表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰が為に  作者: 白亜タタラ
ダンジョン攻略編
26/108

階層ボス戦

 カナタたちは、第5階層の探索を終えて今までの階層にはは無かった扉を発見した。そしてその扉の先には圧倒的な覇気と、殺気を持つウサギ型の魔物が居たのだった。

 それはまさしくこのエリアのボスと言っても過言ではない存在感を放っている。


 『名前は"ハントラビット"攻撃力とスピードが見た目通り危険。慎重に行く。』


 「最後の決め手はアリスの魔法に任せるけど、何が何でも削って行ってあわよくば倒す。俺はそういう気持ちで行くよ。」


 カナタもアリスも気合い十分で敵を見据えた。


=================================================


 【ハントラビット】


 【HP】(体力):56


 【MP】(魔力):10


 【STR】(筋力):111


 【AGI】(速度):108


=================================================


 (さて。私の魔力よ私たちを包みて能力の向上をせよ!”オールバフ”)


 アリスの新たな補助魔法は能力の向上をする。しかしその能力は攻撃力、速力、防御力などの複数の身体能力を一つの魔法ですべてを上昇させる。

 確かに若干だが、一つ一つバフ効果のある魔法をかけた方が効果は高い。しかし、MP消費に関して言えばこちらの方が格段に節約できる。


 「行こうか!」


 『うん!』


 アリスの魔法での補助も済ませ準備が整った二人はゆっくりと扉に向かって歩き出した。


 「ククッ。いやー怖い!怖いけれど、燃える!そろそろお前も起きろ、”()”」


 (カナタはもうスイッチ(・・・・)入っちゃったなぁ。これが人種の原種の血なのかなぁ。ふふっ。いつも通り完璧に行きましょう。)


 二人はもう既に極限まで集中力を高めていた。それはもうお互いの存在と敵であるハントラビットしか目に入らないほどに。


 そして二人は歩きながらアイテムボックスからそれぞれ刀と杖を取り出した。


 カナタの刀はつい数日前に創り出したものだ。名はカナタが付けた。刃渡りは五十五センチほどで真っ白な姿をしている。これがレベルが上がり総MP値の増えたカナタが今創れる最高の刀だった。


 アリスの杖もカナタが創った新しいものだ。その長さは一メートルほどで身長が百二十センチほどしかないアリスには少し扱いにくい。しかしこれはアリスの意見を参考に創られており、杖を武器として振り回したりするつもりは元からないためこれでよかった。ただ杖を構えた状態での移動で妨げにならない長さではこれが丁度良かったのだ。

 そして杖には、魔法使いを補助する効果がある。第一に消費MPの消費軽減。この効果があるだけで魔法使いたちは杖を持つのだ。そして、第二に魔法威力の上昇。一般的な杖にはこの二つの能力が備わっていることが多い。そして、その上昇値の優劣で職人の腕が決まり、値段も効果に比例して跳ね上がっていくのだ。しかし、そもそもカナタが創り出す武器は他の鍛治士や職人とは根本的に作り方が違う。今回、この杖にはカナタが創った時点で所持者の魔法の影響を受けやすいようにした。そしてアリスが”軽量化”の魔法陣を杖に直接刻むことでより使いやすくしたのだ。


 カナタもアリスも覚悟を決めてその扉を潜り、敵に向かって駆けだした。


 自分の縄張りに何の断りもなく入り此方に向かってくる侵入者に対し、ハントラビットはゆっくりとその真っ赤な両目向けた。

 そして、ハントラビットの体が少し沈み込んだと二人が認識した瞬間にはその姿は掻き消えていた。

 いや、消えたと思ったのはアリスだけであり、カナタには突如目の前に現れたように見えた。


 そう。体が沈んだように見えたのはその強靭な脚に力を込めていたのだ。そしてその脚力で地を蹴り一瞬でカナタとの距離を詰めたのだ。


 カナタは咄嗟に右側へと体を倒す。そしてその一瞬の後、カナタの体は右側後方へと吹き飛ばされて行ったのだった。

 アリスは気配を辿って両者を視界に収める。そして、カナタがハントラビットに蹴られ吹き飛ばされるのを見ながら必死に魔法を構築していた。


 (我が周囲は烈刃の嵐!”風刃”)


 カナタがハントラビットの周囲に居なくなったために範囲攻撃で確実に攻撃を当てることを選択したアリスは風の刃を自身の周囲に放った。


 カナタを蹴り飛ばしたことで体勢が崩れ一瞬の隙を晒していたハントラビットはその身に風刃をモロに受けた。

 しかし、その毛皮はアリスの予想以上に頑丈で、その毛の一部が赤く滲む程度で少ししか切り裂くことができなかった。


 流石に自分の魔法をまともに受けた傷がその程度であるとは思わず、アリスは一瞬硬直してしまった。そしてハントラビットの方も傷は大したことはないと知り、意に介すことなく体勢を整え、アリスの方を向いた。


 (そう。油断していたつもりは毛頭なかったのだけれど、温存(・・)なんて考えが間違っていたわけね。)


 そうしてアリスの視る世界の速度が急激に遅くなった。


 自身に迫るその強靭な肉体や脚、そして角を僅かミリの距離で見切って躱し始めるアリスは自身の能力の精度を調節し始める。

 今のアリスですら五分と神眼スキルを使い続けることは体にかなりの負担を強いる。故に今アリスはMAXで使っている神眼スキルの効果を徐々に精度ダウンさせていた。


 そして


 「グルゥ!?ギャァアア!!」


 カナタが投げた短剣(・・)ーーカナタはもう普通の短剣を創ることができる。ーーが無防備なハントラビットの背中に突き刺さった。

 最初に吹き飛ばし意識から消えていたモノ(・・)にダメージを負わされ怒りの咆哮を上げるハントラビットだったがその意識がカナタに向いたのを目の前で感じたアリスは即座に出の早い魔法を放つ。


 (射貫くは雷!”ライトニング”)


 アリスの突き出した人差し指から放たれる雷はハントラビットの体を貫き真っすぐに突き進んでいった。そして頑丈な毛皮も体内を貫かれては効果を発揮できなっかった。


 アリスは神眼を解除し攻撃が当たった瞬間にその場を後退する。


 それと入れ替わりにカナタはナイフや短剣を投擲しながらハントラビットの初撃で吹き飛ばされて離れていた距離を走って詰めていた。


 そしてカナタは納刀したままの状態でハントラビットをその刀の射程に捉えると力の限り、しかし余計な力をかけないという若干の矛盾を生じさせながら刀を抜き放った。


 「抜刀術。一閃!」


 「ギャジグワァァアアアア!!」


 カナタの刀が煌めいたのとハントラビットの角が振り下ろされるのはほぼ同時だった。そして両者の攻撃はその一人と一匹の丁度中間で大きな衝突音を発しながら激突し、止まった。


 そう止まってしまったのだ。


 刀に走ってきたスピードという力を乗せて放つ事ができる初撃だった。しかしこうして止まってしまえば単純な力勝負だ。筋力においてはハントラビットの方が圧倒的に秀でている。故に少しづつカナタは押され、力の限り踏ん張るが体勢が後ろに傾いていった。


 だが、その不利な状況で最後、カナタの顔は嗤っていた(・・・・・)


 カナタはもう堪えきれないと感じる寸前で、ハントラビットの力に逆らわず脱力することでその勢いに押され後方に吹き飛ばされた。

 そして急に手応えが無くなったことで体勢を崩したハントラビットがその赤い目で偶然見たのは、吹き飛ばされながらも不気味に嗤うカナタの顔だった。


 そう。カナタとハントラビットが戦い始めてからの数十秒はアリスには何の注意も向かなかった。だからたっぷりと魔力を練り上げ、詠唱も完ぺきな状態でこなし、アリスの放てる最大最強の魔法を組み上げることができた。


 (我が魔力は生命を育む水へと変ず、そして水はその理に解し生命を滅しもする。我が願いは我が敵を討つ事であり、それ以上を望まず、この敵を包むのならばその限りではない。生み出すは水球。形は常変也。我が魔力が続く限りお前を捕らえ続けるだろう!”水牢”)


 アリスの放った魔法は無防備になったハントラビットにぶつかった。しかしその魔法を受けた瞬間ハントラビットはダメージがないことを悟り、自分が驚かされただけだと勘違いして腹を立てた。

 しかし、次の瞬間には体に当たった水が弾け、だが弾けた水はハントラビットの体に纏わりついて飲み込もうとしてくるのだ。ハントラビットは体を動かし逃れようとするが水が流動するだけで逃れることができず、徐々に飲み込まれる個所が増えていく。


 そして完全に飲み込まれると水を蹴ろうが角で突こうがその部分が弾けるだけで他の個所が逃れられないため徐々に酸素と体力を奪われる。

 これを抜け出すには全身で水を振り切らなければならない。しかし水中で動きが鈍るウサギ型であるため脱出には至れなかった。さらにこの魔法は、着弾した相手の魔力をも吸収し水に変換する。そして、魔法の着弾者の体内の水分と引き寄せ合うため脱出にはかなりの労力が必要なのだ。


 こうして水の玉に囚われたハントラビットは徐々に呼吸ができないことで弱り、最後にはその命を散らしたのだった。


 しかし、アリスも魔法の維持に必死でありそのMPはもう残り僅かだった。アリスの白い顔は更に白くなり、明らかに無理をしているのは一目瞭然だった。だが、突然のことで判断力が無くなり、脱出することに必死だったハントラビットはアリスを見ている余裕などはなかった。


 そして、戻ってきたカナタも万が一脱出、もしくはアリスのMPが持たなかった時のために備えていた。

 つまりハントラビットは逃れられても、ほぼ無呼吸でカナタの攻撃を凌ぎ切らねばならなかったのだ。


 こうして見た目上はカナタたちの圧勝で、しかし内容的にはかなりギリギリでハントラビットを倒すことができた。


 「......ちっ」


 だが、実際は何もできなかった自分に、そして目の前で青い顔で横になっているアリスの支えにちゃんとなれなかったことに苛立ちを隠しきれないカナタであった。




よろしければ下の所にある☆で評価やブクマ、感想などを頂けると励みになりますし、とても嬉しいです|д゜)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ