれぞれが、ただ安穏と過ごしている一般人とは違った道を歩んできた。そして各々の感じ方や価値観の差異がある為、正確にとは言わないが二人ともその生い立ちは辛く、過酷なものであった。


 吸血鬼の真祖(・・・・・・)が考え、掲げる思想とは自身という個が絶対という主義であり、他人は冷遇され、自分に傅くべしというものだ。

 故に、まだ真祖が何体も存在していた時代は、それぞれの派閥に分かれて世界を二分するような闘争を行なっていた。


 そんな真祖の血を引くアリスは、しかして幼い頃からの迫害や、力の発現が起らなかったことで一般人となんら変わらなかったということによりそういった自分中心の考え方にはならなかった。

 その分、心の優しい、しかし割り切るところは容赦なく割り切る冷酷さをこれまでの短いながらも濃密な人生で、アリスの個性とした。


 カナタもアリスもネメシアに来て、その血に覚醒したことでこの過酷な環境にあっても平然としていられるだけの精神を手にできた。

 やはり、この迷宮(・・)において生存していられるのも二人が先祖返りという珍しい存在であり、その本能が導いた結果が大きいと言えた。




 15階層、ボスの部屋の前。


 15階層も10階層と同じく魔素は飽和状態になってこの空間に満ちていた。まだ確定するには早いが、カナタたちは魔素を吸収して自身を強化するという方法を用いたのは5階層のハントラビットだけなのではないかと思い始めてきた。


 15階層はこれまで通り、廃墟の街並みでありそれなりに時間をかけてボスの部屋を見つけ、飽和状態も既に解き、今まで通りに万全の状態で今日、ボスの部屋まで来たのだ。

 カナタたちの装備はこれまで同様、Tシャツにズボンという戦闘を行うとは程遠い格好に思われるような装備であった。

 腰には二本の刀を携え、杖も油断なくその手に握られている。


 「ここの扉は白一色で模様すらないな。ここまで今までの扉との差があれば流石にわかるな。」


 「今回こそは余裕をもって勝ちたいなぁ。どの階層のボスも戦い終わった後は全力を出し尽くしているから、動けなくなっちゃうし、いくら治るとはいっても、痛い思いはしたくないのが普通だしね。」


 カナタとアリスはこれまでのボス部屋で戦闘を行う際に、作戦を何パターンも用意して臨んでいた。しかし、今回からはあらかた戦闘パターンも出尽くしたので、いつも行なっていた作戦会議は行わず、そのままボスに挑むことにしたのだった。


 「よし!アリス、バフを頼む。俺も拙いながらもアリスに掛けておく。」


 ネメシアに存在する魔法とは、基本的に自身が放つ同一の魔法においてその効果は重複しない。

 例えば、アリスの使うオールバフの魔法を何度も重ね掛けしたからといって、能力が上がり続けるというわけではない。しかし、防御能力向上、防御能力上昇、防御性能向上など魔法の種類が異なれば重ね掛けにも効果が反映される。そしてそれは、人にも同じことが言える。アリスが掛けた魔法と同様の魔法をカナタが同じように掛けても重ね掛けはできる。

 故に、カナタとアリスはそれぞれオールバフの魔法をアリスが、各種身体能力向上の魔法をカナタが使用することで準備を整えた。

 カナタはアリスほど戦闘でMPを使わない為、一つ一つの魔法をしっかりと行うことが出来、アリスはMP効率的にオールバフの魔法一つで止め、これからの戦闘に備えた。


 「「......。よし、行こうか!」」


 二人はお互いを見つめ、それぞれ頷くと、声を揃えて行動を開始した。


 第15階層、ボスの部屋の扉を開けた二人は何が起きても対処できるよう万全の体勢で部屋の中を観察する。

 部屋は今までのボスの部屋とは異なり、縦横百メートルほどの広さで、カナタも全体を把握できた。しかしカナタも、そして神眼スキルを使っているアリスにも部屋の主人を発見できないでいた。


 「「.........」」


 「アリス?敵が見えないんだけどアリスの眼には(・・・)どう視えている?」


 「いや、私にもそれらしい敵は何も視えないよ。」


 「どういうことだ?......ここはボスがいない階層ってこと?流石にアリスの眼にも映らないとなるとっ!」

 

 この部屋の状況について二人は警戒しながらも話し合いを始め、何とか理解しようとした。しかし、そもそもこれまで敵がアリスの眼に映らないことが無かったためにそんな考慮はしておらず、そしてその状況が現実に起こった今ではカナタを含めた視覚、気配、そして漂う魔素の流れなど、掴める情報はできる限り得ようとした。

 しかし、アリスもカナタも何の気配も掴めていない中で突如、この部屋全域を照らす眩い光が二人を包んだ。


 その光が発生した瞬間に漸くアリスの眼はその情報を捉えたが、光の発動から自身へ光が届くまでの時間にアリスが出来たことは油断なく構える事位しかなかった。

 眩い光で、危険とは分かっていたが目を開けていることができず、そして二人が目を開けた時にはお互いの存在が居なくなっていた。


 「......ちっ。流石にこんなことになるとは想像してなかった。しかもあんなの初見じゃまず回避不可能じゃないか。......アリスもいない。部屋はさっきまでいたところと同じ広さに見えるし、アリスが居れば変化がなかったと思えるほど違いがないな。いや、そんなに甘くはないか。......とりあえず俺がこの状況なら、アリスも似た状況になっている可能性が少し出てきたな。ここを早く片付けて、早くアリスの元に行かないとな。」


 カナタの思考としては、アリスが居ないことから、辺り一面を照らした光によって目を閉じたときに別の場所に転移させられたのではないかと最初に考えた。だが瞬時に問題はそこではなく、自分とアリスのどちらが転移したのかの方が重要であると考えを改めた。まず、自分が転移したのなら今現状においては無事で、何とかなっているためとりあえずはいい。

 しかしこの場合アリスの状態が分からないのが問題で、アリスが此処とは違う階層、もっと言えば別の離れた空間に転移させられて合流が当分できない状況だった、もしくは、超危険地帯に居るというのが最悪の状況であると言える。勿論アリスはさっきいた部屋におり、自分がどこか分からない遠く離れた場所に来た可能性もあるし、そもそも転移ですらない可能性もあるが今は何分情報が無さ過ぎた。


 と、そこまでを僅かな時間で考えたカナタだが自分の()が不自然に揺らめき、勝手に自分から別れて距離をとった瞬間にカナタの警戒はMAXまで跳ね上がった。

 カナタは即座に普段の自然体の状態をとり、影を油断なく見据えた。最近のカナタの構えは、様子見の時はこの自然体の状態をとることで体に不自然な力みを生まず、瞬間的な反射に体が反応した時にどの方向にも動けるこの構えをとっている。勿論攻撃に転ずるときに腰の愛刀に素早く手を伸ばすことも可能である。


 影は上から糸で釣り上げているかのように、徐々に平面から立体的(・・・)に、そして三次元的(・・・・)なフォルムを形成していく。

 最初は影が上に伸び上がったかのような感じだったが、今では複雑に人の形を成している。そして動き始めてから一分もしないうちに、真っ黒だった影にどういう原理か分からないが、色彩まで生じ、カナタと瓜二つ(・・・・・・・)の存在が現れた。


 事ここまでくればカナタもその現象を理解し、自分のそっくりさんと闘わなければならないことを悟った。同時にカナタはアリスも同じ状況にあるのではないかと考え、早いところアリスの元に戻りたかった。だがどうやらサッとこの部屋を見たところ、ここから出るための扉も窓も、そしてワープゲートも見つからないため、安直に考えてこの自分にそっくりな敵と戦って倒さなければそれも叶いそうにないようだった。


 見るからに同じ体格、同じ武器、そして同じ容姿のためカナタの知識的推理によりこの戦いは厳しく、そして長引きそうだと思った。


 「......自分との闘いっていうのは漫画とかによくある燃えるシーンだったが、そんな簡単に今の自分をすぐに超えるなんて出来るもんじゃないと実際にこの状況になると思えてくるな。最悪なのはこの敵が不死性まで得ていたら終わりが見えないことだな。早いところアリスの元に行きたいし。まあ、とりあえずいつも通り測りながら(・・・・・)戦っていこうか!」


 カナタは自分同様に自然体の構えで此方を伺い、動こうとしない影に対してこのままでは埒が明かないと”凪”に手を伸ばし、徐々に間合いを詰めながらじりじりと迫る。


 こうしてカナタと影の戦いはゆっくりと幕を開けたのだった。



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