肉パーティと新魔法
カナタたちは第4階層を進んでいく。この階層に降りてきてもう一時間ほどになるが、第1階層と同じで見渡す限り木、樹、木ばかりが目に入る。そうしてやはり第1階層と同じ感じなのかと思っていた所に突如そいつは現れた。いや、現れたというよりは向かってきた。足音が騒々しく、鼻息も荒立たせながらただただ真っすぐに、木々をものともせずに駆けてきたのだ。
第4階層は、フィールドが森という事でその足元は土である。また場所によっては草が生え、緑が目に優しかったりもする。
カナタたちはそれが来るのを感じ取った瞬間に迎撃の体勢をとったが、同時に自分たちの勘違いにも気づかされたのだった。
「アリス、今回は俺が先にやってみるよ。」
『了解。』
本当に必要最小限のやり取りだけを済ませて一歩前に出るカナタ。アリスは左に一歩分だけズレてカナタを見守る構えだ。
「さて。この階層初の敵だし実力を測らせてもらおう。」
「グモォォォオオオオオオオオオオオオ!!!」
一心不乱に駆けてくるそのイノシシを見て、カナタはアイテムボックスから刀を取り出した。対するイノシシの魔物もその口の両脇から生える牙を頭を下げることでカナタに向け、さらに雄たけびを上げながらその体長二メートルを超える巨体で突進してきた。
「抜刀術!」
「グワアアアァァァ......」
カナタとイノシシはぶつか......る寸前でカナタが若干体を傾けさせて攻撃を回避し、お返しとばかりに刀をその胴体めがけて抜き放った。
イノシシは四字熟語にもあるように猪突猛進で、急には方向転換できなかった。カナタの形だけのなんちゃって抜刀術はイノシシの首元から刃が刺さり、イノシシの突進力によりそのまま胴体を横一文字に深々と切り裂いた。そして、その傷が致命傷になってその姿をアイテムに変えたのだった。
「うん。速度も攻撃の威力も上の階層とは段違いだ。上の階層はトラップ的な魔物が多かったけれど、この階層は物理的なタイプの魔物が力を振り回して迫って来るといったところかな。」
『うーん。不意を突かれたりしなければカナタは問題なく対処できそうだね。私も寄られなければいけると思う。この階層も魔法は控えめで接近戦を練習していきたいな。勿論、出てくる魔物はまだ今のイノシシしか見てないから確認は必須だけれど。』
「あと今のドロップは猪肉だった。ご飯はもう困らないな。暫くMPは武器製作に回そうと思うけれど、どう?」
『ちゃんとしたお肉うれしい。美味しい。カナタの装備充実は大切だしそれでいいと思うよ。』
「待てアリス。まだ食べてないから美味しいはおかしいぞ。」
『じゅるり。』
こうしてこの階層で出現する魔物が上の階層とは違うことを知った事でカナタたちは少し考えを改めた。まあその大半はドロップした肉に向いているのは言うまでもない。
「シッ!」
(フッ!!)
カナタたちは有り余る肉探求心によりいつもよりも早いペースで探索を続けていった。そしてここまでの探索で魔素の飽和状態を解除するために魔物を倒し続けていた。そのおかげでレベルが上がって、襲ってくる、又は発見した魔物を安定して一撃で屠れるようになっていた。
「この階層は動物型の魔物が出てくるんだな。さっきのイノシシにネズミ、シカやウサギまで魔物化しているとは思はなかった。」
『それぞれ、ダッシュボア、レッドアイマウス、マスディアー、ララビッドって言う名前らしい。猪や鼠はその外見や行動が通常時の時のままだから分かるけれど、他は......よくわからない。』
「神のシステムが決めてるんだし、気にする必要はないよ。寧ろ、その戦闘行動の方が大事。そして、貰える経験値がより大事。」
『私もカナタも戦闘内容は振り返ったり、気にしたりするけど、経験値は話には出るけど目に見えないものだから実はそこまでは気にしてないよね。』
「レベルが上がることに意味がある!」
『はい。キメ顔で言わないでくださーい。そして私もレベルが上がると嬉しく感じる域に来てしまいました。』
そうして会話をしながらも敵を倒したり、周囲を見回りながら進んでいく。カナタたちは基本的に楽しく過ごすことを基準に生活している。それは索敵にも同じことが言えて、会話をしたり、敵の攻撃の軌道を見切るところから自分たちの回避行動の精度を上げるための研究をしたりなどして進んでいた。
そして時間はあっという間に過ぎ去り、辺りは暗くなっていった。カナタたちは周囲の索敵と並行して安全地帯も探していたため、早めに野営場所を定めて、もう既にテントを張ってまったりモードに入っていた。
因みにこの日の夜ご飯はイノシシ肉を使った料理をおかずにカナタが出したご飯を食べていた。二人は美味しいお肉でご満悦だった。ーー謎肉も味はちゃんと美味しいのだがーー
ネメシアにおいて普通の動物から入手できる肉より魔物からドロップする肉の方が美味しい。魔素が影響しているのか、神々がそう設定してネメシアを創ったのかは分からないがカナタたちには美味しいモノが手に入るのは何の問題もないため上機嫌だった。
「1階層と違うのは分かったけれど夜はどうなるんだろうな。今日も俺が後半の見張りでいいか?」
『フッフッフ。カナタ君、日中に言ったことを覚えているかね?』
「いや誰ですか!?というのは置いといて、なんか楽しみにしておけって言われたな。」
『そうです。いろいろ試行錯誤をしまして、なかなかに時間がかかりましたが、夜の間の野営場所で使う防衛魔法を開発しました!』
「パチパチパチ!!!さすがアリス先生!素晴らしいです。これで気を張らずにゆっくり寝れる。」
『まだ実際に試したことはないから今夜が初めての発動だけど期待はしていてくれていい。やっぱり二人で安心して寝たいしね。』
アリスは長時間に渡り効果を発揮する魔法を周囲に展開することで夜の間も魔物の心配をしなくて済むようにしたのだ。
そしてこれは、アリスからのカナタへの心遣いでもあった。自分だけ長く寝ている状況にこの魔法を考え始めて、漸く先日、作成していた魔法の成功に至ったのだった。
(生み出すは雷撃纏う空間也!”スリープハウス”)
こうしてカナタたちはアリスの魔法で創った、テントの周辺を覆う雷の結界の中でゆっくりと眠りにつくのだった。
翌朝、この世界に来てから初めてと言ってもいいほどゆっくりと安心して眠った二人はテントから出て言葉を失った。
この階層は猪や鹿などの動物の魔物が多くいる。故に夜行性の魔物も存在しているし、更に嗅覚や視覚などの索敵に優れた魔物が多く生息していた。そんな魔物たちにカナタたちの存在はすぐに発見されたのだった。
「......そうか。この階層はアンデットは出てこないんだな。」
『......うん。その代わりに夜行性の動物型魔物がわんさか来たみたいだね。私の魔法の威力が足りなかったかぁ。』
テントの周囲には雷の結界によって絶命はしなかったが、電撃を受けた事で結界の周りを囲むように倒れる魔物たちで、溢れていた。
アリスの言う通りもう少し結界の迎撃魔法の威力が高ければ絶命し、アイテムとなってドロップすることでカナタたちのアイテムボックスに自動で収納されるので今、目の前に広がるこの光景にはなっていなかった。
そしてそれを理解したアリスはすぐに魔法の術式を弄り、結界に使用する魔法の威力を高めるべく改良を施した。
「では、殲滅を開始いたします!」
『朝から元気出していきましょう!そして早く朝ごはんにしましょう。』
アリスたちはゆっくり睡眠をとれたからか、朝からハイテンションで雷により動けなくなっている魔物たちを一体一体倒していった。
そしてかれこれ三十分ほどの時間を経て、テントの周りに倒れていた魔物たちは消滅した。
「朝は味噌汁と昨日の残りのお肉と御飯です。」
『この世界に来て戦闘をするようになってからは朝からお肉も普通に食べれるようになった。というかよくお腹がすくよ。』
「いっぱい御食べ。食は大切だよ。」
『カナタがお爺ちゃんみたいになってる。......さて。今日も探索していこう。』
「おう!」
カナタたちはアリスの掛け声で今日の索敵を開始するために支度と片付けを開始した。そして今日も二人の時間はゆっくりと楽しく過ぎて行くのだった。
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