傍観者たち
【とある神界、神の間】
「ふふふっ。最初こそ何故か私の転送魔法の移送位置がずれて神々の迷宮なんかに着いてしまったけれど、あの子たちは順調に成長しているみたいね。」
「しかし、三人も貴重な原種が消えてしまったのじゃ。あの転移の時、僅かじゃが空間に漂う魔素が揺らいだ。アレは今思えば其方の転移に干渉したのじゃろう。」
「ただ、我ら神の行動に干渉出来る者なぞそうはおらんと思うぞ。大体目的が見えん。そもそも、管理神たるウルスラがあの小僧どもを転移させることなぞ、それこそ知り得る事が出来るモノは数えるほどだろう。勿論、上位クラスの神ならば話は別だが、そんなことをする神もおらんだろうしな。」
「ふふふ。私の選んだ可愛い子たちに害なしたことを許しはしないわぁ。今は私の眷属たちがいろいろ調べてくれているし、私たちは彼らを緩やかに見守りましょう。」
「おお、そういえばお主のところのが我の管理世界に瞳を飛ばしておったわい。アレはそういうことだったか。」
神々はカナタたちを送り出してからも、仕事の合間や暇な時など、カナタたちのことを見守っていた。
当初、カナタたちは何の危険もない街のすぐそばの平原に転移するはずだった。しかし何者かの干渉により今いる迷宮についてしまったのだった。
ウルスラは、その何者かを探すために直ぐに配下に探らせていたのだ。
そして、カナタたちを導いたウルスラだけでなく、今ではこの転移には直接関係の無かった別世界の神々も転移の情報を聞きつけてカナタたちを見ており、この二人の行動が神々の娯楽になりつつあったのだ。
そんな、神々に見られているとは思いもしない二人は、今日も変わらず楽しげに会話しながら魔物からのドロップ品を確認していた。
「さて、各魔物特有の肉やら牙やらのドロップはある程度手に入った、というより、そういった物の方が手に入りやすいと今までの経験より統計が取れました。」
『そうね。私の方もアイテムボックスのリストを見る限りそういう傾向があるように思う。』
「と言う事が分かったので、それらは置いておくとして、まず、消耗アイテムから発表します。」
『パチパチパチパチ!』
・回復薬×12
・麻痺回復薬×20
・催眠回復薬×16
・毒回復薬×8
「と、いう結果になりました。要するにポーション系だな。殆どがあの大変だった沼地エリアで得たアイテムだ。また行きたいとはあまり思わないけど。」
『これから先の階層で手に入らないようならまた集めに行かないといけないわね。私も気は進まないけれど。』
3階層で出現する状態異常を引き起こす攻撃をしてきた魔物たちからのドロップアイテムにより各、回復薬を入手できた。
「俺たちのアイテムボックスなら内部の時間が停止しているから効果の期限なんかも気にしなくていいし、入手できるならいざという時のためにも、多めに持っておきたいもんな。ただそれはもう少し先に進んでから考えよう。この先のことがわからない今は前に進む方が大切だと思うし。」
『そうね。じゃあ、次のアイテムの鑑定に戻りましょう。』
カナタたちのアイテムボックスはその内部に仕舞ったものをリストで確認できる。その際に、リストでアイテムの詳細などを表示してくれる機能があるらしく、入手アイテムの鑑定に本当に役立っていた。
「じゃあ次だけど、夜襲って来たアンデットからのドロップがこれだ。」
・ショートソード×5
・レイピア×2
・丸盾×1
『魔物が武器をドロップするなんてカナタからの話を聞いていなければ信じられなかった。でもこの世界ではこっちが常識。まあ今の私たちに貰える物を置いていくなんて贅沢ができる筈は無いけど。とはいえ、この武器は私たちにはあまり価値がないわね。』
「どの武器も既にボロボロで攻撃を受けた時とか耐えられるのか心配だしな。俺が創り貯めている武器もあるしまあ、アイテムボックスにいつか使う時が来た時用に仕舞っておこう。」
カナタもアリスも戦闘面での武器などは自分で作ったり、そもそも魔法だったりとコストは殆どかからない。なのでドロップしたものは大抵、アイテムボックスに仕舞っておかれるのだった。
「さて。最後に”ハントラビット”からのドロップ品にいこう。落ちたアイテムは全部で三つ。まず一つ目はブラックホーン。ハントラビットの額にあった角が真っ黒になったものだ。」
『このアイテムは、MPを使わずに雷を打てるみたい。でも、五回が限度みたいだね。回数制限付きの杖って感じかな。』
ブラックホーンは長さ三十センチ程の黒い角だ。そして、ブラックホーンの能力を起動すると、真っ直ぐに黒い雷が発射されるという能力を有しているマジックアイテムだった。
「次は、大きなウサギ肉です。俺たち二人なら二、三日の間毎食これでも食べ切れないくらいの量があるな。」
『お肉はあって困らない。ウェルカムです。』
ウサギ肉は総重量十キロはある肉の塊だった。二人ともネメシアに来て戦闘をこなすなど消費カロリーが以前より増加したことで食べる量が増えたとはいえ、この量の肉を消費するにはなかなか時間がかかる。
「さて。最後はこの真っ白なコートです。」
『名前は白夜のコート。名前の通り真っ白なコートね。受ける物理ダメージを5%軽減してくれる。また、多少だけれど保冷保温効果もあるみたい。』
「このコートはアリスが持っていてくれ。このコートのダメージ遮断効果がどれほどの大ダメージにも耐え抜き、有効かはわからないけど、俺が創ったロープよりは性能がいいからな。それに、アリスに白はよく似合いそうだし。」
『......ありがと。......どう?』
カナタが自分を優先してくれている事はこれまでのダンジョン生活や、やり取りで痛いほど理解しているアリスは、感謝の言葉をいつもと変わらず告げた。しかし、アリスもカナタが思うのと変わらないくらいカナタを思っている。なのでその板挟みで少しだけだがモヤッとした気持ちが残るのはいつものことだ。
「ああ。アリスの白い肌と相まって尚、清廉さが際立って見えるよ。それにこのコート、多少は防汚能力もあるって書いてあるし、アリスが汚れないで済むっていうのは、このドロップ品はラッキーな部類だったな。」
『今度似たようなものが出たらカナタが着てね。でもこのドロップ品の感じだと、やっぱりボスと呼べるレベルの魔物から落ちる物の方が良い物がそうだね。まあその分戦闘は大変なんだけど。』
「だな。これからは五の倍数の階層は尚一層気合入れて望まないと。それに今回のことでボスのリポップについても検証してみないといけないしやること一杯だな。もしまたリポップするなら、良い戦闘訓練の相手になるし、ドロップも合わせて美味しい相手になってくれると思う。」
こうして、ドロップアイテムの検証を終えて雑談へと移っていった。
そして、今の体調とやる気的にこれから次の階層に降りて安全地帯となり得る場所を探す元気は二人にはなかった。また、二人が今いるこの場所はボスの部屋だからか他の魔物が出てこないため、こうしてゆっくりするには丁度良かった。
カナタたちはこの場所に留まることを決め、食事の用意や寝床の準備などを開始していくのだった。
「さて。今日の晩ご飯はカレーにします。」
『カレー!!今回手に入れたハントラビットのウサギ肉を使いましょう!あれ、絶対美味しいやつ。是非カレーで食べたい。』
普段はあまり取り乱さず、とても十歳児とは思えない周囲への観察力と言動のアリスだが、やはりカレーの魅惑の前では年相応の女の子に戻ってしまう。
「落ち着くんだアリス君。かくゆう俺もこの肉を使うならカレーだと思ったから今回の晩ご飯にしたんだ。野菜やルーの準備は前もって大量に創って、アイテムボックスに入れてあるやつがあるから完璧だ。よし。じゃあ火を起こして煮込み始めよう。」
『”ファイヤー”。よし火の準備はできたよ。』
「うん。やっぱり、この脂のさし具合。それに、柔らかい肉の中にある僅かなこの筋肉質な部分が絶妙な食感になると思う。」
『それに、煮込むことでさらに味が入り、うん。既に美味しいのがわかる。』
こうしてカナタたちは二人でワイワイ、ガヤガヤと雑談をしながら調理をしていきなんと、三時間もかけてカレーを作っただった。
そしてその味は申し分なく、用意していた鍋一杯のカレーを二人で食べきってしまうほどの大満足で食事を終えるのだった。
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